スポンサーリンク

アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)

健康・福祉

アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)とは、もしものときに備えて、自分が大切にしていることや望む医療・ケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。厚生労働省は2018年に、ACPの愛称を「人生会議」と決めました。

いちばんのポイントは、「書類を1枚書いて終わり」ではなく、気持ちの変化に合わせて何度も話し合う「プロセス」だということです。

簡単な説明

おばあちゃんが急に倒れて入院し、意識がもどらないまま、お医者さんから「口から食べられないので、おなかに管を入れて栄養をとる方法があります。どうしますか?」と聞かれた場面を想像してください。家族は「おばあちゃんならどうしてほしいだろう」と悩みますが、本人に聞くことはもうできません。

もし元気なうちに、おばあちゃんが「できれば家で過ごしたい」「つらい治療より、孫の顔を見ながら穏やかに過ごしたい」と話していたら、家族はその言葉を手がかりに決められます。このように、「何を大切にして生きたいか」を、もしものときの前に話し合っておくことがACP、つまり「人生会議」です。

修学旅行の班行動にたとえると、わかりやすいかもしれません。行き先を先生に書いて出す「計画表」が事前指示書だとすると、ACPは「みんなで何を見たいか話し合い、雨が降ったら予定を変え、そのつど先生にも伝える」ことに近いものです。計画表そのものより、話し合いと見直しが大事なのです。

厚生労働省のリーフレットは、話し合いの進め方の例として次の流れを示しています。

  1. あなたが大切にしていることは何ですか?
  2. あなたが信頼できる人は誰ですか?
  3. 信頼できる人や医療・ケアチームと話し合いましたか?
  4. 話し合いの結果を大切な人たちに伝えて共有しましたか?

同じリーフレットには「知りたくない、考えたくない方への十分な配慮が必要」とも書かれています。人生会議は無理にさせるものではなく、本人が主体となって進めるものです。

由来

ACPは一人の心理学者が考えた理論ではなく、英語圏の医療現場で「事前指示(advance directive)」の限界を乗り越えようとする中で育ってきた考え方です。

出発点とされるのが、米国の弁護士Luis Kutnerが1969年にIndiana Law Journalで提案したリビング・ウィル(living will)です。意思を伝えられなくなったときに備えて、治療についての希望を書面に残しておくというアイデアでした。米国では1990年に患者の自己決定権法(Patient Self-Determination Act:PSDA)が成立し(1991年12月施行)、メディケア・メディケイドに参加する病院などは、事前指示を作る権利を患者に書面で知らせることなどを義務づけられました。

ところが、書面だけでは十分に機能しないことがわかってきます。1995年にJAMAに発表された大規模研究SUPPORTでは、重い病気で入院した成人9,105人を調べたところ、前半の観察期では心肺蘇生を望まない患者の意向を医師が知っていたのは47%にすぎず、後半の比較試験で訓練を受けた看護師が話し合いを促しても改善しませんでした。こうした反省から、「書類」よりも本人・家族・医療者の「対話のプロセス」を重視するACPへと考え方が移っていきました。2010年にはオーストラリアのKaren M. Deteringらが、ACPの効果をランダム化比較試験で示しています(後述)。

日本では、厚生労働省(Ministry of Health, Labour and Welfare:MHLW)のガイドラインが中心的な役割を果たしてきました。2006年(平成18年)9月に「終末期医療に関するガイドライン(たたき台)」が公表され、同年12月に設置された検討会での議論を経て、2007年に最初のガイドラインがつくられました。

年主なできごと
1969年Kutnerがリビング・ウィルを提案
1990年米国で患者の自己決定権法(PSDA)成立(1991年12月施行)
1995年SUPPORT研究。話し合いの不足と、介入しても改善しなかったことを報告
2007年(平成19年)5月厚生労働省「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」策定
2010年DeteringらがACPのランダム化比較試験を発表
2015年(平成27年)3月名称を「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」に変更
2017年Rietjensら(欧州緩和ケア学会)、Sudoreらが、それぞれ専門家の合意によるACPの定義を発表
2018年(平成30年)3月改訂して「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に。ACPの考え方を取り入れる(現行版)
2018年(平成30年)11月30日愛称「人生会議」を発表(応募1,073件から選定)。11月30日を「人生会議の日」に
2024年(令和6年)診療報酬改定で、「意思決定支援に関する指針」の作成を求める対象を、入院料を算定する医療機関全般などに拡大

