結論から言うと——
多裂筋は脊柱後方の深層を走る短い分節安定筋で、2〜4椎体をまたいで脊椎の後面を斜め上に走り、各椎体を個別に安定させます。腹横筋とともに「インナーユニット」を形成し、慢性腰痛患者で最も萎縮しやすい筋肉として知られます。表層の脊柱起立筋群とは異なり「動かす」ではなく「安定させる」機能に特化しており、強化にはバードドッグ・プランク・スーパーマン・マッケンジーエクステンションが推奨されます。
語源
Multifidus(マルティフィダス)
- multi(マルティ)= ラテン語で「多くの・複数の」
- fidus / findere(フィダス)= ラテン語 findere(分割する・割る)から。「分割された」
つまり「多くに分割された筋肉」という意味です。多裂筋は脊柱の各椎体をまたいで複数の小さな筋束が斜め方向に走っており、一本の連続した筋肉ではなく複数の短い筋束の集合体です。この「多くに分かれた構造」が名前の由来です。
日本語の「多裂筋(たれつきん)」は「多(多く)・裂(裂かれた・分割された)・筋(筋肉)」を直訳しており、語源と完全に一致しています。
解説
多裂筋は、背骨の後ろ側にある小さな筋肉の集まりです。
わかりやすく言うと、**「背骨の各関節を個別に固定するピン止め役」**です。
背骨は24個の椎骨(背骨のパーツ)が積み重なってできています。多裂筋はこの積み木が崩れないよう、一つひとつの関節を個別にピン止めして固定する役割を担います。
脊柱起立筋群が「大きな動きで背骨を動かす」大きな筋肉なら、多裂筋は「小さく・深く・正確に各関節を安定させる」精密機器のような筋肉です。
たとえば——
- バードドッグで腰椎ニュートラルを保ちながら腕と脚を伸ばすとき
- 立ち上がる瞬間に腰椎が安定するとき
- デッドリフトで体幹を固定するとき
- 長時間座った姿勢で腰を支えるとき
多裂筋の特徴——
- 脊柱起立筋群より深層にある(体表からは見えない)
- 2〜4椎体をまたぐ短い走行(脊柱起立筋群より短い)
- 慢性腰痛で最も萎縮しやすい筋肉
解剖学的特徴
多裂筋は頸椎から仙骨まで脊柱全長にわたって存在しますが、臨床・トレーニングで特に重要なのは**腰部多裂筋(Lumbar multifidus)**です。
起始(どこから始まるか)
- 仙骨後面(Posterior sacrum)
- 腸骨後上棘(Posterior superior iliac spine: PSIS)
- 胸椎・腰椎の乳様突起(Mammillary process)
停止(どこに終わるか)
- 上位2〜4椎体の棘突起(Spinous processes)
各筋束は起始椎体の2〜4椎体上の棘突起に停止するという「斜め上後方への走行」が多裂筋の解剖学的特徴です。
脊柱起立筋群との比較
| 比較項目 | 多裂筋 | 脊柱起立筋群 |
|---|---|---|
| 位置 | 深層(棘突起に最近接) | 表層〜中間層 |
| 走行距離 | 2〜4椎体(短い) | 複数セグメント(長い) |
| 主な機能 | 各椎体の分節安定(静的) | 脊柱の伸展・側屈(動的) |
| 萎縮リスク | 腰痛・手術後に高い | 廃用で低下するが回復しやすい |
| 線維タイプ | 遅筋線維(タイプI)優位 | 混合(やや遅筋優位) |
主な動作(作用)
| 動作 | 説明 |
|---|---|
| 脊椎分節の安定 | 各椎体を個別に後方から安定させる(主機能) |
| 脊柱伸展(補助) | 腰椎の軽度伸展を補助 |
| 脊柱回旋(対側補助) | わずかな対側回旋の補助 |
| 腰椎前弯の維持 | 腰椎の生理的前弯(ロードシス)を保持 |
重要:多裂筋は「動かす」より「固定する」 脊柱起立筋群が腰椎を「動かす(伸展・側屈)」筋肉であるのに対し、多裂筋は各椎体を「固定する・ずれを防ぐ」機能が主役です。この機能分担が体幹安定の二層構造(表層=動作・深層=安定)を形成します。
多裂筋と腹横筋の「インナーユニット協調」
多裂筋と腹横筋は**同時収縮パターン(Co-contraction)**を示します。
| 筋肉 | 位置 | 機能 |
|---|---|---|
| 腹横筋 | 前方・側方の深層 | 前方から腹腔内圧を高めて腰椎を支える |
| 多裂筋 | 後方の深層 | 後方から各椎体の棘突起を安定させる |
Hodgesら(1996)の研究では、腹横筋と多裂筋が腕の動作前に先行収縮することが示されました。この協調が崩れると腰椎の分節安定が失われ、慢性腰痛のリスクが高まります。
慢性腰痛と多裂筋萎縮
Hides ら(1994, 2001)の研究では——
- 急性腰痛エピソード後、多裂筋は数日以内に患側で有意に萎縮する
- 萎縮は痛みが消えても自然回復しない場合がある
- 特異的コアエクササイズ(バードドッグ等)により萎縮が回復する
これが「腰痛は痛みが引いても再発しやすい」原因の一つです。痛みによって多裂筋の神経筋制御が障害され、回復させない限り脊椎安定性が低下したまま維持されます。
神経支配
多裂筋は**各椎体レベルの脊髄神経後枝内側枝(Medial branches of posterior rami)**に分節性に支配されています。各筋束が対応する椎体レベルの神経に支配されるため、特定椎体レベルの問題が対応する多裂筋の機能に直接影響します。
④ 多裂筋の強化トレーニング解説
前提:多裂筋は「意識して安定させる」トレーニングが必要
多裂筋は脊柱起立筋群のような大きな動的収縮を行いません。高重量・大きな可動域の種目より、腰椎ニュートラルを保ちながら四肢を動かす分離制御型の種目が多裂筋の再活性化に最も有効です。
原則①:バードドッグ(最推奨・McGill Big 3)
四つ這いから対側の腕と脚を伸ばす種目で、多裂筋・腹横筋・臀筋の協調を鍛えます。McGillが腰痛予防・リハビリの最優先種目として推奨しています。
実施方法:
- 四つ這いになり腰椎ニュートラルを確認(腰を丸めない・反らない)
- 腹横筋を軽くドローインで活性化
- 右腕と左脚をゆっくり同時に伸ばす
- 2〜3秒保持(この間に多裂筋が腰椎を安定させる)
- ゆっくり戻し、反対側も実施
- セット:3×8〜10回(左右各)
フォームポイント:
- 体幹が傾かないよう骨盤を水平に保つ
- 腰椎が動かない(伸展・屈曲しない)ことを確認
- 腕と脚は床と平行になるまで伸ばす(過伸展しない)
原則②:プランク(多裂筋+腹横筋の等尺性同時収縮)
プランクは多裂筋・腹横筋・内腹斜筋を等尺性収縮で同時に鍛えます。腰椎ニュートラルを保つことで多裂筋の等尺性安定機能が最大化されます。
セット:3×30〜60秒
原則③:マッケンジーエクステンション
うつ伏せから上体を起こす種目で、多裂筋の遠心性→求心性収縮を活用します。マッケンジー法のリハビリで頻用される腰部多裂筋の再活性化種目です。
実施方法:
- うつ伏せに寝て手を肩の横に置く
- 腕を使って上体をゆっくり起こす(腰を反らす)
- 骨盤は床につけたまま
- 痛みが出ない範囲で実施
- セット:3×10〜15回
注意: 腰椎の伸展方向に問題がある場合(脊柱管狭窄症など)は専門家への相談が必要です。
原則④:スーパーマン(多裂筋+脊柱起立筋の協調)
うつ伏せで腕・脚を同時に持ち上げる種目で、多裂筋と脊柱起立筋群の協調を鍛えます。
セット:3×10〜12回(2〜3秒保持)
原則⑤:サイドプランク(分節安定+腹横筋・多裂筋)
サイドプランクは主に外腹斜筋・内腹斜筋を鍛えますが、同時に多裂筋が腰椎の側方安定を補助します。McGill Big 3の3種目すべてが多裂筋の等尺性安定を要求する設計になっています。
原則⑥:ボリューム設定
| 目的 | 週あたりのセット数 | 備考 |
|---|---|---|
| 腰痛予防・機能強化 | 6〜12セット | バードドッグ・プランク中心 |
| 腰痛リハビリ(急性後) | 毎日・低強度 | バードドッグから開始・段階的に追加 |
| 競技パフォーマンス向上 | 9〜15セット | McGill Big 3をウォームアップに組み込む |
原則⑦:重要なプリンシプル——多裂筋は「孤立して鍛えない」
多裂筋は腹横筋・横隔膜・骨盤底筋と協調して機能するため、「多裂筋だけを鍛える」アプローチは適切ではありません。インナーユニット全体の協調を高める種目(バードドッグ・デッドバグ・ドローイン)が最も効果的です。
豆知識
① 多裂筋は「腰痛が治っても自然回復しない」 Hidesら(1994)の研究では、急性腰痛後に多裂筋は患側で有意に萎縮するが、痛みが引いても多裂筋の萎縮は自然回復しないことが示されました。これが腰痛の再発率が高い主要因のひとつです。「腰痛が治った=多裂筋が回復した」ではなく、意識的なコアトレーニングによる多裂筋の再活性化が再発予防に不可欠です。
② MRI・超音波で多裂筋の萎縮が可視化できる 多裂筋は体表からは触れにくいですが、MRI・超音波(エコー)検査で萎縮・非対称性を可視化できます。整形外科・理学療法の臨床では超音波を使ったリアルタイムの多裂筋活性化バイオフィードバックが腰痛リハビリに活用されています。
③ 多裂筋は「腰椎の最も太い筋肉」 腰椎レベルでは、多裂筋は棘突起の両脇を占める大きな膨らみとして存在し、腰部の深層筋群の中では最大の断面積を持ちます。「深層筋=小さい」というイメージがありますが、腰椎レベルの多裂筋は脊柱起立筋群の個別筋束と比較しても大きな体積を持ちます。
④ 手術後に多裂筋が最も影響を受ける 腰椎手術(椎間板ヘルニア手術・固定術など)では、術中のアプローチ(後方切開)で多裂筋が長時間圧迫・牽引されます。これが術後の腰痛・機能障害の一因となっており、術後リハビリでの多裂筋再活性化が回復速度に大きく影響します。
⑤ 多裂筋と「腰椎前弯の維持」 多裂筋は腰椎の生理的前弯(ロードシス)を維持する機能を持ちます。多裂筋が弱化すると腰椎が過度に後弯(フラットバック)する傾向があり、座位姿勢での腰痛と関連します。長時間のデスクワークで「腰が丸まってくる」感覚は、多裂筋の持久力低下が一因です。
関連論文
Hides JA et al. (1994). Evidence of lumbar multifidus muscle wasting ipsilateral to symptoms in patients with acute/subacute low back pain. Spine. 急性・亜急性腰痛患者で多裂筋が患側で有意に萎縮することを超音波で初めて定量的に示した画期的研究。多裂筋萎縮と腰痛の関係を確立した重要論文。
Hides JA et al. (2001). Long-term effects of specific stabilizing exercises for first-episode low back pain. Spine. 初回腰痛エピソード後に特異的安定化エクササイズを行った群と行わなかった群を比較した追跡研究。コアエクササイズ群で多裂筋の回復と腰痛再発率の低下が示されています。
Hodges PW & Richardson CA (1996). Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain. Spine. 腹横筋・多裂筋の先行収縮パターンと腰痛の関係を示した重要論文。健康群では動作前の先行収縮が確認され、腰痛患者では遅延することが示されています。
McGill SM (2010). Core training: Evidence translating to better performance and injury prevention. Strength and Conditioning Journal. 多裂筋を含む体幹深層筋群のトレーニングに関するMcGillのレビュー論文。バードドッグが多裂筋の等尺性安定強化に最適であることが示されています。
よくある質問
- Q多裂筋の起始と停止を教えてください。
- A
起始は仙骨後面・腸骨後上棘(PSIS)・胸椎および腰椎の乳様突起です。停止は上位2〜4椎体の棘突起です。各筋束が起始椎体から2〜4椎体上の棘突起に向かって斜め上後方に走るという「短い分節的走行」が多裂筋最大の解剖学的特徴です。
- Q多裂筋と脊柱起立筋群の最も重要な違いは何ですか?
