アクティブラーニング(Active Learning:能動的学習)とは、先生の話を聞くだけで終わらせず、学習者が書く・話す・話し合う・問題を解くなどの活動に参加し、その活動について自分で考えることで学ぶ教え方・学び方の総称です。
ポイントは「体が動いているか」ではなく「頭がアクティブに動いているか」です。ここを押さえておくと、試験のひっかけにも強くなります。
簡単な説明
テスト前の勉強を思い浮かべてください。教科書を何度も眺めて「わかったつもり」になるより、友だちに「これってこういうことだよ」と説明してみたほうが、自分がどこをわかっていないかに気づけますよね。説明しようとすると、頭の中で知識を整理し直す必要があるからです。
授業でも同じです。理科の時間に先生が「この実験、結果はどうなると思う?」と聞き、まず一人で予想を書き、隣の人と理由を話し合い、それから実験で確かめる。こうした流れがアクティブラーニングの一例です。講義の途中で2〜3分止めて、隣の人とノートを見せ合うだけの小さな工夫も含まれます。
ただし、グループで話し合っていれば何でもよいわけではありません。文部科学省の広報資料も、アクティブ・ラーニングは「ただ話し合ったり、発表したりすることではありません」とし、子供たちの頭の中が「アクティブ」に働いているかを問題にしています。にぎやかな授業でも、考えていなければ能動的な学びにはなりません。
由来
この言葉を広めた代表的な文献が、アメリカのCharles C. BonwellとJames A. Eisonが1991年に書いた『Active Learning: Creating Excitement in the Classroom』(ASHE-ERIC Higher Education Report No. 1)です。二人は、大学の授業がまだ講義中心で、学生が受け身の「聞き手」にとどまっていることを問題にしました。
二人は、アクティブラーニングはそれまで厳密に定義されてこなかったと述べたうえで、共通する特徴を5つ挙げています。
- 学生が、聞くこと以上の活動に関わっている
- 情報を伝えることよりも、学生の技能(スキル)を伸ばすことに重きを置く
- 学生が高次の思考(分析・統合・評価)に関わっている
- 学生が読む・話し合う・書くなどの活動に取り組んでいる
- 学生が自分自身の態度や価値観を探ることに、より重きを置く
そのうえで作業上の定義として、アクティブラーニングとは「学生に何かをさせ、自分のしていることについて考えさせる(involves students in doing things and thinking about the things they are doing)」ものだとしました。doing(やる)+thinking(考える)の両方がそろうことが、今も最もよく引用される要点です。
日本では、まず大学教育改革の言葉として広まり、その後、小学校から高等学校の学習指導要領の改訂につながりました。
| 年 | 主なできごと |
|---|---|
| 1991年 | Bonwell と Eison が『Active Learning』を刊行 |
| 2012年(平成24年) | 中央教育審議会(中教審)が「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」を答申(8月28日、いわゆる質的転換答申)。用語集でアクティブ・ラーニングを定義 |
| 2014年(平成26年) | 文部科学大臣が中教審に、初等中等教育の教育課程の基準の在り方を諮問(11月20日)。アクティブ・ラーニングの在り方が審議事項に |
| 2016年(平成28年) | 中教審が学習指導要領等の改善について答申(12月21日)。「主体的・対話的で深い学び」を授業改善の視点として整理 |
| 2017年(平成29年) | 小学校学習指導要領を告示(3月31日) |
| 2020年(令和2年) | 小学校で新学習指導要領を全面実施(4月1日) |
学習指導要領の本文では、カタカナの「アクティブ・ラーニング」ではなく「主体的・対話的で深い学び」という言葉が使われています。解説(総則編)はこれを「アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善」と言いかえています。正式な表現は「主体的・対話的で深い学び」、と覚えておきましょう。
具体的な説明
アクティブラーニングは一つの理論や技法の名前ではなく、受け身で講義を聞くだけの学習を乗り越えようとする、さまざまな教え方の総称(アンブレラ・ターム)です。そのため、誰の定義かで強調点が少しずつ違います。
