成功や失敗の理由をどう考えるか(=帰属)を研究した心理学者のこと
簡単な説明
ワイナーは、物事の原因をどう考えるか(=帰属)によって、その後のやる気や行動が変わると提唱しました。
たとえば、テストに落ちたとき、「自分の努力不足だ」と考える人と、「先生が悪い」と考える人とでは、次の行動がまったく異なるのです。
由来や背景
バーナード・ワイナー(Bernard Weiner)はアメリカの心理学者で、1970年代以降、教育心理学や社会心理学の分野で帰属理論を発展させたことで知られています。彼は、失敗や成功の原因を人がどう考えるかが、モチベーションや感情に影響することを明らかにしました。
具体的な説明
ワイナーの帰属理論は、以下の3次元モデルで説明されます。
次元 | 説明 | 例 |
---|---|---|
原因の所在(内的/外的) | 自分に原因があるのか、他者や環境か | 努力不足(内的) vs 難問だった(外的) |
安定性(安定/不安定) | 原因が変わるかどうか | 能力(安定) vs 運(不安定) |
統制可能性(統制可能/不可能) | 自分でコントロールできるか | 努力(統制可能) vs 体調不良(統制不可能) |
この3次元により、「同じ失敗」でも人によって受け取り方が変わり、感情(怒り、恥、罪悪感など)や動機づけにも違いが出るとされます。
具体的な実験や観察手法と結論
実験例:
被験者にテストの結果を提示し、その原因について自由に述べさせました。
その後、彼らの回答を「内的・外的」「安定・不安定」「統制可能・統制不可能」に分類し、次回の行動意欲を調べました。
結論:
- **内的・統制可能な原因(例:努力不足)**に帰属する人は、次回への意欲が高い
- **外的・不安定な原因(例:運)**に帰属する人は、動機づけが低くなりやすい
例文
テストで悪い点をとったけど、「勉強が足りなかったせいだ」と思ったAくんは、次回からもっと頑張ろうとやる気が出ました。これはワイナーの帰属理論でいう「内的・統制可能」な帰属です。
疑問
Q: ワイナーの帰属理論は他の理論と何が違うのですか?
A: ワイナーは「原因の3次元」を明確にした点で特徴的です。従来の理論よりも感情やモチベーションとの関連を深く分析しています。
Q: 「統制可能性」の判断は主観的じゃないですか?
A: はい、主観的です。同じ原因でも人によって「コントロールできる」と感じるかどうかは異なります。
Q: 成績が悪かったとき、「運が悪い」と思うのは良くないのでしょうか?
A: 一時的には気が楽になりますが、「運」にばかり帰属すると努力への動機づけが低下します。
Q: 帰属のパターンは性格と関係していますか?
A: 関係があります。たとえば、学習性無力感に陥りやすい人は、失敗を内的・安定・統制不能(=自分には能力がない)と帰属しやすいです。
Q: この理論は教育現場でどう活かされますか?
A: 教師が「努力したね」と声をかけることで、子どもは「頑張れば成果が出る」と学びやすくなります。
理解度を確認する問題
ワイナーの帰属理論が説明するのはどれですか?
A. 感情の種類
B. 記憶の仕組み
C. 成功・失敗の原因の捉え方
D. 言語の発達
正解:C
ワイナーの帰属理論における「能力」は、どの分類に該当しますか?
A. 外的・安定・統制可能
B. 内的・安定・統制不可能
C. 内的・不安定・統制可能
D. 外的・不安定・統制不可能
正解:B. 内的・安定・統制不可能
関連キーワード
- 帰属理論
- 動機づけ(モチベーション)
- 原因帰属
- 学習性無力感
- 成績評価とフィードバック
関連論文
Weiner, B. (1985). An attributional theory of achievement motivation and emotion. Psychological Review, 92(4), 548–573.
簡単な解説:
この論文でワイナーは、「成功や失敗の原因に対する認知的評価(帰属)」が、感情(誇り、罪悪感、羞恥など)や将来の努力にどのように影響するかを詳細に理論化しています。
主な結果:
- 自分の行動に帰属させた方が、将来のモチベーションが上がる
- 他者や運のせいにすると、行動の改善が起こりにくい
Weiner’s Attribution-Emotion-Action Model: Uncovering the Mediating Role of Self-Blame and the Moderating Effect of the Helper’s Responsibility for the Help Recipient’s Behavior
この研究は、ワイナーの「帰属→感情→行動」モデルを発展させたもので、特に**援助行動(人を助けるとき)**に焦点を当てています。
研究者は「自己非難(self-blame)」が、感情と行動の間を媒介し、また、援助される側の責任の程度がこの関係に影響を与えるのかを調べました。
主な結果:
- 援助者は、相手が「自分の行動のせいで困っている」と思うとき、怒りよりも自己非難や罪悪感を感じやすくなり、その結果、より援助的な行動を取りやすくなる。
- 逆に、相手の責任が重いと認識すると、援助意欲が低下する。
解釈:
この結果は、「帰属の仕方(どこに責任があると感じるか)」によって、感情が変化し、行動意欲にも大きな影響があるという、ワイナーの基本モデルを支持しています。さらに、感情の媒介として自己非難が重要な役割を果たしていることが新たに示されました。
Toward a Fuller Understanding of Weiner’s Attribution Theory
この論文は、ワイナーの帰属理論における「統制可能性」と「責任」の関係を再評価しています。また、個人差(例えば性格や文化)によって、帰属傾向や感情反応がどう変わるかも分析しています。
主な結果:
- 「統制可能」と判断される原因(例:努力不足)は「責任がある」と解釈されやすく、援助よりも非難されやすくなる。
- 文化的背景によって、原因帰属の傾向やそれに基づく感情反応には有意な違いが見られた。
解釈:
帰属理論は一見シンプルに見えますが、「原因の統制可能性」と「責任の帰属」は同じではないという点が重要です。また、帰属スタイルは文化や個人特性によっても影響されるため、応用には慎重さが必要であると示唆されました。
覚え方
「ワイナー=“わい”が原因を考える人」
(※「わい=自分」ってことで、「原因をどこに帰属するか」を考える心理学者と覚えましょう!)
ワイナーってのは、「なんでうまくいかなかったんやろ…」って考えるときに、「それ、自分の努力不足?それとも運?」っていう“原因探しゲーム”の達人みたいな人!
で、その考え方によって「次、頑張る気あるかどうか」が変わるって話です。
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