スポンサーリンク

アウトリーチ(Outreach)

健康・福祉

アウトリーチ(Outreach)とは、相談に来るのを待つのではなく、支援者のほうから自宅や地域など本人の生活の場へ出向いて、支援を届け、必要な医療や福祉につなぐことです。

公認心理師試験の出題基準では「アウトリーチ(多職種による訪問支援)」と書かれています。「待つ支援」から「届ける支援」へ、と覚えておきましょう。

簡単な説明

クラスに、ずっと学校を休んでいる友達がいるとします。先生が「困ったら職員室に相談においで」と言っても、その友達は家から出ること自体がつらいので、相談に来られません。そこで先生が家まで会いに行き、玄関先で少しだけ話をする。これがアウトリーチのイメージです。

病院や相談室は、ふつう「来てくれた人」しか支援できません。ところが、心の不調が重い人、外出がむずかしいお年寄り、赤ちゃんの世話で手いっぱいの親、ひきこもりの状態にある人などは、「自分から相談に行く」ことがとても大きなハードルです。「助けて」と言えない人や、自分に支援が必要だと気づいていない人もいます。つまり、いちばん支援が必要な人ほど、相談室には来られないのです。この「すき間」を埋めるのがアウトリーチです。

ただし、アウトリーチは「家に押しかけること」ではありません。いきなり問題を解決しようとせず、まず顔なじみになり、本人のペースを大切にしながら、少しずつ必要な支援につないでいきます。流れは次の3ステップでとらえるとわかりやすいです。

ステップすること身近なたとえ
①見つける家族や近所、関係機関の声から、困っている人に気づく「最近あの子見ないね」と気づく
②出会う訪問や手紙・電話で、無理のない形で接点をつくる玄関先で「元気?」と声をかける
③つなぐ医療・福祉・学校などの支援へ橋渡しし、チームで支え続ける保健室や先生、家族と一緒に作戦を考える

由来

「出向いて支援する」という考え方は、ソーシャルワークや保健師の家庭訪問など、さまざまな分野で古くから実践されてきました。そのため、アウトリーチという言葉そのものを一人の発明者に帰することはできません。

心理学・精神医学で特に重要なのは、重い精神障害のある人への地域支援モデルACT(Assertive Community Treatment:包括型地域生活支援プログラム)です。1970年代の初め、アメリカ・ウィスコンシン州マディソンのメンドータ州立病院(現メンドータ精神保健研究所)で、Leonard I. Stein、Mary Ann Test、Arnold Marxらが、退院と再入院をくり返す「回転ドア現象」に取り組みました。彼らは、病院の中で退院後の生活を練習させても地域での暮らしにはあまり役立たないと考え、治療の舞台を病院から地域へ移しました。

このプログラムは、当時は「Training in Living Program」と呼ばれ、論文では「Training in Community Living(地域生活訓練)」として報告されました(Test & Stein, 1976)。のちにPACT(Program of Assertive Community Treatment)とも呼ばれ、現在のACTになります。SteinとTestは1980年に、その概念モデルと比較研究の結果を Archives of General Psychiatry に発表しました(Stein & Test, 1980)。予約を守れない人にも支援者から積極的に出向く「アサーティブ(積極的な)アウトリーチ」が中心にあり、現代のアウトリーチ型支援の代表モデルになりました。

年主なできごと
1970年代初め米国マディソンでStein・Test・Marxらが地域での治療プログラム(のちのACT)を開始
1976年Test & Steinが「Training in Community Living」の追跡報告を発表
1980年Stein & Testが概念モデルと比較研究の結果を発表
2003年(平成15年)5月日本初のACT臨床チーム「ACT-J」が国立精神・神経センター国府台病院を拠点に臨床活動を開始
2011年度(平成23年度)厚生労働省「精神障害者アウトリーチ推進事業」(多職種チームによる訪問のモデル事業)開始
2013年度(平成25年度)〜ひきこもりサポーター(ピアサポーターを含む)の養成・派遣事業。世帯への訪問支援なども担う
2014年度(平成26年度)診療報酬に「精神科重症患者早期集中支援管理料」が新設され、24時間体制の多職種チームによる在宅医療が医療保険で評価される
2017年(平成29年)国の検討会報告書が「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を理念として打ち出す
2018年度(平成30年度)診療報酬改定で精神科重症患者早期集中支援管理料が廃止され、継続的な訪問支援も評価する「精神科在宅患者支援管理料」が新設
2019年(令和元年)9月末認知症初期集中支援チームが全市町村に設置
2025年(令和7年)1月厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」を自治体に通知

