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10. 犯罪・非行の用語一覧

犯罪・非行

犯罪と非行の概念は、社会の秩序や安全を守るために生まれました。歴史的に見ると、これらの行為への対応は、時代や文化によって異なりますが、共通しているのは社会が安定して機能するためにはルールが必要であり、そのルールを破る行為には何らかの対応が必要だという考え方です。

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  1. 犯罪統計
    1. 犯罪白書
    2. 認知件数
    3. 暗数
    4. 発生率
    5. 検挙率
    6. 1946年以降の認知件数の多い罪種
    7. 少年による刑法犯の検挙人員の波
    8. 警察白書
    9. 自転車盗
    10. 犯罪被害者調査
  2. 犯罪の生物学的原因
    1. ロンブローゾ
    2. 生来性犯罪者説
    3. 双生児研究
    4. 神経心理学的問題
    5. モノアミン酸化酵素A
    6. 前部帯状回
    7. 腹側前頭前野
  3. 犯罪の心理学的原因
    1. グリュック夫妻
    2. 非行の潜伏
    3. 劣等感
    4. 犯罪とパーソナリティ
    5. シュナイダーの精神病質の10類型
    6. 反社会性パーソナリティ障害
    7. サイコパシーの診断項目
    8. 一次性サイコパシー
    9. 二次性サイコパシー
    10. 自己統制の欠如
    11. 社会的排斥
    12. 敵意的帰属バイアス
    13. 社会的不適応
  4. 犯罪の社会学的原因
    1. 社会分業論
    2. アノミー理論
    3. 文化葛藤理論
    4. 分化的接触理論
    5. 分化的同一化理論
    6. 分化的機会構造理論
    7. 中和の技術
    8. 統制理論
    9. 社会的絆理論
    10. 社会的不平等
  5. 犯罪・非行の発達研究
    1. ケンブリッジ非行発達研究
    2. ダニーディン健康と発達に関する学術的研究
    3. モフィットの犯罪・非行の発達的分類
    4. ピッツバーグ青少年研究
    5. サンプソンとローブ
  6. 犯罪・非行と研究
    1. 環境犯罪学
    2. ショウとマッケイ
    3. アメリカ大都市の生と死
    4. 窓割れ理論
    5. ルーティン・アクティビティ理論
    6. 集合的効力感
    7. 合理的選択理論
  7. 犯罪予防
    1. 一次予防
      1. 具体的な例
    2. 二次予防
      1. 具体的な例
    3. 三次予防
      1. 具体的な例
    4. 状況的犯罪予防
      1. 状況的犯罪予防の主要な戦略
    5. 犯罪削減技法
      1. 犯罪削減技法の例
    6. 環境設計による犯罪予防
      1. CPTEDの基本原則(Crime Prevention Through Environmental Design, CPTED)
    7. 犯罪の転移
      1. 犯罪の転移のタイプ
    8. 犯罪不安
  8. 暴力・殺人
    1. デート暴力
    2. DVのサイクル
      1. 1. 累積的緊張フェーズ(Tension-Building Phase)
      2. 2. 急性暴力フェーズ(Acute Violence Phase)
      3. 3. 蜜月フェーズ(Honeymoon Phase)
    3. 冷却期間
    4. ホームズとデバーガー
    5. ホームズとデバーガーの連続殺人犯の分類
    6. 不良交友タイプ
    7. 問題行動頻発タイプ
    8. 表面的適用タイプ
    9. 精神障害タイプ
    10. 思春期挫折タイプ
  9. 性犯罪
    1. デートレイプ
    2. レイプ神話
    3. ストーキングの分類
      1. 拒絶/拒否型ストーキング(Rejection Stalking)
      2. 愛着/依存型ストーキング(Intimacy Seeking Stalking)
      3. 競争/能力型ストーキング(Competence Stalking)
      4. 憎悪/報復型ストーキング(Resentful Stalking)
      5. 支配/支配型ストーキング(Predatory Stalking)
    4. メーガン法
    5. 認知行動療法
  10. 知能犯
    1. 特殊詐欺
    2. 正常性バイアス
    3. ホワイトカラー犯罪
    4. 不正のトライアングル
  11. プロファイリング
    1. 事件リンク分析
    2. 臨床的プロファイリング
    3. 最小空間分析
    4. 地理的プロファイリング
    5. 拠点犯行型
    6. 通勤犯行型
    7. バッファー・ゾーン
  12. ポリグラフ検査
    1. 虚偽検査
    2. 情報検査
    3. 有罪知識質問法
    4. 生理指標
    5. 対照質問法
    6. ポリグラフ検査鑑定法
  13. 証言の心理学
    1. 写真面割り
    2. 面通し
    3. 事後情報効果
    4. 凶器注目効果
    5. クローズ質問
    6. オープン質問
    7. 司法面接法
    8. 認知面接法
  14. 犯罪・非行アセスメント
      1. 目的
      2. 評価手法
    1. 犯因論的リスク要因
    2. 主な犯因論的リスク要因
      1. 静的リスク要因
      2. 動的リスク要因
    3. ビッグ4
      1. 反社会的パーソナリティパターン
      2. 反社会的態度
      3. 不良交友
      4. 過去の犯罪歴
    4. モデレイト4
    5. RNR原則
  15. 少年司法
    1. 触法少年
    2. 少年法3条
    3. 保護処分
    4. 保護処分の種類
    5. 検察官への送致
    6. 少年鑑別所法
    7. 少年鑑別所の業務
    8. 不良行為少年
  16. 少年院と児童自立支援施設
    1. 第2種少年院
    2. 矯正教育課程
    3. 特別活動指導
    4. 児童自立支援施設
    5. 自立支援計画
  17. 刑事施設
    1. 刑事司法手続き(成人)の流れ
      1. 1. 犯罪の発生と報告
      2. 2. 捜査
      3. 3. 逮捕
      4. 4. 身柄拘束
      5. 5. 検察官への送致
      6. 6. 起訴
      7. 7. 裁判の開始
      8. 8. 判決
      9. 9. 上訴
      10. 10. 刑の執行
    2. 刑事施設の3種
      1. 1. 拘置所(留置所)
      2. 2. 刑務所
      3. 3. 少年院
    3. 処遇調査
    4. 生活指導
    5. 薬物依存離脱指導
  18. 更生保護
    1. 保護司
    2. 保護観察の対象とならない場合
      1. 法律による除外
      2. 判決による除外
      3. 罰金刑のみの場合
    3. 保護観察書の業務
      1. 1. 監督
      2. 2. 指導と支援
      3. 3. 環境調整
      4. 4. 報告と評価
      5. 5. 危機管理
    4. 一般遵守事項
      1. 1. 法律の遵守
      2. 2. 報告義務
      3. 3. 面会の義務
      4. 4. 薬物・アルコールの使用制限
      5. 5. 職業・教育活動の継続
      6. 6. 外出制限
      7. 7. その他の制限
    5. 特別遵守事項
  19. 裁判と心理学
    1. 心神喪失者
    2. 心神耗弱者(こうじゃく)
    3. 報復的公正
    4. 公正世界信念
  20. 犯罪被害と心理学
    1. 被害者学
    2. エレンベルガー
    3. 第二次被害者化
    4. 犯罪被害者等基本法
    5. 複雑性悲観
    6. ウォーデン

犯罪統計

犯罪の発生件数や種類、犯罪者の特性などを数値データとして集計・分析することで、犯罪の傾向や社会的背景を理解するための統計情報のこと

犯罪白書

各国の法務省や司法省が発行する、その年の犯罪の状況、背後にある要因、対策などについて詳細に分析し、報告する公式文書のこと

認知件数

警察などの法執行機関が正式に報告され、記録に残された犯罪の件数です。つまり、実際に発生し、警察に報告された犯罪の数を表します。

暗数

実際に発生した犯罪の中で、警察などの法執行機関によって認知されなかった犯罪件数のことです。つまり、報告されず、統計に現れない犯罪の存在を指します。

発生率

特定の時間内において、特定の犯罪がどれだけの頻度で発生したかを示す率です。これは、一定の人口または特定の地域における犯罪の発生件数を、その人口数や地域の規模で割って計算されます。

検挙率

犯罪に対する警察の対応の成功度を示す指標です。これは、警察がどれだけ効果的に犯罪者を捕まえ、法の前に引き出すことができるかを表します。

1946年以降の認知件数の多い罪種

窃盗犯罪

窃盗犯罪は、日本における最も一般的な犯罪の一つで、認知件数が多い犯罪のカテゴリーです。これには、ショップリフティング(万引き)、自動車盗、自転車盗、住宅侵入窃盗(空き巣)などが含まれます。

交通犯罪

交通犯罪も、特に道路交通法違反が多くの認知件数を占めています。飲酒運転、速度違反、ひき逃げなどがこのカテゴリーに含まれます。

暴力犯罪

暴力犯罪、特に傷害や暴行の認知件数も高いです。これらは、他人の身体に対して危害を加える行為を指し、時には重大な社会問題となります。

詐欺犯罪

近年、特にインターネットの普及に伴い、詐欺犯罪の認知件数が増加しています。これには、オレオレ詐欺(特殊詐欺)、インターネット詐欺、クレジットカード詐欺などが含まれます。性犯罪性犯罪も、日本では深刻な問題です。

強制わいせつ、強姦(現在は「強制性交等罪」と呼ばれる)などが、このカテゴリーに含まれます。

これらの罪種は時代と共に変遷しており、社会の変化、法律の改正、警察の取り組みの強化などにより、認知件数にも変動が見られます。また、犯罪の認知には暗数の問題も関連しており、実際の犯罪発生状況を完全に反映しているわけではないことに注意が必要です。

少年による刑法犯の検挙人員の波

少年による刑法犯の検挙人員に関して、日本では時代とともに3つの波がありました。

高度経済成長期

1960年代の高度経済成長期には、少年による犯罪の検挙人員が増加する傾向にありました。これは、急速な都市化、家庭環境の変化、教育環境の変動など、社会経済的な変化が背景にあると考えられます。

バブル経済期

1980年代後半から1990年代初頭のバブル経済期にかけては、経済的な豊かさの中で、少年犯罪の性質が変化し、金銭を目的とした犯罪や無差別な暴力行為が目立つようになりました。

バブル崩壊後

バブル経済が崩壊した1990年代以降、経済不況の影響を受けて少年による犯罪の検挙人員が一時的に増加する場面がありました。しかし、この時期には、少年の犯罪行為に対する社会の認識が高まり、予防策や教育プログラムが強化されました。

2000年代以降

2000年代に入ると、インターネットの普及により新たな犯罪の形態が現れ、サイバー犯罪など少年が関与しやすい犯罪が増加しました。しかし、全体としては、少年犯罪の検挙人員は減少傾向にあると報告されています。これは、犯罪に対する予防教育の強化、家庭や学校、地域社会における監視の強化が効果を発揮していると考えられます。

警察白書

日本の警察庁が毎年公表する報告書で、その年の治安状況、警察の活動内容、犯罪対策の結果、将来の課題などをまとめたものです。この報告書を通じて、国民に対し警察活動の透明性を高め、理解と協力を求める目的があります。

自転車盗

自転車を対象とした盗難犯罪です。これは日常生活において非常に一般的な犯罪の一つです。

犯罪被害者調査

個人や家庭が犯罪の被害に遭った経験について収集するデータを基にした調査です。この調査は、公式の犯罪統計に現れない「暗数」を明らかにし、実際の犯罪発生率と被害者の経験をより正確に把握する目的で行われます。

犯罪の生物学的原因

遺伝子、脳の構造や機能、ホルモンのバランスなど、人間の生物学的特性が犯罪行動に影響を及ぼす可能性があるという考え方です。これらの生物学的要因は、個人の衝動制御、感情調節、社会的行動などに影響を与え、結果的に犯罪行動のリスクを高めるとされています。

ロンブローゾ

チェーザレ・ロンブローゾは19世紀のイタリアの精神医学者で、犯罪学の創始者とされる人物です。彼は「生まれながらの犯罪者」の理論を提唱し、犯罪行動が遺伝的なものであると主張しました。この理論は、犯罪者には生物学的・身体的特徴が共通しているというものです。

生来性犯罪者説

個人が生まれながらにして犯罪を犯す傾向を持つとする理論で、主にチェーザレ・ロンブローゾによって提唱されました。この理論では、犯罪者には特定の身体的、生物学的特徴が共通して存在するとされ、これが犯罪行動へと直結すると考えられています。

双生児研究

双生児研究は、一卵性(同一遺伝子を持つ)双生児と二卵性(異なる遺伝子を持つ)双生児を比較することで、遺伝と環境が人間の行動、性格、健康などにどの程度影響を与えるかを研究する方法です。このアプローチは、遺伝的要因と環境要因の相対的な影響力を理解するために広く用いられています。

神経心理学的問題

モフィットの神経心理学的問題とは、反社会的行動の発達において神経心理学的要因が果たす役割に焦点を当てた研究です。

テリー・モフィットは、心理学と犯罪学の交差点における研究で知られています。彼女の研究は、反社会的行動がどのようにして発達するのか、そしてなぜ特定の個人が生涯を通じてそのような行動を続けるのか、また他の人々がなぜ青年期に限定された期間だけ反社会的行動を示すのか、という問いに答えようとします。

モノアミン酸化酵素A

脳の情緒や行動に関連する神経伝達物質を分解する酵素のこと

モノアミン酸化酵素A(Monoamine Oxidase A、略称: MAOA)は、神経伝達物質であるモノアミン類(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)を分解する酵素です。この酵素の活動は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、情緒や行動に影響を与えます。

MAOAの活動は、「高活動型」と「低活動型」の2種類に分類されます。低活動型のMAOAを持つ人は、セロトニンなどのモノアミン神経伝達物質が過剰になりやすく、これが情緒の不安定や攻撃性の増加につながることがあります。特に、ストレスやトラウマを経験した環境下では、これらの特性が顕著に表れやすいとされています。

前部帯状回

感情、注意、意思決定に重要な役割を果たす脳の領域のこと

前部帯状回は、痛みの感覚や社会的排除の経験など、負の感情体験に反応することが知られています。また、認知的なタスクを実行する際のエラー検出や衝動制御、複雑な意思決定プロセスにも関与しているとされています。たとえば、困難な選択を迫られた時や、注意を要する作業をしている時に、この領域は特に活発になることがあります。

腹側前頭前野

意思決定や感情調節に関与する脳の領域のこと

腹側前頭前野は、情報の選択や抑制に関連した認知プロセスに重要です。例えば、不要な情報を無視し、目的に合った行動を選択する「抑制制御」に関与しています。また、感情の発生と調節にも関わり、特に社会的な状況や複雑な感情的な体験を処理する際に活動が見られます。

犯罪の心理学的原因

犯罪心理学の考え方は、19世紀後半になってから特に発展しました。それ以前は、犯罪行為は単に法律を破る倫理的に誤った行為と見なされていましたが、心理学的アプローチにより、犯罪者の行動背後にある深い心理的要因が探求されるようになりました。

グリュック夫妻

グリュック夫妻の研究は、少年犯罪の背景にある多様な要因を明らかにし、これらの要因に対処することで犯罪を予防する道を開きました。彼らの仕事は、後の犯罪学や心理学の研究に大きな影響を与え、現代の犯罪予防プログラムやリハビリテーション手法の基盤を築きました。

グリュック夫妻の研究は、以下のような主要な発見をもたらしました

少年犯罪者の共通特性:彼らは少年犯罪者には特定の共通特性があることを発見しました。例えば、規律の欠如、感情的な不安定さ、家庭環境の問題などが挙げられます。

家族構造と犯罪:不安定な家庭環境や親の監督の欠如が、子どもが犯罪に走るリスクを高めることを示しました。

予防とリハビリテーション:犯罪行動は、適切な介入によって予防または改善することが可能であると提唱しました。教育プログラムや社会サービスの充実が重要であると強調しました。

非行の潜伏

外見上は問題のない行動をしているように見えても、内面ではさまざまな問題を抱えていることが多く、これが非行へとつながること

劣等感

自分が他人やある基準に対して劣っていると感じる心理状態のこと

劣等感の概念は、心理学者アルフレッド・アドラーによって特に発展しました。アドラーは、劣等感は人間の行動や性格形成の基本的な動機の一つであり、この感情が人を成長させる原動力になると考えました。しかし、劣等感が過剰になると、人の心理的健康や社会的関係に悪影響を与えることも指摘しています。

犯罪とパーソナリティ

特定の性格特性が犯罪行動と関連があるかを調査する分野のこと

シュナイダーの精神病質の10類型

ドイツの精神科医であるシュナイダーによって提唱されたものです。彼は精神障害の診断と治療において重要な基準を提供するために、特定の性格の偏りや特徴を持つ精神病質(パーソナリティ障害)の分類を試みました。一言で言うと、シュナイダーの精神病質の10類型は、人格の特定の偏りを系統的に分類したものです。

  1. 感情不安定型 – 気分の波が激しく、感情的に不安定。
  2. 自己愛型 – 自己中心的で他人への共感が乏しい。
  3. 抑うつ型 – 慢性的な悲観主義や抑うつ気分。
  4. 興奮型 – 極度の衝動性や行動の制御が困難。
  5. 畏怖型 – 過度の恐怖や不安に支配される。
  6. 受動型 – 自分の意志や願望を主張できない。
  7. 批判型 – 常に他人を批判し、満足することが少ない。
  8. 疑い深い型 – 強い猜疑心を持ち、他人を信用しない。
  9. 幻想型 – 現実と幻想の区別がつきにくい。
  10. 不適合型 – 社会的規範や期待に適応するのが困難。

反社会性パーソナリティ障害

他人の権利を侵害する行動や社会的規範に適合できない特徴を示す人々に診断される心理学的障害です。

サイコパシーの診断項目

深刻な反社会的行動、感情の浅さ、他人への共感の欠如などを特徴とする人格特性です。サイコパシーの診断は、特に犯罪心理学の分野で重要視されていますが、一般的な精神医学の診断体系(例えばDSM-5)には明確には含まれていません。その代わり、特定の診断ツール、特にヘア心理学的サイコパシー・チェックリスト(PCL-R)が用いられます。

一次性サイコパシー

生まれながらにして共感や後悔の感情が極端に乏しい状態のこと

二次性サイコパシー

社会的、環境的要因によって引き起こされる反社会的行動や感情の鈍感さのこと

自己統制の欠如

衝動や欲望に流されやすく、自己の行動を適切にコントロールできない状態のこと

社会的排斥

集団による個人への意図的な無視や拒絶のこと

敵意的帰属バイアス

他人の行動を、敵意があると誤解する心理的な偏りのこと

社会的不適応

個人がその社会の規範や期待に沿った方法で機能することが難しい状態のこと

犯罪の社会学的原因

社会構造、文化的価値観、経済的圧力など、個人の犯罪行為に影響を与える社会的要因に焦点を当てた概念です。これらの原因は、個人が犯罪に手を染める背景にある広範な社会的プロセスを理解するために重要です。

社会分業論

デュルケームによって展開された社会学の基本的な概念です。デュルケームは、社会が複雑化し発展するにつれて、人々の仕事や役割がより専門化し分化していく過程を社会分業と捉えました。

アノミー理論

デュルケームによって提唱された概念で、社会の構造的な不均衡や規範の欠如が個人の行動にどのような影響を与えるかを説明します。アノミーは「規範の欠如」や「規範の混乱」と訳され、社会的な規範や価値が不明確になることで、個人が適切な行動を決定することが難しくなる状態を指します。

文化葛藤理論

異なる文化的価値観や期待が衝突することで社会的な不適応や犯罪行為が発生するという社会学的な理論のこと

分化的接触理論

犯罪行動がどのようにして学習されるかを説明するために、サザーランドによって提唱されました。この理論は、人々が社会的な相互作用を通じて犯罪的行動を学ぶと主張しています。つまり、犯罪は、犯罪に対して肯定的な態度を持つ人々との接触を通じて学習される社会的な行動であるとされています。

