「終わる時間・かかるお金・必要な手間を、実際より短く(少なく)見積もってしまう傾向」のことです。
簡単な説明
計画の誤謬って要は、脳みそが「理想の自分」でスケジュール作っちゃう現象です。
「途中でだらけない自分」「ミスしない自分」「邪魔が入らない世界線」で見積もるから、だいたい外れます。
だからコツはシンプルで、前回の自分(実績)を信じろ、です。
由来
ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが提唱した概念で「人は理想的な計画(内側の見方)に引っ張られ、過去の実績(外側の見方)を軽視しがち」という特徴があります。
企業や組織の意思決定でも問題になることから、ダン・ロバロとカーネマンは「過度の楽観が計画を狂わせる」と警鐘を鳴らしています。
具体的な説明
たとえば、「英語のワーク、今日は30分で終わる」と思って始めたのに、実際は60分かかった経験はありませんか?

このとき頭の中では:
- 「今日は集中できそう」
- 「途中でスマホ見ない」
- 「問題は簡単そう」
といった理想の進み方をベースに予測しています。
しかし現実には、わからない問題、やり直し、休憩、想定外の出来事が入って時間が延びます。これが計画の誤謬です。

一般的な説明(押さえるべきポイント)
- 自分の作業ほど甘く見積もりやすい(他人の作業は逆に長めに見積もることもある)
- 「前も遅れた」とわかっていても、次はなぜか「今回は大丈夫」と思いやすい
- 時間だけでなく、費用やリスクにも起きる
中核概念
内側の見方(inside view):個別ケースのストーリー(手順・段取り)をシミュレーションする
外側の見方(outside view):同種課題のベースレート(基準率)=過去実績分布から推定する
計画の誤謬は、内側の見方が優位になり、ベースレートが十分に統合されないことで生じます。

メカニズム
失敗の原因帰属が「たまたま・外的・一時的」になりやすいと、次回予測への学習が弱くなります(「今回だけの例外」にしてしまう)。
さらに、記憶そのものが過去の所要時間を短く見積もらせる、という整理(記憶バイアス)もレビューされています。
具体的な実験と結果(数値つき)
1) 学生の卒論研究(フィールド研究)
ロジャー・ビューラーら(1994)による、計画の誤謬を実証した代表的研究です。
結果:
- 「最も正確だと思う予測」平均:33.9日
- 実際の平均:55.5日
- 予測どおりに終わった人:29.7%(3割未満)
- 予測と実際の相関:r = .77(個人差の順位はそれなりに当たるが、全体として楽観)
- 「全部うまくいったら」の平均:27.4日(実際より約28日早い)
- 「全部うまくいかなかったら」の平均:48.6日(それでも実際55.5日に届かない)
結論:人は「最良の筋書き」に引っ張られて、悲観側に振ってもなお短めになりやすい

2) 予測時の思考内容(思考発話・思考リスト)
同じ論文の別研究では、予測中に何を考えているかを分類しています。
結果:
- 未来の計画・手順(成功シナリオ)に触れた人:93.5%
- 未来の障害に触れた人:9.8%
- 過去経験に触れた人:8.9%(思い出すよう促しても少ない)
結論:予測の中身が「どう上手くやるか」に偏り、「何が邪魔するか」「前回どうだったか」が入りにくい
3) 確率つき締切でも外す
課題が「50%・75%・99%の確率で終わる日」を見積もらせた研究:
結果:
- 50%の期限までに終わった:13%
- 75%の期限までに終わった:19%
- 99%の期限までに終わった:45%
結論:「99%大丈夫」の見積もりですら半分以上外れることがある
例文
「計画の誤謬のせいで、提出まで『あと2時間』のつもりが、結局『あと4時間』かかって徹夜になりました」
「部活の遠征準備は、毎回計画の誤謬で荷造り時間を短く見積もってしまうので、開始時刻を30分前倒しにしました」
疑問
- Q計画の誤謬は「怠けている人」だけに起きるのですか?
- A
いいえ、一般的に多くの人に起きます。研究でも、過去に遅れた経験を知っていても楽観的予測が出やすいことが示されています。
- Q予測が外れるのは、単に予測能力が低いからですか?
- A
それだけではありません。予測と実際の相関が高い(例:r=.77)一方で平均的に短く見積もる、という「方向の偏り」が問題になります。
- Q「悲観的に見積もれ」と言えば直りますか?
- A
直りにくいです。悲観予測(48.6日)でも実際(55.5日)に届かない例が報告されています。
- Qどうすれば減らせますか?
- A
「外側の見方」を使い、同種課題の過去実績(ベースレート)から見積もるのが基本です。また、実行意図(if-then:もし○○なら△△する)のような介入で改善を狙う研究もあります。
- Q先延ばし(プロクラスティネーション)と同じですか?