具体的な説明

なぜ必要か:援助要請の逆説

支援を自分から求める行動を、心理学では援助要請(help-seeking)といいます。援助要請は、症状の重さ、「相談するのは恥ずかしい」という気持ちやスティグマ(偏見)、移動手段や経済的な事情、病気についての自覚(病識)の乏しさなどによって妨げられます。その結果、支援の必要性が高い人ほど、自分からは来所しにくいという逆説が生まれます。アウトリーチは、来所型(待ちの)支援のこの限界を補う方法です。

来所型支援とアウトリーチ型支援の比較

観点来所型(待ちの支援)アウトリーチ型(届ける支援)
支援の場所相談室・病院・相談機関自宅、学校、職場、避難所、地域など生活の場
始まり方本人が申し込む家族・関係機関からの相談、支援者からの働きかけ
得られる情報面接室での語りが中心住まい・家族・近所との関係など生活全体を直接見られる
担い手個々の専門職が中心多職種チームが基本
弱点・注意点来られない人に届かない生活空間に入るため、同意・プライバシー・境界・訪問者の安全への配慮が特に必要

代表モデル:ACTの構成要素

ACTの開発と研究をふり返ったGary R. BondとRobert E. Drakeの論文(Bond & Drake, 2015)は、ACTの中心的な要素を次のように整理しています。

要素内容
生活の場での支援(in vivo)病院での訓練ではなく、実際に暮らす地域で評価・練習・支援を行う
積極的なアウトリーチクリニックに来られない人にも、支援者から出向いて関わる
包括的な支援症状や服薬だけでなく、住まい、お金、買い物、交通機関の利用など生活全般を支える
多職種チーム精神保健の専門職が多職種チームを組み、頻繁なミーティングで計画を共有する
直接サービス他機関へ紹介して終わり(仲介)ではなく、チーム自身が必要な支援の多くを直接提供する
少ない担当人数常勤スタッフ1人あたり利用者約10人
24時間の対応危機には24時間・週7日すばやく対応する

ACTはもともと「期限のない支援」を原則としていましたが、Bond & Drake(2015)によると、この原則には根拠がなく、現在ではほぼ廃止され、通常の地域支援へ移る「卒業」を勧める方針に置き換えられています。また、モデルにどれだけ忠実かを測るフィデリティ尺度として、DACTS(Dartmouth ACT Fidelity Scale)が広く使われています。

混同しやすい支援モデルの比較

モデル担当人数のめやす特徴
仲介型ケースマネジメント―担当者が必要なサービスを探し、他機関へ紹介・調整する。直接の支援は少ない
集中的ケースマネジメント(ICM)20人未満担当人数を少なくし、高い密度で関わる地域ケア。ACTとケースマネジメントから発展した
ACT約10人多職種チームが24時間体制で、生活の場で包括的な支援を直接提供する

ICMの「20人未満」はコクラン・レビュー(Dieterich et al., 2017)の定義です。試験では「仲介中心」「1人で多数を担当」といった説明がACTの選択肢にまぎれ込むことがあるので、ACT=多職種チーム・少人数担当・直接サービスをセットで押さえましょう。