代表的な定義の比較
| 出典 | 定義の要点 | 強調点 |
|---|---|---|
| Bonwell & Eison(1991) | 学生に何かをさせ、自分のしていることについて考えさせるもの | 活動(doing)+思考(thinking) |
| 中教審 質的転換答申の用語集(2012) | 教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習などが含まれ、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなども有効な方法とされる | 認知的・倫理的・社会的能力などの汎用的能力の育成 |
| 溝上慎一(2014) | 一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習。書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う | 頭の中の考えを外に出す「外化」 |
中教審の文書では、大学での学びを「学習」ではなく「学修」と書くことがあります。「学修者」「能動的な学修」という表記はそのためです。
主な技法
| 技法 | 内容 | 人物・キーワード |
|---|---|---|
| ポーズ・プロシージャ(Pause Procedure) | 講義の区切りで数分止め、学生どうしでノートを見直し補い合う | Ruhl, Hughes, & Schloss(1987) |
| ピア・インストラクション(Peer Instruction) | 概念を問う質問(ConcepTest)に1〜2分で各自が答え、周りの学生と2〜4分ほど理由を説明し合ってから、もう一度答える | Eric Mazur(ハーバード大学、1991年から導入) |
| ジグソー法(Jigsaw Classroom) | 教材を分担し、各自が担当部分の「専門家」になってから元のグループで教え合う。全員のピースがそろわないと全体がわからない | Elliot Aronson(1971年、テキサス州オースティン) |
| 問題基盤型学習(Problem-Based Learning:PBL) | 現実的な問題を出発点に、必要な知識を自分たちで調べながら解決策を考える | 問題解決、自己主導 |
| 反転授業(Flipped Classroom) | 説明は事前の動画や資料で学び、授業時間を演習や話し合いにあてる | 授業と宿題の役割を入れかえる |
Crouch と Mazur(2001)は、ピア・インストラクションで話し合いのあとに正答者が大きく増えるのは、最初の正答率が35〜70%の問題で、伸びが最も大きいのは50%前後のときだと報告しています。易しすぎても難しすぎても、話し合う意味が薄れるということです。
ジグソー法は、人種統合されたばかりのオースティンの学校で、競争的な教室が集団どうしの対立をあおっていると考えたAronsonらが、教室を「競争」から「協力」へ変えるために考案しました。社会心理学(偏見の低減)でも出てくる用語です。
「どのくらい能動的か」を分けるICAPフレームワーク
「活動していれば能動的」と考えると、「マーカーを引く」も「討論する」も同じアクティブラーニングになってしまいます。そこで認知科学者のMichelene T. H. ChiとRuth Wylie(2014)は、目に見える行動から認知的な関与(エンゲージメント)を4つのモードに分けるICAP(アイキャップ)フレームワークを提案しました。
| モード | 中心となる行為 | 講義を聞く・文章を読む場面での例 |
|---|---|---|
| I:Interactive(相互作用的) | 対話する | ペアで根拠を挙げて主張・反論する。互いの理解を確かめる質問をし合う |
| C:Constructive(構成的) | 生み出す | 自分の言葉でノートを取る、概念地図をかく、自己説明する、質問をつくる |
| A:Active(能動的) | 操作する | 板書をそのまま写す、重要な文に下線やマーカーを引く |
| P:Passive(受動的) | 受け取る | ほかに何もせずに講義を聞く、文章を読む |
ICAP仮説は、関与がP → A → C → Iの順に深まるほど学習成果も高まると予測します(頭文字は効果の大きい順)。マーカーを引いていても、新しい考えを生み出していなければC(構成的)ではなくA(能動的)にとどまります。ただしこれは「仮説」であり、Chi と Wylie 自身も、見た目の行動と頭の中の関与が一致しない場合などの限界を論じています。