分化的同一化理論

クレーザーが提唱した理論で犯罪文化に接したとしても必ずしも全員が犯罪をするわけでは無いという考えのこと

分化的機会構造理論

クロワードとオーリンによって1960年代に提唱されました。彼らは、すべての人々が社会的成功を目指すが、そのための機会は社会的、経済的背景によって大きく異なると主張しました。

社会は合法的な機会の構造と非合法的な機会の構造、二つの機会システムを持っています。合法的な機会が十分に利用できる人々は、教育や職業を通じて成功を目指すことができます。一方、非合法的な機会の構造がよりアクセスしやすい環境にいる人々、特に貧困地域の若者は、犯罪組織や非合法な活動に参加することで社会的地位を得る道を見出すことがあります。

中和の技術

マッテソンとサイクスが提唱した概念で、犯罪や不道徳な行動を正当化するために個人が使用する一連の言い訳や理由です。この理論は、個人が自分自身の価値観や社会の規範に反する行動をとる際に、罪悪感や社会的非難から自分を保護するために、どのように自己正当化のメカニズムを使用するかを説明します。

  1. 責任の否定:個人は自分の行動が自己のコントロール外で起こったと主張し、自分の行為に対する責任を否定します。
  2. 被害の否定:「誰も傷ついていない」と主張することで、行為が実際には被害を与えていないと考えます。
  3. 加害者の否定:行為を通じて自分が受けた不正や不公平を訴え、自分は被害者であると主張します。
  4. 非難の転嫁:社会や他の人々への非難を通じて、自分の行為を正当化します。
  5. 高次の忠誠の訴え:自分の行動がより大きな善のため、または忠誠心から行われたものであると主張します。

統制理論

人々がなぜ犯罪を犯さないのか、またはなぜ社会の規範や法律を守るのかを説明するための社会学および犯罪学の理論です。この理論の核心は、個人が社会的、個人的な制約や統制メカニズムによって規範に従うよう動機づけられるという考えにあります。統制理論は、特にトラヴィス・ヒルシ(Travis Hirschi)によって1969年に発展された「社会的結合理論」で知られています。

社会的絆理論

ハーシーによって1969年に提唱された犯罪学の理論で、なぜ人々が犯罪を犯さないのかを説明することを目的としています。この理論は、社会との強い絆が個人を犯罪から遠ざけるという考えに基づいています。つまり、個人が社会的規範や価値観に従うことを促す社会との絆の強さが、犯罪行為を防ぐ鍵となるとされています。

社会的不平等

ウィルキンソンは、社会的不平等が暴力や殺人などの社会問題に与える影響について広範な研究を行っている社会疫学者です。ウィルキンソンの研究は、社会内の不平等の度合いが高いほど、暴力犯罪の率も高くなるという関係を明らかにしています。

犯罪・非行の発達研究

人々がどのようにして犯罪行動や非行に関与するようになるのか、そしてそのような行動が時間を経てどのように変化するのかを理解することを目的とした研究分野です。この研究は、個人の生涯にわたる犯罪行動のパターンを追跡し、どのような要因が犯罪や非行に影響を与えるかを分析します。

ケンブリッジ非行発達研究

1961年にイギリスのケンブリッジ大学の犯罪学研究所によって開始され、デビッド・ファーリントン教授らによって主導されました。8歳から9歳の少年411名を対象に開始されたこの研究は、参加者たちの非行、犯罪行動、およびその他の関連する社会的、経済的成果を追跡し続けています。

ダニーディン健康と発達に関する学術的研究

ニュージーランドのダニーディンで行われている長期追跡研究です。この研究は、1972年から1973年にかけてダニーディンで生まれた1,037人の子どもたち(出生時のすべての子供の91%)を対象に開始されました。この研究は、参加者の身体的、心理的、社会的健康と発達に関する広範なデータを収集し続けており、幼少期から大人に至るまでの健康と行動の発達に関する重要な洞察を提供しています。

モフィットの犯罪・非行の発達的分類

犯罪行動が一生を通じてどのように発展し、変化するかに焦点を当てています。モフィットは、犯罪者を主に二つのタイプ、つまり「ライフコース持続型」と「青年期限定型」に分類しています。

  1. ライフコース持続型(Life-Course-Persistent Offender, LCP):このタイプの犯罪者は、非行の始まりが非常に早く、しばしば幼少期にまで遡ります。彼らの犯罪行動は成人期を通じて持続し、その根本には神経発達的な問題や家庭環境の問題など、多くの場合、複合的なリスク要因があります。
  2. 青年期限定型(Adolescence-Limited Offender, AL):このグループの人々は主に青年期に非行や犯罪行動を示します。彼らの行動は、成人期に入ると減少または停止することが多く、これは成熟の遅れや青年期の反抗といった、より一時的な要因に起因すると考えられています。

ピッツバーグ青少年研究

非行行動の発達とその背景要因を長期にわたって追跡調査することを目的とした重要な研究の一つです。

この研究は、1980年代後半にペンシルベニア州ピッツバーグで開始されました。ローマン、マグナス、ファーリントンなどが主導するこの研究プロジェクトは、特に都市部で育つ少年たちの非行行動のパターン、リスク要因、及び保護要因に焦点を当てています。

サンプソンとローブ

犯罪学において重要な貢献をした研究者であり、特に「犯罪の発達理論」と「集合的有効性理論」に関する彼らの共同研究で知られています。彼らの仕事は、個人の生涯を通じた犯罪行動のパターンと、コミュニティレベルでの社会的結束と犯罪率の関係に関する理解を深めました。

犯罪・非行と研究

犯罪行為の背後には、多様な心理学的要因が関わっています。これらの要因は個人の性格特性、生い立ち、社会環境、心理的ストレスなど複雑に絡み合い、犯罪行為へと導くことがあります。

環境犯罪学

犯罪が起こる環境的要因を分析し、予防策を提案する学問のこと

環境犯罪学は、「犯罪は機会があれば発生する」という考えに基づきます。そのため、公園の照明を改善したり、通りの監視カメラを増やしたりすることで、犯罪の機会を減らし、防止することが目標です。

ショウとマッケイ

犯罪が地域の社会的不組織によって引き起こされると主張した社会学者たちのこと

社会的不組織理論によれば、犯罪率の高い地域は、経済的困窮、高い人口密度、低い教育水準、家族構造の崩壊など、社会的不組織の特徴を共有しています。これらの条件は、地域コミュニティの社会的絆を弱め、伝統的な価値観や規範が機能しなくなることを意味します。その結果、犯罪や非行が生じやすい環境が形成されます。

アメリカ大都市の生と死

ジェイコブスが1961年に著した都市計画と都市政策に関する画期的な本です。この作品では、当時主流だった近代的都市計画の方法論を批判し、都市の複雑さと多様性が持つ価値を強調しています。ジェイコブスは、都市が生き生きと機能するためには、混合した用途、短いブロック、地域コミュニティの活力、そして公共空間の利用が重要であると主張しました。

ジェイコブスは、この本で以下のような主要な点を提唱しました:

  • 都市の多様性は価値がある:彼女は、住宅のみ、商業のみといった一様なゾーニングに反対し、異なる用途が混在することが都市を活性化させると主張しました。
  • 地域コミュニティの重要性:強固な地域コミュニティが犯罪を防ぎ、より安全で活気ある都市環境を作り出すと論じました。
  • 歩行者に優しい設計の必要性:短いブロックや広い歩道が人々の交流を促し、コミュニティの結束を強化すると強調しました。
  • ボトムアップの都市計画:大規模なトップダウン型開発ではなく、住民のニーズと願望に基づく都市計画の必要性を訴えました。

窓割れ理論

ウィルソンとケリングによって1982年に提唱された犯罪学の理論です。この理論は、小さな犯罪や公共の場の荒廃(例えば、割れた窓がそのままにされること)が放置されると、それが更なる犯罪や社会的混乱を引き起こすと主張しています。つまり、公共空間の秩序と清潔さが保たれていない環境は、犯罪行為を促進するとされています。

ルーティン・アクティビティ理論

1970年代後半にコーエンとフェルソンによって提唱された犯罪学の理論です。この理論は、特定の犯罪が発生するためには、動機を持った犯罪者、潜在的なターゲット、そして守護者の不在の三つの要素が同時に存在する必要があると主張します。ルーティン・アクティビティ理論は、人々の日常活動がどのように犯罪の機会を生み出すかに焦点を当て、社会のライフスタイルや日常的な行動パターンの変化が犯罪率にどのように影響するかを説明しています。

  1. 動機を持った犯罪者:犯罪を犯す可能性のある個人。
  2. 潜在的なターゲット:財産や個人など、犯罪者によって標的にされる可能性のあるもの。
  3. 守護者の不在:犯罪を防ぐことができる人や物(例えば警察、セキュリティシステム、注意深い隣人)の不在。

集合的効力感

コミュニティやグループが共通の目的を達成する能力に対する集団的な信念のこと

集合的効力感は以下の要素に影響を受けます:

  • 集団内の相互作用:メンバー間のコミュニケーションと協力が良好であるほど、集合的効力感は高まります。
  • 過去の成功体験:集団が過去に共通の目標を達成した経験があると、将来の目標達成に対する信念が強化されます。
  • 観察学習:他のグループが目標を達成するのを見ることで、自グループも同様に成功できるとの信念が生まれます。
  • 口頭による説得:リーダーやグループメンバーからのポジティブなフィードバックや励ましも、集合的効力感を高める要因となります。

合理的選択理論

個人が自己の利益を最大化するように意思決定を行うという考えに基づいた理論のこと

合理的選択理論に基づく意思決定プロセスでは、以下の要素が考慮されます:

  • 選択の利益:行動によって得られる期待される結果や報酬。
  • 選択のコスト:行動を取ることの潜在的なコストやリスク。
  • 代替案の比較:利用可能なすべての選択肢を評価し、最も利益が高くコストが低い選択をする。