日本のおもなアウトリーチ

分野取り組み押さえるポイント
精神保健ACT/精神障害者アウトリーチ推進事業(2011年度に開始したモデル事業)受療中断者、長期入院の後に退院し病状が不安定な人、未受診者、ひきこもり状態の人などに、精神科医・看護師・精神保健福祉士・作業療法士・臨床心理技術者・相談支援専門員・ピアサポーターなどの多職種チームが訪問
精神科医療(診療報酬)精神科在宅患者支援管理料(2018年度〜。令和8年度改定の資料にも引き続き登場)精神科への通院が困難な人に、訪問診療・訪問看護で継続的に支援する。重症の人への集中的な支援では、精神科医・保健師または看護師・精神保健福祉士・作業療法士の専任チームを組む(2018年度改定時の要件)
高齢者・認知症認知症初期集中支援チーム医療と介護の専門職+認知症サポート医が、40歳以上・在宅の、認知症が疑われる人や認知症の人とその家族を訪問し、おおむね6か月集中的に支援
子育て・児童福祉乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)児童福祉法に定める市町村の事業。原則として生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、不安や悩みを聴き、情報を伝え、支援が必要な家庭を把握してサービスにつなぐ
子育て・児童福祉養育支援訪問事業全戸訪問などで把握した、養育支援が特に必要な家庭を対象に訪問する(全戸訪問事業との違いに注意)
ひきこもりひきこもりサポーター派遣、生活困窮者自立支援制度での訪問支援など本人や家族のいる世帯を訪問し、話を聴き、専門機関へつなぐ。2025年のハンドブックでも、アウトリーチ型(訪問型)の活動の重要性と侵襲性が支援のポイントとして挙げられている
災害DPAT(災害派遣精神医療チーム)災害の後に被災地域に入り、精神科医療と精神保健活動を支援する

認知症初期集中支援チームの「初期」は、病気のごく初期という意味よりも、医療や介護にまだつながっていない(または中断している)段階で最初に関わるという意味合いが強いことに注意しましょう。対象には、サービスを受けていても行動・心理症状(BPSD)が強く対応に困っている人も含まれます。

アウトリーチの「侵襲性」と倫理

訪問は、相手の生活空間に「入っていく」支援です。善意であっても、本人にとっては負担や脅威になりえます。これをアウトリーチの侵襲性といいます。だからこそ、次の点が大切になります。

  • 関係づくりが先:最初から問題解決を急がず、本人が受け入れられる形で接点をつくる(会えなければ家族支援を続ける、手紙や電話から始めるなど)
  • 本人の意思の尊重:同意と生活のペースを大切にし、支援の主体は本人であると考える
  • プライバシーへの配慮:近所の目や、同居家族への情報の扱いに注意する
  • チームと連携:一人で抱えず、多職種・関係機関と情報を共有する。公認心理師は、主治の医師がいる場合はその指示を受ける(公認心理師法第42条第2項)
  • 訪問者の安全:複数での訪問や事前の情報収集など、安全面の配慮も欠かせない

試験で問われやすいポイント

  • 出題基準では、大項目15「心理に関する支援」の中項目「訪問による支援や地域支援の意義」に入っている。同じ中項目には、緩和ケア・終末期ケア(グリーフケアを含む)、自殺予防、災害時における支援、地域包括ケアシステム、コミュニティ・アプローチ、コンサルテーションが並ぶ(令和9年版)
  • 「援助要請」は別の中項目(15-(3))にあるが、アウトリーチの必要性を説明するときにセットで問われやすい
  • ACT:多職種チーム、約10人、24時間、直接サービス、入院をくり返す人に効果的、期限なし→卒業へ
  • 数字:認知症初期集中支援チーム「40歳以上・おおむね6か月」、乳児家庭全戸訪問事業「生後4か月まで・全戸」

実験や観察の方法と結論

アウトリーチの効果は、主にACTや集中的ケースマネジメント(ICM)を対象としたランダム化比較試験(RCT)と、そのメタ分析で検討されてきました。

研究1:ACTの原点となった比較研究(Stein & Test, 1980)

慢性的な精神障害のある患者を対象に、地域での包括的な治療プログラムと、従来の治療(短期入院と退院後のアフターケア)を比較しました。地域プログラムを14か月受けた群では、入院の必要が大きく減り、地域で暮らし続ける期間と地域での適応が向上しました。ところが特別なプログラムを終えると、多くの改善が失われ、入院が急増しました。著者らは、地域での支援は包括的で、継続的でなければならないと結論づけています。

研究2:日本でのRCT(Ito et al., 2011)