「人生会議の日」が11月30日なのは、「いい(11)みとり(30)・いい(11)みとられ(30)」の語呂合わせです。2026年10月時点で厚生労働省のウェブサイトに掲載されている最新のガイドラインは、2018年(平成30年)3月の改訂版です。

具体的な説明

ACPの定義:3つの共通点

ACPの定義は国や団体によって表現が少しずつ違いますが、共通点は3つです。①本人の価値観・目標・希望が中心、②家族等や医療・ケアチームと共有する、③繰り返し見直すプロセスである、の3点をおさえましょう。

出典定義の要点
厚生労働省(人生会議)もしものときのために、望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組
Rietjens et al.(2017)将来の医療とケアの目標と希望を本人が定め、家族や医療者と話し合い、必要に応じて記録し、見直すことを可能にするもの(専門家109人のデルファイ法による国際合意)
Sudore et al.(2017)あらゆる年齢・健康状態の成人が、価値観・人生の目標・将来の医療への希望を理解し共有することを支えるプロセス
日本老年医学会(2019)将来の医療・ケアについて、本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセス

Sudoreらの定義にあるとおり、ACPは高齢者や重い病気の人だけのものではありません。厚生労働省のリーフレットも「誰でも、いつでも、命に関わる大きな病気やケガをする可能性があります」と呼びかけています。

混同しやすい用語との違い

試験でいちばんねらわれやすいのが、似た用語との区別です。ACPは事前指示などを含むこともある、より広いプロセスだと整理しましょう。

用語何かACPとの関係
ACP価値観や希望を、家族等・医療ケアチームと繰り返し話し合い共有するプロセス全体の枠組み
事前指示(advance directive)判断できなくなったときに備えて、受けたい・受けたくない医療をあらかじめ示しておくことACPの結果として作られることがある
リビング・ウィル延命治療などについての希望を書いた文書事前指示の一種
代理意思決定者の指定自分で決められなくなったとき、意思を推定してくれる人を決めておくことACPの重要な要素
DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)心停止時に心肺蘇生を行わないという医療上の指示話し合いの結果の一部にすぎない。DNAR=ACPではない
インフォームド・コンセント十分な説明を受けたうえでの、今の治療への同意ACPは将来に備える点が違う

厚生労働省ガイドライン(2018年改訂)のポイント

現行ガイドラインの解説編は、2018年改訂の観点を次の3つにまとめています。

  • 本人の意思は変化しうるので、医療・ケアの方針についての話し合いを繰り返すことが重要
  • 本人が意思を伝えられなくなる場合に備えて、意思を推定する者となる家族等の信頼できる者も含めて、事前に繰り返し話し合っておくことが重要
  • 病院だけでなく介護施設・在宅の現場も想定する(医療・ケアチームに介護支援専門員や介護福祉士などの介護従事者も含む)

さらに、次の3点もよく問われます。

  • 「家族等」の範囲:法律上の親族に限りません。単身世帯の増加を想定し、本人が信頼を寄せ、本人を支える存在であれば親しい友人等も含み、複数人でもよいとされています。
  • 医学的妥当性と適切性:医療・ケア行為の開始・不開始、変更、中止は、医療・ケアチームが医学的妥当性と適切性をもとに慎重に判断します。本人が望めば何でも行う、という意味ではありません。
  • 対象外:生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は対象としない、と明記されています。

方針を決める手順は、本人の意思が確認できるかどうかで分かれます。どの場面でも、話し合った内容はその都度、文書にまとめておくことが求められています。

場面方針の決め方
本人の意思が確認できる適切な説明のうえで本人と医療・ケアチームが十分に話し合い、本人による意思決定を基本に、多専門職種の医療・ケアチームとして方針を決める
意思が確認できず、家族等が本人の意思を推定できるその推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとる
家族等が本人の意思を推定できない本人にとって何が最善かを家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の方針をとる
家族等がいない、または判断をチームに委ねる本人にとっての最善の方針をとる
チーム内で決めにくい、家族等と合意できない、家族等の意見がまとまらない複数の専門家からなる話し合いの場を別に設け、検討・助言を受ける

心理職の役割

ACPは医療の制度であると同時に、死や病気という重いテーマを扱う心理的なプロセスでもあります。公認心理師試験の出題基準(令和9年版ブループリント)でも、ACPは大項目「多職種連携・地域連携」の用語例に挙げられています。

