結論から言うと——一回拍出量は、心臓(左心室)が1回の拍動で送り出す血液の量です。これに1分間の心拍数をかけたものが心拍出量になります。運動を始めると一回拍出量は増えますが、一般の人では中くらいの強さで頭打ちになり、そこから先は心拍数の上昇で心拍出量をまかないます。持久系のトレーニングを積むと、一回拍出量そのものが大きくなります。
| よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 一回拍出量と心拍出量は同じもの | 一回拍出量は1拍あたり、心拍出量は1分あたり。心拍出量=心拍数×一回拍出量 |
| 運動が強くなるほど一回拍出量はずっと増え続ける | 一般の人では最大酸素摂取量の約40%で頭打ちになるという報告が多い |
| 心拍数が低いのは心臓が弱いから | 持久系の選手は一回拍出量が大きいため、少ない拍動で同じ量を送れる |
一回拍出量をたとえ話でつかむ
心臓をバケツリレーのポンプにたとえると、一回拍出量は「バケツ1杯の量」、心拍数は「1分間に何回くむか」です。たくさん水を運びたいとき、くむ回数を増やす方法と、バケツを大きくする方法があります。持久系のトレーニングは、このバケツを大きくする働きがあります。
一回拍出量の仕組み
一回拍出量(SV)= 拡張末期容量(EDV)− 収縮末期容量(ESV)
心拍出量(Q) = 心拍数(HR)× 一回拍出量(SV)
例:心拍数 60拍/分 × 一回拍出量 80mL = 心拍出量 4.8L/分
拡張末期容量は心室が血液でいちばん満たされたときの量、収縮末期容量は送り出した後に残った量です。その差が、1回で送り出された量になります。心拍出量の詳しい解説は心拍出量の記事を参照してください。
一回拍出量を決める3つの要因
| 要因 | 意味 | 一回拍出量への影響 |
|---|---|---|
| 前負荷 | 心室に戻ってくる血液の量(静脈還流) | 多く戻るほど心筋が引き伸ばされ、強く縮む(フランク・スターリングの法則) |
| 心筋の収縮力 | 心筋そのものが縮む力。交感神経で強まる | 強いほど多く送り出せる |
| 後負荷 | 血液を押し出すときの抵抗(動脈の圧) | 大きいほど送り出しにくくなる |
息をこらえて強くいきむと、胸の中の圧が上がって心臓に戻る血液が減ります。そのため一回拍出量は一時的に下がります。息こらえについてはバルサルバ法の記事で解説しています。
一回拍出量と心拍数・心拍出量の違い
| 指標 | 単位 | 意味 | 運動強度を上げたときの変化 |
|---|---|---|---|
| 一回拍出量 | mL/拍 | 1拍で送る量 | 中強度までは増え、一般の人ではその後ほぼ横ばい |
| 心拍数 | 拍/分 | 1分間の拍動数 | 最大近くまでほぼ直線的に上がる |
| 心拍出量 | L/分 | 1分間に送る量 | 強度に応じて増える |
心拍数の上限の目安は最大心拍数の推定式の記事にまとめています。
一回拍出量を運動とトレーニングに生かす
運動強度による変化
漸増負荷のランニングテストで、一般の学生と大学の長距離選手は、最大酸素摂取量の約40%で一回拍出量が頭打ちになりました。これに対し、エリートの長距離選手は最後まで増え続けました(Zhouら、2001)。
| グループ | 最大時の一回拍出量 | 最大時の心拍出量 |
|---|---|---|
| トレーニングしていない学生 | 約128mL | 約21.3L/分 |
| 大学の長距離選手 | 約145mL | 約26.3L/分 |
| エリート長距離選手 | 約187mL | 約33.8L/分 |
出典:Zhouら(2001)。古典的な研究でも、よく鍛えた持久系選手8人の最大時の一回拍出量は平均約189mL、心拍出量は平均約36L/分でした(Ekblom & Hermansen、1968)。
トレーニングで一回拍出量を大きくする
- 持久系トレーニング:心室の容積が大きくなり、血液量も増えるため、一回拍出量が大きくなる
- 安静時心拍数の低下:一回拍出量が大きくなると、同じ心拍出量を少ない拍動でまかなえる
- 最大酸素摂取量の向上:一回拍出量の増加は、最大酸素摂取量が上がる主な理由の一つ(有酸素性エネルギー供給の記事)
一回拍出量の試験に出るポイント
- 心拍出量=心拍数×一回拍出量。計算問題で頻出
- 一回拍出量=拡張末期容量−収縮末期容量
- 一般の人の一回拍出量は、最大酸素摂取量の40〜50%前後で頭打ちになるとされる
- フランク・スターリングの法則:戻る血液が多いほど心筋が伸ばされ、強く縮む
- 持久系トレーニングの適応:一回拍出量↑、安静時心拍数↓、最大心拍数はほぼ変わらない
一回拍出量のよくある質問
- Q「拍出力」と「拍出量」は違うものですか?