- A
同じではありません。先延ばしは行動の問題、計画の誤謬は予測の偏りが中心です。ただし、先延ばしがあると見積もりはさらに外れやすくなる、という関連は考えられます(実行過程が乱れるため)。
- Q計画の誤謬は、すべての人に同じ程度起きるのですか?
- A
個人差はありますが、多くの人に起きる普遍的な傾向です。Buehlerら(1994)の研究では、予測と実際の相関がr=.77と高く、「誰が遅れるか」の順位はある程度予測できますが、全員が平均的に楽観側にズレることが示されています。つまり、予測が得意な人も不得意な人も、方向としては「短く見積もる」傾向があります。
- Q他人の作業時間を予測するときも、同じように短く見積もりますか?
- A
いいえ、他人の作業については逆に長めに見積もることがあります。これは「自分は特別」「自分は頑張れる」という楽観バイアスが、自分の作業に特有に働くためです。自分のことは「今回はうまくいく」と思いやすいのに対し、他人のことは冷静に「前回も遅れていたし」と判断しやすいのです。
- Q経験を積めば、計画の誤謬は減っていくのですか?
- A
残念ながら、経験だけでは大きく改善しません。Buehlerらの研究では、参加者の多くが過去に遅れた経験を持っていても、次回の予測は依然として楽観的でした。これは、過去の失敗を「あのときは特別な事情があった」と例外扱いしてしまい、学習に結びつきにくいためです。
- Q計画の誤謬は、日本人と欧米人で違いはありますか?
- A
文化差については研究が限られていますが、基本的なメカニズム(内側の見方への偏り)は文化を超えて観察されています。ただし、文化によって「楽観的であることの評価」や「過去の失敗をどう解釈するか」が異なる可能性があり、誤謬の程度には差が出るかもしれません。検定レベルでは、普遍的な認知バイアスとして扱われています。
- Qグループで作業するときも、計画の誤謬は起きますか?
- A
はい、むしろ悪化することがあります。グループでは「誰かがカバーしてくれる」という期待や、「全員が頑張れば」という理想的シナリオがさらに強まりやすいためです。Lovallo & Kahneman(2003)は、企業の大型プロジェクトでも同様に過度の楽観が起きることを指摘しており、組織レベルでも問題になります。
- Q計画の誤謬と「確証バイアス」は関係ありますか?
- A
間接的に関係します。確証バイアス(自分の仮説を支持する情報ばかり集める傾向)により、「今回はうまくいく」という仮説を裏づける情報(「集中できそう」「準備はバッチリ」)ばかりに注目し、障害となる情報(「前回も遅れた」「急な用事が入るかも」)を無視しやすくなります。
- Q外側の見方を使うとき、どのくらいの数の過去データが必要ですか?
- A
統計的には多いほど良いですが、実用上は3〜5回程度の過去実績でも有用です。重要なのは「今回は特別」と思わず、過去の平均や分布(特に最長記録)を参考にすることです。たとえば、過去5回の宿題時間が「40分、50分、35分、60分、45分」なら、平均46分を基準に、余裕を持って60分と見積もる、という使い方です。
- Q締切直前になると予測が正確になる、ということはありますか?
- A
はい、締切が近づくほど予測精度は上がります。これは「残り時間」という客観的制約が明確になり、理想的シナリオだけで予測できなくなるためです。ただし、それでも終盤で「あと1時間」と思ったのに「あと3時間」かかる、という誤謬は残ります。早い段階ほど誤差が大きいという特徴があります。
- Q「計画の誤謬」は、時間以外(お金、人員、リスク)でも同じように起きますか?
- A
はい、同じメカニズムで起きます。たとえば:
- 費用: リフォーム予算を200万円と見積もったのに300万円かかる
- 人員: 「5人で足りる」と思ったのに7人必要だった
- リスク: 「トラブルはないだろう」と思ったのに複数の問題が発生
- QAIやアプリを使えば、計画の誤謬は防げますか?
- A
部分的には有効です。たとえば:
- 過去ログの自動記録: 実際の所要時間を客観的に記録し、「外側の見方」のデータを提供
- リマインダー: 過去の平均時間を表示して、楽観予測を補正
- 進捗トラッキング: 実行中の遅れをリアルタイムで警告
ただし、ツールがあっても「今回は大丈夫」と無視してしまう人間側の問題は残るため、ツールと意識改革の両方が必要です。実行意図(if-thenプラン)をツールに組み込むと、さらに効果的です。
理解度を確認する問題
問題:計画の誤謬の説明として最も適切なのはどれですか?