項目内容
方法ランダム化比較試験。ACT-J群59人と、通常の病院中心のリハビリテーション群59人を比較
期間12か月の追跡
指標入院日数、精神症状、社会機能、生活の質、利用者満足度
結果ACT群は12か月時点の抑うつ得点(BPRS)が低く、満足度が高かった。入院日数はt検定では有意に少なかったが、共分散分析(ANCOVA)では有意差がなかった
結論入院日数の減少、抑うつ症状の軽減、満足度の向上という点で良い影響があったと著者らは結論

入院日数の結果は分析方法によって有意かどうかが分かれています。「日本でもACTで入院がはっきり減った」と言い切らず、どの分析で有意だったかを確かめる姿勢が大切です。

研究3:誰に効きやすいか(Burns et al., 2007/Dieterich et al., 2017)

Tom Burnsらは、集中的ケースマネジメントのRCTを集めてメタ回帰分析を行い、もともと入院の多い対象・地域ほど入院日数を減らす効果が大きく、入院が少ない地域では効果が小さいことを示しました。また、スタッフ数の細かな基準よりも、ACTに沿ったチームの組織のあり方のほうが重要だと述べています。

Marina Dieterichらのコクラン・レビュー(40件のRCT、7,524人)では、集中的ケースマネジメントは通常のケアに比べて入院日数を月あたり約0.86日とわずかに減らし、支援からの脱落も減らしました。ただし、これらの結果のエビデンスの質は「低い」と評価されています。

研究からわかること根拠
生活の場での包括的な支援は、入院を減らし、支援を続けやすくするStein & Test(1980)、Dieterich et al.(2017)
支援を急にやめると効果が失われやすい → 継続性が大切Stein & Test(1980)
効果は対象者や地域で変わる → 入院の多い人ほど効果が大きいBurns et al.(2007)、Bond & Drake(2015)

例文

「通院が途切れてしまった利用者に対し、多職種チームがアウトリーチを行い、自宅での生活を支えながら再び医療につなげました。」

「家族から相談を受けた認知症初期集中支援チームが自宅を訪問し、アセスメントを行ったうえで、かかりつけ医やケアマネジャーと連携しました。」

「本人に会えない時期は家族への支援を続け、手紙を通じて少しずつ関係をつくってから、アウトリーチによる訪問を始めました。」

疑問

Q: アウトリーチと「訪問カウンセリング」は同じものですか?

A: 重なる部分はありますが、同じではありません。訪問カウンセリングは面接の場所を自宅などに移したものです。アウトリーチは、まだ支援につながっていない人に支援者から働きかけ、生活全体を見ながら医療・福祉などへつなぐことまでを含む考え方です。出題基準でも「多職種による訪問支援」とされているように、チームでの支援が基本です。

Q: 本人が訪問を嫌がったら、どうするのですか?

A: アウトリーチは、本人の意思を無視して押しかけることではありません。まずは家族の相談に乗り続ける、手紙や電話で少しずつ接点をつくるなど、関係づくりを優先します。命にかかわる危険があるときは別の対応が必要ですが、基本は本人の同意と生活のペースを尊重しながら、チームで方針を考えることです。

Q: 公認心理師がアウトリーチをするとき、医師との関係で注意することはありますか?

A: はい。公認心理師法第42条第2項により、支援を要する人に、その支援にかかわる主治の医師がいるときは、その指示を受けなければなりません。また、同条第1項は、保健医療・福祉・教育などの関係者との連携を求めています。訪問先で得た情報も、チームで適切に共有することが大切です。

Q: 乳児家庭全戸訪問事業と養育支援訪問事業は、どう違うのですか?

A: 乳児家庭全戸訪問事業は、原則として生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問する事業です。問題のある家庭を探すためではなく、子育ての孤立を防ぎ、だれでも気軽に支援につながれるようにする「入口」の役割があります。養育支援訪問事業は、その訪問などで把握した、養育の支援が特に必要な家庭を対象にする事業です。「全員」と「特に必要な家庭」の違いで覚えましょう。

Q: ACTは、どんな地域・どんな人にも同じように効果がありますか?

