スポンサーリンク

参与観察法

参与観察法 原理・研究法・歴史
参与観察法

研究者が研究対象の集団に入り込み、対象の行動や文化を観察する方法のこと

簡単な説明

参与観察法は、定性的研究の一部であり、量的データでは捉えきれない微細な文化的、社会的現象を把握するために使用されます。研究者は観察者としてだけでなく、参加者としても行動し、日常生活や儀式、行事に参加します。この過程で得られたデータは、フィールドノートとして記録され、分析に用いられます。

由来

参与観察法は、主に文化人類学や社会学で発展した方法です。この方法は、対象となる集団や社会の内部からの視点を得るために重要です。20世紀初頭の人類学者、ブロニスラフ・マリノフスキがトロブリアンド諸島でのフィールドワークで使用したことで有名です。

具体的な説明

参与観察法は、研究者が研究対象の集団やコミュニティに長期間にわたって溶け込み、観察と共にインタビューやフィールドノートを活用してデータを収集する方法です。研究者は観察者であると同時に、集団の一員として行動し、内側からの理解を深めます。この方法により、対象の行動や文化、価値観を深く理解することができます。

参与観察法の具体的な実験としては、研究者がある部族の村に数年間住み込み、その文化、社会構造、儀式について詳細に観察することが挙げられます。例えば、ブロニスラフ・マリノフスキのトロブリアンド諸島での研究では、彼は現地の人々と生活を共にし、彼らの経済活動や社会関係について詳細な記録を残しました。結論として、外部からは理解しにくい文化的なルールや価値観が明らかになりました。

大学レベルでは、参与観察法はエスノグラフィー(民族誌)の一部として学ばれます。研究者は、特定のコミュニティの文化的パターンや社会構造を詳細に記録し、分析します。この方法は、主に質的データを収集するためのもので、データの信頼性を高めるために、長期間のフィールドワークが必要です。また、研究者のバイアスを最小限に抑えるために、リフレクシビティ(自己反省)を行うことも重要です。

例文

例えば、ある大学の研究者が、日本の特定の地域での祭りについて研究するために、その地域に住み込み、祭りの準備や実施に参加しながら観察を行うことが参与観察法です。

疑問

Q: 参与観察法と単純な観察法の違いは何ですか?

A: 参与観察法は、研究者が対象集団に参加し、内部からの視点を得ることを重視します。一方、単純な観察法は、観察者が外部から対象を観察する方法です。

Q: 参与観察法の主な利点は何ですか?

A: 主な利点は、内部からの視点を得ることで、対象集団の行動や文化を深く理解できることです。

Q: 参与観察法のデータ収集手段は何ですか?

A: 主な手段は、フィールドノート、インタビュー、写真やビデオの記録です。

Q: 参与観察法のバイアスを最小限にするにはどうすればよいですか?

A: リフレクシビティ(自己反省)を行い、研究者自身の影響を評価し続けることが重要です。

Q: 参与観察法の欠点は何ですか?

A: 長期間のフィールドワークが必要で、研究者のバイアスが影響しやすいことです。

Q: 参与観察法のデメリットの一つは何ですか?

A: 参与観察法のデメリットの一つは、研究者のバイアスがデータに影響を与える可能性があることです。研究者が集団の一員として行動するため、客観性を保つのが難しくなることがあります。

Q: 参与観察法を行う際の時間的な制約について教えてください。

A: 参与観察法は長期間にわたるフィールドワークが必要であり、時間的な制約があります。数ヶ月から数年にわたって現地に滞在し、観察とデータ収集を行うため、時間と労力がかかります。

Q: データの一般化に関する問題点は何ですか?

A: 参与観察法で得られるデータは、特定の集団や文化に特化したものであり、その結果を他の集団や文化に一般化するのは難しいです。サンプルが限られているため、結果を広範に適用することには慎重さが求められます。

Q: プライバシーや倫理的な問題について教えてください。

A: 参与観察法では、研究対象者のプライバシーや倫理的な問題が生じることがあります。研究者が集団の内部に入り込むため、対象者の同意や信頼を得ることが重要であり、倫理的な配慮が求められます。

Q: 参与観察法の費用について教えてください。

A: 参与観察法は長期間のフィールドワークを必要とするため、交通費、滞在費、生活費などの費用が高額になることがあります。研究予算や資金調達の面での制約がある場合、この方法を実施するのは難しいことがあります。

理解度を確認する問題

参与観察法の主な特徴は何ですか?