学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」
| 視点 | 内容(小学校学習指導要領解説 総則編より要約) |
|---|---|
| 主体的な学び | 学ぶことに興味や関心をもち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる |
| 対話的な学び | 子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えることなどを通じ、自己の考えを広げ深める |
| 深い学び | 習得・活用・探究の過程で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせ、知識を関連づけて深く理解したり、問題を見いだして解決策を考えたりする |
ねらわれやすいのは、「対話的な学び」の相手が友だちだけではない点です。先生や地域の人、本などを通じた先哲(昔のすぐれた人)との対話も含まれます。解説総則編は、取り組むうえでの留意点として次のような点も挙げています(6点のうち主なもの)。
- これまでの実践を否定し、全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉える必要はない
- 授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の視点で授業改善を進める
- 言語活動、観察・実験、問題解決的な学習など、通常の学習活動の質を向上させることが主眼
- 1回1回の授業ですべてを実現するのではなく、単元や題材など内容や時間のまとまりの中で実現を図る
- 基礎的・基本的な知識及び技能の習得に課題がある場合は、その確実な習得を重視する
教育心理学の考え方とのつながり
アクティブラーニングは、発達・教育心理学で学ぶ古典的な考え方と結びつけて理解できます。
| 考え方 | 人物 | アクティブラーニングとの関係 |
|---|---|---|
| 発見学習 | Jerome S. Bruner | 学習者が自分で原理や法則を見つけ出す。中教審の用語集もアクティブ・ラーニングの例に発見学習を挙げている |
| 発達の最近接領域 | Lev S. Vygotsky | 一人ではできないが、大人の導きやより有能な仲間との協働があればできる領域。「対話的な学び」と結びつけて考えられる |
| 構成主義 | — | 知識は受け取るものではなく学習者が組み立てるもの、という学習観。ICAPの「C(構成的)」と重なる |
よくある誤解
誤解1:話し合いをさせればアクティブラーニングになる。 Bonwell と Eison の定義には「考える(thinking)」が入っており、ICAPも行動の「質」で区別します。学習指導要領解説も、学習活動の質を高めることを主眼としています。
誤解2:「講義を聞くと5%、人に教えると90%覚えている」(ラーニングピラミッド)。 研修資料でよく見かけますが、Kåre LetrudとSigbjørn Hernes(2018)は、ピラミッド型のモデルは160年以上前から形を変えて語られてきたもので、実証研究から生まれたものではないと結論しています。効果を語るときは、次の節のような実際の研究を根拠にしましょう。
実験や観察の方法と結論
アクティブラーニングの効果は、とくに大学の理系科目で数多く検証されてきました。代表的な4つの研究をまとめます。
| 研究 | 対象と方法 | 結論 |
|---|---|---|
| Ruhl, Hughes, & Schloss(1987) | 学部生72人。講義の区切りで2分間の休止を3回入れ、ペアでノートを見直させるクラスと、通常の講義のクラスを比較 | 休止を入れたクラスは、講義内容の自由再生と客観テストの両方で有意に高い成績 |
| Hake(1998) | 物理入門62コース・6,542人。力学の概念テストを授業の前後に行い、平均規格化ゲイン(実際の伸び÷伸びうる最大値)を比較 | 伝統的な講義14コースは0.23、相互作用的関与(Interactive Engagement)の48コースは0.48 |