A: いいえ。メタ回帰分析(Burns et al., 2007)では、入院の多い対象者・地域ほど入院を減らす効果が大きく、もともと入院が少ない地域では効果が小さいことが示されました。Bond & Drake(2015)も、ACTは入院をくり返す人には効果的で費用対効果もよい一方、入院の少ない人には効果が小さく費用対効果もよくないと述べ、日本などではACTが今も魅力的な選択肢であるとしています。

理解度を確認する問題

問題1. 40代の男性Aは統合失調症で入退院をくり返しており、退院後は通院が途切れがちである。一人暮らしで、主治医がいる。同居していない家族から「最近また薬を飲んでいないようだ。本人は病院に行きたがらない」と相談があった。Aへの支援として、最も適切なものはどれか。

  • A. 本人の自己決定を尊重し、本人から相談の連絡があるまで待つ
  • B. 家族に、次の外来に必ず本人を連れてくるよう伝え、来院しなければ支援を終了する
  • C. 主治医や多職種チームと情報を共有し、本人の同意を得ながら自宅への訪問を含めた支援を検討する
  • D. 公認心理師が自分の判断で単独で自宅を訪問し、すぐに認知行動療法を始める

正解:C 入院をくり返し、受診が途切れた人は、アウトリーチ(多職種による訪問支援)が最も役立つ典型的な対象です。主治医や多職種と連携し、本人の同意と関係づくりを大切にするCが適切です。Aは「自己決定の尊重」という言葉がもっともらしいのですが、援助要請が低い人ほど自分からは連絡してこないため、待つだけでは支援が届きません。Bは来所を条件にしているので、来所型支援の限界そのものです。Dは2つの点で不適切です。主治医がいるので、公認心理師法第42条第2項により主治の医師の指示を受ける必要があります。また、関係づくりの前に治療を急いでおり、アウトリーチの侵襲性への配慮が欠けています。


問題2. ACT(包括型地域生活支援プログラム)の説明として、最も不適切なものはどれか。

  • A. 多職種チームが、常勤スタッフ1人あたり利用者約10人という少ない担当人数で支援する
  • B. 住まいやお金の管理、買い物など、生活全般を生活の場で直接支援する
  • C. 入院をくり返す人に対して効果が大きく、費用対効果もよいとされる
  • D. 期限のない支援が原則であり、現在も利用者が通常の地域支援へ「卒業」することは想定されていない

正解:D ACTはもともと期限のない支援を原則としていましたが、Bond & Drake(2015)によると、この原則は根拠がなく、現在はほぼ廃止されて「卒業」を勧める方針に置き換えられています。「もともとの原則」と「現在の方針」を混ぜたひっかけに注意しましょう。Aは正しく、少人数担当はACTの代表的な特徴です(集中的ケースマネジメントは20人未満)。Bも正しく、ACTは他機関へ紹介するだけの仲介型ではなく、in vivo(生活の場)で直接サービスを提供します。Cも正しく、入院が少ない人には効果が小さいという点とセットで覚えておきましょう。


問題3. 日本の訪問型の支援に関する説明として、最も適切なものはどれか。

  • A. 認知症初期集中支援チームの対象は65歳以上の人に限られ、支援期間はおおむね1年である
  • B. 乳児家庭全戸訪問事業は、原則として生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問する事業である
  • C. 乳児家庭全戸訪問事業は、虐待のリスクが高いと判断された家庭だけを選んで訪問する事業である
  • D. 認知症初期集中支援チームは、すでに医療と介護のサービスを十分に受けている人を主な対象とする

正解:B 乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)は、児童福祉法に定める市町村の事業で、原則として生後4か月までの乳児のいるすべての家庭が対象です。Aは2点が誤りで、対象は40歳以上(若年性認知症が疑われる人も含む)、支援期間はおおむね6か月です。Cは誤りで、対象を絞らず「全戸」を訪問するのがこの事業の特徴です。養育の支援が特に必要な家庭を対象とするのは養育支援訪問事業で、この2つを入れかえるひっかけはよく見られます。Dは誤りで、主な対象は医療・介護サービスを受けていない人や中断している人です(サービスを受けていても、行動・心理症状が強く対応に困っている人は対象になります)。