視点内容
準備性(readiness)に合わせるRietjensらの国際合意は、ACPを本人の準備の程度に合わせて進めることを推奨。「考えたくない」気持ちも尊重する
治療の選択より価値観を聴く「何を大切にしてきたか」「何が怖いか」「どう過ごしたいか」を、傾聴を通して言葉にしていく
家族の負担に目を向ける代わりに決める家族は罪悪感や迷いを抱えやすい。事前の話し合いは家族の心理的負担を軽くしうる(下のDeteringらの研究)
意思決定能力が低下した人への支援厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(第2版、2025年3月)は、支援を意思形成支援・意思表明支援・意思実現支援に分けて整理
多職種連携ACPは医師だけのものではない。国際合意も、訓練を受けた医師以外のファシリテーターの活用を推奨

日本の現状:賛成は多いのに、話し合いは少ない

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」(令和4年度)の主な結果です。

項目一般国民医師
人生会議を「よく知っている」5.9%(「知らない」72.1%)45.9%
人生会議を進めることに「賛成」57.3%76.1%
家族等や医療・介護従事者と話し合ったことがある29.9%50.8%

一般国民で話し合ったことがない理由は「話し合うきっかけがなかったから」(62.8%)が最多でした。考え方には賛成でも行動にはつながりにくいというギャップがあるため、国は「人生会議の日」などできっかけづくりを進めています。また2024年度(令和6年度)の診療報酬改定では、ガイドライン等をふまえた意思決定支援に関する指針の作成を求める対象が広げられ、入院料を算定する医療機関(小児・周産期などの一部の病棟だけをもつ医療機関を除く)や、在宅療養支援診療所・病院、地域包括診療料などを届け出る医療機関に求められるようになりました。

ACPへの批判

ACPは万能ではありません。2021年、R. Sean Morrison、Diane E. Meier、Robert M. ArnoldはJAMAの論考「What’s Wrong With Advance Care Planning?」で、ACPは本人の目標に沿ったケア(goal-concordant care)を確実に増やすとはいえないと指摘し、信頼できる代理意思決定者を決めておくことと、決断が必要になったその場での共有意思決定を支えることに力を注ぐべきだと提案しました。「ACPは無意味」という主張ではなく、書類や形式だけのACPでは足りないという問題提起として理解しましょう。

実験や観察の方法と結論

ACPの効果を示した代表的な研究が、オーストラリア・メルボルンの大学病院で行われたDetering et al.(2010)のランダム化比較試験です。

項目内容
対象内科に入院した、意思決定能力のある80歳以上の患者309人。6か月後または死亡まで追跡
方法通常ケア群と、通常ケア+ファシリテーターが支援するACP群(154人)にランダムに割り当て。ACPでは、目標・価値観をふり返り、治療の希望を考え、代理人を指名し、希望を記録することを支援
主な評価項目亡くなった患者の終末期の希望が知られ、尊重されたか
結果6か月以内に亡くなった56人のうち、希望が知られ尊重されたのは介入群86%(25/29人)、対照群30%(8/27人)。介入群の遺族はストレス・不安・抑うつが有意に少なく、患者と家族の満足度も高かった
結論ACPは終末期ケアと満足度を改善し、遺族のストレス・不安・抑うつを減らす

「死について話すと、患者さんが落ち込むのでは」という心配に答えたのが、Alexi A. WrightやHolly G. Prigersonらの前向きコホート研究(Wright et al., 2008)です。進行がんの患者と介護者332組を追跡したところ、医師と終末期について話し合っていた患者は、大うつ病性障害が多いわけではなく(8.3% vs 5.8%、有意差なし)、人工呼吸・心肺蘇生などの積極的な医療が少なく、ホスピスケアの利用開始が早いという結果でした。また、積極的な医療を受けた患者の遺族は、大うつ病性障害のリスクが高くなっていました。

ただし、Wrightらの研究は観察研究なので、話し合いが「原因」とまでは言えません。Brinkman-Stoppelenburgら(2014)のシステマティックレビューでも、ACP研究113件のうち95%が観察研究でした。ランダム化比較試験か観察研究かという研究デザインの違いにも注意しましょう。

例文

「父が元気なうちに人生会議を開き、『最期はできるだけ家で過ごしたい』という思いを家族とかかりつけ医で共有しました。」

「病状が変わったので、ACPで話し合った内容を本人と一緒に見直し、その都度記録に残しています。」

「公認心理師は医療・ケアチームの一員として、アドバンス・ケア・プランニングの場で本人の不安や価値観を丁寧に聴き取りました。」

疑問

Q: ACP(人生会議)と事前指示書は同じものですか?

