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3.発達・教育

発達・教育
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  1. 生物的観点から見た発達について
    1. 生理的早産
    2. 二次就巣性
    3. ローレンツ
    4. 臨界期
  2. 発達の理論
    1. 成熟説
    2. 環境説
    3. 輻輳説
    4. 環境閾値説
    5. 相互作用説
  3. 乳幼児期の身体・運動の発達
    1. 発達曲線
    2. 原始反射
      1. 吸啜反射
      2. モロー反射
    3. 粗大運動
    4. 微細運動
    5. 発達加速現象
      1. 成長加速現象
      2. 成熟前傾現象
    6. なん語
    7. グルーイング
    8. 1語文
    9. 2語文
    10. 多語文
  4. ピアジェとヴィゴツキーの発達理論
    1. ピアジェの認知発達理論
      1. 認知発達の4段階
      2. シェマ
      3. 対象の永続性
      4. アニミズムと3つの山問題
      5. 自己中心性
    2. ヴィゴツキーの社会文化理論
      1. 発達の最近接領域
      2. 足場
      3. 内言と外言
      4. 自己中心語
    3. ブロンフェンブレナーの生態学的発達理論
      1. 生態学的発達理論
        1. 1. ミクロシステム(Microsystem)
        2. 2. メソシステム(Mesosystem)
        3. 3. エクソシステム(Exosystem)
        4. 4. マクロシステム(Macrosystem)
  5. 発達段階と発達課題
    1. 発達段階
    2. 発達課題
    3. ハヴィガーストの発達段階と課題
      1. 1. 乳幼児期(0~5歳)
      2. 2. 学童期(6~12歳)
      3. 3. 青年期(13~19歳)
      4. 4. 若年成人期(20~39歳)
      5. 5. 中年期(40~64歳)
      6. 6. 老年期(65歳以上)
    4. エリクソンの漸成的発達理論
    5. エリクソンの8つのライフサイクル
    6. 人生の正午
  6. 母子関係の理論
    1. 愛着理論
    2. ホスピタリズム
    3. マターナル・デブリヴェーション
    4. ストレンジ・シチュエーション法
    5. 愛着の質の分類
    6. ハーロウの実験
    7. 安全基地
    8. 内的作業モデル
    9. スピッツ
      1. 人見知り
      2. 8ヶ月不安
    10. ウィニコット
      1. 分離不安
      2. 移行対象
    11. マーラー
      1. 分離・個別化のプロセス
      2. 心理的出産
      3. サブフェーズ
  7. 社会性の発達
    1. 生理的微笑
    2. 社会的微笑
    3. マザリース(母性言語)
    4. 社会的参照
    5. パーテンの遊びの段階
      1. 独り遊び
      2. 並行遊び
      3. 連合遊び
      4. 協同遊び
    6. ギャングエイジ
      1. ギャンググループ
    7. ヤマアラシのジレンマ
  8. 道徳性の発達
    1. コールバーグ
      1. コールバーグの3つの水準
      2. モラルジレンマ課題
    2. ギリガンの批判
    3. トュリエル
  9. 思春期・青年期の心理発達
    1. 第二次反抗期
    2. 第二の固体化
    3. 心理的離乳
      1. ホリングワース
    4. マーシャ
      1. アイデンティティ達成
      2. アイデンティティ拡散
      3. モラトリアム
      4. 早期完了
  10. 学習動機づけ
    1. 外発的動機づけ
    2. 内発的動機づけ
    3. アンダーマイニング効果
    4. 学習性無力感
    5. ワイナーの3つの帰属次元
    6. 自己決定理論
    7. 達成目標理論
    8. デュエック
      1. 学習目標(Learning Goals)
      2. 遂行目標(Performance Goals)
  11. 教授学習法
    1. 適正処遇交互作用
    2. 完全習得学習
    3. 発見学習
    4. 有意味受容学習
      1. オーガナイザー
        1. 先行オーガナイザー
        2. 説明オーガナイザー
        3. 比較オーガナイザー
    5. スモールステップの原理
    6. 枝分かれ型プログラム
    7. 直線型プログラム
  12. 教育評価
    1. ブルームの教育評価の分類
      1. 診断的評価
      2. 形成的評価
      3. 総括的評価
        1. 指導機能(Instructional Function)
        2. 管理機能(Administrative Function)
    2. 絶対評価
    3. 相対評価
    4. 個人内評価
      1. 横断的評価
      2. 縦横断的評価
  13. 学習・学力
    1. ハロー効果
    2. ピグマリオン効果
    3. 全習法
    4. 分習法
    5. 転移
    6. オーバーアチーバー
    7. アンダーアチーバー
    8. 学習到達度調査(PISA)
  14. 知能に関する理論
    1. スピアマンの理論:知能の2因子説
    2. サーストンの理論:知能の多因子説
    3. ギルフォードの理論:知能の3次元構造モデル
    4. キャッテルの理論
    5. キャロルの三層モデル
    6. CHC理論
  15. 知能検査
    1. ビネーとシモン
    2. シュテルン
    3. ターマン
      1. スタンフォード・ビネー式知能検査
    4. 田中寛一
    5. ウェクスラー
      1. WPPSI、WISC、WAIS
      2. 偏差知能指数(DIQ)
    6. カーク
    7. カウマン夫妻
  16. 発達障害
    1. DSM-5
      1. 精神障害の分類
      2. 重症度のランク
      3. ADHD(注意欠如・多動性障害)
      4. 限局性学習症
    2. 冷蔵庫マザー
    3. 早期小児自閉症
    4. アスペルガー症候群
      1. 自閉症スペクトラム障害(ASD)
    5. 3つ組
    6. 心の理論
  17. 発達検査
    1. 小児検査、1歳から6歳までの発達検査
      1. 乳幼児精神発達検査
    2. 発達診断学:小児の正常発達と異常発達
      1. 乳幼児発達診断法
    3. 遠城寺式乳幼児分析的発達検査
    4. K式発達検査
    5. デンバー式発達スクリーニング検査
      1. 日本版デンバー式発達スクリーニング検査
    6. グッドイナフ人物画像認知検査
  18. 特別支援教育
    1. 発達障害者支援法
    2. 特殊教育
    3. 特別支援教育施行
    4. 二次的障害
    5. 学習障害
    6. 特別支援コーディネーター
    7. 広域特別支援連携協議会:
    8. 通級
    9. 特別支援学級
    10. 特別支援学校
  19. 教育相談・スクールカウンセリング
    1. スクールカウンセリング
      1. カウンセリング
      2. コンサルテーション
      3. コーディネーション
    2. エンカウンター・グループ
    3. ピア・カウンセリング
    4. アサーション・トレーニング
    5. ソーシャルスキル
    6. 自己効力感
    7. ソシオメトリー
    8. 選択性緘黙(かんもく)
    9. 分離不安症
    10. チック
    11. 反応性愛着障害
    12. 遊戯療法
    13. 適応指導教室
  20. 発達研究の方法
    1. 横断的研究法
    2. 縦断的研究法
    3. コホート
    4. 双生児法
    5. 順化・脱順化
    6. 選考注視法

生物的観点から見た発達について

発達心理学では、人間の成長や学習、行動の変化を研究します。生物的観点から見た発達は、人間の発達がどのように生物学的要因によって影響されるかを考えることです。

キーワードとして「生理的早産」「二次就巣性」「ローレンツ」「臨界期」を取り上げます。

生理的早産

生理的早産とは、人間の赤ちゃんが他の哺乳類と比べて早く生まれることを指します。人間の赤ちゃんは、他の動物に比べて未熟な状態で生まれますが、これは大きな頭脳を持つためです。大きな頭が母体を通過できるようにするため、赤ちゃんは早く生まれる必要があります。

二次就巣性

二次就巣性とは、赤ちゃんが生後長い期間親の世話を必要とすることを指します。人間の赤ちゃんは、他の動物に比べて長い間、親の保護と指導を受ける必要があります。これにより、複雑な社会的スキルや言語などを学ぶことができます。

ローレンツ

ローレンツは、動物行動学の分野で重要な研究者です。彼は、動物がどのようにして行動パターンを学ぶかを研究し、特に「ハイイロガンの刷り込み」という現象を発見しました。これは、生後間もない動物が特定の物体や生物に強く反応し、それについて行動を学ぶ過程です。

臨界期

臨界期とは、特定の行動や能力が学ばれるための重要な時期を指します。この期間に特定の刺激や経験がないと、その行動や能力は正常に発達しないことがあります。例えば、言語習得において、幼少期は言語を学ぶのに最適な時期です。