| Freeman et al.(2014) | 大学の理工系(STEM)の授業で、講義とアクティブラーニングを比べた225研究のメタ分析 | 成績は平均0.47標準偏差(約6%)上昇。不合格率は21.8% vs 33.8%で、講義の学生は約1.5倍落第しやすい |
| Deslauriers et al.(2019) | ハーバード大学の物理学入門の2コース・計149人。アクティブラーニングの回と、わかりやすさを高めた講義の回をクロスオーバー(交差)デザインで比較 | テスト成績はアクティブラーニングが高いのに、「学べた感じ」は講義のほうが高い |
メタ分析の読み方(Freeman et al., 2014)
Scott Freemanらの分析では、効果は分野やクラスの大きさを問わず見られ、50人以下の小さなクラスで最も大きくなりました。出版バイアス(よい結果だけが発表される偏り)では結果を説明できないことも確かめられています。
「学べた感じ」と「実際の学び」のずれ(Deslauriers et al., 2019)
Louis Deslauriersらは、各回の終わりに「どれくらい学べたと感じるか」(feeling of learning)のアンケートと、12問の理解度テストを行いました。実感とテスト成績が逆になったのは、アクティブラーニングに伴う認知的な努力(頭を使うしんどさ)を、学生が「うまく学べていない証拠」と誤って受け取るためだと著者らは考えています。授業評価アンケートの満足度だけで教え方を選ぶと、効果の低い方法を選んでしまうおそれがある、という重要な示唆です。
研究からわかること
- 講義中心の授業より、学生が考えて参加する授業のほうが成績・概念理解・合格率が高くなりやすい
- 大がかりな改革でなくても、短い休止や話し合いを挟むだけで効果がある場合がある
- 学習者の「わかった感じ」は実際の学びの指標として当てにならない(メタ認知の論点)
- 証拠の多くは大学の理工系科目のもの。Prince(2004)がまとめたように、技法ごとの支持にはばらつきがあり、「何でも効く」わけではない
例文
「この授業では、15分ほど講義をするごとにペアで説明し合う時間をとり、アクティブラーニングを取り入れています。」
「グループで発表はしていたものの、内容について深く考えていなかったので、アクティブラーニングとしては不十分でした。」
「新しい学習指導要領では、アクティブ・ラーニングの視点から『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善が求められています。」
疑問
Q: 講義はもう時代遅れで、やめるべきなのですか?
A: いいえ。Bonwell と Eison 自身が、講義の中にアクティブラーニングを組み込む「修正された講義」を提案しています。学習指導要領解説も、児童が考える場面と教師が教える場面をどう組み立てるかが大切だとしています。講義をなくすのではなく、考える時間を授業に組み込むことが大切です。
Q: 「アクティブ・ラーニング」と「主体的・対話的で深い学び」は同じものですか?
A: ほぼ同じ方向を指しますが、使われ方が違います。「アクティブ・ラーニング」は大学教育の改革の中で広まった、能動的な教授・学習法の総称です。学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」という表現が使われ、解説総則編は、これが授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく、授業改善の「視点」であると説明しています。
Q: 黙って一人で考えている学生は、アクティブラーニングをしていないのですか?
A: 必ずしもそうではありません。大事なのは頭の中の能動性です。黙っていても、自分の言葉で要点をまとめたり自分に説明したりしていれば、ICAPでいう「構成的(C)」な学びになりえます。ただ、頭の中は外から見えないため、溝上慎一の定義が強調するように、書く・話すなどで考えを外化すると、本人も先生も理解の状態を確かめやすくなります。
Q: アクティブラーニングの授業は、なぜ「疲れる」「わかった気がしない」と感じられやすいのですか?
A: 自分で考え、説明し、間違いに気づく作業には、聞くだけの講義より多くの認知的な努力が必要だからです。Deslauriers ら(2019)の研究では、アクティブラーニングの回のほうがテスト成績は高いのに、「学べた感じ」は低くなりました。手ごたえの少なさは「学べていない」サインとは限りません。
Q: 「人に教えると90%覚えられる」というラーニングピラミッドは正しいのですか?
