スポンサーリンク

9. 健康・福祉

健康・福祉 健康・福祉

人々が健康的に、かつ安心して生活できるように支援するための体系やサービスのこと

スポンサーリンク
  1. 健康の捉え方
    1. 世界保健機構(WHO)
    2. ウェルビーイング
    3. QOL
    4. 健康寿命
    5. キュアからケアへ
    6. SF-36
    7. 予防の3段階
  2. ストレス
    1. 闘争-逃走反応
    2. キャノン=バード説
    3. HPA軸
    4. SAM軸
      1. HPA軸とSAM軸の主な違い
    5. ストレスによる汎適応症候群
      1. 警告反応期
      2. 抵抗期
      3. 疲憊期(ひはいき)
    6. 社会的最適用評価尺度
    7. デイリーハッスルズ
    8. ラザルス
    9. 職業性ストレスモデル
    10. ストレスチェック制度
  3. ソーシャルサポート
    1. ソーシャルサポートの4分類
    2. 直接効果
    3. 緩衝効果
    4. 認知的共感
    5. 情動的共感
    6. アウトリーチ
    7. レジリエンスの諸条件
  4. 健康生活習慣
    1. 日本人の死因
    2. 生活習慣病
    3. 日本人の睡眠時間
    4. 糖尿病の三大合併症
    5. エイゼンの計画的行動規範
    6. ブレスローの7つの健康生活習慣
  5. 行動変容
    1. ヘルスプロモーション
    2. ストレスマネジメント
    3. トランスセオレティカルモデル
    4. 健康自己統制観
    5. 自己効力感の概念
    6. 健康信念モデル
  6. 健康教育・健康学習
    1. プリシード・プロシードモデル
    2. 食育基本法
    3. 学習援助型
    4. メタボリックシンドローム
    5. BMI
  7. 依存
    1. プロセス依存
    2. 物質依存
    3. 関係依存
    4. 精神依存
    5. 身体依存
    6. 自助グループ
    7. プリンクマン指数
    8. 代替療法
  8. 心身相関
    1. 心身症
    2. 病気不安症
    3. 性格特性
      1. タイプA
      2. タイプB
      3. タイプC
    4. 自律訓練法
  9. 健康・医療と社会
    1. アドヒアランス
    2. 医師誘発需要
    3. バーンアウト
    4. ラロンド報告
    5. 疾病利得
  10. ポジティブ心理学
    1. ポジティブ心理学の父
    2. マインドフルネス
    3. ハーディネスの3成分
      1. コミットメント
      2. チャレンジ
      3. コントロール
    4. 健康生成論
    5. 仕事エンゲージメント
  11. 高齢者心理学
    1. 統合 対 絶望
    2. 65歳以上
    3. 老視
    4. 聴力低下
    5. 高年齢者のパーソナリティ類型
    6. 離脱理論
    7. 活動理論
    8. 知能低下
    9. 死ぬ瞬間
  12. 老年精神医学
    1. 中核症状
    2. 長谷川式認知症スケール
    3. レビー小体型認知症
    4. リアリティ・オリエンテーション
    5. パーキンソン病
    6. 高次脳機能障害
  13. リハビリテーション
    1. アメリカ合衆国
    2. ADL
    3. 作業療法
    4. 回想法
    5. ナラティブセラピー
    6. 特定疫病
    7. リワーク
  14. 福祉の視点
    1. ノーマライゼイション
    2. エンパワメント
    3. 合理的配慮
    4. アドボカシー
    5. 社会的不利
    6. 社会福祉援助技術
      1. 直接援助技術
      2. 間接援助技術
      3. 関連援助技術
    7. 相対的剥奪
  15. 受容と偏見
    1. 価値転換理論
    2. 障害受容段階
    3. 器官劣等感
    4. 態度の3成分
    5. スティグマ
    6. 社会的入院
  16. 精神保健
    1. 陽性症状
    2. 陰性症状
    3. 自傷他害
    4. いのちの電話
    5. 電気けいれん療法
    6. 病識
    7. EE
    8. オープン・ダイアログ
  17. 子ども家庭福祉
    1. 児童
    2. 家族機能縮小論
    3. ヘッドスタート
    4. 3歳児健康診査
    5. 就学している障害児
    6. ファミリーホーム
  18. 虐待とDV
    1. 児童虐待の4類型
      1. 1. 身体的虐待
      2. 2. 精神的虐待(心理的虐待)
      3. 3. 性的虐待
      4. 4. ネグレクト(育児放棄)
    2. 児童相談所
    3. 福祉事務所
    4. 代理ミュンヒハウゼン症候群
    5. 虐待の連鎖
      1. 破壊的権利付与
    6. DVの周期性
    7. 共依存
    8. イネイブラー
  19. 障害児/者の支援
    1. 身体障害者手帳の対象
    2. 障害者総合支援法3条
    3. 有病率
    4. 重症心身障害児
    5. きょうだい児
    6. 障害者雇用率制度
  20. バリアフリー社会
    1. 社会的障壁
    2. トータルコミュニケーション
    3. UD7原則
    4. 視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)
    5. LGBTQ
    6. ピクトグラム
  21. ソーシャルワーク
    1. ハルハウス
    2. ケースワークの母
    3. 診断主義
    4. ケースワークの4つのP
    5. エコマップ
    6. ジェノグラム
    7. ケースワークの7原則
    8. ソーシャルワークの過程
    9. ソーシャルワークで扱う領域のレベル
      1. ミクロ
      2. メゾ
      3. マクロ
  22. 心理・福祉の専門知識
    1. 家庭支援専門相談員
    2. 児童心理司
    3. 臨床心理技術者
    4. 資質向上の責務
    5. スーパービジョンの3機能
    6. 産業医
    7. 医師の指示