  1. 短期間の観察
  2. 外部からの観察
  3. 長期間の参加と観察
  4. 実験室内の観察

回答: 3. 長期間の参加と観察

参与観察法の利点は何ですか?

  1. 短期間でデータが収集できる
  2. 内部からの視点を得ることができる
  3. 外部から客観的なデータが得られる
  4. 数値データが得られる

回答: 2. 内部からの視点を得ることができる

参与観察法の主要なデータ収集手段はどれですか?

  1. 質問紙
  2. フィールドノート
  3. 実験結果
  4. 統計データ

回答: 2. フィールドノート

関連キーワード

  • フィールドワーク
  • エスノグラフィー
  • リフレクシビティ
  • 質的研究
  • 文化人類学
  • 社会学

関連論文

Geertz, C. (1973). “The Interpretation of Cultures: Selected Essays”. Basic Books.

この論文集では、文化を理解するための方法として参与観察が詳述されています。特に、深い文化的な意味を解釈する方法が示されています。参与観察法の有効性を示す具体例が多数紹介されており、この方法が文化の深層理解に役立つことが示されています。

Emerson, R. M., Fretz, R. I., & Shaw, L. L. (1995). “Writing Ethnographic Fieldnotes”. University of Chicago Press.

フィールドノートの取り方とその重要性について詳述されています。参与観察におけるフィールドノートの記録方法が具体的に示され、質的データの収集・分析における重要な役割が明らかにされています。

Van Maanen, J. (2011). “Tales of the Field: On Writing Ethnography”. University of Chicago Press.

この書籍は、エスノグラフィーの作成方法とその背後にある理論について解説しています。Van Maanenは、エスノグラフィーを書く際の異なるスタイルやアプローチを紹介し、それぞれの利点と欠点を詳述しています。

執筆スタイルによってデータの解釈がどのように変わるかを示し、参与観察データの分析と報告において慎重な考慮が必要であることを強調しています。

Spradley, J. P. (1980). “Participant Observation”. Holt, Rinehart and Winston.

この書籍は、参与観察法の基本原則と実践的な手法について解説しています。Spradleyは、フィールドワークの準備、データ収集、分析、そして報告のプロセスを詳細に説明しています。

参与観察の体系的な方法を提供し、質的データの信頼性と妥当性を高めるための具体的なテクニックを示しています。

Whyte, W. F. (1943). “Street Corner Society: The Social Structure of an Italian Slum”. University of Chicago Press.

この古典的な研究は、ボストンのイタリア人移民コミュニティの社会構造を詳細に描写しています。Whyteは、コミュニティ内に溶け込み、日常生活の観察を通じて社会的関係と権力構造を明らかにしました。

参与観察法の実践的な応用例を示し、特定の社会集団の内部ダイナミクスを理解するための貴重な知見を提供しています。

Goffman, E. (1961). “Asylums: Essays on the Social Situation of Mental Patients and Other Inmates”. Anchor Books.

ゴフマンは、精神病院の患者や収容者の社会的状況を詳細に観察し、その経験と行動を分析しました。彼の研究は、全体主義的な組織の機能と影響を理解するための基礎を提供しています。

精神病院内での参与観察を通じて、施設の社会的構造とそれが個々の患者に与える影響についての重要な洞察を得ました。この研究は、閉鎖的な環境における人間行動の理解に大きな貢献をしました。

Clifford, J., & Marcus, G. E. (Eds.). (1986). “Writing Culture: The Poetics and Politics of Ethnography”. University of California Press.

この編著は、エスノグラフィーの執筆とその政治的、倫理的側面についての批判的なエッセイを集めています。執筆の過程で生じるバイアスや解釈の問題に焦点を当てています。

参与観察の報告書作成における自己反省とバイアスの意識化の重要性を強調し、エスノグラフィーの透明性と客観性を向上させるための理論的フレームワークを提供しています。

覚え方

「現場に入り込んで文化を感じ取る」―参与観察法のキーワードは「参与」と「観察」。この言葉を思い浮かべることで、研究者が現場で参加しながら観察を行う方法であることを思い出せます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました