自己複雑性

自分が持っている役割や側面がどれだけ多いかということ

簡単な説明

自己複雑性とは、自分自身をどれだけ多面的に捉えているかを示す概念です。多くの異なる自己概念を持つ人は、一つの自己概念に固執する人よりもストレスや困難に対して耐性が高いとされています。

由来

自己複雑性の概念は、心理学者パトリシア・リンヴィル（Patricia Linville）によって1985年に提唱されました。彼女は自己概念が複数の異なる役割や特性によって構成されているとし、その多様性が精神的な健康にどのように影響するかを研究しました。

具体的な説明

自己複雑性は、個人が持つ自己概念の多様性と構造を指します。例えば、ある人が「親」「仕事人」「友人」「趣味愛好者」など、複数の役割を持っているとします。これらの役割が互いに異なる特徴や価値観を持っている場合、その人の自己複雑性は高いと言えます。自己複雑性が高いと、ストレスや失敗からの回復が早いとされています。なぜなら、一つの役割での失敗が他の役割に影響を与えにくく、全体的な自己評価に影響しにくいからです。

リンヴィルの研究では、被験者に自己概念カードを作成させ、それぞれのカードに異なる自己概念を記入させました。次に、被験者にストレスフルなシナリオを提示し、反応を観察しました。結果として、自己複雑性が高い被験者は低い被験者よりもストレスに対する回復が早いことが示されました。

大学レベルでは、自己複雑性は個人の心理的レジリエンス（回復力）やストレス管理における役割について詳しく学びます。自己複雑性が高いと、個人はストレスフルな出来事に対してより適応的に対処できるとされ、特定の役割での失敗が他の役割や全体的な自己評価に影響しにくいとされています。逆に、自己複雑性が低い場合、特定の役割での失敗が全体的な自己評価に大きく影響し、精神的な健康に悪影響を及ぼすことがあります。