健康の捉え方

単に病気や障害がない状態ではなく、身体的、精神的、社会的にもより良い状態にあること

世界保健機関(WHO)は1948年に、「健康とは、単に病気や虚弱でないことだけでなく、身体的、精神的、社会的に完全な良好な状態であること」と定義しました。

世界保健機構(WHO)

世界の公衆衛生を改善し、すべての人に最高水準の健康を実現するために活動する国際連合の専門機関のこと

WHOは1948年4月7日に設立されました。この日は現在、「世界保健デー」として毎年記念されています。設立の背景には、第二次世界大戦後の国際社会が直面した公衆衛生上の課題への対応と、健康を基本的人権の一つとして確立するという理念があります。

ウェルビーイング

単に病気や障害がない状態ではなく、心身の健康と幸福感のこと

ウェルビーイングは、主に「心理的ウェルビーイング」と「主観的ウェルビーイング」の二つに大別されます。心理的ウェルビーイングは、自己実現や個人の成長、人生の意味など内面的な満足度に焦点を当てた概念です。一方、主観的ウェルビーイングは、幸福感、満足度、ポジティブな感情など、個人が主観的に感じる幸福の状態を指します。

QOL

「Quality of Life」の略で、「生活の質」であり、人がその生活を送る上で感じる満足度や幸福度の高さのこと

日常生活で言えば、健康であること、仕事や趣味に充実感を感じること、家族や友人と良好な関係を持つことなどが、QOLを高める要因となります。つまり、単に長生きすることだけでなく、その生活の質が重要視されます。

健康寿命

人が健康的な生活を送れる期間のこと

健康寿命の概念は、人口の高齢化が進む中で、単に長生きするだけでなく、いかにして健康に長生きするかが重要視されるようになった結果、注目されるようになりました。

キュアからケアへ

問題や病気を治療する(キュア)から、予防や生活全体のサポート(ケア)に重点を置く考え方のこと

「キュア」は具体的には、病気や障害を持つ人々に対する医療行為や治療技術の適用を指します。対して「ケア」は、病気の予防、健康の維持、生活支援、心のケアなど、人々の豊かな生活を支えるための包括的なサポートを意味します。ケアは、単に身体的な健康だけでなく、精神的、社会的な健康も包括するアプローチです。