- A
位置・走行距離・機能の3点が異なります。多裂筋は深層にあり2〜4椎体をまたぐ短い走行で各椎体の分節安定(静的)を担います。脊柱起立筋群は表層〜中間層にあり複数セグメントにわたる長い走行で脊柱の伸展・側屈などの動的動作を担います。脊柱起立筋群が「動かす」筋肉なら多裂筋は「固定する」筋肉という機能分担が最重要な違いです。
- Q慢性腰痛で多裂筋が萎縮しやすい理由を教えてください。
- A
腰痛による痛み刺激が多裂筋の神経筋制御を障害し、反射的な収縮抑制(筋の防御的抑制)が生じるためです。Hidesら(1994)の研究では急性腰痛後に数日以内で多裂筋が患側で有意に萎縮することが超音波で確認されています。さらに痛みが引いても多裂筋の萎縮は自然回復しない場合があり、意識的なコアトレーニングが再発予防に不可欠です。
- Q「腰痛が治っても再発しやすい」理由として多裂筋はどう関係しますか?
- A
腰痛後に多裂筋が萎縮しても痛みが引くと感じますが、多裂筋の機能はまだ回復していない状態が続くためです。多裂筋による各椎体の分節安定が失われたまま日常動作を継続すると、椎間板・靱帯・小関節への累積ストレスが増加し再発につながります。Hidesら(2001)の研究では特異的コアエクササイズ群は再発率が有意に低いことが示されています。
- Qバードドッグが多裂筋の強化に最も推奨される理由を教えてください。
- A
腰椎ニュートラルを保ちながら四肢を動かす「分離制御」が多裂筋の等尺性安定機能を直接鍛えられるためです。四つ這いから対側の腕と脚を伸ばす動作で、体幹が傾かないよう多裂筋・腹横筋・臀筋が協調して腰椎を固定します。McGill(2010)の研究でMcGill Big 3の一種目として腰部負荷が低く多裂筋への刺激が高い最推奨種目として位置づけられています。
- Q多裂筋の神経支配を教えてください。
- A
各椎体レベルの脊髄神経後枝内側枝(Medial branches of posterior rami)に分節性に支配されています。各筋束が対応する椎体レベルの神経に支配されるため、特定椎体レベルの問題(椎間板ヘルニア・変性など)が対応する多裂筋の機能に直接影響します。これが腰椎椎間板ヘルニアで特定レベルの多裂筋に選択的萎縮が起きる解剖学的根拠です。
- Q多裂筋を鍛える際に「孤立させない」ことが重要な理由は何ですか?
- A
多裂筋は腹横筋・横隔膜・骨盤底筋と協調して「インナーユニット」として機能するためです。多裂筋だけを孤立して鍛えても、インナーユニット全体の協調が改善されなければ腰椎の分節安定は向上しません。バードドッグ・デッドバグ・ドローインなどインナーユニット全体の協調を高める種目が多裂筋の機能的強化に最も効果的です。
- Qマッケンジーエクステンションはどのような場合に避けるべきですか?