A: 同じではありません。事前指示書は受けたい・受けたくない医療を書いた文書で、ACPはその背景にある価値観や希望を繰り返し話し合い、共有するプロセスです。事前指示書はACPの結果として作られることがありますが、書類づくりが目的ではありません。

Q: 人生会議は、高齢になってから行うものですか?

A: いいえ。厚生労働省は「誰でも、いつでも」命に関わる病気やけがをする可能性があるとして、年齢にかかわらず考えておくことをすすめています。Sudoreらの定義も「あらゆる年齢・健康状態の成人」を対象としています。病状が変わったときや介護が必要になったときは、話し合いを見直す大事なタイミングです。

Q: 話し合いに参加する「家族等」は、法律上の家族でなければいけませんか?

A: いいえ。ガイドラインの解説編では、本人が信頼を寄せ、本人を支える存在であれば親しい友人等も含み、複数人でもよいとされています。一人暮らしの人が増えていることを想定した考え方です。

Q: 一度決めた内容を、あとから変えてもよいのですか?

A: はい。ガイドラインは、心身の状態の変化などに応じて本人の意思は変化しうるとしており、そのたびに話し合いを繰り返し、内容を文書にまとめておくことを求めています。気持ちが変わるのは当然、という前提に立つのがACPです。

Q: 死について話すと、本人が落ち込んでしまいませんか?

A: 進行がん患者を対象にしたWrightら(2008)の研究では、医師と終末期について話し合った患者に、大うつ病性障害が多いという結果は見られませんでした。一方で、話したくない人に無理に話し合いを迫ってはいけません。本人の準備の程度に合わせて、少しずつ進めることが大切です。

理解度を確認する問題

問題1. アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の説明として、最も適切なものはどれか。

  • A. ACPは、心停止時に心肺蘇生を行わないというDNAR指示について、本人の同意を得るための手続きである。
  • B. ACPは、本人の価値観や希望を家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い共有するプロセスであり、事前指示書の作成はその結果の一つになりうる。
  • C. ACPは、今から行う治療について十分な説明を受けて同意するインフォームド・コンセントと同じ意味である。
  • D. 進行がん患者の研究では、医師と終末期について話し合った患者に大うつ病性障害が有意に多かったため、ACPは慎重に避けるべきとされている。

正解:B ACPは書類ではなくプロセスで、事前指示書(リビング・ウィルなど)は話し合いの結果として作られることがある、という位置づけです。Aは誤りで、DNARは話し合いの結果の一部にすぎず、DNAR=ACPではありません。Cは誤りで、インフォームド・コンセントは今の治療への同意、ACPは将来への備えです。Dは誤りで、Wrightら(2008)では話し合った患者の大うつ病性障害は多くなく(8.3% vs 5.8%、有意差なし)、むしろ積極的な延命医療が少なかったと報告されています。


問題2. 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年改訂)の内容として、最も適切なものはどれか。

  • A. 本人の意思が確認できる場合は、主治医が本人と話し合い、主治医が単独で方針を決定する。
  • B. 本人の意思を推定する者は、法律上の親族のなかから1人に限って前もって定めておかなければならない。
  • C. 医療・ケア行為の開始・不開始、変更、中止は、医療・ケアチームが医学的妥当性と適切性をもとに慎重に判断する。
  • D. 2018年の改訂では、対象を病院での医療に限定し、介護施設や在宅は対象外であることを明確にした。

正解:C ガイドラインは、本人の希望を基本としつつ、医療・ケア行為の開始・不開始などは医学的妥当性と適切性をもとに医療・ケアチームが慎重に判断するとしています。Aは誤りで、方針は多専門職種からなる医療・ケアチームとして決めます。Bは誤りで、「家族等」には親しい友人等も含まれ、複数人でもかまいません。Dは逆で、2018年改訂は介護施設・在宅の現場も想定し、医療・ケアチームに介護従事者を含めることを明確にしました。


問題3. 80代の女性Aさんは脳梗塞で意識障害が続き、本人の意思を確認できない。長男は「母は以前『管につながれてまで長生きしたくない』と話していた」と言い、長女は「できることは全部してほしい」と強く求めている。厚生労働省のガイドラインにもとづく対応として、最も適切なものはどれか。

  • A. 長女の希望が強いので、家族の気持ちを優先して、できる限りの治療を行うと決める。
  • B. 長男の話が本人の推定意思にあたるので、チームで検討せずに、ただちに栄養補給などを行わないと決める。
  • C. 「Aさん本人ならどう考えるか」を軸に家族等と話し合いを重ね、それでも合意できない場合は、複数の専門家からなる話し合いの場で検討・助言を受ける。
  • D. 家族の意見が一致しないので、法律上の相続順位が上の人の判断に従う。

正解:C 本人の意思が確認できないときは、家族等による本人の推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとるのが基本です。家族等の意見がまとまらない場合などは、複数の専門家からなる話し合いの場を設けて検討・助言を受けます。Aは誤りで、軸になるのは家族自身の希望ではなく、本人が何を望むかです。Bは誤りで、推定意思は重要な手がかりですが、方針は医療・ケアチームが医学的妥当性と適切性をふまえ、家族等と十分に話し合ったうえで決めます。Dは誤りで、ガイドラインに相続順位で決めるという定めはありません。

関連キーワード

  • 人生会議
  • 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
  • 事前指示(Advance Directive)
  • リビング・ウィル(Living Will)
  • 代理意思決定(Surrogate Decision Making)
  • DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)
  • インフォームド・コンセント(Informed Consent)
  • 共有意思決定(Shared Decision Making:SDM)
  • 意思決定支援(意思形成支援・意思表明支援・意思実現支援)
  • 緩和ケア(Palliative Care)
  • 多職種連携

関連論文

まずこの1本

Detering, K. M., Hancock, A. D., Reade, M. C., & Silvester, W.(2010)The impact of advance care planning on end of life care in elderly patients: Randomised controlled trial. BMJ, 340, c1345.

ACPの効果をランダム化比較試験で確かめた代表的な論文で、PMCで全文を無料で読めます。80歳以上の入院患者309人を対象に、ファシリテーターが支援するACPで、亡くなった患者の希望が知られ尊重された割合が86%対30%と大きく高まり、遺族のストレス・不安・抑うつも減りました。ACPが本人だけでなく、代わりに決める家族の心理的負担を軽くすることを示した点は、心理職にとって特に重要です。試験対策としては、ACPは書類ではなくプロセス、意思は変化しうるので繰り返す、家族等には親しい友人も含む、意思が確認できないときは推定意思→最善の方針、積極的安楽死は対象外、愛称「人生会議」と11月30日という制度の論点と結びつけて押さえておきましょう。

https://doi.org/10.1136/bmj.c1345

その他の参考文献

Rietjens, J. A. C., Sudore, R. L., Connolly, M., van Delden, J. J., Drickamer, M. A., Droger, M., van der Heide, A., Heyland, D. K., Houttekier, D., Janssen, D. J. A., Orsi, L., Payne, S., Seymour, J., Jox, R. J., Korfage, I. J., & European Association for Palliative Care.(2017)”Definition and recommendations for advance care planning: An international consensus supported by the European Association for Palliative Care.” The Lancet Oncology, 18(9), e543–e551.

概要 欧州・北米・オーストラリアの専門家109人がデルファイ法でACPの定義と41の推奨に合意した論文です。

解説 本人の準備性に合わせること、訓練を受けた医師以外のファシリテーターを活用することなどを推奨しています。国際的な定義の基本文献です。

https://doi.org/10.1016/S1470-2045(17)30582-X

Sudore, R. L., Lum, H. D., You, J. J., Hanson, L. C., Meier, D. E., Pantilat, S. Z., Matlock, D. D., Rietjens, J. A. C., Korfage, I. J., Ritchie, C. S., Kutner, J. S., Teno, J. M., Thomas, J., McMahan, R. D., & Heyland, D. K.(2017)”Defining advance care planning for adults: A consensus definition from a multidisciplinary Delphi panel.” Journal of Pain and Symptom Management, 53(5), 821–832.e1.

概要 4か国52人の多職種の専門家が、修正デルファイ法で成人のACPの定義をまとめた論文です。

解説 ACPを「あらゆる年齢・健康状態の成人」を支えるプロセスと定義し、ACPが高齢者だけのものではないことを示しました。

https://doi.org/10.1016/j.jpainsymman.2016.12.331

The SUPPORT Principal Investigators.(1995)”A controlled trial to improve care for seriously ill hospitalized patients: The study to understand prognoses and preferences for outcomes and risks of treatments (SUPPORT).” JAMA, 274(20), 1591–1598.

概要 米国の5つの教育病院で、重い病気で入院した成人9,105人を対象に、終末期の意思決定の改善をめざした大規模研究です。

解説 前半の観察期では、心肺蘇生を望まない患者の意向を医師が知っていたのは47%にとどまり、後半の比較試験での看護師による介入でも改善しませんでした。「書類」から「対話のプロセス」への転換を考えるきっかけになった研究です。

https://doi.org/10.1001/jama.1995.03530200027032

Wright, A. A., Zhang, B., Ray, A., Mack, J. W., Trice, E., Balboni, T., Mitchell, S. L., Jackson, V. A., Block, S. D., Maciejewski, P. K., & Prigerson, H. G.(2008)”Associations between end-of-life discussions, patient mental health, medical care near death, and caregiver bereavement adjustment.” JAMA, 300(14), 1665–1673.

概要 進行がんの患者と介護者332組を追跡した前向きコホート研究です。

解説 終末期の話し合いは患者の大うつ病性障害の増加と関連せず、積極的な延命医療の減少やホスピスケアの早期利用開始と関連していました。「話すと傷つける」という思い込みを見直す研究です。

https://doi.org/10.1001/jama.300.14.1665

Brinkman-Stoppelenburg, A., Rietjens, J. A. C., & van der Heide, A.(2014)”The effects of advance care planning on end-of-life care: A systematic review.” Palliative Medicine, 28(8), 1000–1025.

概要 ACPの効果に関する研究113件をまとめたシステマティックレビューです。

解説 ACPは延命治療の減少や緩和ケアの利用増加と関連することが多い一方、研究の95%が観察研究であるという限界も指摘しています。

https://doi.org/10.1177/0269216314526272

Morrison, R. S., Meier, D. E., & Arnold, R. M.(2021)”What’s wrong with advance care planning?” JAMA, 326(16), 1575–1576.

概要 ACPは本人の目標に沿ったケアを確実に改善するとはいえない、と問題提起した論考です。

解説 代理意思決定者の指定と、決断の場面での共有意思決定を重視するよう提案しました。ACPを形式で終わらせないための視点として役立ちます。

https://doi.org/10.1001/jama.2021.16430

Kutner, L.(1969)”Due process of euthanasia: The living will, a proposal.” Indiana Law Journal, 44(4), 539.

概要 治療についての希望を文書に残す「リビング・ウィル」を提案した法律論文です。

解説 事前指示、そしてACPへと続く流れの出発点とされます。インディアナ大学のリポジトリで公開されています。

https://www.repository.law.indiana.edu/ilj/vol44/iss4/2

厚生労働省(2018)「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(改訂 平成30年3月)および同解説編

概要 日本のACPの基本となる公的ガイドラインで、2026年10月時点の最新版です。

解説 本文は数ページと短いので、試験前に一度通読しておくことをおすすめします。解説編には「家族等」の範囲や改訂の経緯が書かれています。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197721.pdf
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197722.pdf

日本老年医学会(2019)「ACP推進に関する提言」

概要 日本老年医学会がまとめた、日本でのACPの定義と実践の提言です。

解説 ACPを「本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセス」と定義し、医療を受けていない高齢者でも要介護認定を受けるころまでにはACPを始めることが望ましい、としています。

https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/press_seminar/pdf/ACP_proposal.pdf

覚え方

①「プランニングのingはプロセスのing」:アドバンス(前もって)・ケア(医療とケアを)・プランニング(計画し続ける)。計画「書」ではなく、話し合い続ける進行形です。

②「いい(11)みとり(30)は人生会議」:11月30日が「人生会議の日」。愛称の発表も2018年11月30日です。

③「変わる・繰り返す・書き残す」:本人の意思は変わりうる、だから話し合いを繰り返す、その都度文書にまとめる。2018年改訂ガイドラインの合言葉です。

④「まず推定、次に最善、困ったら専門家の場」:意思が確認できないときの手順です。

覚えることキーワード・数字
ACPの本質書類ではなくプロセス(繰り返し話し合い、共有する)
愛称・記念日人生会議・11月30日(2018年発表)
現行ガイドライン2018年(平成30年)3月改訂。名称に「ケア」、介護施設・在宅も想定
家族等の範囲親しい友人等も含む。複数人でもよい
対象外積極的安楽死
合意できないとき複数の専門家からなる話し合いの場
代表的な研究Detering(2010):希望の尊重86%対30%、遺族の負担減
日本の現状(令和4年度)「よく知っている」5.9%、話し合ったことがある29.9%
↓↓よろしければクリックをお願いいたします
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心理学へ 心理学ランキング
健康・福祉
スポンサーリンク
スポンサーリンク
hosomeganeをフォローする
心理学用語の壁

コメント

タイトルとURLをコピーしました