A. 過去の実績(ベースレート)を重視するため、予測は長めになりやすい
B. 自分の課題について、所要時間やコストを実際より楽観的に見積もりやすい
C. 他者の課題ほど、所要時間を短く見積もりやすい
D. 楽観予測は主に記憶の正確さの問題で、思考の偏りとは無関係である
正解:B(内側の見方が強くなり、時間等を過小見積もりしやすい)
問1: 計画の誤謬で中心になるのはどれですか?
A. 外側の見方 B. 内側の見方 C. 古典的条件づけ D. 罰による学習
→ 答え:B
問2: 1994年研究の例で、平均の予測33.9日に対し実際は何日でしたか?
A. 27.4日 B. 33.9日 C. 48.6日 D. 55.5日
→ 答え:D
問3: 予測中に「未来の障害」に触れた人が少なかった(約1割)という結果は、どの説明を支持しますか?
A. 成功シナリオへの偏り B. 条件反射 C. 群集心理 D. 逆転学習
→ 答え:A
問4: 計画の誤謬を減らす基本戦略として最も近いのはどれですか?
A. 気合い B. 罰を増やす C. ベースレート(過去実績)で補正する D. 直感に任せる
→ 答え:C
問5: 「悲観的に見積もらせても、まだ実際より短いことがある」ことを示す数値はどれですか?
A. 48.6日 vs 55.5日 B. 33.9日 vs 27.4日 C. 55.5日 vs 33.9日 D. r=.77
→ 答え:A
関連キーワード
- 楽観バイアス(optimism bias)
- 内側の見方/外側の見方(inside view / outside view)
- ベースレート(base rate)・参照クラス予測(reference class forecasting)
- 実行意図(implementation intentions)
- 帰属(attribution)
- 未来シミュレーション/シナリオ思考(prospection / scenario thinking)
- 記憶バイアス(memory bias)
- プロクラスティネーション(先延ばし)
関連論文
1) Buehler, Griffin, & Ross (1994)
Exploring the “Planning Fallacy”: Why People Underestimate Their Task Completion Times
Journal of Personality and Social Psychology
概要
目的:人が自分の課題の完了見込みを「短く」見積もる理由を検証
方法:学生の卒論について、「ベスト見積もり」「全部うまくいく前提(楽観)」「全部うまくいかない前提(悲観)」で予測させ、実際の提出日と比較
主要結果:
- ベスト予測:平均33.9日、実際:平均55.5日(有意差あり)
- 予測どおりに終わった人:29.7%
- 予測と実際の相関:r = .77(順位づけは当たるが、全体として楽観)
- 楽観予測:27.4日、悲観予測:48.6日(悲観でも実際55.5日に届きにくい)
思考内容の分析:
- 予測時に「未来の計画・シナリオ」を考えた人:93.5%
- 「未来の障害」を挙げた人:9.8%
- 「過去経験」に触れた人:8.9%
解説
この論文の強みは、「なぜズレるか」を分解して実証したことです。
- 実際にズレる(33.9→55.5)だけでなく
- 予測時に何を考えているか(93.5%が未来計画)まで押さえ
- 失敗の説明の仕方(帰属)が学習を邪魔する可能性まで踏み込みます
「相関は高いのに平均は外れる(r=.77でも短い)」は、検定で問われやすいポイントです。「個人差の情報はあるが、バイアス方向にズレる」が核心です。
解釈
解釈1:計画の誤謬=「未来の物語に引っ張られる」
人は見積もりのとき、過去の統計(ベースレート)より、頭の中の「順調に進む物語」を重視しがちです。
解釈2:悲観見積もりでも足りないことがある
「悲観に振ればOK」ではなく、悲観でもなお平均的に短い(48.6 < 55.5)ので、補正には過去実績の分布(外側の見方)が必要という示唆になります。
2) Roy, Christenfeld, & McKenzie (2005)
Underestimating the Duration of Future Events: Memory Incorrectly Used or Memory Bias?
Psychological Bulletin
概要
位置づけ:実験論文というより、レビュー(総説)+理論提案
目的:従来説明(計画の誤謬=「過去を無視する/楽観シナリオに偏る」)に対して、もう一つの説明として「記憶そのものが短く歪む(memory bias)」を提案し、証拠を整理
中心主張(メモリーバイアス説):
人は過去の所要時間を参照して予測するが、その過去の記憶が体系的に短いため、未来予測も短くなる
4つの検討課題:
- 人は過去時間を無視しているのか?(無視ではなく「記憶が歪む」可能性)
- 課題が新規か慣れかで誤差は変わるか?
- 記憶に影響する変数は予測にも影響するか?