- A
生理学で使う言葉は「拍出量」です。1回の拍動で送り出す量を一回拍出量、1分間に送り出す量を心拍出量と呼びます。「拍出力」は、拍出量の言い間違いとして検索されることが多い言葉です。
- Q筋トレで一回拍出量は増えますか?
- A
一回拍出量を大きくする効果は、持久系トレーニングのほうがはっきりしています。筋トレだけで心肺機能も高めたい場合は、セット間の休息を短くしたサーキット形式を取り入れる方法があります。
- Q一回拍出量は自分で測れますか?
- A
一回拍出量は専用の測定機器が必要で、自分で正確に測るのは難しい指標です。手軽に追える指標としては、安静時心拍数の変化が目安になります。
一回拍出量の理解度チェック
- Q問題1:心拍数150拍/分、一回拍出量100mLのときの心拍出量はどれか。
A. 1.5L/分
B. 10L/分
C. 15L/分
D. 150L/分 - A
正解:C。150拍/分 × 100mL = 15,000mL/分 = 15L/分です。
- Q問題2:一回拍出量を求める式として正しいものはどれか。
A. 拡張末期容量 + 収縮末期容量
B. 拡張末期容量 − 収縮末期容量
C. 心拍出量 × 心拍数
D. 心拍数 ÷ 心拍出量 - A
正解:B。満たされたときの量から、送り出した後に残った量を引いたものが一回拍出量です。心拍出量から求めるなら、心拍出量 ÷ 心拍数になります。
- Q問題3:持久系トレーニングによる適応として正しいものはどれか。
A. 一回拍出量が減る
B. 安静時心拍数が上がる
C. 一回拍出量が増え、安静時心拍数が下がる
D. 最大心拍数が大きく上がる - A
正解:C。一回拍出量が増えるので、安静時は少ない拍動で足ります。最大心拍数はトレーニングではほとんど変わりません。
一回拍出量の覚え方
Q = HR × SV 「キュー(Q)は、ハート(HR)のスープ(SV)」
SV = EDV − ESV 「満タン − 残り = 出た分」
一般の人:SVは中強度で頭打ち → あとは心拍数で稼ぐ
鍛えた人:SVが大きい → 安静時の心拍数が低い
一回拍出量のまとめ
- 一回拍出量は1拍で送り出す血液の量。心拍出量=心拍数×一回拍出量
- 前負荷・心筋の収縮力・後負荷の3つで決まる
- 一般の人では中強度で頭打ちになり、エリートの持久系選手は最大まで増え続けるという報告がある
- 持久系トレーニングで一回拍出量が増え、安静時心拍数が下がる
一回拍出量の語源と必須用語
| 語 | 語源 | 意味 |
|---|---|---|
| Stroke volume | stroke(一打ち・拍動)+ volume(量) | 1拍あたりの量 |
| Cardiac output | ギリシャ語 kardia(心臓)+ output(出力) | 心臓が送り出す量 |
| Diastole / Systole | ギリシャ語 diastolē(広げること)/ systolē(縮めること) | 拡張期 / 収縮期 |
| 用語 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 一回拍出量(SV) | いっかいはくしゅつりょう | 1拍で送り出す血液の量 |
| 心拍出量(Q) | しんはくしゅつりょう | 1分間に送り出す血液の量 |
| 拡張末期容量(EDV) | かくちょうまっきようりょう | 心室が最も満たされたときの量 |
| 収縮末期容量(ESV) | しゅうしゅくまっきようりょう | 送り出した後に心室に残る量 |
| 前負荷 | ぜんふか | 心室に戻る血液による引き伸ばし |
| 後負荷 | こうふか | 血液を押し出すときの抵抗 |
| フランク・スターリングの法則 | ふらんく・すたーりんぐのほうそく | 心筋が伸ばされるほど強く縮む性質 |
| 静脈還流 | じょうみゃくかんりゅう | 全身から心臓へ戻る血液の流れ |
参考文献
- Zhou B, Conlee RK, Jensen R, Fellingham GW, George JD, Fisher AG. (2001) Stroke volume does not plateau during graded exercise in elite male distance runners. Medicine & Science in Sports & Exercise 33(11): 1849–1854.
- Ekblom B, Hermansen L. (1968) Cardiac output in athletes. Journal of Applied Physiology 25(5): 619–625.


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