関連キーワード

  • ACT(Assertive Community Treatment:包括型地域生活支援プログラム)
  • 集中的ケースマネジメント(Intensive Case Management:ICM)
  • ケースマネジメント(Case Management)
  • 援助要請(Help-seeking)
  • 多職種連携
  • コミュニティ・アプローチ
  • コンサルテーション(Consultation)
  • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステム
  • 認知症初期集中支援チーム
  • 乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)/養育支援訪問事業
  • ひきこもり
  • DPAT(災害派遣精神医療チーム)
  • ピアサポート

関連論文

まずこの1本

Bond, G. R., & Drake, R. E.(2015)The critical ingredients of assertive community treatment. World Psychiatry, 14(2), 240–242.

ACTの誕生から、効果の研究、フィデリティ尺度、時代に合わせた変化までを3ページで見わたせる短い論文で、PMCで全文を無料で読めます。生活の場での支援(in vivo)、積極的なアウトリーチ、包括的な支援、多職種チーム、直接サービス、スタッフ1人あたり約10人、24時間・週7日の対応という「ACTの中身」が一度に確認できます。試験対策としては、ACTの構成要素、入院をくり返す人ほど効果的で費用対効果もよいという知見、「期限のない支援」から「卒業」への変化の3点を押さえておきましょう。

https://doi.org/10.1002/wps.20234

その他の参考文献

Stein, L. I., & Test, M. A.(1980)”Alternative to mental hospital treatment: I. Conceptual model, treatment program, and clinical evaluation.” Archives of General Psychiatry, 37(4), 392–397.

概要 慢性的な精神障害のある人のための地域治療プログラムの概念モデルを示し、従来の治療と比較した研究です。

解説 ACTの原点となった古典です。地域プログラムで入院が大きく減った一方、プログラム終了後に改善が失われたことから、「包括的で継続的な地域支援」の必要性を示しました。同じ号には、費用便益分析(II)と社会的コスト(III)を検討した続編も掲載されています。

https://doi.org/10.1001/archpsyc.1980.01780170034003

Ito, J., Oshima, I., Nishio, M., Sono, T., Suzuki, Y., Horiuchi, K., et al.(2011)”The effect of Assertive Community Treatment in Japan.” Acta Psychiatrica Scandinavica, 123(5), 398–401.

概要 日本のACT(ACT-J)の効果を、病院中心のリハビリテーションと比べたランダム化比較試験です(各群59人、12か月追跡)。

解説 抑うつ症状の軽減と満足度の向上が示されました。入院日数は分析方法によって結果が分かれており、研究結果を読むときに「どの分析で有意だったか」を確かめる大切さもわかります。

https://doi.org/10.1111/j.1600-0447.2010.01636.x

Burns, T., Catty, J., Dash, M., Roberts, C., Lockwood, A., & Marshall, M.(2007)”Use of intensive case management to reduce time in hospital in people with severe mental illness: Systematic review and meta-regression.” BMJ, 335(7615), 336.

概要 集中的ケースマネジメントのRCT(29件のデータ)をメタ回帰分析し、入院を減らす効果がなぜ研究ごとに違うのかを検討しました。

解説 入院の多い対象・地域ほど効果が大きく、スタッフ数の細かな基準よりもACTに沿ったチームの組織のあり方が大切だと示しました。「アウトリーチはいつでも万能」ではないことを理解する手がかりです。

https://doi.org/10.1136/bmj.39251.599259.55

Dieterich, M., Irving, C. B., Bergman, H., Khokhar, M. A., Park, B., & Marshall, M.(2017)”Intensive case management for severe mental illness.” Cochrane Database of Systematic Reviews, (1), CD007906.

概要 重い精神障害のある人への集中的ケースマネジメント(担当20人未満)を、40件のRCT(7,524人)で検討したシステマティックレビューです。

解説 通常のケアと比べて入院日数をわずかに減らし、支援からの脱落を減らすことが示されました。ACTモデルへの忠実度や、その地域の入院の多さが効果に影響するかも検討しています。エビデンスの質は「非常に低い〜中程度」とされており、結果の読み方には注意が必要です。

https://doi.org/10.1002/14651858.CD007906.pub3

Teague, G. B., Bond, G. R., & Drake, R. E.(1998)”Program fidelity in assertive community treatment: Development and use of a measure.” American Journal of Orthopsychiatry, 68(2), 216–232.