犯罪予防

犯罪が発生する前に予防策を講じることに焦点を当て、犯罪の機会を減らし、潜在的な犯罪者に対する抑止力を強化し、コミュニティの安全性を高めることを目的としています。犯罪予防には、環境デザインの変更、教育プログラム、法執行機関による取り組み、コミュニティベースの活動など、さまざまな形態があります。

一次予防

犯罪や非行などの問題行動が発生する前に介入し、それらを防止するための戦略や活動のこと

具体的な例

  1. 教育プログラム:若者への薬物乱用防止教育や、暴力を避けるための対人関係スキルの教育などがあります。
  2. コミュニティベースの活動:地域社会の安全を高めるためのネイバーフッド・ウォッチプログラムや、公共の場の清潔と整頓を促進する活動が含まれます。
  3. 健康促進プログラム:健康的なライフスタイルの促進や、メンタルヘルスのサポートを通じて、犯罪や非行への関与を防ぎます。
  4. 環境デザイン:公共の場の照明を改善する、視界を確保しやすい都市計画をするなど、犯罪を抑制するための環境設計に取り組みます。

二次予防

問題行動や疾病が発生するリスクが高い個人やグループに焦点を当てた予防策のこと

具体的な例

  1. 早期識別と介入プログラム:学校での行動問題や成績の低下を示す子どもたちを早期に識別し、彼らが非行に走る前に支援を提供します。
  2. リスクが高い家庭への支援:貧困、家庭内暴力、親の薬物乱用など、非行のリスク要因を持つ家庭に対する支援策。
  3. メンタリングプログラム:リスクの高い若者を対象とした、大人のロールモデルによる個別のメンタリングや指導。
  4. スキルビルディング:対人関係スキル、問題解決スキル、自己管理スキルを向上させるためのプログラム。

三次予防

既に問題行動や疾病を発症している人々に焦点を当てた予防の段階のこと

具体的な例

  1. 犯罪者リハビリテーションプログラム:薬物治療プログラム、行動療法、職業訓練など、犯罪者の社会復帰を支援するためのリハビリテーションプログラム。
  2. コミュニティ支援サービス:社会に再統合するための支援サービス、例えば住居提供、就労支援、メンタルヘルスケアなど。
  3. モニタリングとアフターケア:出所者のモニタリングやフォローアップサービスを提供し、再犯のリスクを低減します。
  4. 家族との関係改善:犯罪者が家族との関係を再構築できるように支援し、家族内のコミュニケーションとサポートを強化します。

状況的犯罪予防

コーニッシュは、クラークと共に、状況的犯罪予防の概念を発展させ、体系化しました。彼らのアプローチは、犯罪を防ぐために、特定の状況や環境における機会を制限することに焦点を当てています。

状況的犯罪予防の主要な戦略

  1. ターゲットの硬化: 犯罪の対象となるものへの物理的なアクセスを困難にすることで、犯罪の機会を減少させます。
  2. アクセスコントロールの強化: 人々や車両の流れを管理することで、特定の場所や資源へのアクセスを制限します。
  3. 増加した監視: 警備員の配置や監視カメラの設置により、犯罪者が発見されるリスクを高めます。
  4. 活動の促進: 公共空間の活用を促進し、人々の自然な監視を通じて犯罪を抑止します。
  5. 犯罪報酬の減少: 商品の識別性を高めることで、盗まれた物品の売却を困難にします。

犯罪削減技法

犯罪を減少させることを目的とした一連の戦略や手段のこと

犯罪削減技法の例

  1. 環境設計:安全な環境設計の原則に基づいて、物理的な環境を変更することで犯罪を防ぎます。これには、適切な照明の提供、隠れ場所の削減、逃走ルートの限定などが含まれます。
  2. ターゲットの硬化:鍵やロックの改良、セキュリティシステムの導入などにより、犯罪のターゲットとなりやすい物や人へのアクセスを困難にします。
  3. アクセスコントロール:特定の場所へのアクセスを制限することで、犯罪者の侵入を防ぎます。IDカードシステムや入退管理システムの使用がこれに該当します。
  4. 監視の強化:警備員の配置や監視カメラの設置により、犯罪の抑止と発生時の迅速な対応を目指します。
  5. 活動の促進:公共空間の活発な使用を促進することで、自然な監視を強化し、犯罪者が行動する機会を減少させます。
  6. 罰の確実性の強化:法執行の効率を高めることで、犯罪に対する罰の確実性を高め、犯罪行為の抑止力を増加させます。

環境設計による犯罪予防

犯罪の機会を減少させることを目的とした、物理的な環境の設計や改善に関するアプローチのこと

CPTEDの基本原則(Crime Prevention Through Environmental Design, CPTED)

  1. 自然な監視(Natural Surveillance)
    • 公共の場や建物の設計において、開かれた視界を確保し、人々が自然に周囲を見渡せるようにします。これにより、犯罪者は行動が見られていると感じ、犯罪行為を思いとどまらせることができます。
  2. 自然なアクセスコントロール(Natural Access Control)
    • 入口や出口、歩道、フェンスを効果的に配置し、人々の動きを指導することで、不審者の侵入を防ぎます。アクセスポイントを限定することで、監視が容易になります。
  3. 領域性の強化(Territorial Reinforcement)
    • 物理的な要素やアクティビティを通じて、空間に対する所有感や帰属意識を高めます。これにより、住民や使用者がその場所を守る意識が強まり、犯罪者に対して抑止力となります。
  4. メンテナンス(Maintenance)
    • 良好な維持管理は、そのエリアが気にかけられており、監視されていることを示します。荒廃した環境は、犯罪行為が容認されているような印象を与えかねません。
  5. アクティビティのサポート(Activity Support)
    • 空間を積極的に使用するための活動を奨励し、人々が自然と集まることで、非公式な監視が生まれ、犯罪を抑止します。

犯罪の転移

特定の犯罪予防策や取り締まりが犯罪を一か所から別の場所へ、あるいは一種類の犯罪から別の種類へ移動させる現象を指します。犯罪予防の努力が特定のエリアや特定の犯罪に焦点を当てるとき、犯罪者がその対策を避けるために新たなターゲットや方法を見つけ出すことがあります。

犯罪の転移のタイプ

  1. 地理的転移:犯罪が特定の場所から別の場所へ移動する。
  2. 方法の転移:犯罪の方法や手口が変わる。
  3. 時間的転移:犯罪が行われる時間帯が変わる。
  4. 標的の転移:犯罪者が異なる種類の被害者やターゲットを選ぶようになる。
  5. 種類の転移:犯罪者が異なる種類の犯罪を犯すようになる。

犯罪不安

個人が犯罪に遭遇することへの恐れや心配を指します。この不安は、実際に犯罪の被害に遭った経験があるかどうかに関わらず、個人の安全に対する一般的な感覚や認識に影響を与えます。

犯罪不安は、個人やコミュニティに複数の影響を及ぼす可能性があります:

  • 社会的な孤立:安全を確保するために自宅に留まることを選ぶ人々が増え、社会的なつながりやコミュニティ活動への参加が減少することがあります。
  • 健康への影響:持続的な不安は、ストレスや睡眠障害など、心身の健康問題を引き起こす可能性があります。
  • 公共空間の使用に関する認識:公園や公共の場所が安全でないと感じることで、これらの空間の利用が減少する可能性があります。
  • 警察や治安対策への要求の増加:犯罪に対する不安が高まると、警察の存在や治安対策の強化を求める声が大きくなることがあります。

暴力・殺人

暴力と殺人を予防するためには、その原因に対処し、個人、家庭、社会レベルでの幅広いアプローチが必要です。教育、社会サービスの提供、経済的機会の創出、家庭内暴力への介入、コミュニティベースの予防プログラムの実施など、多角的な戦略が求められます。また、文化的な変化を促進し、暴力を非難し、平和的な解決策を推奨することも重要です。

デート暴力

恋愛関係にある間、またはその関係が終わった後に、一方のパートナーが他方に対して行う身体的、性的、心理的、または経済的な暴力を指します。このタイプの暴力は、被害者が恋愛関係にあるという理由で認識しづらい場合があり、そのために被害を受けていることを他者に伝えにくい、または認められにくいという問題があります。

DVのサイクル

家庭内暴力が繰り返されるパターンを示すモデルです。このサイクルは、ウォーカーによって1970年代に提唱され、家庭内暴力が単発の出来事ではなく、特定の繰り返しパターンを持つことを示しています。DVのサイクルは大きく三つのフェーズから成り立っています。

1. 累積的緊張フェーズ(Tension-Building Phase)

この段階では、加害者のイライラや不満が徐々に高まります。被害者は加害者を怒らせないようにしようとしますが、加害者の緊張は増す一方で、コミュニケーションはしばしば困難になります。被害者は加害者の予測不可能な行動や怒りに対して、「歩くように注意深く」行動し、緊張を和らげようとします。

2. 急性暴力フェーズ(Acute Violence Phase)

累積した緊張が爆発し、加害者が身体的、性的、心理的暴力を含む暴力行為を行います。このフェーズは、DVサイクルの中で最も破壊的であり、被害者は深刻な危害を受けることがあります。加害者はしばしばこの行動を正当化し、責任を被害者に転嫁することがあります。

3. 蜜月フェーズ(Honeymoon Phase)

暴力行為の後、加害者はしばしば後悔し、謝罪します。この段階では、加害者は愛情を示し、暴力行為が二度と起こらないと約束することがあります。被害者は加害者を許し、関係が改善されたと感じるかもしれません。しかし、時間が経つと、再び累積的緊張フェーズに戻り、サイクルは繰り返されます。

冷却期間

暴力的な行為の後に加害者が謝罪したり、愛情を示したり、暴力の行為を否定したりする期間を指します。この時期は、緊張構築期と暴力行為のフェーズの後に訪れ、被害者が加害者との関係を続けることを選択する要因となることがあります。加害者はこの時期に、行動を改めると約束したり、暴力行為が起こったことを深く後悔しているように振る舞ったりします。この「ハネムーン期」とも呼ばれるフェーズは、加害者が被害者を操り、関係を維持するために利用することが多いです。

