スポンサーリンク

回避/逃避(Avoidance / Escape)

学習・認知・知覚

回避/逃避(Avoidance / Escape)とは、いやな刺激から離れる行動のことです。すでに起きているいやな刺激を止める・抜け出すのが逃避、まだ来ていないいやな刺激を先回りして来ないようにするのが回避で、どちらもオペラント条件づけの負の強化によって学習されます。

試験では、逃避と回避の区別、回避を説明するMowrerの二要因理論(古典的条件づけ+オペラント条件づけ)、警告信号のないSidman型回避、そして理論と研究者の組み合わせがよく問われます。

簡単な説明

夏の日に、日なたが暑すぎて日かげに移るのは「今のいやな状態から抜け出す」行動なので逃避です。一方、天気予報で「午後から雨」と聞いて傘を持って出かけるのは、まだ降っていない雨にぬれないための行動なので回避です。

どちらも「いやなことがなくなる(来ない)」ので、行動はくり返されやすくなります。見分けるポイントはいやな刺激(心理学では嫌悪刺激といいます)が「もう来ている」か「これから来る」かです。

ただし回避には落とし穴があります。ほえる犬がこわくて遠回りを続ける人は、その犬がもうおとなしくなっていても気づけません。避けているあいだは「本当に危ないのか」を確かめられないのです。

由来

1939年、O. H. Mowrerは、不安(恐怖)がやわらぐこと自体が行動を強める「ごほうび」になると論じました。この考えが、のちに二要因理論(two-factor theory)と呼ばれる回避の説明の出発点です。

1953年には、ハーバード大学のRichard L. SolomonとLyman C. Wynneが、イヌを使ったシャトルボックスでの回避学習を詳しく報告しました。同じ年にMurray Sidmanは、外からの警告信号がなくても回避が学習されることを報告しています。

具体的な説明

逃避と回避のちがい

逃避(Escape)回避(Avoidance)
嫌悪刺激すでに提示されているまだ提示されていない
行動の結果嫌悪刺激が終わる嫌悪刺激が来なくなる(延期される)
身近な例うるさくなってから耳をふさぐ工事の時間の前に図書館へ移る

どちらも嫌悪刺激がなくなる(来なくなる)ことで行動が増えるので負の強化です。行動が減る「罰(弱化)」とはちがう点に注意しましょう(4つの随伴性の整理は「強化と弱化」の記事へ)。

なお、決められた反応をすることで嫌悪刺激を避けるのを能動的回避、反応をしないことで避けるのを受動的回避と呼びます(例:暗い部屋でショックを受けたラットがその部屋に入らなくなる)。

回避のパラドックスと二要因理論

逃避は「いやな刺激が終わる」ので強化の説明が簡単です。ところが回避がうまくいくと、ショックはそもそも来ません。「何も起こらないこと」がなぜ強化になるのかが、長く議論されてきた問題です。Mowrerの二要因理論は、これを2段階で説明します。

  • 第1段階(古典的条件づけ):信号(CS)と電気ショック(US)がくり返し対になり、信号が恐怖を引き起こすようになる(恐怖条件づけ)。
  • 第2段階(オペラント条件づけ):信号から離れる反応で恐怖が低減し、その恐怖低減が反応を負の強化する。

つまり回避反応は、実は恐怖を引き起こす信号からの逃避だと考えます。

二要因理論への批判と、ほかの説明

消去されにくさ:Solomon & Wynne(1953)では、最後のショックのあともイヌは信号に対して跳び続け、反応はさらに速くなりました。恐怖の様子が弱まっても回避が続く点は、恐怖低減だけでは説明しきれません。

Sidman型回避(自由オペラント型回避):外的な警告信号はなく、反応しなければ一定間隔(S-S間隔)でショックが来て、反応するたびに次のショックが一定時間(R-S間隔)延期されます。「信号が恐怖を生む」という前提では説明しにくい現象ですが、「時間の経過が信号になる」という反論もあります。

これに答えたのがHerrnstein & Hineline(1966)です。ショックをランダムな時刻に与え、時間の手がかりを使えなくしても、反応で全体のショック頻度が下がればラットは反応を学習しました。

研究者理論回避を強めるもの
Mowrer(1939〜)二要因理論信号への恐怖の低減
Herrnstein & Hineline(1966)ショック頻度低減説全体のショック頻度の低下
Bolles(1970)種に特有な防御反応(SSDR)逃げる・すくむなど生まれつきの防御反応に近い反応ほど学習されやすい
Seligman & Johnston(1973)認知理論「反応しないとショックが来る」という予期

認知理論では、跳び続ける限り「反応しなくてもショックは来ない」と経験できず、予期が書きかわらないので回避は消えにくいと考えます。このしくみは、避けてきた場面に少しずつ向き合うエクスポージャー(曝露)を行う理由の一つです。

実験や観察の方法と結論

イヌの外傷的回避学習(Solomon & Wynne, 1953)

方法:雑種犬30頭を、障壁で2つに仕切られたシャトルボックスに入れました。信号(CS)は、イヌのいる側の消灯と仕切りのゲートの上昇です。10秒以内に障壁を跳び越えればショックを受けず(回避)、跳ばなければ床に強い電気ショックが流れ、跳ぶまで続きました(逃避)。1日10試行、10試行連続の回避で学習成立としました。

結論:典型的なイヌでは、最初の4試行は逃避、5試行目で初めて回避が現れ、最後のショックは12試行目ごろで、その後は回避が続きました(いずれも中央値)。信号への恐怖反応は平均して最初の回避の約2試行前に現れ、著者らは結果を二過程(二要因)理論の枠組みで考察しました。一方、回避が続くと行動は型にはまり、恐怖の様子は弱まりました。

例文

「上司の大声が始まると席を外すのは逃避、上司が来る時間帯にあらかじめ会議室へ移っておくのは回避にあたります。」

「人前で話すのを避け続けたため、『実際に話しても大丈夫だった』と経験する機会がなく、回避行動が維持されてしまいました。」

疑問

Q: 回避は「罰」によって起こる学習ではないのですか?

A: ちがいます。罰(弱化)は行動のあとに嫌悪刺激が来て、その行動が減ることです。回避や逃避は、行動によって嫌悪刺激がなくなる(来ない)ため、その行動が増えるので負の強化です。

Q: 回避がうまくなるとショックを受けなくなるのに、なぜ消去されにくいのですか?

A: 回避し続ける限り、「信号のあとにもうショックは来ない」という変化を体験できないからです。消去の手続きに入っても、本人から見れば何も変わらないのです。

Q: 回避はいつも悪いものなのですか?

A: いいえ。危険を先回りしてかわす回避は、生きのびるために欠かせない学習です。問題は、危険がないのに避け続けて生活が狭くなる場合です。

理解度を確認する問題

問題1. 次のうち、「回避」の例として最も適切なものはどれか。

  • A. 隣の工事の音が大きくなってきたので、耳せんをして音を小さくした
  • B. 雨が強くなってきたので、走って軒下に入った
  • C. 苦手な先輩が休憩室に来る時間の前に、自分の席へ戻っておいた
  • D. 廊下を走って先生にしかられたので、廊下を走らなくなった

正解:C いやな出来事が来る前に行動し、それを来ないようにしているので回避です。まぎらわしいAとBは、騒音や雨がすでに来ている状態から抜け出しているので逃避です。「対策した感じ」にまどわされず、行動の時点で嫌悪刺激があったかで判断します。Dは行動のあとに嫌悪刺激が来て行動が減っているので罰(正の弱化)です。


問題2. Mowrerの二要因理論に関する説明として、最も適切なものはどれか。

  • A. 第1段階はオペラント条件づけ、第2段階は古典的条件づけである
  • B. 回避反応は、ショックが来ないことによる正の強化で維持されると考える
  • C. 信号が古典的条件づけで恐怖を引き起こすようになり、信号から離れることによる恐怖の低減が回避反応を負の強化する
  • D. 警告信号のない自由オペラント型回避をうまく説明できることが、この理論の最大の強みである

正解:C 二要因理論は「古典的条件づけで恐怖を学び、オペラント条件づけで恐怖低減による負の強化を受ける」という2段階の理論です。Aは順番が逆です。Bは誤りで、強化するのは恐怖の低減、つまり負の強化です。Dは逆で、信号のないSidman型回避は二要因理論では説明しにくい現象です。


問題3. 回避学習に関する研究者と考え方の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

  • A. Mowrer ― 種に特有な防御反応(SSDR)
  • B. Bolles ― 回避の消去されにくさを「予期」から説明する認知理論
  • C. Herrnstein & Hineline ― 反応によって全体のショック頻度が下がることが回避を強化する
  • D. Sidman ― 警告信号への恐怖を手がかりにした信号つき回避

正解:C Herrnstein & Hineline(1966)のショック頻度低減説です。AのSSDRはBolles、Bの予期による認知理論はSeligman & Johnstonの考えです。Dは逆で、Sidman型回避は外的な警告信号がない手続きで、反応するとR-S間隔だけショックが延期されます。名前と理論の入れかえは定番のひっかけです。

関連キーワード

  • 負の強化(Negative Reinforcement)
  • シャトルボックス(Shuttle Box)
  • 二要因理論(Two-Factor Theory)
  • Sidman型回避/自由オペラント型回避(Sidman Avoidance / Free-Operant Avoidance)
  • 種に特有な防御反応(Species-Specific Defense Reactions; SSDR)
  • 学習性無力感(Learned Helplessness)

関連論文

まずこの1本

Solomon, R. L., & Wynne, L. C.(1953)Traumatic avoidance learning: Acquisition in normal dogs. Psychological Monographs: General and Applied, 67(4), 1–19.

イヌの回避学習を試行ごとの反応時間まで分析した古典です。試験対策としては、「逃避→回避」の順に学習が進むこと、ショックが来なくなっても回避が続く消去されにくさを押さえましょう。

https://doi.org/10.1037/h0093649

その他の参考文献

Krypotos, A.-M., Effting, M., Kindt, M., & Beckers, T.(2015)“Avoidance learning: A review of theoretical models and recent developments.” Frontiers in Behavioral Neuroscience, 9, 189.

概要 逃避と回避の定義から二要因理論、SSDR、認知理論までを整理した総説で、無料で読めます。

https://doi.org/10.3389/fnbeh.2015.00189

ほそめがねのひとこと

日常の中で「これは逃避だった」「これは回避だった」と気づいた場面はありますか?

覚え方

①逃避と回避:「逃げるは今、避けるは先」。いやなことが今起きていて抜け出すのが逃避、先に来るものをかわすのが回避です。

②二要因理論:「パブロフで怖がり、スキナーでほっとする」。第1段階は古典的条件づけ(恐怖の学習)、第2段階はオペラント条件づけ(恐怖低減による負の強化)です。

③Sidman型回避:「シドマンは合図なし、動けば先送り」。警告信号がなく、反応するとショックが先へ延びます。

↓↓よろしければクリックをお願いいたします
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心理学へ 心理学ランキング
学習・認知・知覚
スポンサーリンク
スポンサーリンク
hosomeganeをフォローする
心理学用語の壁

コメント

タイトルとURLをコピーしました