概要 プログラムがACTのモデルにどれだけ忠実かを測る尺度(DACTS)を開発し、50のプログラムに適用した研究です。

解説 「ACTと名乗っていても中身が違う」という問題に対し、ACTの要素を具体的な基準で評価できるようにしました。日本のACT-Jでも、フィデリティ尺度による評価が行われています。

https://doi.org/10.1037/h0080331

一般財団法人公認心理師試験研修センター「令和9年版 公認心理師試験出題基準・ブループリント」

概要 公認心理師試験の出題範囲と、各項目の出題割合を示した公式資料です。

解説 大項目15の中項目「訪問による支援や地域支援の意義」に、アウトリーチ(多職種による訪問支援)が挙げられています。受験前には最新版を確認してください。

https://www.jccpp.or.jp/files/items/104/File/blue_print_2027.pdf

厚生労働省「認知症初期集中支援チーム」(資料)

概要 チームの目的、メンバー、対象者、設置状況をまとめた国の資料です。

解説 「複数の専門職が訪問」「おおむね6か月」「40歳以上・在宅」「医療・介護につながっていない人が中心」という試験に出やすいポイントが1枚で確認できます。

https://www.mhlw.go.jp/content/001061147.pdf

こども家庭庁「乳児家庭全戸訪問事業ガイドライン」

概要 乳児家庭全戸訪問事業の目的、対象、訪問の時期、訪問者、実施内容を示した国のガイドラインです。

解説 「すべての乳児のいる家庭を訪問し、子育ての孤立化を防ぐ」という目的と、「生後4か月を迎えるまでに1回訪問することが原則」という時期が確認できます。養育支援訪問事業のガイドラインと読み比べると、2つの違いがはっきりします。

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fdf4848a-9194-4b7c-b228-1b7ed4847d58/75c0cf1f/20230401_policies_jidougyakutai_hourei-tsuuchi_100.pdf

厚生労働省 社会・援護局地域福祉課「ひきこもり支援施策について」(令和7年度保健師中央会議 行政説明資料)

概要 ひきこもり支援の歴史、国の支援施策、2025年作成の「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」の要点をまとめた資料です。

解説 ハンドブックの「50のポイント」に、家族支援を続けることや、アウトリーチ型(訪問型)の活動の重要性と侵襲性が挙げられています。「訪問は大切、でも押しかけにならないように」というアウトリーチの両面を理解するのに役立ちます。

https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/001536782.pdf

覚え方

①意味:「アウト(外へ)+リーチ(手を伸ばす)」。面接室の外へ、支援の手を伸ばすイメージです。

②合言葉:「待つより、届ける」。「来られない人ほど支援が必要」という援助要請の逆説とセットで覚えましょう。流れは「見つける・出会う・つなぐ」です。

③ACT:「チームで、町で、まるごと、24時間。担当は10(テン)人」。多職種チーム・生活の場・包括的・24時間・約10人です。ICMは「20人未満」と並べて覚えます。

④数字:「認知症は40(しじゅう)から6か月、赤ちゃんは4か月まで全部の家」。

覚えること数字・キーワード
出題基準での表現アウトリーチ(多職種による訪問支援)
ACTの生みの親Stein & Test(米国マディソン、1970年代)
ACTの担当人数スタッフ1人あたり約10人(ICMは20人未満)
ACTの今期限のない支援 → 卒業へ
日本初のACTACT-J(2003年、国府台)
認知症初期集中支援チーム40歳以上・在宅、おおむね6か月
乳児家庭全戸訪問事業生後4か月までの乳児のいる全家庭(特に必要な家庭は養育支援訪問事業)
↓↓よろしければクリックをお願いいたします
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心理学へ 心理学ランキング
健康・福祉
スポンサーリンク
スポンサーリンク
hosomeganeをフォローする
心理学用語の壁

コメント

タイトルとURLをコピーしました