SF-36

個人の健康状態を包括的に評価するために広く使用されるアンケートのこと

SF-36は8つのスケールから成り立っており、それぞれが異なる健康の側面を評価します。これらは以下の通りです:

  1. 身体機能:日常生活の中での身体活動の能力。
  2. 身体的役割制限:身体的健康による日常活動の制限。
  3. 身体痛:痛みの程度とその痛みが日常生活に与える影響。
  4. 一般的健康観:自身の健康をどのように見ているかの全体的な評価。
  5. 活力(エネルギー/疲労):エネルギーレベルと疲労感。
  6. 社会的機能:身体的健康や感情的問題が社会的活動に与える影響。
  7. 感情的役割制限:感情的問題による日常活動の制限。
  8. 精神健康:不安、抑うつ、心の平穏さなど、一般的な精神的健康状態。

予防の3段階

疾病の予防をプライマリー(一次予防)、セカンダリー(二次予防)、ターシャリー(三次予防)の三つの段階に分けて対応する方法のこと

  1. プライマリー予防(一次予防)
    • 目的: 疾病の発生を防ぐ。
    • 方法: 健康な人々に対する介入で、疾病のリスクファクターを除去または軽減することを目指します。例えば、予防接種、健康的な食生活の推奨、運動の促進、喫煙の防止などがあります。
  2. セカンダリー予防(二次予防)
    • 目的: 疾病の早期発見と早期治療。
    • 方法: 既に疾病のリスクがあるか、または初期段階の疾病を持つ人々への介入です。早期発見と治療により、疾病の進行を防ぎます。例としては、がんのスクリーニング、高血圧や糖尿病の早期発見と管理があります。
  3. ターシャリー予防(三次予防)
    • 目的: 疾病の悪化を防ぎ、合併症を最小限に抑える。
    • 方法: 既に疾病が進行した人々を対象にした介入で、疾病の進行を遅らせたり、生活の質を向上させたりすることを目指します。リハビリテーションや、長期的な管理・サポートがこれに該当します。

ストレス

ストレスの概念は、20世紀初頭にハンス・セリエという科学者によって発展しました。彼は、生物が外部の脅威や要求に反応して適応しようとする過程を「ストレス反応」と定義しました。この理論は、心理学だけでなく、医学や生物学など幅広い分野に影響を与えています。

闘争-逃走反応

危険や脅威に直面した際の生物の自然な反応のこと

闘争-逃走反応は、1930年代にアメリカの生理学者キャノンによって提唱されました。彼は、動物が脅威に直面した際に示す反応を観察し、この概念を発展させました。この反応は、生物が生存するために不可欠な自動的な身体反応とされています。

この反応は自律神経系によって引き起こされ、アドレナリンとノルアドレナリンといったストレスホルモンの急速な放出を伴います。これにより、心拍数の増加、呼吸の加速、筋肉への血流の増加などの身体的変化が生じ、迅速な行動が可能になります。

キャノン=バード説

感情と身体的な反応は同時に起こるという理論のこと

キャノン=バード説は、20世紀初頭にウォルター・キャノンとフィリップ・バードによって提唱されました。これは、以前のジェームズ=ランゲ説に対する反論から生まれました。ジェームズ=ランゲ説は、感情体験は身体的な反応に続いて起こると主張していましたが、キャノンとバードは感情と身体的な反応がほぼ同時に発生すると主張しました。

例えば、ある人が大切なプレゼンテーションを控えている状況を考えてみましょう。この理論によると、プレゼンテーションの直前に感じる緊張感や不安は、心臓の鼓動が速くなるなどの身体的な反応と同時に発生します。この人は、緊張を感じると同時に、その緊張が原因で手が震えたり、声が震えたりするのを経験します。