A: 数字を裏づける実証研究はありません。Letrud と Hernes(2018)は、ピラミッド型のモデルは160年以上前から形を変えて伝えられてきたもので、実証研究から生まれたものではないと結論しています。人に説明することが学習に役立つ場合はありますが、その根拠はピラミッドの数字ではなく、ICAPなどの実証的な研究に求めましょう。
理解度を確認する問題
問題1. アクティブラーニングの定義とその出典の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
- A. 「書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う、あらゆる能動的な学習」── Bonwell & Eison(1991)
- B. 「学生に何かをさせ、自分のしていることについて考えさせるもの」── Bonwell & Eison(1991)
- C. 「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」── Chi & Wylie(2014)
- D. 「主体的・対話的で深い学び」── 中央教育審議会の質的転換答申(2012)
正解:B Bonwell と Eison は「involves students in doing things and thinking about the things they are doing」と定義しました。doing+thinkingがセットである点が要です。Aは溝上慎一(2014)の定義で、キーワードは「外化」です。Cは中教審の質的転換答申(2012)の用語集の定義で、「学修者」という表記が手がかりになります。Chi と Wylie(2014)は定義ではなく、関与の深さを4つに分けるICAPフレームワークを示しました。Dの「主体的・対話的で深い学び」は、2016年の中教審答申と平成29年告示の学習指導要領で示された授業改善の視点で、2012年の大学向け答申の言葉ではありません。
問題2. Chi と Wylie(2014)のICAPフレームワークで、「構成的(Constructive)」モードに分類される学習活動として、最も適切なものはどれか。
- A. 板書を一字一句まちがえないよう、ていねいにノートに写す
- B. 教科書を読みながら、重要だと思う文に色分けしてマーカーを引く
- C. 読んだ内容について、なぜそうなるのかを自分の言葉で説明してみる
- D. ペアで互いの説明の誤りを指摘し合い、二人で考えを修正していく
正解:C 教材に書かれていない説明や推論を自分で生み出す自己説明は、「構成的(C)」の代表例です。AとBは、ていねいでも教材をそのまま写したり印をつけたりする「操作」なので「能動的(A)」です。「手を動かしている」「工夫して色分けしている」からCと考えるのは典型的なひっかけです。Dは相手とのやりとりで考えを作りかえているので「相互作用的(I)」です。ICAP仮説では、学習成果はP<A<C<Iの順に高まると予測されます。
問題3. アクティブラーニングの効果に関する研究の説明として、最も適切なものはどれか。
- A. Freeman ら(2014)のメタ分析では、効果は大人数のクラスで最も大きく、50人以下の少人数クラスでは効果がみられなかった
- B. Freeman ら(2014)のメタ分析では、伝統的な講義の授業の学生は、アクティブラーニングの授業の学生より約1.5倍落第しやすかった
- C. Deslauriers ら(2019)の研究では、アクティブラーニングの回の学生のほうが、テスト成績も「学べた」という実感も高かった
- D. 「講義は5%、人に教えると90%定着する」というラーニングピラミッドの数値は、統制された実験で確かめられている
正解:B 不合格率はアクティブラーニングで21.8%、伝統的な講義で33.8%で、講義の学生は約1.5倍落第しやすいと報告されました。Aは逆で、効果はクラスの大きさにかかわらず見られ、50人以下の小さなクラスで最も大きかったとされています。Cは半分だけ正しく、テスト成績はアクティブラーニングが高かった一方、学べた実感は講義のほうが高かった点がこの研究の要点です。Dは誤りで、ピラミッドの数値は実証研究にもとづくものではないと指摘されています(Letrud & Hernes, 2018)。
関連キーワード
- 主体的・対話的で深い学び
- 見方・考え方
- ICAPフレームワーク(Interactive・Constructive・Active・Passive)
- 自己説明(Self-Explanation)
- ピア・インストラクション(Peer Instruction)
- ジグソー法(Jigsaw Classroom)
- 問題基盤型学習(Problem-Based Learning:PBL)
- 反転授業(Flipped Classroom)
- 発見学習(Discovery Learning)
- 発達の最近接領域(Zone of Proximal Development)
- メタ認知(Metacognition)
- ラーニングピラミッド(神話)
関連論文
まずこの1本
Freeman, S., Eddy, S. L., McDonough, M., Smith, M. K., Okoroafor, N., Jordt, H., & Wenderoth, M. P.(2014)Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 111(23), 8410–8415.