ホームズとデバーガー

連続殺人犯に関する研究で知られる犯罪学者のチームです。彼らは、1980年代に連続殺人犯の行動パターン、動機、背景に関する研究を行い、連続殺人犯を4つのカテゴリーに分類しました。

ホームズとデバーガーの連続殺人犯の分類

  1. ビジョン型(Visionary Type): ビジョン型の殺人犯は、幻聴や幻覚など、外部からの「指示」によって動機付けられると信じています。彼らはしばしば精神障害を抱えているとされています。
  2. 任務型(Mission-Oriented Type): 任務型の殺人犯は、特定のグループやタイプの人々を排除することを自らの「使命」と考えて行動します。彼らはしばしば社会的、道徳的な動機に基づいており、自分の行動を正当化します。
  3. 刺激型(Hedonistic Type): 刺激型の殺人犯は、殺人を通じて快楽を追求します。このカテゴリーはさらに、性的快楽を追求する「嗜虐的」、金銭や物質的な報酬を求める「利得的」、単なるスリルや興奮を求める「スリル型」に細分化されます。
  4. 権力・支配型(Power/Control Type): 権力・支配型の殺人犯は、被害者を支配し、権力を行使することによって満足を得ます。彼らの主な動機は、他者に対する完全な支配欲です。

不良交友タイプ

個人が非行グループや犯罪に関わる人々との交友関係を持つことによって、自身の行動パターンが影響を受け、非行や犯罪行動に至るというものです。

問題行動頻発タイプ

特定の個人が一般的な社会的規範や期待に反する行動を繰り返し示すパターンを指します。このタイプの人物は、しばしば学校での問題行動、家庭内での反抗的な振る舞い、または公共の場での非行など、多岐にわたる問題行動を頻繁に起こします。

表面的適用タイプ

個人が社会的規範や期待に一時的または表面的に従う行動パターンを指しますが、その遵守は内面からのものではなく、外部的な圧力や即時の利益のために行われるものです。このタイプの人物は、社会的なルールや規範を内面化していないため、監視や制裁の恐れがない状況では規範を破る傾向があります。表面的適用タイプの行動は、本人の真の信念や価値観とは必ずしも一致しないため、状況によっては簡単に規範違反行為に走る可能性があります。

精神障害タイプ

犯罪行動や非行に関連して、精神障害や心理的な問題を抱える個人の振る舞いを指します。このタイプの人物は、心理的な疾患や障害の影響を受けて、社会的規範に反する行動をとることがあります。精神障害が犯罪行動に直接的な原因となる場合もあれば、犯罪行動を引き起こす複数の要因の一つとして機能する場合もあります。

思春期挫折タイプ

思春期の葛藤や挫折経験が原因で非行や問題行動を示す若者の行動パターンを指します。この時期における身体的、心理的、社会的変化は、若者を特に脆弱な状態に置き、学業の失敗、家庭内の問題、対人関係の困難など、さまざまな挫折体験に直面させます。これらの挫折は、若者が自己表現やストレス解消の手段として非行に走るきっかけとなることがあります。

性犯罪

性的意図をもって行われる犯罪行為を指し、強姦(レイプ)、性的暴行、わいせつ行為、児童性的虐待、性的ハラスメントなど、さまざまな形態があります。性犯罪は、被害者の身体的および精神的健康に深刻な影響を及ぼし、長期的な心理的トラウマを引き起こすことがあります。このため、性犯罪は社会的にも重大な問題として扱われ、多くの国で厳しく処罰されています。

デートレイプ

デートや恋愛関係にある相手によって強制される性的暴行を指します。このタイプの性犯罪は、被害者と加害者が恋愛関係にある、あるいはデートの約束など、ある程度の信頼関係が存在する状況で発生することが特徴です。

レイプ神話

性的暴行やレイプに関する誤った信念やステレオタイプのことです。これらは、被害者の責任を問うものや、加害者の行動を正当化するような信念を含み、性的暴行の真実を歪曲し、被害者へのサポートを妨げる要因となります。

ストーキングの分類

他人を執拗に追跡したり、嫌がらせを行ったりする行為で、被害者に恐怖や不安を引き起こします。ストーキングの行為はさまざまな形をとり、その動機や手法によって分類することができます。以下は、ストーキング行為の一般的な分類です。

拒絶/拒否型ストーキング(Rejection Stalking)

このタイプは、恋愛関係の終了や友情の拒絶など、何らかの形での拒絶を受けた後に行われます。加害者は、関係の復活を望む場合もあれば、拒絶に対する報復を目的とする場合もあります。

愛着/依存型ストーキング(Intimacy Seeking Stalking)

加害者は、被害者との間に親密な関係を築こうとしますが、その愛情は一方的で、被害者には望まれていません。加害者は、しばしば被害者に対して過度の愛情を抱いており、自分たちは運命で結ばれていると信じています。

競争/能力型ストーキング(Competence Stalking)

職場や学校など、特定の環境での競争関係が原因で行われるストーキングです。加害者は、被害者を嫌がらせることで自分の優位性を示そうとしたり、被害者の地位を低下させようとします。

憎悪/報復型ストーキング(Resentful Stalking)

加害者は、被害者に対して強い恨みを抱いており、嫌がらせを通じて恐怖を与えることで報復しようとします。このタイプのストーキングは、しばしば過去のトラブルや対立に基づいています。

支配/支配型ストーキング(Predatory Stalking)

性的嫌がらせや暴力を伴うケースで見られ、加害者は被害者を支配しようとします。このタイプのストーキングは、計画的で、しばしば被害者への物理的な襲撃につながります。

メーガン法

1994年に性的犯罪者の住所情報を公開するためにアメリカ合衆国で制定された法律です。この法律は、7歳の少女メーガン・カンカが彼女の家の近くに住んでいた登録済みの性犯罪者によって誘拐、レイプ、殺害された事件を受けて制定されました。メーガン法の主な目的は、性犯罪者の居住地を地域社会に知らせることで、公衆の安全を向上させ、再犯の可能性を減らすことにあります。

認知行動療法

不健全な思考パターンや行動が心理的な問題を引き起こすという考えに基づく心理療法の一種です。この治療法は、個人が持つ否定的な認知(思考)とそれに伴う行動を特定し、それらをより健全で建設的なものに変えることを目指します。

知能犯

計画的で緻密な思考を用いて犯罪を実行する個人を指します。これらの犯罪者は高い知能や専門的な知識を活用して、法律を逃れるために犯罪を緻密に計画し、実行します。

特殊詐欺

電話やインターネットなどを使って犯行が行われる、特に巧妙で計画的な詐欺のことを指します。これには、オレオレ詐欺(振り込め詐欺)、還付金詐欺、架空請求詐欺など、さまざまな手口があります。特殊詐欺の犯罪者たちは、被害者の不安や信頼を悪用し、金銭をだまし取ることを目的としています。

正常性バイアス

人々が災害や緊急事態などの異常な状況下でも、事態が悪化しないと無意識に仮定し、適切な対策を講じない心理状態を指します。このバイアスは、過去の経験や状況の深刻さを過小評価することから生じ、人々が危機に直面しても、通常通りの行動を続ける傾向があります。正常性バイアスは、個人だけでなく集団にも影響を及ぼすことがあり、災害時の避難行動の遅れなど、深刻な結果を招く可能性があります。

ホワイトカラー犯罪

職業上の地位や信頼を悪用して行われる犯罪活動を指します。この用語は、1949年に社会学者サザーランドによって導入されました。ホワイトカラー犯罪は、主に経済的な動機から行われ、企業の幹部、専門家、政府の職員など、社会的に高い地位にある人物によって犯されることが多いです。これには、詐欺、背任、インサイダー取引、贈収賄、脱税、金融詐欺など、さまざまな犯罪が含まれます。

不正のトライアングル

クレシーによって提唱された概念で、個人が不正行為を犯す際に存在するとされる三つの要因を示します。この理論は、なぜ誠実と思われる人々が不正行為を犯すのかを理解するための枠組みを提供し、特に会計不正やホワイトカラー犯罪の分析に用いられます。不正のトライアングルには以下の三つの要素が含まれます。

  1. 動機(Pressure): 不正行為を犯すための内的または外的な圧力。これには、財政的な困難、個人的な貪欲、生活水準を維持するための圧力などが含まれます。
  2. 機会(Opportunity): 不正行為を可能にする環境や状況。不適切な監視や内部統制の欠如、権限の濫用などがこれに該当します。機会が与えられると、個人は不正行為を犯すことができると感じます。
  3. 正当化(Rationalization): 不正行為を正当化するための個人的な理由や論理。自分はそれに値する、会社は損害を受けない、誰も傷つけていないなど、不正行為を合理化する考え方です。

プロファイリング

個人やグループの特徴や行動パターンを分析し、予測するための技術や手法のことです。この手法は、心理学だけでなく、犯罪学やマーケティングなど、さまざまな分野で応用されています。

一般的にプロファイリングは、「誰が」「なぜ」「どのように」行動するかを予測するための方法として理解されます。これには、観察、データ分析、心理学的理論の適用などが含まれます。プロファイリングの正確性は、利用されるデータの質や量、分析者の専門知識に大きく依存します。

事件リンク分析

複数の事件間の関連性を見出し、繋がりを分析する手法です。主に犯罪学や捜査機関で利用されるこの分析法は、事件の背後にあるパターンや連続性を明らかにし、犯人特定や犯罪予防に役立てられます。

臨床的プロファイリング

個人の心理的特徴や行動パターンを詳細に分析し、その人の精神的健康状態や可能性ある心理的問題を診断・予測するための手法です。

最小空間分析

データ内のパターンや構造を探索的に分析し、視覚化するための手法です。

最小空間分析では、まず、アンケート項目や心理テストのスコアなど、分析対象となる複数の変数間の類似性や関連性を測定します。次に、これらの変数を点として空間に配置し、点間の距離が変数間の類似性や関連性を表すようにします。距離が短いほど関連性が高く、距離が長いほど関連性が低いと解釈されます。この分析により、変数間の複雑な関係性を直感的に理解することができ、新たな発見や仮説の生成につながることがあります。

地理的プロファイリング

連続犯罪の発生地点を地図上にプロットし、これらの地点間の距離や配置パターンを分析します。犯罪地点の分布から、犯罪者が居住していると推定される「ホットスポット」や犯罪者が犯罪を犯す際に選好する地域(「コンフォートゾーン」)を特定します。この分析により、捜査機関は捜査範囲を絞り込み、犯罪者の特定に必要な手がかりを得ることができます。

拠点犯行型

犯罪者が自身の居住地や活動拠点の近くで犯罪を行うパターンのことです。

通勤犯行型

自宅やよく知る地域から離れた場所で犯罪を犯します。このタイプの犯罪者は、犯行地点まで移動する際に公共交通機関を利用することや、自動車で移動することがあり、犯罪を行う場所は計画的に選ばれます。このような犯罪者は、自分の生活圏外で犯罪を犯すことにより、捜査の焦点から逸らすことを狙います。

バッファー・ゾーン

犯罪者が自分の居住地や活動拠点の直近の周辺で犯罪を行わないように意識的に避ける地域のことです。この概念は、地理的プロファイリングにおいて重要であり、犯罪者の居住地を特定する上で有用な手がかりとなります。

ポリグラフ検査

嘘発見器とも呼ばれる装置を使用して、被験者の心理的反応(心拍数、血圧、呼吸、皮膚の導電性など)を測定し、その人が真実を話しているかどうかを判断しようとする試みです。この検査は、主に法執行機関やセキュリティ関連の職場でのスクリーニングに使用されますが、その信頼性や倫理性については広く議論されています。

虚偽検査

人が話している内容が真実か虚偽かを判定するために行われる一連の検査や手続きのこと

情報検査

特定の情報が正確であるか、または特定の情報を持っているかを評価するために行われる検査のこと

有罪知識質問法

犯罪に関連する特定の情報を被験者が知っているかどうかを検査する方法です。この手法は、犯罪に関与した人物だけが知り得る情報を基にして、犯罪者が持っている「有罪の知識」を暴くことを目的としています。

生理指標

人の心理的状態や身体的健康の状態を示す生理的なデータや反応のこと

対照質問法

ポリグラフ検査において使用される一般的な手法の一つです。この方法は、真実を話しているかどうかを判断するために、関連質問(犯罪や特定の行動に関連する質問)と対照質問(被験者の一般的な行動や性格に関する質問)を交互に行い、被験者の生理的反応を比較します。

ポリグラフ検査鑑定法

一般に「嘘発見器」として知られるポリグラフ機器を使用して、被験者が真実を述べているかどうかを判断する一連の手法です。この検査では、心拍数、血圧、呼吸率、皮膚の導電性などの生理的反応を測定し、これらの反応から被験者の心理的状態を評価します。

ポリグラフ検査は、20世紀初頭に発展し始めました。初期のポリグラフ機は、主に心拍数と血圧の変化を記録することに焦点を当てていました。1921年には、カリフォルニア大学の学生であったラーソンが、現代のポリグラフ検査の原型となる装置を開発しました。

証言の心理学

、目撃者の証言の信頼性、正確性、およびその他の側面を理解し、評価するための心理学の分野です。この分野では、人がどのように情報を観察し、記憶し、そして後にそれを再現するかに焦点を当て、証言がどのように影響を受ける可能性があるかを研究します。

写真面割り

犯罪捜査において目撃者が犯人を識別するために使用される手法の一つです。この方法では、複数の人物の写真が含まれたラインナップ(面割り)が目撃者に提示され、目撃者はその中から犯人だと思われる人物を指摘します。写真面割りは、実際に現場にいた人物を目撃者が直接的に指名することなく、犯人特定の手掛かりを提供する方法として広く用いられています。

面通し

犯罪捜査において目撃者が犯人を識別するために用いられる手法の一つで、目撃者に対して複数の人物(容疑者とその他の無関係な人物)が一列に並んだ状態を直接見せ、犯人と思われる人物を指名させるプロセスです。この方法は、目撃者の記憶に基づいて犯人を特定することを目的としていますが、実施方法によっては目撃者の証言の正確性に影響を与える可能性があります。

事後情報効果

事件や事象の目撃後に受け取る新しい情報が、元の記憶に影響を及ぼし、記憶の歪みを引き起こす心理学の現象を指します。この効果は、目撃者の証言の信頼性に重大な影響を与えることがあり、特に法廷での証言や犯罪捜査の文脈で注目されます。

凶器注目効果

目撃者が犯罪現場で凶器(例えば、銃やナイフ)を見たとき、その凶器に注目しすぎることで、犯人の顔や他の重要な詳細を記憶する能力が低下する現象を指します。

クローズ質問

特定の選択肢から選んで回答させる形式の質問で、通常「はい」や「いいえ」、「A」「B」「C」のような限定的な答えで回答すること

オープン質問

回答者に広範な回答を促す質問形式で、詳細な情報や意見、感想などを引き出すのに適しています。具体的な「はい」「いいえ」で答えられるような閉じた選択肢を設けず、回答者が自由に考えを表現できるようにします。この形式の質問は、インタビューや調査、教育の場などで用いられ、回答者の個人的な経験や見解、深い洞察を得るために有効です。

司法面接法

目撃者や被害者から正確な情報を引き出すために設計された面接技法です。この方法は、1980年代後半に心理学者のフィッシャーとゲイセルマンによって開発されました。目的は、記憶の再生と整理を促し、目撃者が覚えている事象の詳細を可能な限り多く引き出すことにあります。

司法面接法では、記憶の複雑な性質を考慮し、以下のような特定の技法が用いられます:

  1. コンテキストの再現:目撃者に事件発生時の環境や感情を思い出させることで、記憶の糸口を見つけやすくします。
  2. 異なる視点からの報告:事件を異なる視点から思い出させることで、新たな情報を引き出します。
  3. 出来事の逆順での報告:事件の流れを逆順に語らせることで、記憶に偏りが生じるのを防ぎます。
  4. 詳細な報告の促進:たとえ些細なことであっても、すべての記憶の詳細を報告するよう促します。

認知面接法

目撃者からより多くの正確な情報を引き出すことを目指した面接技術です。この方法は、特に警察の捜査や法的な証言の収集において用いられ、目撃者の記憶から詳細を引き出すために設計されています。認知面接法は、1980年代後半に心理学者のロナルド・フィッシャーとエドワード・ゲイセルマンによって開発されました。この手法は、人の記憶の働きに基づき、特定の戦略を用いて記憶の正確性と量を最大化することを目的としています。

犯罪・非行アセスメント

個人が犯罪や非行を犯すリスクを評価し、その原因や背景にある要因を特定するための一連の評価手法です。

目的

  • リスク評価:犯罪や非行を犯すリスクの高さを評価します。
  • ニーズ特定:個々の犯罪者や非行少年が抱える問題やニーズを特定します。
  • 介入計画:効果的な治療や介入プログラムの計画を立てます。

評価手法

犯罪・非行アセスメントには、以下のような手法が含まれることがあります:

  1. 心理学的評価:個人の性格特性、認知パターン、感情的な問題などを評価します。
  2. 社会的評価:家族関係、友人との関わり、学校や職場での状況など、個人の社会的環境を評価します。
  3. 行動評価:過去の犯罪歴、非行行動のパターン、薬物使用の歴史など、個人の行動を評価します。
  4. リスク評価ツールの使用:特定のリスク評価ツールや尺度を使用して、再犯リスクを定量的に評価します。

犯因論的リスク要因

個人が犯罪行為を行う可能性を高める要因のことを指します。これらの要因は、犯罪行動の背後にある原因となる特定の特性や状況を示しており、犯罪予防や再犯防止の取り組みにおいて重要な対象となります。

主な犯因論的リスク要因

  1. 反社会的傾向:反社会的行動、反社会的性格特性、反社会的価値観や信念など、社会の規範や法律に反する傾向。
  2. 歴史的・背景的要因:犯罪歴、早期の非行行動、家族内での虐待やネグレクトの経験。
  3. 家族関係と育成環境:家庭内の暴力、親の監督不足、家族内の犯罪行為への露出。
  4. 教育と就労:学業不振、学校中退、就労の困難。
  5. 同輩の影響:犯罪を犯す同輩との関わり、非行グループへの参加。
  6. 薬物使用と依存:違法薬物やアルコールの乱用、依存症。
  7. 精神的健康問題:特定の精神健康問題や行動障害が犯罪行為に対してリスクを高める場合があります。

静的リスク要因

個人の過去に基づくが、時間とともに変化しない特性や状況のことを指します。これらの要因は、個人の将来の犯罪行為のリスクを評価する際に重要な指標となりますが、直接的には変更することができません。静的リスク要因は、再犯リスクを評価する際の基礎となるデータを提供し、どのような種類の介入が最も効果的であるかを決定する上で役立ちます。

静的リスク要因には以下のようなものが含まれます:

  • 犯罪歴:過去の犯罪行為や有罪判決の記録。
  • 年齢:特定の時点での年齢、特に若年時の非行行動は、将来の犯罪行為のリスクと関連があります。
  • 性別:統計的に男性は女性よりも犯罪行為のリスクが高いとされます。
  • 早期の非行開始:生涯にわたる犯罪行為のパターンを示す早期の非行行動。

動的リスク要因

個人が犯罪を犯すリスクに関連し、時間とともに変化し得る特性や状況を指します。

動的リスク要因には以下のようなものがあります:

  • 薬物乱用:違法薬物やアルコールの使用は、犯罪行為と強く関連しています。
  • 反社会的行動:攻撃性や衝動性など、反社会的な行動パターンは改善可能です。
  • 貧困や社会経済的ステータス:経済的不安定さや低い教育レベルは、犯罪へのリスクを高める可能性がありますが、社会的支援によって改善することができます。
  • 不健全な社会的関係:犯罪を犯す友人との関係や、家族との問題関係は、支援によって変化させることができます。

ビッグ4

犯罪行動に関連する主要な4つのリスク要因のこと

  1. 歴史的・背景的要因(History):
    • 犯罪歴や非行の早期開始など、個人の過去の行動が含まれます。これらは静的リスク要因であり、変更不可能ですが、リスク評価において重要な情報を提供します。
  2. 反社会的性格パターン(Antisocial Personality Pattern):
    • 衝動性、自己中心性、共感の欠如など、反社会的な性格特性を指します。これらは個人の性格に根ざしていますが、適切な介入によってある程度は変更可能です。
  3. 反社会的思考(Antisocial Cognition):
    • 犯罪や非行を正当化する信念や態度、犯罪に対する肯定的な態度など、反社会的な思考パターンを含みます。これらの思考は介入によって変更可能であり、犯罪行動の予防において重要なターゲットとなります。
  4. 反社会的仲間(Antisocial Associates):
    • 犯罪行動を促進する友人や仲間との関わりを指します。犯罪者が反社会的なグループに属している場合、その影響を受けやすくなりますが、社会的なネットワークの変更や健全な関係の構築によって、このリスク要因は改善可能です。

反社会的パーソナリティパターン

個人の性格特性や行動傾向に関連する概念で、他者に対する無関心、共感の欠如、衝動性、責任感の欠如など、社会的な規範や法律に反する行動を示す特徴を含みます。このパターンは、反社会的パーソナリティ障害(ASPD)や、広義の犯罪行動と強く関連しているとされています。

反社会的パーソナリティパターンの個人は、以下のような特徴を示すことがあります:

  • 衝動性: 思慮深く行動することが少なく、衝動的に行動する傾向があります。
  • 攻撃性: 他者に対する攻撃性や敵意を示しやすいです。
  • 自己中心性: 自分の欲求や利益を他者の権利や感情よりも優先します。
  • 共感の欠如: 他人の感情や状況に共感する能力が欠如しています。
  • 責任感の欠如: 自分の行動に対する責任を取ることを避け、他人や状況のせいにすることが多いです。
  • 権威への反抗: 社会的な規範や権威に反抗する行動を取ります。

反社会的態度

社会の規範やルールに対する否定的な見解や感情を含み、しばしば犯罪行動や非行に繋がる考え方や信念のこと

反社会的態度を持つ人々は、以下のような特徴を示すことがあります:

  • 法律や規則への無関心:社会的な規範や法律を尊重しない、あるいは無視する傾向。
  • 他者への敵意:他人を信用しない、攻撃的または敵対的な態度を取ること。
  • 権威への反抗:規則や権威に対する反抗的な態度や行動。
  • 非難の転嫁:自己の問題や行動の責任を他人や外部の状況のせいにする。
  • 犯罪行動の正当化:自己の非行や犯罪行動を正当化する信念や言い訳。

不良交友

犯罪や非行に関わる可能性のある人々との交友関係を指します。

不良交友が及ぼす主な影響は以下の通りです:

  • 行動の模倣:友人や仲間の行動を模倣することで、非行や犯罪行動に巻き込まれる。
  • 圧力と誘惑:グループ内での受け入れを求める中で、悪影響を及ぼす行動への圧力や誘惑に屈する。
  • 価値観の変化:反社会的な価値観や態度を受け入れ、社会的規範から離れる。

過去の犯罪歴

、個人が過去に犯した犯罪に関する記録です。これには逮捕歴、有罪判決、執行猶予や刑の執行など、法的な手続きの結果が含まれます。過去の犯罪歴は、個人の行動パターンを理解する上で重要な情報源となり、リスク評価、再犯防止プログラムの計画、リハビリテーションの方向性決定に利用されます。

モデレイト4

犯罪や非行行動に関連する二次的なリスク要因を指す用語で、ビッグ4(主要なリスク要因)に次ぐ重要性を持つ要因群です。これらは個人の犯罪行動に影響を及ぼす可能性があり、動的リスク要因(時間とともに変化し、介入可能な要因)に分類されることが多いです。モデレイト4は、具体的なリスク管理戦略や治療計画の策定において考慮されるべき要素です。

モデレイト4には以下のような要因が含まれることがあります:

  1. 家族関係の問題:家庭内の暴力、親子関係の悪化、家庭環境の不安定さなど、家族関係における問題が犯罪行動に影響を与える可能性があります。
  2. 学校や職場での問題:学業不振、学校への不適応、職場での対人関係の問題など、教育や就労に関連する問題も犯罪行動のリスク要因となり得ます。
  3. 不適切な余暇活動:有意義な余暇活動の欠如や、犯罪行動を助長するような活動への関与が、非行に繋がることがあります。
  4. 物質乱用:アルコールや薬物の乱用は、犯罪行動の直接的なトリガーとなることが多く、個人の判断力や自制心に悪影響を及ぼします。

RNR原則

犯罪者の更生プログラムや矯正介入における効果的なアプローチを提供するための心理学的フレームワークです。

  1. リスク原則(Risk Principle)
    • 介入の強度や資源は、犯罪者の再犯リスクレベルに応じて調整されるべきです。高リスクの犯罪者にはより集中的なプログラムが、低リスクの犯罪者にはそれほど集中的でないプログラムが適しています。
  2. ニーズ原則(Need Principle)
    • 介入は、犯罪行動に直接関連するニーズ(犯因論的ニーズ)に焦点を当てるべきです。これには、反社会的思考や行動、薬物乱用、貧困など、犯罪行動を引き起こす可能性のある個人の特定の問題点が含まれます。
  3. 反応性原則(Responsivity Principle)
    • 介入は、犯罪者の学習スタイル、動機、能力、文化的背景など、個々の特性に応じてカスタマイズされるべきです。これは、プログラムが参加者にとって関連性が高く、理解しやすい形で提供されることを意味します。

少年司法

未成年者(通常は18歳未満)が犯した犯罪や非行に対処するための法律および制度の体系です。このシステムの主な目的は、少年の更生と社会復帰を促進することにあり、成人を対象とした刑事司法システムとは異なるアプローチを取ります。

触法少年

法律に触れる行為をしたが、その年齢や行為の性質により刑事責任を問われない少年のこと

少年法3条

日本の少年法における重要な条文の一つで、少年の保護と再教育に関する基本的な原則を定めています。この条文は、少年が犯罪行為や非行に走った場合の取り扱いにおいて、単に罰するのではなく、その背景や環境を考慮し、社会への適正な復帰を目指すべきであるという理念を示しています。

保護処分

少年司法における特有の制度で、非行に走った少年を罰するのではなく、更生させることを目的とした措置です。

保護処分の種類

保護処分には様々な種類があり、少年の状況や非行の内容、更生の必要性に応じて適用されます。主な処分の種類には以下のものがあります:

  1. 保護観察処分:専門の保護観察官が少年の指導・監督を行います。日常生活の中で更生を促し、社会復帰を支援します。
  2. 少年院送致処分:少年を少年院に送致し、一定期間、教育プログラムに参加させます。少年院内で学校教育や職業訓練、心理カウンセリングなどを受けることにより、更生を目指します。
  3. 家庭裁判所調査処分:少年の環境や性格、非行の背景などを詳細に調査し、その結果に基づいて最適な更生プログラムを決定します。
  4. 委託訓練処分:特定の機関や団体に少年を委託し、社会復帰に向けた訓練を行います。

検察官への送致

警察が犯罪の捜査を終えた後、その結果をもとに犯罪容疑者を検察官に引き渡す手続きのこと

少年鑑別所法

日本において少年鑑別所の設置と運営に関する法律です。この法律は、少年鑑別所を通じて、少年の身体及び心理の状態、環境、非行の動機などを総合的に調査・鑑別し、その結果をもとに、少年が受けるべき適切な処遇を決定するための基準を定めています。

少年鑑別所の業務

非行や犯罪に関わった少年の行動背景と個性を多面的に調査・評価し、その結果に基づいて最適な処遇を提案することにあります。

不良行為少年

犯罪行為には該当しないものの、社会的に受け入れられない行動や態度を示す少年を指します。これには学校への無断欠席、家出、夜間徘徊、たばこやアルコールの不正使用などが含まれます。これらの行為は直接的に法律を犯すものではありませんが、放置すると将来的に犯罪行為につながるリスクがあるため、早期の介入が重要とされています。

少年院と児童自立支援施設

両施設は、それぞれが対象とする児童・少年のニーズに応じた支援を提供し、彼らが社会に適応し、健全な生活を送ることができるようにするための重要な役割を果たしています。

第2種少年院

日本の少年法に基づき、特に更生の必要性が高いと認められる少年を対象とした施設です。

矯正教育課程

少年院や刑務所などの矯正施設において提供される教育プログラムのこと

特別活動指導

特定の目的を持った活動やプログラムを通じて、参加者(主に学生や少年)に対し、特定のスキルや知識を教え、育成する指導方法を指します。この指導法は、学校教育の一環として、または少年院や更生施設などで行われるプログラムにおいて見られます。