- どんな介入なら過小見積もりを防げるか?(実際の過去時間のフィードバックが鍵)
解説
この総説の価値は、「計画の誤謬」を予測時の偏りだけの話にしない点です。
予測の失敗が続くのは、そもそも過去の所要時間の記憶が短く保存されている可能性がある、と視点をずらします。
その結果、対策も変わります。「過去を思い出せ」では足りず、「正しい過去データ(ログ)を見せる」ほうが筋が良い、という方向づけになります。
解釈
解釈1:計画の誤謬は「予測」と「記憶」の両方の問題かもしれない
Buehlerら(1994)が示した「未来シナリオ偏重」と、Royら(2005)の「過去記憶の短縮」は両立します(複合要因)。
解釈2:検定での使い分け
- 実証の代表:Buehlerら(予測の偏りを示す数値・思考内容)
- 理論の拡張:Royら(「なぜ学習できないのか」を記憶側から説明)
という整理にすると答案が強くなります。
参照URL: https://pages.ucsd.edu/~mckenzie/Royetal2005PsychBull.pdf
3) Koole & van ‘t Spijker (2000)
Overcoming the planning fallacy through willpower: Effects of implementation intentions on actual and predicted task completion times
European Journal of Social Psychology
概要
目的:計画の誤謬(楽観的な所要時間予測)を、実行意図(implementation intentions)で減らせるかを検討
方法:
- 参加者に一定期間内に課題を終えるよう依頼
- 半数は「いつ・どこでやるか」を具体化する実行意図を作成
- 残りは単に目標だけ与える
主要結果:
実行意図群は
- (a) 予測はむしろより楽観的になった一方で
- (b) 実際の達成率がさらに大きく上がり
- (c) 結果として予測の楽観バイアス(予測−実際のズレ)が有意に減った
- さらに、ズレの減少は作業中の中断が少ないことで媒介された
解説
「予測を悲観に変える」より「実行を変える」アプローチです。
予測が多少楽観でも、実行意図で中断が減って行動が改善すれば、結果として予測のズレが縮むという構図です。
中学生向けに言えば:
「『30分で終わる!』って言うのをやめさせる」より、「『18:30にリビングで英語ワークを開く』って決める」ほうが効く、という話です。
解釈
解釈1:計画の誤謬は「認知」だけでなく「自己制御(中断・誘惑)」とも結びつく
この論文は、ズレの原因を「見積もりの頭の中」だけでなく、実際の遂行プロセス(中断)に結びつけます。
解釈2:介入の型として覚える
検定では「計画の誤謬を減らす方法」の文脈で、外側の見方(ベースレート)と並べて、実行意図(if-then/いつどこで)を挙げられると強いです。
参照URL:
- https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/1099-0992%28200011/12%2930%3A6%3C873%3A%3AAID-EJSP22%3E3.0.CO%3B2-U
- https://research.vu.nl/en/publications/overcoming-the-planning-fallacy-through-willpower-effects-of-impl/
4) Lovallo & Kahneman (2003)
Delusions of Success: How Optimism Undermines Executives’ Decisions
Harvard Business Review
概要
目的:企業の大きな投資判断が「過度の楽観」で外れる理由を、認知バイアス(計画の誤謬など)と組織的圧力の両面から説明し、対策としてoutside view(参照クラス予測)を推奨
代表的な数値例:
1970年代のCollege Boardの約100万人規模の調査として、リーダーシップが「平均以上」70%、「平均以下」2%などの例を挙げ、自己評価の楽観性を示します。
解説
この論文(HBR記事)は学術実験ではなく、心理学の知見を経営に翻訳しています。
試験では、「inside view(自社の計画・物語)」と「outside view(類似案件の統計)」の対比を、計画の誤謬の応用として書けるかがポイントになります。
解釈
計画の誤謬は「個人の宿題」だけでなく、「組織の大型プロジェクト」でも同型で起きる。
だから対策も「気合」より参照クラス(同種プロジェクトの分布)の導入になる、という筋です。
参照URL:
- https://hbr.org/2003/07/delusions-of-success-how-optimism-undermines-executives-decisions
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12858711/
5) Tversky & Kahneman
Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases
Cambridge University Press
概要
「不確実性下の判断」におけるヒューリスティックスと系統的誤り(バイアス)をまとめた、行動意思決定研究の基礎文献群です。
計画の誤謬は、こうした「バイアスが現実の見積もりを歪める」系の流れの中で理解すると整理しやすいです。
解説・解釈(検定向け)
計画の誤謬を単独暗記せず、以下の流れで接続すると、選択肢問題で引っ掛かりにくくなります:
- ヒューリスティック
- 系統的バイアス
- 予測・意思決定の誤り
覚え方
「け・い・か・く=『計』ってるのに『画(え)』が甘い」
「計画」は「計る+画(イメージ)」ですが、イメージ(画)だけが都合よくなると覚えると印象に残ります。



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