アクティブラーニングの効果を語るときに最もよく引用される論文の一つです。大学の理工系の授業の225研究をメタ分析し、成績の向上と不合格率の低下を示しました。方法の節で作業上の定義を示し、Bonwell と Eison(1991)も参照しているので、定義と効果を一度に押さえられます。PMCで全文を無料で読めます。試験対策としては、225研究・0.47SD・約1.5倍という数字、小さなクラスほど効果が大きいこと、そしてBonwell & Eison の「doing+thinking」やICAPと組み合わせて「何をすれば能動的か」を説明できるようにしておきましょう。
https://doi.org/10.1073/pnas.1319030111
その他の参考文献
Bonwell, C. C., & Eison, J. A.(1991)Active learning: Creating excitement in the classroom. ASHE-ERIC Higher Education Report No. 1. Washington, DC: The George Washington University, School of Education and Human Development.
概要 大学におけるアクティブラーニングの性質、実証研究、教員の抵抗の理由、実践方法をまとめたモノグラフです。
解説 「doing+thinking」の定義の出典です。講義に休止を挟む「修正された講義」から、ディベートやロールプレイまで紹介しています。
https://eric.ed.gov/?id=ED336049
Chi, M. T. H., & Wylie, R.(2014)”The ICAP framework: Linking cognitive engagement to active learning outcomes.” Educational Psychologist, 49(4), 219–243.
概要 行動から認知的な関与を Interactive・Constructive・Active・Passive の4モードに分け、関与が深いほど学習成果が高まるというICAP仮説を示した論文です。
解説 「活動しているか」ではなく「どんな質の関与か」でアクティブラーニングを考える枠組みとして、教育心理学で広く使われています。
https://doi.org/10.1080/00461520.2014.965823
Deslauriers, L., McCarty, L. S., Miller, K., Callaghan, K., & Kestin, G.(2019)”Measuring actual learning versus feeling of learning in response to being actively engaged in the classroom.” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 116(39), 19251–19257.
概要 物理学の大人数授業で、アクティブラーニングと講義をクロスオーバーデザインで比べ、実際の学びと学べた実感を測った研究です。
解説 成績と実感の「ずれ」を示し、授業評価アンケートの限界や学習者のメタ認知を考えるうえで重要です。
https://doi.org/10.1073/pnas.1821936116
Hake, R. R.(1998)”Interactive-engagement versus traditional methods: A six-thousand-student survey of mechanics test data for introductory physics courses.” American Journal of Physics, 66(1), 64–74.
概要 物理入門62コース・6,542人の概念テストの前後比較から、相互作用的関与の授業と伝統的な授業を比べた調査です。
解説 相互作用的な授業の効果を、6,000人を超える大規模なデータで示した研究として、物理教育の分野でよく引用されます。
https://doi.org/10.1119/1.18809
Crouch, C. H., & Mazur, E.(2001)”Peer Instruction: Ten years of experience and results.” American Journal of Physics, 69(9), 970–977.
概要 ハーバード大学の物理入門授業で1991年に導入したピア・インストラクションの、10年間の実践と成果の報告です。
解説 概念的な推論と量的な問題解決の両方で習熟が高まったと報告しています。
https://doi.org/10.1119/1.1374249
Ruhl, K. L., Hughes, C. A., & Schloss, P. J.(1987)”Using the pause procedure to enhance lecture recall.” Teacher Education and Special Education, 10(1), 14–18.
概要 講義中に2分間の休止を3回入れると、講義内容の自由再生と客観テストの成績が上がるかを検討した研究です。
解説 「講義を少し変えるだけ」でも効果があることを示す古典的な研究です。
https://doi.org/10.1177/088840648701000103
Prince, M.(2004)”Does active learning work? A review of the research.” Journal of Engineering Education, 93(3), 223–231.