児童自立支援施設

家庭環境の問題、虐待、貧困などの理由で適切な保護を受けられない児童や、社会からの孤立や非行に走るリスクが高い児童を支援するための施設です。

自立支援計画

個々のニーズに合わせて設計された、児童や青少年、障害者、高齢者、またはその他の支援が必要な個人が、自立した生活を送るための目標や方法を体系的にまとめた計画です。

刑事施設

個人が自立した生活を送るために必要なスキルや知識を身につけることを目的とした計画です。

刑事司法手続き(成人)の流れ

犯罪が疑われる行為が発生した時点から、裁判が行われ、判決が下されるまでの一連のプロセスです。

1. 犯罪の発生と報告

  • 犯罪が発生し、警察に報告される。

2. 捜査

  • 警察が捜査を開始し、犯罪の証拠を収集します。
  • 容疑者が特定された場合、逮捕されることがあります。

3. 逮捕

  • 容疑者は、警察によって逮捕されます(必要に応じて逮捕状が発行される場合があります)。

4. 身柄拘束

  • 逮捕後、容疑者は一定期間、警察署や拘置所に拘留されることがあります。
  • この間に、警察は容疑者への取り調べを行います。

5. 検察官への送致

  • 警察が捜査を終えると、事件は検察官に送致されます。
  • 検察官は、証拠を基にして起訴するかどうかを決定します。

6. 起訴

  • 検察官が十分な証拠があると判断した場合、容疑者を正式に起訴します。

7. 裁判の開始

  • 起訴された容疑者は、裁判所で裁判を受けます。
  • 裁判においては、検察官と被告人(またはその弁護人)が証拠や証言を提示します。

8. 判決

  • 裁判官(または陪審員)が、被告人が有罪か無罪かを判断し、判決を下します。
  • 有罪の場合、刑罰が決定されます。

9. 上訴

  • 判決に不服がある場合、被告人や検察官は、一定期間内に上訴することができます。
  • 上訴が認められると、高等裁判所で再審が行われることがあります。

10. 刑の執行

  • 最終的な判決が下されると、刑が執行されます。これには、罰金の支払い、社会奉仕活動、懲役刑などが含まれます。

刑事施設の3種

刑事施設には、一般的に以下の3種類があります。これらの施設は、犯罪者が裁判を受け、判決に基づいて収容される場所であり、各施設はその目的、収容される犯罪者の種類、提供されるプログラムによって区別されます。

1. 拘置所(留置所)

拘置所は、裁判が行われている間、一時的に容疑者や被告人を拘留するための施設です。逮捕後、起訴されるまでの間や、裁判を待っている間に利用されます。拘置所では、主に被告人の身柄を確保し、裁判所への出廷を保証することが目的です。

2. 刑務所

刑務所は、裁判で有罪判決を受けた犯罪者が刑罰として服役する施設です。刑期の長さは犯罪の重さによって異なり、様々なセキュリティレベルがあります。刑務所では、犯罪者に対して更生プログラム、教育プログラム、職業訓練などが提供されることもありますが、施設によってその内容は異なります。

3. 少年院

少年院は、非行に走った少年や犯罪を犯した少年を収容する施設で、彼らの更生と社会復帰を目的としています。少年院では、教育や職業訓練のほか、心理療法やカウンセリングなど、少年の成長と発達に適した様々な支援が行われます。少年法に基づき、一般的には20歳未満の少年が対象となります。

処遇調査

犯罪や非行に関わった個人が将来、社会に再び適応し、再犯を防ぐために必要な支援や介入を決定するための包括的な評価プロセスです。

生活指導

個人が社会の中で健康的で充実した生活を送るために必要な知識、スキル、態度を身につけるための指導です。

薬物依存離脱指導

薬物依存症のある個人が薬物の使用をやめ、依存から脱却するために必要な支援や治療プログラムです。

更生保護

犯罪を犯した人々やそのリスクがある人々が、社会に再び適応し、再犯を防ぐために必要な支援を提供する制度や活動の総称です。この概念は、単に罪を罰するのではなく、犯罪者や非行少年が健全な社会生活を送れるようにすることを目指しています。

保護司

日本の更生保護制度において、犯罪者や非行少年の更生と社会復帰を支援するために活動する専門家です。彼らは法務大臣から委嘱され、保護観察所の指導のもとで、保護観察対象者の監督、指導、援助などの業務を行います。

保護観察の対象とならない場合

裁判所が犯罪者に対して言い渡す判決の一種で、犯罪を犯した人が再び社会に適応できるように支援するために設けられた制度です。しかし、すべての犯罪者が保護観察の対象となるわけではありません。保護観察には適用されないケースがいくつかあります。

法律による除外

特定の犯罪に対して法律で保護観察の適用を除外している場合があります。これには、性犯罪や重大な暴力犯罪が含まれることがあります。

判決による除外

裁判所が被告人に対して保護観察を必要としないと判断した場合、例えば被告人が既に社会に適応していると裁判所が判断した場合などです。

罰金刑のみの場合

罰金刑のみを言い渡された場合、被告人は刑務所に収監されず、保護観察の対象とはなりません。

保護観察書の業務

保護観察対象者の更生と社会復帰を支援し、再犯を防止するための多岐にわたる活動を含みます。保護観察官は、裁判所によって保護観察処分を受けた人々、または仮釈放された人々の監督と指導を担当します。彼らの主な任務は、対象者が社会に再適応できるように支援することですが、具体的には以下のような業務が含まれます。

1. 監督

  • 保護観察対象者の行動と活動を監督し、裁判所が定めた条件の遵守を確認します。
  • 定期的に対象者と面会し、その生活状況や心理状態を把握します。

2. 指導と支援

  • 日常生活スキル、職業訓練、教育機会など、対象者が社会で自立して生活できるように必要な指導と支援を提供します。
  • 薬物依存や精神健康問題など、特定の問題に対処するための支援やカウンセリングを手配します。

3. 環境調整

  • 対象者が安定した社会生活を送れるように、家族、職場、地域社会との良好な関係を構築するためのサポートを行います。
  • 必要に応じて、住居、教育、就労などに関する情報提供や紹介を行います。

4. 報告と評価

  • 対象者の進捗状況や遵守状況について定期的に裁判所や関連機関に報告します。
  • 対象者の更生プログラムや計画の効果を評価し、必要に応じて調整を行います。

5. 危機管理

  • 対象者が危機的状況にある場合には、適切な介入を行い、支援を提供します。
  • 再犯のリスクが高まっていると判断した場合には、裁判所に報告し、対応を協議します。

一般遵守事項

保護観察対象者が従うべき基本的なルールや条件のこと

1. 法律の遵守

  • すべての法律、規則、条例を遵守する。

2. 報告義務

  • 指定された保護観察官や関係機関に対して、住所変更、就職・転職、健康状態の変化など、個人情報の変更を定期的に報告する。

3. 面会の義務

  • 保護観察官との定期的な面会に応じる。

4. 薬物・アルコールの使用制限

  • 違法薬物の使用を禁じる。
  • アルコールの過剰な摂取を制限する、または禁止する場合がある。

5. 職業・教育活動の継続

  • 定職に就くか、または教育・職業訓練プログラムに参加する。

6. 外出制限

  • 夜間外出の禁止や、特定の場所への立ち入り禁止など、外出に関する制限が設けられる場合がある。

7. その他の制限

  • 特定の人物との接触を禁じられる場合がある。
  • インターネットの使用に関する制限が設けられることもある。

特別遵守事項

保護観察などの判決を受けた個人に対して、その人の特定の状況や行為に基づいて裁判所が設定する特定の条件やルールです。これらは、一般遵守事項に加えて設けられ、個々のリスクやニーズに合わせた更生や社会復帰を促すためのものです。

裁判と心理学

裁判と心理学の関わりは深く、この二つの分野が交差する領域を法心理学と呼びます。法心理学は、心理学的知見を法律の問題に適用することで、裁判の過程や法的決定に影響を与えます。以下は、裁判において心理学が果たすいくつかの重要な役割です。

心神喪失者

精神障害や心理的な問題によって、犯罪を犯した時点で正常な判断力や意志のコントロールが不可能だった人を指します。この状態は、個人が自分の行動の意味や社会的な影響を理解し、それに従って行動を制御する能力が著しく低下または失われていることを意味します。

心神耗弱者(こうじゃく)

精神障害や発達障害などのために、正常な判断力や意志のコントロールが著しく低下しているが、完全に喪失しているわけではない人を指します。心神喪失者と比較すると、心神耗弱者はある程度の判断能力や行動の制御能力を保持しているとされますが、その能力が通常の人々に比べて明らかに劣っている状態です。この状態の人が犯罪を犯した場合、その責任能力の程度を考慮して裁判が行われます。

報復的公正

犯罪者に対する罰が、犯した犯罪の性質と程度に応じて科されるべきであるという正義の概念です。この考え方は、「罪には罰を」という原則に基づいており、犯罪によって破られた社会的な秩序や道徳的な均衡を回復するために、犯罪者に対して適切な罰を与えることを重視します。

公正世界信念

人々が生きている世界を基本的に公正であると信じ、人々がその行動に見合った報いを受けるという考え方です。この信念に基づけば、良い行いをする人は報酬を受け、悪い行いをする人は罰を受けるとされます。ルーマーによって1960年代に提唱されたこの理論は、人々が不公正や不条理な出来事をどのように処理し、理解するかを説明するものです。

犯罪被害と心理学

犯罪被害を経験することは、被害者の心理的な健康に深刻な影響を与える可能性があります。心理学においては、犯罪被害者が直面するトラウマ、ストレス反応、回復プロセスに焦点を当てることで、より良い支援方法や治療アプローチを開発しようとしています。

被害者学

被害者が犯罪においてどのような役割を果たすのか、どのような影響を受けるのか、そして被害者に対してどのような支援が提供されるべきかを研究します。この学問は、被害者の権利の保護と強化、被害者支援サービスの改善、犯罪予防策の開発に貢献しています。

エレンベルガー

被害者の中には無意識的に被害を誘発してしまう人がいる

第二次被害者化

犯罪や事故の被害者が、その後の司法手続き、メディアの報道、社会的反応などによって追加的な心理的苦痛やトラウマを経験する現象を指します。この概念は、被害者が初めに受けた直接的な被害に加え、周囲の反応やシステムによってさらなる苦痛を強いられる状況を説明します。

犯罪被害者等基本法

犯罪被害者およびその家族が受けるべき支援や保護の基本的な枠組みを定めた法律です。この法律は、犯罪によって生じた被害者の苦痛を軽減し、社会復帰を支援するために制定されています。

複雑性悲観

長期間にわたる反復的な外傷体験、特に虐待や深刻なネグレクト(無視)、戦争、人質状況、家庭内暴力などによって引き起こされる心的外傷反応です。

ウォーデン

刑務所や矯正施設の管理者や所長を指す用語です。ウォーデンは、施設の運営全般を監督し、収容されている囚人の安全とセキュリティ、施設内での秩序の維持、矯正プログラムや教育プログラムの実施などを担当します。また、スタッフの管理やトレーニング、予算の管理、施設の方針や手順の策定もウォーデンの責任範囲に含まれます。

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