- A
腰椎の伸展方向に問題がある場合、特に脊柱管狭窄症(脊椎伸展で症状が悪化する)・分離すべり症・椎間関節症がある場合は注意が必要です。これらの状態では腰椎伸展が症状を悪化させる可能性があるため、実施前に整形外科医や理学療法士への相談が推奨されます。痛みや神経症状(しびれ・放散痛)が出た場合は直ちに中止してください。
- Q多裂筋の線維タイプの特徴を教えてください。
- A
遅筋線維(タイプI)が優位とされています。これは多裂筋が姿勢保持・分節安定という持続的な低強度収縮を日常的に行うための適応です。高重量・爆発的収縮よりも低強度・長時間の等尺性収縮(バードドッグ・プランク)が多裂筋の機能強化に適している解剖学的理由でもあります。
- Q超音波(エコー)検査が多裂筋の評価に使われる理由を教えてください。
- A
多裂筋は体表からは触れにくい深層筋ですが、超音波(エコー)では体表から非侵襲的にリアルタイムで可視化・計測できるためです。整形外科・理学療法の臨床では超音波を使った多裂筋の萎縮・非対称性の評価や、ドローイン・バードドッグ中の多裂筋活性化のバイオフィードバックが腰痛リハビリに活用されています。
理解度チェック
問題1 多裂筋の各筋束が停止する椎体レベルとして正しいものはどれですか?
① 起始椎体の1椎体上
② 起始椎体の2〜4椎体上の棘突起
③ 起始椎体の10椎体上
④ 仙骨のみ
→ 正解:② 起始椎体の2〜4椎体上の棘突起
問題2 多裂筋の神経支配として正しいものはどれですか?
① 脊髄神経後枝内側枝(分節性支配)
② 大腿神経
③ 坐骨神経
④ 腸骨下腹神経
→ 正解:① 脊髄神経後枝内側枝(各椎体レベルの分節性支配)
問題3 Hidesら(1994)の研究が明らかにした重要な発見はどれですか?
① 多裂筋は腰痛では萎縮しない
② 急性腰痛後に多裂筋は患側で有意に萎縮する
③ 多裂筋は脊柱起立筋群より大きい
④ 多裂筋萎縮は自然回復する
→ 正解:② 急性腰痛後に多裂筋は患側で有意に萎縮する
問題4 多裂筋の主な機能として最も正しいものはどれですか?
① 脊柱の大きな伸展動作
② 各椎体の分節的安定
③ 腹腔内圧の上昇
④ 脊柱の側屈
→ 正解:② 各椎体の分節的安定(固定・ずれを防ぐ)
問題5 多裂筋の強化に最も推奨されるMcGill Big 3の種目はどれですか?
① ロシアンツイスト
② シットアップ
③ バードドッグ
④ リバースカール
→ 正解:③ バードドッグ
問題6 多裂筋の線維タイプの特徴として正しいものはどれですか?
① 速筋線維(タイプII)が優位
② 遅筋線維(タイプI)が優位
③ 中間線維(タイプIIa)のみ
④ 均等に混合
→ 正解:② 遅筋線維(タイプI)が優位(持続的分節安定への適応)
問題7 「腰痛が治っても再発しやすい」主な理由として多裂筋の観点から正しいものはどれですか?
① 多裂筋は腰痛後に過発達するから
② 多裂筋の萎縮は痛みが引いても自然回復しない場合があるから
③ 多裂筋は高重量トレーニングで損傷するから
④ 多裂筋は加齢で自然に強化されるから
→ 正解:② 多裂筋萎縮が痛みが引いても自然回復しない(Hides et al., 2001)
問題8 インナーユニットを構成する4筋として正しいものはどれですか?
① 腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋
② 腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋
③ 多裂筋・脊柱起立筋・腸腰筋・大殿筋
④ 腹横筋・腸腰筋・横隔膜・骨盤底筋
→ 正解:② 腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋
覚え方
語源でそのまま覚える
Multi(マルティ)= 多くの Fidus(フィダス)= 分割された →「多くに分割された筋肉」→「多裂筋」
「マルチ(multi)」はマルチタスク・マルチビタミンと同じ語根。「多くの小さな筋束が集まって脊柱を支える」とイメージすると定着しやすいです。
多裂筋と脊柱起立筋群の違いを「深・短・固定」vs「浅・長・動作」で覚える
多裂筋 = 深層・短い(2〜4椎体)・固定する 脊柱起立筋群 = 浅層〜中間層・長い・動かす
「深くて短くて固定する」多裂筋と「浅くて長くて動かす」脊柱起立筋群という対比で整理できます。
強化の優先順位まとめ
| 優先度 | 種目 | 狙い |
|---|---|---|
| ① 最優先 | バードドッグ | 多裂筋+腹横筋の協調・McGill Big 3 |
| ② 次点 | プランク | 等尺性安定・インナーユニット全体 |
| ③ 補助 | マッケンジーエクステンション | 多裂筋の再活性化・伸展方向 |
| ④ 補助 | スーパーマン | 多裂筋+脊柱起立筋の協調 |
まとめ
- 多裂筋は仙骨・乳様突起を起始とし上位2〜4椎体の棘突起に停止する深層分節安定筋で、脊髄神経後枝内側枝の分節性支配を受ける。脊柱起立筋群が「動かす」筋肉であるのに対し「固定する」機能に特化しており、腹横筋とともにインナーユニットの後方担当として腰椎の360°安定を担う。
- 急性腰痛後に患側で有意に萎縮し(Hides et al., 1994)、痛みが引いても自然回復しないという特性が腰痛再発の主要因。バードドッグ・プランクを週2〜3回継続することで多裂筋の機能的回復と再発予防が実現でき、McGill Big 3(バードドッグ・サイドプランク・カールアップ)への組み込みが最も実践的。
- 多裂筋の強化は「多裂筋だけを孤立して鍛える」ではなく、腹横筋・横隔膜・骨盤底筋とのインナーユニット全体の協調を高めるアプローチが核心。バードドッグの「腰椎ニュートラルを保ちながら四肢を動かす」という動作パターンが、このインナーユニット協調を最も効率的に鍛える設計となっている。
必須用語リスト
| 用語 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 分節安定 | ぶんせつあんてい | 各椎体レベルの個別的な安定機能。多裂筋の主機能 |
| 乳様突起(脊椎の) | にゅうようとっき | 胸椎・腰椎の横突起付近にある突起。多裂筋の起始部 |
| 棘突起 | きょくとっき | 椎骨の後方に突出する突起。多裂筋の停止部 |
| 後枝内側枝 | こうしないそくし | 多裂筋を分節性に支配する脊髄神経の枝 |
| バードドッグ | ― | 四つ這いから対側腕脚を伸ばす種目。McGill Big 3の一種目 |
| マッケンジーエクステンション | ― | うつ伏せから上体を起こす多裂筋再活性化種目 |
| インナーユニット | ― | 腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋の4筋からなる深層コア安定システム |
| 先行収縮(予測的安定) | せんこうしゅうしゅく | 動作より前に筋肉が収縮する反射的な安定機構 |
| 筋の防御的抑制 | きんのぼうぎょてきよくせい | 痛みにより筋収縮が反射的に抑制される現象。腰痛後の多裂筋萎縮の一因 |
| PSIS(腸骨後上棘) | ― | 腸骨の後方上部の突起。多裂筋の起始部のひとつ |
| McGill Big 3 | マッギルビッグスリー | バードドッグ・サイドプランク・カールアップの3種目。腰部安定化の基本 |
| 超音波(エコー)評価 | ちょうおんぱひょうか | 多裂筋の萎縮・非対称性・収縮をリアルタイムで可視化する評価法 |
| 遅筋線維(タイプI) | ちきんせんい | 持久力に優れた筋線維。多裂筋は遅筋線維が優位 |
| 腰椎前弯 | ようついぜんわん | 腰椎の生理的な前方へのカーブ(ロードシス)。多裂筋が維持に貢献 |
| 漸進性過負荷 | ぜんしんせいかふか | 機能向上を継続させるため段階的に負荷を増やす原則 |


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