HPA軸

ストレス反応を調節する主要な神経内分泌系のこと

HPA軸は「視床下部-下垂体-副腎軸」の略で、これはストレスを感じたときに活性化する体内の重要なシステムを指します。このシステムは、視床下部がCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)を放出し、それが下垂体を刺激してACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を放出し、最終的に副腎からコルチゾールというホルモンを放出させる一連の反応を含みます。

HPA軸の機能は、体をストレス源から保護するために重要です。ストレスや脅威が発生すると、HPA軸は迅速に活性化され、体を戦闘または逃走の状態に準備させます。コルチゾールは、その反応において中心的な役割を担い、エネルギーの供給を増やし、免疫応答を調整し、痛みの感覚を抑制します。しかし、長期にわたる過剰なコルチゾールの放出は、免疫機能の低下や心血管疾患などの健康問題を引き起こす可能性があります。

SAM軸

体の即時的なストレス反応を担う神経系統のこと

SAM軸は「交感神経-副腎髄質系」の略で、ストレスに対する体の迅速な反応を担当するシステムを指します。このシステムは、ストレスの物理的または心理的要因に対して、即座に反応して体を準備させる役割を持っています。交感神経系が活性化されると、副腎髄質からアドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が放出され、これがストレス応答に直接関与します。

SAM軸の活性化は、心拍数の増加、血圧の上昇、エネルギー源となる糖の血中濃度の増加など、身体を即座に行動に移せる状態にする一連の変化を引き起こします。これらの反応は、短期的には有益であり、個体がストレス源から逃れるか、それに立ち向かうための準備を整えます。

HPA軸とSAM軸の主な違い

  • 反応の時間枠:SAM軸は即時的な反応を司り、ストレス源に対して迅速に体を動かす準備を整えます。一方、HPA軸の反応は比較的遅く、ストレス反応を持続させるための長期的な調節メカニズムを提供します。
  • 関与する物質:SAM軸はアドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の放出によって機能し、これらは副腎髄質から直接分泌されます。HPA軸では、視床下部からコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)が放出され、下垂体を経由して副腎皮質からコルチゾールを放出させます。

HPA軸とSAM軸は、体がストレスに対処するための二つの主要な経路を形成しており、互いに密接に関連しながらも異なる役割を果たします。ストレス反応の完全な理解には、これら二つのシステムの相互作用とそれぞれのメカニズムを考慮に入れることが必要です。ストレス管理や心身の健康維持において、これらの知識は有効な手段となります。

ストレスによる汎適応症候群

ストレスへの反応として体が示す一連の適応過程のこと

1940年代にセリエによって提唱されました。彼は、様々な種類の持続的なストレスが体に与える影響を研究し、ストレスに対する体の反応が基本的に同様のパターンをたどることを発見しました。この理論は、ストレス生理学の基礎となり、ストレスに対する身体の適応能力を理解する上で重要な概念です。

汎適応症候群は、大きく3つの段階に分けられます。第一段階は警告反応(アラーム反応)で、ストレス源に初めて晒されたときに体が示す即時の反応です。この段階では、HPA軸やSAM軸が活性化し、アドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンが放出されます。第二段階は抵抗期で、体がストレス源に適応しようとしてホルモンのバランスを調整し、ストレス耐性を高める期間です。最後の第三段階は疲弊期で、長期間のストレスや過度のストレスにより、体の適応能力が限界を超えてしまう段階です。この段階で、慢性的な健康問題が発生するリスクが高まります。

警告反応期

体がストレスに気づき、対処しようとする段階のこと

警告反応期では、体はストレス源に対処するために必要なエネルギーを集中させるために、一連の生理学的変化を経験します。この期間には、アドレナリンとノルアドレナリンの放出が増加し、心拍数、血圧、血糖値が上昇します。これらの反応は、体を戦闘または逃走の準備状態にするためのもので、ストレスに対する即時の反応として機能します。