発達の理論

人間の発達を理解するためのさまざまな視点を提供します。発達は複雑なプロセスであり、遺伝的要因、環境的要因、そしてそれらの相互作用によって影響されることを理解することが重要です。

成熟説

成熟説は、人間の発達が遺伝的プログラムに従って自然に起こるという考え方です。アーノルド・ゲゼルによって提唱されたこの理論によると、子どもの成長や学習は、主に生まれつきの能力や遺伝的要因によって決まります。例えば、歩き始める時期や言葉を話し始める時期は、遺伝によって大まかに決まっているとされます。

環境説

環境説は、人間の発達が環境や育った環境に大きく影響されるという考え方です。ジョン・ワトソンやB.F.スキナーのような行動主義者によって強調されたこの理論では、家庭環境、教育、文化、社会的な経験などが、子どもの発達に大きく影響します。

輻輳説

輻輳説は、成熟説と環境説の中間的な立場をとる考え方です。この理論によると、発達は遺伝的な要因と環境的な要因の両方によって影響されます。つまり、子どもの成長は、生まれ持った能力と育った環境の両方が組み合わさって決まるとされます。

環境閾値説

環境閾値説は、遺伝的な要因がある程度のレベルに達した後、環境が重要になるという考え方です。この理論では、遺伝的な能力が一定の「閾値」に達するまでは、環境の影響はあまりないとされます。しかし、その閾値を超えた後は、環境が発達に大きく影響を与えるようになります。

相互作用説

相互作用説は、遺伝と環境が相互に作用しながら、子どもの発達を形作るという考え方です。ユーリ・ブロンフェンブレンナーなどの研究者によって強調されたこの理論では、遺伝的要因と環境的要因が互いに影響し合いながら、子どもの成長や学習に影響を与えるとされます。

乳幼児期の身体・運動の発達

乳幼児期の身体・運動の発達を理解することができます。この時期の発達は、子どもの将来の成長にとって非常に重要です。

発達曲線

乳幼児期の発達曲線は、スキャモンが提唱した子どもの成長と発達の変化を示すグラフです。この曲線は、身長や体重の増加、運動能力の発達などを示し、個々の子どもの成長を追跡するのに役立ちます。

スキャモンは主に3つの成長曲線を提案しました:

  1. リンパ組織の成長曲線:この曲線によると、リンパ組織(例えば扁桃腺や脾臓)は早く成長し、思春期にピークに達した後、成人期に減少します。
  2. 神経組織の成長曲線:神経組織(脳など)は、生後早い段階で急速に成長し、早く成熟します。これは、脳の発達が幼少期に特に重要であることを示しています。
  3. 一般体組織の成長曲線:筋肉や骨などの体組織は、より一貫したペースで成長し、思春期に成長が加速する傾向があります。

原始反射

原始反射は、生まれたときから持っている無意識の反応です。これには、吸啜反射の他に、掴む反射や歩行反射などがあります。これらの反射は、生後3ヶ月で消失することが多いです。

吸啜反射

吸啜反射は、生まれたばかりの赤ちゃんが持っている原始反射の一つです。赤ちゃんの口に何かが触れると、自動的に吸う動作をする反射です。これにより、赤ちゃんは母乳やミルクを飲むことができます。

モロー反射

モロー反射も原始反射の一つで、驚かされたときや急に姿勢が変わったときに見られます。赤ちゃんが両腕を広げ、その後すぐに腕を抱きしめるような動作をするのが特徴です。

粗大運動

粗大運動は、大きな筋肉を使う運動のことで、例えば、座る、はいはいする、立つ、歩くなどが含まれます。乳幼児期は、これらの運動能力が発達する重要な時期です。

微細運動

微細運動は、小さな筋肉を使う運動のことで、手や指の細かな動きを指します。物をつかむ、絵を描く、食べ物をつまむなどが含まれます。これらも乳幼児期に発達します。

発達加速現象

発達加速現象は、子どもたちが過去の世代に比べて身体的・精神的に早く成長する現象を指します。近年の子どもたちは、より早く身体的な発達や言語の発達を遂げる傾向があります。この現象は、栄養状態の改善、医療の進歩、教育の充実などによって引き起こされると考えられています。

成長加速現象

成長加速現象は、子どもたちの身長や体重が過去の世代に比べて早く、また大きくなる傾向を指します。これは、栄養の改善や生活環境の向上により、子どもたちの身体的成長が加速していることを示しています。

成熟前傾現象

成熟前傾現象は、子どもたちが過去の世代に比べて、思春期の到来が早まる傾向を指します。これは、身体的な成熟が以前よりも早く進むことを意味し、特に女の子の場合、月経開始年齢が低下するなどの現象が見られます。栄養状態の改善や社会的・心理的な要因が影響しているとされます。

なん語

「なん語」とは、赤ちゃんが特定の意味を持たない音声を出すことです。この段階では、赤ちゃんはまだ言葉を理解していないため、さまざまな音を試しています。これは言語の発達の初期段階で、赤ちゃんが音声を模倣する練習をしていると考えられます。

グルーイング

グルーイングは、赤ちゃんが発する、母音や子音に似た音声のことです。通常、生後数ヶ月から見られるようになります。グルーイングは、赤ちゃんが自分の声帯や口の動きを使って音を作ることに慣れる過程です。この段階ではまだ意味のある言葉は発しませんが、音声発達の重要なステップとなります。

グルーイングは、赤ちゃんが言語の基本的な要素を学ぶ過程であり、成長に伴ってより複雑な言語能力へと進展していきます。この段階での親や保護者とのコミュニケーションは、言語の発達を促進する重要な役割を果たします。親が赤ちゃんの発する音に反応し、話しかけることで、赤ちゃんはさらに言葉に興味を持ち、コミュニケーションの基礎を学ぶことができます。

1語文

1語文は、赤ちゃんが一つの単語で意思を表現する段階です。例えば「ミルク」と言ってミルクを要求するなど、単純ながら意味のあるコミュニケーションが行われます。

2語文

2語文は、赤ちゃんが二つの単語を組み合わせて意思を表現する段階です。例えば「ママ、来て」と言うことで、ママに来てほしいと表現します。

多語文

多語文は、赤ちゃんが複数の単語を組み合わせて複雑な意思を表現する段階です。言語の発達が進み、より複雑な文を作ることができるようになります。

ピアジェとヴィゴツキーの発達理論

ピアジェは子どもの認知的側面に焦点を当て、ヴィゴツキーは社会的な相互作用の重要性を強調し、ブロンフェンブレンナーは発達を環境システムの視点から捉えました。

これらの理論は、子どもの発達を理解するための異なる視点を提供します。

ピアジェの認知発達理論

認知発達の4段階

ピアジェは、子どもの認知発達を4つの段階に分けました。

  1. 感覚運動期(生後0-2歳):直接的な感覚や運動を通じて世界を理解します。
  2. 前操作期(2-7歳):言語と象徴的思考が発達しますが、論理的思考はまだ未熟です。
  3. 具体的操作期(7-11歳):具体的な物事に対する論理的思考が発達します。
  4. 形式的操作期(11歳以降):抽象的かつ仮説的推論が可能になります。

シェマ

シェマは、経験に基づく思考や行動のパターンです。子どもは新しい情報を既存のシェマに組み込む(同化)か、シェマを新しい情報に合わせて変更する(調整)ことで学習します。

シェマは、私たちが複雑な世界を効率的に理解し、適応するための重要な心理学的ツールになります。子どもの発達においては、新しい経験や情報を統合し、世界についての理解を深めるために不可欠な役割を果たします。

対象の永続性

対象の永続性は、物体が視界から消えても存在し続けると理解する能力です。これは感覚運動期の後半に発達します。

アニミズムと3つの山問題

アニミズムは、無生物に生命や意識があると考えることです。これは前操作期の子どもによく見られます。3つの山問題は、子どもが異なる視点を理解する能力をテストする実験で、自己中心性の示唆に用いられます。

自己中心性

自己中心性は、子どもが他人の視点を理解できない状態を指します。これも前操作期に特徴的です。わがままなわけではありません。

ヴィゴツキーの社会文化理論

発達の最近接領域

ヴィゴツキーは、子どもの発達が社会的な相互作用に強く影響されると考えました。発達の最近接領域は、子どもが自力で解決できる課題と、助けがあれば解決できる課題との間のギャップです。