概要 アクティブラーニング、協調学習、協同学習、問題基盤型学習について、中核要素ごとに効果の証拠を検討したレビューです。
解説 支持は「幅広いが一様ではない」と結論しており、技法ごとに何が効いているかを見る大切さを教えてくれます。
https://doi.org/10.1002/j.2168-9830.2004.tb00809.x
Letrud, K., & Hernes, S.(2018)”Excavating the origins of the learning pyramid myths.” Cogent Education, 5(1), 1518638.
概要 「ラーニングピラミッド」と呼ばれる一連のモデルの初期の歴史を、デジタル図書館の資料から調べた論文です。
解説 ピラミッド型のモデルは160年以上前から登場しており、実証研究から生まれたものではないと結論しています。
https://doi.org/10.1080/2331186X.2018.1518638
中央教育審議会(2012)「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」(平成24年8月28日)
概要 大学の授業を、知識の伝達中心から学生の能動的な学修へ転換するよう求めた答申です。
解説 付属の用語集に、日本でよく引用されるアクティブ・ラーニングの定義が載っています。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm
文部科学省(2017)『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編』
概要 平成29年告示の小学校学習指導要領の総則について、改訂の趣旨や内容を解説した公式資料です。
解説 3つの視点の説明と、授業改善の6つの留意点が書かれています。文言そのものが問われやすい資料です。
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_001.pdf
溝上慎一(2014)『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』東信堂
概要 日本の高等教育におけるアクティブラーニングを、「教える」中心から「学ぶ」中心への教授学習パラダイムの転換として整理した代表的な著作です。
解説 本文の定義比較表の溝上の定義(「認知プロセスの外化」を含む)は、溝上本人の講演資料(下記)の文言にもとづいて記載しています。
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB16801032
溝上慎一(2014)「アクティブラーニングの観点から」島根大学FD研究会 基調講演資料(2014年2月12日)
概要 溝上が、アクティブラーニングの「旧定義」と「最近の定義」を並べて示した講演スライドです。
解説 「一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習」「書く・話す・発表する等の活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う」という定義の文言を、本人の資料で確認できます。
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/flit/seminar/data/20140212_mizokami.pdf
覚え方
①定義:「やって(doing)、考えて(thinking)、はじめてアクティブ」。Bonwell と Eison(1991)の定義です。手だけ動いて頭が止まっていたら、アクティブラーニングではありません。
②出典の見分け:「外化は溝上、学修は中教審、doingはボンウェル」。定義の文中のキーワードで出典を見分けましょう。
③ICAP:「アイ(I)キャップ(CAP)は前から強い」。I(対話)>C(生み出す)>A(操作する)>P(受け取る)の順に学習効果が高いと予測されます。マーカー引きはA、自分の言葉での説明はCです。
④数字:「フリーマンの225、講義はいち・ご倍落ちる」。225研究のメタ分析で、講義の学生は約1.5倍落第しやすい、です。
| 覚えること | 数字・キーワード |
|---|---|
| 言葉を広めた文献 | Bonwell & Eison(1991):doing + thinking |
| 日本の大学での公的な定義 | 中教審質的転換答申(2012年)の用語集 |
| 日本の研究者の定義 | 溝上慎一(2014):認知プロセスの外化 |
| 学習指導要領での表現 | 主体的・対話的で深い学び(平成29年告示、方法そのものではなく授業改善の「視点」) |
| 関与の深さの枠組み | ICAP(Chi & Wylie, 2014):I>C>A>P |
| 代表的なメタ分析 | Freeman et al.(2014):225研究、0.47SD、不合格率21.8% vs 33.8% |
| 技法と人物 | ジグソー法=Aronson、ピア・インストラクション=Mazur |
| よくある誤解 | ラーニングピラミッドの数字には実証的根拠がない |


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