アロスタシス

ストレスに適応し、身体の内部環境を変化させることで、安定性（ホメオスタシス）を維持するプロセスのこと

簡単な説明

アロスタシスは、身体がストレスに適応するために様々な生理的な変化を引き起こし、安定した状態を維持しようとするプロセスです。このプロセスが正常に機能すれば問題ありませんが、過度に働き続けると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

由来

アロスタシス（Allostasis）は、1990年代に神経科学者のブルース・マッキューエン（Bruce McEwen）によって提唱された概念です。この用語は、「allo（他の）」と「stasis（安定）」というギリシャ語の言葉を組み合わせたもので、ストレスに対して身体が安定を保つために適応するプロセスを説明するために使われます。ホメオスタシスが一定の状態を維持することを目的とするのに対して、アロスタシスは状況に応じた新しい安定性を追求するプロセスです。

具体的な説明

アロスタシスは、外的ストレス要因（心理的ストレス、環境変化など）に対して身体が適応する過程です。この適応は、ホルモン、神経系、免疫系などの複数のシステムによって調整されます。例えば、ストレスに直面したとき、コルチゾールやアドレナリンが分泌され、心拍数が上昇し、エネルギー供給が増加します。この一連の反応により、身体はストレスに適応し、短期的な安定性を維持します。しかし、長期間にわたってストレスが続くと、アロスタティック負荷（allostatic load）が増加し、これが身体に悪影響を与える可能性があります。

ブルース・マッキューエンの研究では、動物モデルを用いて、ストレスが脳や身体に与える影響を観察しました。彼の研究は、長期的なストレスが脳の構造や機能にどのように影響を与えるか、特に海馬の萎縮などが起こることを明らかにしました。また、慢性的なストレスが神経細胞の変化を引き起こし、認知機能や記憶力に悪影響を与えることが示されています。

アロスタシスは、ストレスに対応して生体が変化する動的なプロセスを指します。これは、ホメオスタシスの概念とは異なり、外的環境の変化に応じて生体の内部状態を積極的に変化させることを目的としています。HPA軸の活性化や交感神経系の活動などがこのプロセスに関連しており、これらのシステムが協調して身体の安定性を維持します。しかし、慢性的なストレスが持続するとアロスタティック負荷が蓄積し、心血管疾患、免疫機能低下、精神疾患などのリスクが増大します。