足場

足場は、大人やより能力のある仲間が子どもの学習を支援する方法です。指導者は、子どもが自力でできることと少し助けが必要なことの間で支援を提供します。

内言と外言

内言は、子どもが内心で話す言葉です。これは思考のための言語です。外言は、他人とコミュニケーションするための言語です。ヴィゴツキーによると、子どもは最初は外言を使い、徐々に内言を発達させます。

自己中心語

自己中心語は、子どもが自分自身と話す言葉です。ヴィゴツキーは、これが思考の発達に役立つと考えました。

ブロンフェンブレナーの生態学的発達理論

ヴィゴツキーの理論などに影響を受け、生態学的発達理論を提供しました。

生態学的発達理論

子どもの発達が複数の環境システムに影響されると考えました。これには、家庭、学校、地域社会などが含まれます。彼の理論は、子どもの成長が複雑な社会的環境の中で起こることを強調します。

1. ミクロシステム(Microsystem)

ミクロシステムは、個人が直接的に関わる環境を指します。これには家庭、学校、友人、近隣などが含まれます。これらの環境は、個人に直接的な影響を与え、日常的な相互作用の場です。

2. メソシステム(Mesosystem)

メソシステムは、ミクロシステム内の異なる要素間の関係を指します。例えば、家庭と学校の関係、友人関係と家族の関係などが含まれます。これらの相互作用が、個人の発達に影響を与えます。

3. エクソシステム(Exosystem)

エクソシステムは、個人が直接関わらないが、その発達に影響を与える要素を指します。例えば、親の職場環境、地域社会のサービス、マスメディアなどが含まれます。これらの要素は間接的に個人の生活や発達に影響を及ぼします。

4. マクロシステム(Macrosystem)

マクロシステムは、文化、社会的価値観、法律、政治的体制など、広い社会的文脈を指します。これらの大きな要因は、他のすべてのシステムに影響を与え、個人の生活や発達に間接的に影響を与えます。

これら3名の理論は、子どもの発達を理解するための異なる視点を提供します。ピアジェは子どもの認知的側面に焦点を当て、ヴィゴツキーは社会的な相互作用の重要性を強調し、ブロンフェンブレンナーは発達を環境システムの視点から捉えました。

発達段階と発達課題

発達段階

ハヴィガーストが提唱した発達段階とは、人間の一生において経験するさまざまな成長と変化の期間を指します。これらの段階は、身体的、心理的、社会的な発達において異なる特徴を持ちます。

発達課題

人生の各段階に特有の発達課題があると考えました。これらの課題は、その段階で成功的に解決することが、次の段階での幸福と成功につながるとされます。例えば、幼少期に友達を作る、青年期に自己のアイデンティティを確立するなどが含まれます。

ハヴィガーストの発達段階と課題

ハヴィガーストは、人生のさまざまな段階における特定の発達課題を提唱しました。これらの課題は、その段階で成功的に解決することが重要で、次の段階での幸福と成功につながります。

1. 乳幼児期(0~5歳)

  • 基本的な信頼感の形成:安心感を持って周囲の世界と関わること。
  • 身体的な制御の習得:歩く、話す、トイレトレーニングなど。

2. 学童期(6~12歳)

  • 学ぶ能力の習得:読み書きや計算など、学校での基本的な技能を学ぶこと。
  • ルールを学ぶ:社会的なルールや行動の規範を理解し、遵守すること。
  • 友達を作る:同年代の子どもたちとの友情を築くこと。

3. 青年期(13~19歳)

  • 自己のアイデンティティの確立:自分は誰か、何をしたいのかを理解すること。
  • キャリアと将来の計画:職業や将来についての方向性を考えること。
  • 独立性の発達:親からの独立、自己責任の感覚を持つこと。

4. 若年成人期(20~39歳)

  • 結婚と家庭生活:パートナーを見つけ、家庭を築くこと。
  • キャリアの確立:職業において安定した地位を築くこと。
  • 社会生活:地域社会や社会活動に参加し、貢献すること。

5. 中年期(40~64歳)

  • 子どもの育成:子どもを育て、彼らの成長を支援すること。
  • 生活の維持:仕事と家庭生活のバランスを保ち、経済的な安定を維持すること。
  • 社会的責任:地域社会や職場でのリーダーシップや責任を担うこと。

6. 老年期(65歳以上)

  • 人生の振り返り:過去を振り返り、人生を受け入れること。
  • 新しい役割の適応:退職後の生活や活動に適応すること。
  • 人間関係の維持:家族や友人との関係を保ち続けること。

エリクソンの漸成的発達理論

エリクソンの理論は、フロイトの精神分析理論に基づきつつ、社会的・文化的要因を強調します。彼は、人間の一生を通じて続く発達過程を重視し、心理・社会的危機の解決が個人の成長に重要であると考えました。

エリクソンの8つのライフサイクル

エリクソンは、人生を8つの発達段階に分け、各段階で特定の心理・社会的危機が生じると考えました。これらの危機を解決することで、人は成長し、次の段階へと進みます。

  1. 信頼対不信(乳児期)
  2. 自律対恥・疑惑(幼児期)
  3. 主導性対罪悪感(就学前期)
  4. 勤勉対劣等感(学童期)
  5. アイデンティティ対役割混乱(青年期)
  6. 親密対孤立(成人初期)
  7. 生産性対停滞(中年期)
  8. 統合対絶望(老年期)

人生の正午

ユングは、人間の発達が単に子供期や青年期に限られるのではなく、一生を通じて続くと考えました。彼は「人生の正午」という概念を提唱し、中年期に新たな自己認識と成長が起こると考えました。

母子関係の理論

母子関係の理論は子どもの発達における愛着と母子関係の重要性を示しています。愛着の形成は、子どもの心理的安定性と将来の人間関係の基盤を築く上で非常に重要です。

愛着理論

ボウルビイは愛着理論を提唱しました。この理論によると、子どもは生まれつき、母親や他のケアギバーとの強い感情的な絆を形成する本能を持っています。この絆(愛着)は、子どもに安全感を与え、探索や学習の基盤となります。

ホスピタリズム

ホスピタリズムは、長期的な病院滞在や孤児院、保育施設などでの生活によって子どもが経験する発達障害を指します。この状況では、子どもは一貫した愛情やケアを受けることができず、感情的なつながりや安定感を欠くことがあります。

マターナル・デブリヴェーション

マターナル・デブリヴェーションは、母親や主要なケアギバーからの愛情とケアの欠如が子どもの発達に悪影響を与えることを指します。この状況は、施設での生活、親の不在、虐待やネグレクトなどさまざまな原因で生じる可能性があります。

ストレンジ・シチュエーション法

エインズワースは、愛着の質を測定するための「ストレンジ・シチュエーション法」を開発しました。この方法では、母親と離れたり、見知らぬ人と一緒になったりする状況での子どもの行動を観察し、愛着のタイプを判定します。

愛着の質の分類

愛着の質には大きく分けて以下のタイプがあります:

  • 安定型:母親に安心感を持ち、母親から離れても安定した行動を見せる。
  • 回避型:母親に対して無関心で、ストレスを感じても求めない。
  • 抵抗型:母親に対して不安定で、離れると不安になるが、再会しても怒りを示すことがある。

ハーロウの実験

ハーロウはアカゲサルを用いた実験で、愛着が単に食物を提供すること以上のものであることを示しました。サルは、柔らかくて温かい「母親」を食物を提供するワイヤーの「母親」よりも好むことがわかりました。

安全基地

子どもが新しい環境や活動を探求する際に、安全と安心を感じられる親やケアギバーの存在を指します。子どもは、探索中に不安や困難を感じたとき、この安全基地に戻ることで安心感を得ることができます。親やケアギバーは、子どもが自信を持って探索や学習を行えるようサポートし、必要な時には慰めや助けを提供します。

内的作業モデル

子どもが自分自身、他人、そして関係性に関して心の中で形成する概念です。このモデルは、子どもが初期の愛着関係を通じて経験した相互作用に基づいて形成され、将来の人間関係の構築や期待に影響を与えます。

スピッツ

スピッツは、子どもが主要なケアギバーから長期間離れていると分離不安を経験することを発見しました。これは、愛着関係が確立されていることの表れであり、赤ちゃんが主要なケアギバーとの間に安心感と安全感を持っていることを示しています。人見知りと8ヶ月不安は、この愛着関係の発達の重要な段階を示しています。

人見知り

人見知りは、特に生後6ヶ月から12ヶ月頃の赤ちゃんが見せる行動で、見知らぬ人やあまり親しくない人に対して不安や恐怖を示します。これは、赤ちゃんが主要なケアギバーとの愛着関係を形成し、安心できる人物とそうでない人物を識別し始める時期と一致しています。

8ヶ月不安

生後約8ヶ月頃に多くの赤ちゃんが示す、主要なケアギバーから離れることに対する不安や恐怖の増加を指します。この時期、赤ちゃんは主要なケアギバーとの間に強い絆を感じ、その人物から離れると不安を感じるようになります。この反応は、愛着が形成されている証拠であり、子どもが安全基地としてのケアギバーを必要としていることを示しています。

スピッツは、子どもが主要なケアギバーから長期間離れていると分離不安を経験することを発見しました。これは、愛着関係が確立されていることの表れであり、赤ちゃんが主要なケアギバーとの間に安心感と安全感を持っていることを示しています。人見知りと8ヶ月不安は、この愛着関係の発達の重要な段階を示しています。

ウィニコット

ウィニコットの理論は、子どもの感情的発達と親子関係の理解において大きな影響を与えています。彼の考え方は、親が子どもの健康な発達をサポートするための重要な洞察を提供し、子どもの内面世界と外部世界との関係を理解するための基盤を築きました。

分離不安

子どもが母親や主要なケアギバーから物理的に離れる際に感じる不安や恐怖を指します。この不安は通常、生後7~8ヶ月頃に始まり、子どもが母親やケアギバーとの間に形成した愛着に基づいて発生します。分離不安は、子どもが安心感や安全感を得るために母親やケアギバーの存在を必要としていることを示しています。

移行対象

子どもが母親や主要なケアギバーからの分離を容易にし、自己の独立性を発達させるのを助けるために用いる物体です。これは通常、ぬいぐるみや毛布などの特定のアイテムで、子どもに安心感や慰めを提供します。ドナルド・ウィニコットによって提唱された概念で、移行対象は子どもが外の世界への移行を行い、自己のアイデンティティを発達させる際の重要な役割を果たします。

分離不安の期間中、移行対象は特に重要な意味を持ちます。子どもはこの対象を通じて、母親やケアギバーから離れる際の不安やストレスを軽減し、新しい環境や状況に適応するのを助けることができます。移行対象は、子どもが新しい環境や状況に適応する際の感情的なサポートとなり、自己の安全基地を内面化する手助けとなります。

マーラー

オーストリア生まれのアメリカの精神分析学者で、特に幼児期の心理発達に関する研究で知られています。彼女の研究は、子どもの自己のアイデンティティの形成と親子関係の理解に大きな影響を与えました。

分離・個別化のプロセス

マーラーは、幼児期に起こる「分離・個別化のプロセス」を提唱しました。このプロセスは、生後数ヶ月から約3歳まで続き、子どもが母親(または主要なケアギバー)から身体的および感情的に独立していく過程を指します。この時期に子どもは、自己のアイデンティティを発達させ、独立した個体としての自己認識を形成していきます。

心理的出産

生物学的出産に加えて「心理的出産」の概念を提唱しました。これは、子どもが心理的に母親から分離し、個別の自己としてのアイデンティティを確立する過程を指します。

サブフェーズ

分離・個別化のプロセスは、いくつかのサブフェーズに分けられます。これには、正常な自己愛期、分離練習期、再接近期などが含まれます。各フェーズでは、子どもは母親との関係を再評価し、自己の独立性を探求します。

社会性の発達

子どもの社会性の発達を理解する上で重要な概念を説明しています。子どもは幼児期から青年期にかけて、さまざまな社会的スキルと関係性を学び、発達させていきます。

生理的微笑

生理的微笑は、生後数週間から数ヶ月の赤ちゃんが示す自然な微笑みで、特に社会的な反応ではなく、主に睡眠中やリラックスしているときに見られます。この微笑みは、赤ちゃんの脳の発達や感情的な準備の一環として起こりますが、特定の人物や刺激に対する意識的な反応ではありません。生理的微笑は、赤ちゃんの神経系の発達の過程で自然に現れる現象です。

社会的微笑

社会的微笑は、生後約6週間から数ヶ月の赤ちゃんが示す、他者、特に親やケアギバーの顔を認識し、その顔の表情や声に反応して示す微笑みです。社会的微笑は、赤ちゃんが人々との社会的な相互作用を始める最初の明確なサインの一つとされ、赤ちゃんが社会的な世界に関心を持ち始めていることを示しています。

マザリース(母性言語)

マザリース(母性言語)は、大人が赤ちゃんや幼児に話しかける際に用いる、特徴的な高い声調や誇張された表現のことです。この言語スタイルは、子どもの注意を引き、言語発達を促進するのに役立ちます。

社会的参照

子どもが不確かな状況で、周囲の大人の表情や反応を見て、自分の行動を決定するプロセスです。例えば、見知らぬ人や新しい物に対する反応を、母親の表情から学ぶことがあります。

パーテンの遊びの段階

パーテンは、子どもの遊びの発達段階を分類しました。これには、独り遊び、並行遊び、連合遊び、そして最終的には協同遊びが含まれます。

独り遊び

子どもが他の子どもたちや大人との直接的な相互作用なしに、一人で遊ぶ行為を指します。一人で遊ぶことにより、子どもは自分の内面世界を探索し、自分だけの遊び方を見つけることができます。また、独り遊びは子どもが自己認識を高め、自己効力感を育む機会となります。

並行遊び

幼児が他の子どもたちの近くで遊ぶが、直接的な相互作用をしない遊びの形態です。この段階では、子どもたちは互いに影響を与え合いながらも、個別の活動に集中します。

連合遊び

連合遊びは、子どもたちが互いに相互作用をしながら遊ぶが、共有された目的やルールはまだ存在しない遊びの形態です。この段階で、子どもたちは社会的なスキルを発達させます。

協同遊び

協同遊びは、子どもたちが共有された目的やルールに基づいて遊ぶ遊びの形態です。この段階では、子どもたちは協力し合い、チームワークや交渉のスキルを発達させます。

ギャングエイジ

ギャングエイジは、小学校高学年から中学生にかけての期間を指し、子どもたちが同年代のグループに強く関心を持ち始める時期です。この時期には、友情やグループの帰属感が重要になります。

ギャンググループ

グループはしばしば、共通の興味や活動、または特定の地域やコミュニティに基づいて結成されます。特に青少年期に見られ、グループのメンバー間で強い連帯感やアイデンティティを共有することが一般的です。

ヤマアラシのジレンマ

密接な人間関係の中で生じる相互依存と独立性の間の緊張を示す概念です。この比喩では、寒い冬の夜に暖を取るために近づくヤマアラシたちが、お互いの針によって傷つけ合うリスクがあるため、適切な距離を保つ必要があるという状況を描いています。これは、人間関係において親密さと自立のバランスをとることの難しさを象徴しています。

ヤマアラシのジレンマは、実際にはアルトゥール・ショーペンハウエルの寓話を基にして、心理学者のカート・レヴィンの学生であるフリッツ・ヘーダー(Fritz Heider)によって提唱されました。

道徳性の発達

道徳性の発達が個人の経験、文化的背景、社会的関係に深く影響される複雑なプロセスであることを示しています。コールバーグの理論は道徳的判断の発達段階を示し、ギリガンは性別による違いを強調し、トュリエルは社会的文脈の重要性を指摘しています。これらの理論を通じて、道徳性の発達に関するより深い理解を得ることができます。

コールバーグ

コールバーグは、道徳性の発達を3つの水準と6つの段階に分けて説明しました。彼の理論は、子どもから成人へと移行する過程で道徳的判断がどのように進化するかを示しています。

コールバーグの3つの水準

  1. 前習慣的水準:道徳的判断は報酬と罰を基にしています。
    • 段階1:罰と服従の指向
    • 段階2:個人的利益の指向
  2. 習慣的水準:社会的規範と関係に基づく道徳的判断が行われます。
    • 段階3:良い人間関係の指向
    • 段階4:法と秩序の指向
  3. 習慣以降の水準:普遍的原則に基づく道徳的判断が行われます。
    • 段階5:社会契約の指向
    • 段階6:普遍的倫理原則の指向

モラルジレンマ課題

コールバーグは、モラルジレンマ(道徳的ジレンマ)の物語を用いて、人々の道徳的判断を調査しました。最も有名な例は「ハインツのジレンマ」で、重病の妻を助けるために薬を盗むことが正しいかどうかを問う物語です。

ギリガンの批判

ギリガンは、コールバーグの理論が男性中心的であると批判しました。彼女は、女性は関係性や配慮を重視する道徳観を持つと主張し、男性と女性の道徳性の発達には異なる側面があると指摘しました。

トュリエル

道徳性の発達を社会的文脈の中で理解する社会領域理論を提唱しました。彼は、道徳的判断は文化や状況によって異なり、社会的規範や権威との関係に基づいて形成されると考えました。

思春期・青年期の心理発達

これら解説する概念は、思春期と青年期における個人の心理発達の複雑さを示しています。この時期は、自己のアイデンティティの探求と確立に重要な段階であり、個人の将来的な自己認識や人生の方向性に大きな影響を与えます。

第二次反抗期

第二次反抗期は、思春期に起こる心理的な変化の一つで、自立心の強化や親への反抗的な態度が顕著になる時期です。これは、自己のアイデンティティを確立し、親からの感情的な独立を目指す過程の一部です。

第二の固体化

青年期の終わりに向けて、自己のアイデンティティや価値観が固まり、成熟した自己認識が形成される過程を指します。これは、自己のアイデンティティを探求し、確立するための重要な時期です。

心理的離乳

子どもが親から感情的に独立し、自己のアイデンティティを発達させる過程を指します。これには、自己の意見や価値観を持ち、親の影響から離れることが含まれます。

ホリングワース

心理的離乳と読んだ人。女性のライフサイクルや性差に関する心理学的な側面に焦点を当てました。

マーシャ

マーシャは、アイデンティティの発達に関する研究で知られており、エリクソンの理論を発展させました。彼は、青年期のアイデンティティの形成を4つの地位(達成、モラトリアム、拡散、早期完了)に分類しました。

アイデンティティ達成

  • 青年が自己のアイデンティティについて深く探求し、個人的な信念や目標を確立した状態です。
  • 探求の結果として自己の価値観や目指す方向を明確にしています。

アイデンティティ拡散

  • 青年が自己のアイデンティティについての探求を行っていないか、または確立していない状態です。
  • 目標や価値観について明確な方向性がなく、将来に対して無関心な態度を示すことがあります。

モラトリアム

  • 青年が自己のアイデンティティを積極的に探求しているが、まだ確立していない状態です。
  • さまざまな選択肢や価値観を試行錯誤しながら、自分にとっての意味や方向性を見つけようとしています。

早期完了

  • 青年が深く自己探求を行わずに、親や周囲の影響に基づいてアイデンティティを確立している状態です。
  • 自分自身で選択肢を探求するよりも、他者から提供されるアイデンティティを受け入れています。

マーシャの同一性地位の理論は、青年期のアイデンティティ形成のプロセスを理解する上で重要です。これらの地位は、青年が自己のアイデンティティをどのように探求し、確立するかを示しており、個々の発達過程や心理的な状態を反映しています。

学習動機づけ

個人が学習活動に参加し、学習を継続し、学習目標を達成するための動機付けのプロセスです。このプロセスは、個人の内部的な要因(興味、好奇心、自己効力感など)と外部的な要因(報酬、評価、社会的圧力など)の両方によって影響を受けます。

外発的動機づけ

報酬や罰など外部からの要因によって行動が促されることを指します。たとえば、良い成績を取るために勉強する、または罰を避けるためにルールを守るなどがこれに当たります。

内発的動機づけ

行動が個人の興味や好奇心、楽しみなど内部からの要因によって促されることを指します。例えば、好きなことを学ぶことや興味のある活動に取り組むことがこれに該当します。

アンダーマイニング効果

外部からの報酬が内発的動機づけを減少させる現象を指します。例えば、最初は楽しんで行っていた活動に報酬が絡むと、その活動自体の楽しさが減少することがあります。

学習性無力感

個人が自分の努力や行動が結果に影響を与えないと感じる心理状態を指します。この概念は、心理学者マーティン・セリグマンによって提唱され、彼の「学習性無力」の理論に基づいています。

ワイナーの3つの帰属次元

ワイナーは、成功や失敗の原因をどのように説明するかについて3つの次元を提唱しました:

  1. 原因の所在:結果は自分の努力(内的)か他の要因(外的)によるものか。
  2. 安定性:原因は一時的(不安定)か継続的(安定)か。
  3. コントロール可能性(統制可能性):原因は自分のコントロール下にあるかどうか。

自己決定理論

デシとライアンによる自己決定理論は、内発的動機づけが3つの基本的な心理的ニーズ(自己決定/自律、有能感、関係性)に基づいていると説明します。この理論は、人が自発的かつ意欲的に行動するためにはこれらのニーズが満たされる必要があるとしています。

達成目標理論

学習者がどのような目標を持っているかによって学習動機づけが異なると説明します。目標は大きく「習熟目標」(学習や理解の向上を目指す)と「パフォーマンス目標」(他者との比較や評価を重視する)に分けられます。

デュエック

デュエックの研究では、学習目標(Learning Goals)と遂行目標(Performance Goals)という二つの重要な概念があります。これらの概念は、個人がどのように目標を設定し、達成を目指すかに関連しています。

学習目標(Learning Goals)

学習目標は、新しいスキルの習得や知識の拡大を目指す目標です。これらの目標を持つ人々は、学習プロセスそのものに価値を見出し、自己の能力を発展させることに焦点を当てます。学習目標を持つことは、成長マインドセットと関連があり、個人は挑戦を受け入れ、失敗を学習の機会として捉える傾向があります。

遂行目標(Performance Goals)

遂行目標は、他人に対して自分の能力を証明したり、有能であると認められたりすることを目指す目標です。これらの目標を持つ人々は、評価や比較に重点を置き、しばしば自分の成果やパフォーマンスを他人と比較します。遂行目標は固定マインドセットと関連があり、個人は失敗を個人的な欠点と捉えることが多いです。

教授学習法

学習者が情報を理解し、知識を習得し、スキルを発達させるのをサポートするために、教育は効果を高めるための様々な方法を提供しています。

適正処遇交互作用

クロンバックは、適正処遇交互作用(Aptitude-Treatment Interaction、ATI)に関しても重要な貢献をしました。この概念は、教育心理学において学習者の個々の適性(aptitude)と特定の教育処遇(treatment)との間の相互作用を説明します。

適正処遇交互作用の概念は、異なる学習者が同じ教育処遇に異なる反応を示すことを示しています。この理論は、全ての学習者に同じ教育方法が等しく効果的であるわけではなく、学習者の個々の特性や適性が教育処遇の効果に影響を与えると考えます。

完全習得学習

ブルームは完全習得学習の概念に大きく貢献した心理学者で、キャロルの理論を発展させ、広く普及させました。

完全習得学習(Mastery Learning)は、教育のアプローチの一つで、すべての学習者が特定の学習目標を「完全に習得」するまで学習を続けることを目指します。このアプローチは、学習者一人ひとりのペースや能力に合わせて学習を進めることに焦点を当てています。

発見学習

ブルーナーは、発見学習というアプローチを提唱しました。発見学習では、学生は自ら情報を探究し、理解することが重視されます。ブルーナーはまた、スパイラル・カリキュラムの概念を提唱しました。

有意味受容学習

有意味受容学習は、心理学者デイヴィッド・オーズベル(David Ausubel)によって提唱された学習理論です。この理論は、学習は受動的な記憶のプロセスではなく、能動的な理解と統合のプロセスとされています。学習者は新しい情報を単に記憶するのではなく、それを既存の知識と関連付けて理解します。

オーガナイザー

学習者が新しい情報を既存の知識構造に統合しやすくするための重要なツールです。教育現場において、先行オーガナイザー、説明オーガナイザー、比較オーガナイザーは、学習者が新しい概念や情報をより効果的に理解し、記憶に留めるのを助けます。

先行オーガナイザー

新しい学習内容を導入する前に提示される情報や概念のことです。これは、学習者が新しい情報を既存の知識に関連付けやすくするための「枠組み」や「橋渡し」として機能します。例えば、新しい科学のトピックを学ぶ前に、そのトピックに関連する基本的な概念を簡単に説明することがこれに当たります。

説明オーガナイザー

新しい学習内容を詳細に説明するために使用される情報です。これは、学習者が特定の新しい情報や概念をより深く理解するのを助けるために提供されます。説明オーガナイザーは、複雑な情報や概念を分かりやすく解説する際に役立ちます。

比較オーガナイザー

新しい学習内容を既知の情報や概念と比較するために使用される情報です。これにより、学習者は新しい情報を既存の知識と関連付け、類似点や相違点を理解することができます。比較オーガナイザーは、新しいトピックを既に学んだトピックと比較して理解を深める際に特に有効です。

スモールステップの原理

学習や行動変容の過程において、大きな目標を小さなステップに分けて進めるアプローチです。この原理は、特に教育や心理療法の分野で重要視されています。

枝分かれ型プログラム

クラウダーによって開発されたこのアプローチで学習者が異なる学習経路を選択できるプログラム学習の形式です。

直線型プログラム

スキナーによって提唱されたプログラム学習の形式で、全ての学習者が同じ学習経路をたどります。

教育評価


ブルームの教育評価の分類

ブルームは、教育評価の分類において重要な貢献をしました。彼は、教育の目標を異なる教育評価を「診断的評価(Diagnostic Assessment)」、「形成的評価(Formative Assessment)」、「総括的評価(Summative Assessment)」に分類しました。この分類は、教育評価が単に知識の記憶に関するものではなく、より広範な学習目標を含むべきであることを示しています。

診断的評価

  • 目的:学習者の既存の知識やスキル、理解度を評価し、学習の必要性や困難を特定すること。
  • 使用タイミング:学習活動やコースの開始前に実施されます。
  • :事前テスト、スキルチェックリスト、アンケートなど。

形成的評価

  • 目的:学習プロセス中に学習者の進捗状況や理解度を評価し、学習のガイダンスやフィードバックを提供すること。
  • 使用タイミング:学習活動中に継続的に行われます。
  • :クイズ、宿題、クラス討議、教師による観察など。

総括的評価

  • 目的:学習活動やコースの終了時に学習成果を評価し、学習者が学習目標をどの程度達成したかを判断すること。
  • 使用タイミング:学習活動やコースの終了時に実施されます。
  • :期末試験、最終プロジェクト、レポートなど。
指導機能(Instructional Function)
  • 目的:指導機能では、総括的評価を通じて教育者が教育プログラムや教授方法の有効性を評価し、必要に応じて改善することを目指します。
  • 実施方法:試験やプロジェクトの結果を分析し、学習者の理解度や成績分布を評価することで、教育内容や指導方法の改善点を特定します。
  • 重要性:指導機能は、教育者が教育プログラムを効果的に改善し、将来の学習者により良い学習経験を提供するために重要です。
管理機能(Administrative Function)
  • 目的:管理機能では、総括的評価を通じて学習者の学習成果を記録し、学位や資格の授与、進級や卒業の決定、学習者の選別などの管理上の決定を行うことを目指します。
  • 実施方法:試験成績やレポート評価などを用いて、学習者の成績を記録し、それに基づいて学習者の進級や卒業資格を判断します。
  • 重要性:管理機能は、教育機関が学習者の成果を正確に評価し、適切な学術的な決定を行うために重要です。

絶対評価

  • 定義:絶対評価は、学習者のパフォーマンスを事前に定められた基準や標準に基づいて評価する方法です。
  • 特徴
    • 学習者は、特定の基準や目標を達成しているかどうかに基づいて評価されます。
    • 学習者の成績は他の学習者と比較されることなく、個々のパフォーマンスに基づいて決定されます。
    • 具体的な学習目標やスキルの習得度を明確に評価できます。

相対評価

  • 定義:相対評価は、学習者のパフォーマンスを他の学習者のパフォーマンスと比較して評価する方法です。
  • 特徴
    • 学習者の成績は、他の学習者の成績との相対的な位置に基づいて決定されます。
    • 成績分布や曲線を用いて学習者をランク付けし、成績を決定することがあります。
    • 学習者間の競争を促進することがありますが、全員が高い成績を取ることが困難な場合もあります。
  • 適用例:学校の成績評価、偏差値、カーブに基づく評価など。

個人内評価

一人ひとりの学生の能力や学習成果を個別に評価する方法です。各学生の特性やニーズに焦点を当てて、その学生の学習状況を理解しようとします。

横断的評価

どの教科が得意か不得意かなどのプロフィールによって評価する

縦横断的評価

以前に比べてどれだけできるようになったのか時系列で評価する

学習・学力

学習の過程と成果は、認識のバイアス、学習方法、知識の転移、個人差、および学力評価の方法などの複数の要因によって影響を受けるということです。これらの要因は、個々の学習者の能力の発揮、教育の質の向上、そして教育方針の策定に重要な役割を果たします。

ハロー効果

人が他人の特定の特徴(例えば、外見の魅力)に基づいて、その他の性質や能力についての誤った判断を下す傾向です。教育の文脈では、教師が生徒の特定の特徴(例えば、礼儀正しさ)に基づいて、その学力や能力を過大評価することがあります。

ピグマリオン効果

他者(特に権威ある立場の人々)の期待が、個人のパフォーマンスに影響を与えることを指します。例えば、教師が生徒に高い期待を持つと、生徒はより良い成績を収める傾向があります。これは自己成就予言の一形態です。

全習法

課題全体をまとめて学習する方法

分習法

部分ごとに学習する方法

転移

る文脈で学んだスキルや知識が、別の文脈で応用されることです。正の転移は前に学んだことが新しい状況で役立つ場合に起こり、負の転移は前の学習が新しい学習を妨げる場合に起こります。

オーバーアチーバー

期待や標準を超えて成果を上げる人を指します。しばしば、自己の能力を超えて達成しようとする傾向があり、ストレスや燃え尽き症候群のリスクがあります。

アンダーアチーバー

自分の潜在能力に比べて低い成果を示す人を指します。これは様々な原因によるもので、学習障害、動機付けの不足、または心理的な問題が関係していることがあります。

学習到達度調査(PISA)

OECD(経済協力開発機構)は、生徒の学習到達度に関する国際的な調査「PISA(Programme for International Student Assessment)」を実施しています。
学生の学力や能力のレベルを測定するために行われる評価です。これには標準化テストや教師による評価が含まれることがあり、教育の質を向上させるためのフィードバックとして利用されます。

知能に関する理論

これらの理論は、知能が単一のものではなく、複数の要素や能力から成り立っていることを示唆しています。また、知能がどのように発達し、異なる状況でどのように機能するかについての理解を深めるのに役立ちます。

スピアマンの理論:知能の2因子説

スピアマンは知能には二つの要素があると考えました。「一般知能(一般因子)」と「特定の能力(特殊因子)」です。一般知能は、さまざまなタスクで活用される普遍的な認知能力を表し、特定の能力は特定の知能の分野に関連する特化した能力を指します。スピアマンは、これらの能力がテストのスコアにどのように影響するかを研究しました。

サーストンの理論:知能の多因子説

サーストンは、知能は複数の独立した能力から成り立っていると提唱しました。彼は、「言語理解」「語彙」「数的推理」「空間認識」「記憶」「知覚速度」「推理」の7つの主要な能力を特定しました。

ギルフォードの理論:知能の3次元構造モデル

ギルフォードは知能をより複雑な構造として捉え、180の異なる能力が存在すると提案しました。彼のモデルでは、知能は「内容」「操作」「製品」の三つの次元から成り立っています。

キャッテルの理論

キャッテルは、「流動性知能」と「結晶性知能」という2つの知能のタイプを提唱しました。流動性知能は新しい問題を解決する能力であり、年齢と共に低下する傾向があります。一方、結晶性知能は経験や知識に基づく知能で、年齢と共に増加する傾向があります。

キャロルの三層モデル

キャロルは、知能を三層の構造として捉えました。一番上の層は「一般知能(g因子)」、真ん中の層は「広域知能」(例えば、流動性知能や結晶性知能)、最下層は特定の知能や技能です。

CHC理論

CHC理論は、キャロルの三層モデルとホーン&キャッテルの知能理論を統合したものです。この理論は、知能を広範囲の認知能力に分類し、それらがどのように連携して個人の知能を形成するかを示しています。

知能検査

個人の知的能力や認知機能を評価するために設計された心理評価ツールです。

ビネーとシモン

1905年に世界初の知能テストであるビネー・シモン知能検査を開発しました。このテストは、知的障害のある子供たちを特別な教育が必要な子供たちとして識別するために作られました。ビネー・シモンスケールは、さまざまな年齢の子供たちの能力を代表すると考えられるタスクで構成されていました。

シュテルン

「知能指数(IQ)」という概念を導入しました。IQは、「精神年齢」を「実年齢」で割って100を掛けることで計算されます。これにより、子供たちの知能をより効果的に測定する方法が提供されました。

ターマン

スタンフォード大学でビネー・シモンスケールを改訂し、スタンフォード・ビネー知能検査として知られるようになりました。このテストは、現在も世界中で使用されている知能検査の一つです。

スタンフォード・ビネー式知能検査

さまざまな年齢の子供たちの知能を測定するために使用されます。このテストは、流動的推理、知識、数量的推理、視覚空間処理、作業記憶の5つの認知能力を評価します。

田中寛一

田中ビネー法は、日本で使用される知能検査で、ビネー・シモンスケールに基づいています。このテストは、子供の認知発達段階を評価するために使用されます。

ウェクスラー

ウェクスラーは知能検査の分野において多大な貢献をしました。彼は伝統的なビネー知能検査の手法が成人には適していないと考え、新たな知能検査を開発しました。

WPPSI、WISC、WAIS

これらはすべてデイビッド・ウェクスラーによって開発された知能検査です。これらはすべてデイビッド・ウェクスラーによって開発された知能検査です。

  • WPPSI: “Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence”(幼児用ウェクスラー知能検査)の略称で、幼児期(通常は2歳6ヶ月から7歳まで)の子供たちを対象とした検査です。”P”を「幼児用(Preschool)」と覚えましょう。
  • WISC: “Wechsler Intelligence Scale for Children”(子供用ウェクスラー知能検査)の略称で、一般には6歳から16歳の子供たちを対象とした検査です。”C”を「子供用(Children)」と覚えましょう。
  • WAIS: “Wechsler Adult Intelligence Scale”(成人用ウェクスラー知能検査)の略称で、主に成人(16歳以上)を対象とした検査です。”A”を「成人用(Adult)」と覚えましょう。

これらの検査は、Wechslerが開発した検査のため、それぞれの略称の最初に”W”が来ることを覚えておくと、それぞれがどの年齢層を対象としているかを思い出しやすくなります。

偏差知能指数(DIQ)

ウェクスラー式知能変数のこと。個人の知能スコアが同年齢の集団の平均からどの程度逸脱しているかを示すスコアです。平均IQは100とされており、スコアが100より高い場合は平均以上、100より低い場合は平均以下とされます。

カーク

ITPA(イリノイ知能検査)は、子供たちの言語理解能力を評価するために使用されます。回路、過程、水準という3つの次元から個人内差を把握するために利用されます。

カウマン夫妻

K-ABCを開発した。子供の認知能力と成果を測定するためのテストです。

発達障害

DSM-5

アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association, APA)によって出版された精神障害の診断と分類のための標準的なガイドラインです。DSM-5は、精神障害の診断基準、それに関連する記述、およびその他の情報を提供しています。

精神障害の分類

  1. 神経発達障害(Neurodevelopmental Disorders): 自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害など、主に発達期に始まる障害を含みます。
  2. 統合失調スペクトラムおよび他の精神病性障害(Schizophrenia Spectrum and Other Psychotic Disorders): 統合失調症、妄想障害、短期精神病性障害など、現実の歪曲や異常な思考パターンを特徴とする障害です。
  3. 気分障害(Mood Disorders): うつ病、双極性障害など、気分の極端な変動や不調和を特徴とする障害です。
  4. 不安障害(Anxiety Disorders): 汎発性不安障害、パニック障害、社会不安障害(社交恐怖症)など、強い不安や恐怖が生じる障害です。
  5. 強迫および関連障害(Obsessive-Compulsive and Related Disorders): 強迫性障害(OCD)、体験後ストレス障害(PTSD)など、強迫的な思考や行動を伴う障害です。
  6. 外傷およびストレス関連障害(Trauma- and Stressor-Related Disorders): PTSDや急性ストレス障害など、外傷的な出来事に起因する障害です。
  7. 摂食および摂食障害(Eating and Feeding Disorders): 神経性無食欲症、神経性過食症、摂食障害など、食事や体重に関する異常な行動や信念を特徴とする障害です。
  8. 排泄障害(Elimination Disorders): 夜尿症や排便障害など、排泄機能に関連する障害です。
  9. 睡眠-覚醒障害(Sleep-Wake Disorders): 不眠症、睡眠時無呼吸症候群、過眠症など、睡眠パターンに影響を及ぼす障害です。
  10. 性機能障害(Sexual Dysfunctions): 性的欲求減退、勃起不全など、性機能に関連する障害です。
  11. 性同一性障害(Gender Dysphoria): 生物学的性と自己認識の性が一致しないことによる苦悩を伴う障害です。
  12. 不適切な行動および衝動制御障害(Disruptive, Impulse-Control, and Conduct Disorders): 衝動制御障害、反社会性パーソナリティ障害など、社会的規範に反する行動や衝動性を特徴とする障害です。
  13. 物質関連および依存障害(Substance-Related and Addictive Disorders): アルコール依存症、薬物乱用障害など、物質の使用に関連する障害です。
  14. 神経認知障害(Neurocognitive Disorders): アルツハイマー病、脳血管性認知症など、認知機能の低下を伴う障害です。
  15. パーソナリティ障害(Personality Disorders): 境界性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害など、長期にわたる不適切な思考パターンや行動を特徴とする障害です。
  16. 他の精神障害(Other Mental Disorders): DSM-5には、上記のカテゴリーに分類されないその他の精神障害も含まれています。

重症度のランク

重症度のランクは、精神障害の程度や重症度を評価するための枠組みを提供します。このランク付けは、障害の影響が患者の日常生活や機能に与える影響の程度を示すために使用されます。重症度の評価は、臨床医が適切な治療計画を立てたり、経過をモニタリングしたりする際の重要な基準となります。

多くの障害に対して「軽度」「中等度」「重度」「最重度」という4段階の重症度ランクが設けられています。

ADHD(注意欠如・多動性障害)

  1. 注意欠如: これには集中力の欠如、細部への注意不足、物忘れ、組織化の困難、長期間の注意を維持することへの困難などが含まれます。
  2. 多動性・衝動性: これには過剰な動きやじっとしていることが困難、落ち着きのなさ、不必要な話しすぎ、衝動的な行動、順番を待つのが難しいなどが含まれます。

限局性学習症

特定の学習領域(読み、書き、算数)において、個人の知能水準に比べて著しく低い学習能力がみられる障害です。これは、読解、書字、算数の技能が期待される年齢や知能に比べて不十分であることを特徴とします。

冷蔵庫マザー

「冷蔵庫マザー」という理論は、以前に自閉症の原因として提唱された心理学的な概念です。この理論は、特にベッテルハイムによって有名になりましたが、現代のコンセンサスは、自閉症が強い遺伝的基盤を持つことであり、心理的な理由ではないことが示されています。

早期小児自閉症

カナーは、自閉症という用語を最初に導入し、早期小児自閉症(Early Infantile Autism)という概念を確立した精神科医です。彼は1943年に「Autistic Disturbances of Affective Contact」という論文を発表し、この状態を特定しました。カナーが観察した11人の子供たちは、現在「カナー症候群」として知られている状態の最初の記録された症例となりました。

アスペルガー症候群

アスペルガー症候群はオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーによって1944年に初めて記述されました。彼は、言語能力や知的能力は通常の範囲内であるにもかかわらず、社会的な相互作用や非言語的コミュニケーションに困難を持つ子供たちのグループを観察しました。

アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の一種で、社会的コミュニケーションと相互作用に関する困難、限定された興味や繰り返しの行動パターンを特徴としています。しかし、言語的および認知的発達には顕著な遅れが見られないことが多いです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

脳の発達に関連する障害で、社会的コミュニケーションや行動に影響を及ぼします。ASDは、人が他人との相互作用やコミュニケーション、学習、行動の仕方に影響を受ける発達障害です。ASDの原因は完全には分かっていませんが、遺伝的要因や環境要因が関与している可能性があります。

3つ組

特定の3つの問題領域を指します。これは、イギリスの児童精神科医ローナ・ウィングによって提唱された概念で、「ウィングの3つ組」とも呼ばれています。3つ組には次の領域が含まれます。

  1. 社会性の問題: 他者との関わりや関係性の構築に困難があることを指します。例えば、他者に無関心である、友人関係の構築が苦手であるなど。
  2. コミュニケーションの問題: 対人場面でのコミュニケーション方法が独特であり、字義通りの解釈が多く、言葉の裏を汲み取るのが苦手であることを指します。
  3. イマジネーション(想像力・思考の柔軟性)の問題: 次に起こることを想像しにくく、変化を嫌うことが多いことを指します。物を収集することにこだわる、ルーティンが変わると困るなどの特徴があります。

心の理論

他人の考え、感情、信念、意図を理解し、予測する能力を指します。

心の理論に関連する重要な実験として、コーエンによる「サリー・アン課題」があります。この実験では、子供たちにサリーとアンという二人のキャラクターが登場するストーリーが語られます。サリーが物をある場所に隠し、その後部屋を離れる間にアンが物を別の場所に移動します。子供たちに、サリーが戻ってきたときに物を探しに行く場所を尋ねます。心の理論を理解している子供は、サリーが物を最初に隠した場所に行くと答えます。これは、サリーが物が移動されたことを知らないという他者の視点を理解していることを示します。自閉症スペクトラム障害のある子供たちは、このタスクで困難を示すことが多く、これは彼らが心の理論の発達に障害を持っていることを示唆しています。

発達検査

発達検査は、子供の発達段階や可能性のある発達障害を特定するために使用され、早期介入や治療の計画に役立ちます。それぞれの検査は特定の年齢範囲や発達領域に焦点を当てています。

小児検査、1歳から6歳までの発達検査

ビューラーとヘッツァーによる共同研究により開発されました。この発達検査は、1歳から6歳までの乳幼児の精神活動を多面的に捉えるために作られ、ビューラーによる最初の発達検査は1932年に公刊され、ヘッツァーとの共同研究による改訂版は1935年に発表されました。この検査では、発達指数(Developmental Quotient, DQ)という概念が導入されており、子どもの現在の発達がどのくらいの年齢に相当するかを示す発達年齢(Developmental Age, DA)と実際の年齢(Chronological Age, CA)の比で計算されます。

乳幼児精神発達検査

1949年に牛島義友らによって刊行された「小児検査、1歳から6歳までの発達検査」の日本語版

発達診断学:小児の正常発達と異常発達

ゲゼルとアマツルダが発行した。

乳幼児発達診断法

津守真(Tsumori Makoto)と稲毛教子(Inage Noriko)によって作成されました。この検査は、0歳から7歳までの乳幼児の発達状況を評価するために使用され、質問紙を利用して母親や主な養育者に子どもの発達状況を尋ねる方法です。発達診断学:小児の正常発達と異常発達を元にしている。

遠城寺式乳幼児分析的発達検査

遠城寺宗徳が開発した乳幼児向け発達スクリーニング検査

K式発達検査

1951年に京都児童院で開発された検査で、幼児期の子供たちの知的能力や発達段階を評価します。

改訂版である、新版K式発達検査2001が京都国際社会福祉センターより刊行されています。

デンバー式発達スクリーニング検査

フランケンバーグとドッヅにより開発された検査

日本版デンバー式発達スクリーニング検査

上田礼子らにによって1980年に公開された発達スクリーニング検査

グッドイナフ人物画像認知検査

子供が描いた人物画を用いて、その子供の発達レベルや認知能力を評価する方法です。

特別支援教育

特別支援教育は、障害のある子どもたちが可能な限り最適な教育を受けることを目的とし、個々の子どもの発達に合わせた適応的な教育アプローチを提供します。

発達障害者支援法

発達障害のある人々への支援体制の整備を目的とした法律です。この法律に基づき、発達障害のある子どもたちに必要な教育、医療、福祉サービスが提供されます。

発達障害の定義は、主に脳の機能的な特性に起因することによって、社会生活や学習において特有の困難を抱える状態を指します。この法律では、発達障害として特に以下の三つの障害を挙げています:

  1. 注意欠如・多動性障害(ADHD): 注意力の維持が困難で、衝動的な行動や過剰な活動性を示す状態です。
  2. 自閉症スペクトラム障害(ASD): 社会的コミュニケーションや相互作用に困難があり、繰り返しの行動や限定された興味を持つ特徴があります。
  3. 学習障害(LD): 読み書き、計算、言語理解など特定の学習分野に困難がある状態です。

特殊教育

障害を持つ子どもたちに適応した教育プログラムや環境を提供することを指します。これには、個別の教育計画の作成や特別な教材、教育方法の採用が含まれます。

特別支援教育施行

2007年に施行されました。障害のある子どもたちが教育を受けるための特別な配慮や支援を提供することを意味します。これには、適応教育、通級指導、特別支援学級の設置などが含まれます。

二次的障害

もともとの障害に起因する追加の障害や問題を指します。例えば、発達障害のある子どもが社会的孤立を経験し、それが情緒障害や行動障害を引き起こすことがあります。

学習障害

文部科学省の定義では、読み、書き、算数、聞く、話す、推論する能力など特定の学習領域において、子どもの能力に見合わない学習困難を指します。これらの子どもたちは、通常の教育方法ではなく、特別な指導や支援を必要とします。

特別支援コーディネーター

障害のある子どもたちの教育や支援において、学校、家庭、地域の間の連携を促進する役割を担います。

広域特別支援連携協議会:

障害児教育に関わるさまざまな機関が参加する協議会で、地域全体での特別支援教育の推進や連携を図ることを目的としています。

通級

障害のある子どもたちが通常の学級に在籍しながら、特定の時間を特別支援教育のために別の教室で過ごすことを指します。

特別支援学級

特定の障害を持つ子どもたちのために設置された、通常の学級とは別の教室です。ここでは、個別の教育ニーズに合わせた指導が行われます。

特別支援学校

重度の障害を持つ子どもたちのための学校で、特別な教育プログラムや環境が提供されます。

教育相談・スクールカウンセリング

生徒が学校生活において健康で充実した経験をするために重要な役割を果たします。

スクールカウンセリング

スクールカウンセリングには3つの主要な援助活動があります。

カウンセリング

学校環境において生徒が直面する様々な問題や悩みに対処するためのプロセスです。このカウンセリングは、学生の感情的、社会的、学業的な課題をサポートし、彼らが健康で充実した学校生活を送れるようにすることを目的としています。

コンサルテーション

学校の管理職、他の専門家などに対して、生徒の行動、学習、心理的な問題に関する専門的な助言や支援を提供する活動を指します。コンサルテーションの目的は、対象の生徒に関わる大人たちが、その生徒をより効果的にサポートし、指導するための手助けをすることです。

コーディネーション

学校の教師、管理職、カウンセラー、保護者、地域のサービス提供者などを連携、仲介して、生徒やクライアントのニーズに対応する際に用いられます。

エンカウンター・グループ

参加者が互いの経験や感情を共有し、自己理解や他者理解を深めるグループ活動です。ロジャーズなどの取り組みで発展しました。

ピア・カウンセリング

生徒が互いにカウンセリングの役割を果たし、サポートし合う活動です。

アサーション・トレーニング

自分の意見や感情を適切に表現するための技術を学ぶトレーニングです。

ソーシャルスキル

他人と効果的にコミュニケーションを取り、社会的な関係を築くためのスキルです。

自己効力感

バンデューラが提唱した概念で、自分の行動が期待される結果をもたらすという信念のことで、この感覚が強いほど、困難な状況にも積極的に取り組むことができます。

ソシオメトリー

モレノが提唱した理論で、グループ内の関係や好みを測定し、人間関係のダイナミクスを理解するのに役立ちます。

選択性緘黙(かんもく)

DSM-5において特定の状況や人物の前では話すことができるのに、学校などの特定の社会的状況では話せなくなる障害です。

分離不安症

DSM-5において親や家族から離れることに対して過度な不安を感じる障害です。

チック

不随意の動作や音声の発生を特徴とする障害です。

反応性愛着障害

DSM-5では反応性アタッチメント障害と脱抑制型対人交流障害に分類された。

遊戯療法

遊びを通じて子どもの感情や問題を理解し、解決に導く心理療法です。

適応指導教室

不登校の児童生徒の学習や学校復帰を支援するために運営している教室のことを指します。

発達研究の方法

発達の過程やその影響要因を解明するのに役立ちます。

横断的研究法

異なる年齢の人々を同時に観察し、比較する方法です。例えば、異なる年齢の子どもたちの言語能力を同時に測定し、年齢による違いを分析します。

縦断的研究法

同じグループの人々を長期間にわたって観察し続ける方法です。例えば、一つの年齢グループの子どもたちを数年間追跡し、その成長や発達を観察します。

コホート

特定の期間に生まれた人々のグループです。コホート研究では、同じコホートのメンバーを観察し、時間の経過と共に生じる変化を分析します。

双生児法

一卵性双生児と二卵性双生児を比較することで、遺伝的要因と環境的要因の影響を研究する方法です。

順化・脱順化

同じ刺激に対して反応が減少する現象です。脱順化は、新しい刺激が提示された時に反応が再び増加する現象です。これらは、乳幼児の学習や注意の研究に利用されます。

選考注視法

ファンツらによって開発された乳幼児が二つの異なる刺激のうちどちらをより長く見るかを測定する方法です。これにより、乳幼児の視覚的な関心や認知能力を研究します。

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