抵抗期

体がストレス源に適応し、反応を維持するために努力する段階のこと

抵抗期では、体はストレス源に対抗するためにエネルギーを集中させ、ホルモンバランスや免疫応答などの内部プロセスを調整します。この段階で、コルチゾールなどのストレスホルモンのレベルが高まり続けることがありますが、体は同時にストレスの影響を最小限に抑えるために努力します。この過程で、体は一時的にストレス源に適応し、耐性を示しますが、この状態が長く続くと、体の資源が枯渇し始める可能性があります。

疲憊期(ひはいき)

長期間のストレスによって体の適応能力が枯渇し、健康障害が発生する段階のこと

疲憊期に入ると、体はストレスに対処するための資源をほとんど使い果たしてしまいます。コルチゾールなどのストレスホルモンの持続的な高レベルの放出により、免疫機能の低下、心血管系の問題、消化器系の障害など、多岐にわたる健康問題が発生する可能性があります。また、精神的な健康にも影響を及ぼし、うつ病や不安障害などの心理的な状態が悪化することもあります。

社会的最適用評価尺度

個人の社会的適応能力や生活の質を測定するために使用される心理学的評価ツールのこと

社会的最適用評価尺度は、個人が日常生活の中で直面するさまざまな状況にどのように対応し、適応しているかを評価するために開発されました。この尺度は、社会的な役割の遂行、人間関係の管理、職業的な成功、および一般的な生活の質に関連するさまざまな側面を測定することを目的としています。これにより、心理的な健康状態や、特定の治療介入が個人の適応能力に与える影響を評価することが可能になります。

デイリーハッスルズ

日常生活における小さなストレスや悩みのこと

デイリーハッスルズの概念は、1970年代後半に心理学者リチャード・ラザラスによって提唱されました。彼は、大きな生活の変化や出来事だけでなく、日常生活の中で経験する小さなストレスやイライラも、人々の心理的健康や幸福感に大きな影響を与えることを指摘しました。このような日々の小さなストレスが積み重なることで、人はストレスを感じやすくなり、これが健康に悪影響を及ぼす可能性があるとされています。

ラザルス

リチャード・ラザラスは、1960年代から1990年代にかけて活動し、ストレスと感情の認知理論の開発に貢献しました。彼は、ストレス反応が単に環境的要因によって直接引き起こされるのではなく、個人がその状況をどのように解釈し、評価するかに大きく依存すると主張しました。

ラザラスの理論によると、ストレス体験は二つの主要な評価過程を経ています:一次評価と二次評価。一次評価では、個人は状況が自分にとって有害なものか、挑戦となるものか、または関係ないものかを評価します。二次評価では、個人は自分がその状況に対処するためにどのような資源やオプションを持っているかを評価します。これらの評価過程を通じて、ストレス反応の程度が決定されます。

職業性ストレスモデル

職場でのストレスの原因となる要因と、それが従業員の健康にどのように影響するかを説明する理論のこと

このモデルの考え方は、1970年代後半に特に注目され始めました。特に、ロバート・カーンとトーマス・ホームズの研究によって、職場環境が従業員のストレスレベルに大きく影響を与えることが明らかにされました。また、カラセックの「要求‐コントロールモデル」やシーゲルの「労働特性モデル」など、多くの研究者が職場のストレスに関する様々な理論を提唱しています。

職業性ストレスモデルでは、主に以下の要素がストレスの原因とされています。

  1. 職務要求:仕事の量や難易度が高いと、ストレスが増加します。
  2. 職務のコントロール:従業員が自分の仕事に対してコントロール(自由度や意思決定の権限)を持っている場合、ストレスは軽減されます。
  3. 社会的サポート:同僚や上司からのサポートがある場合、ストレスの影響を抑えることができます。
  4. 報酬の不公平:労働の対価が不十分だと感じると、ストレスが増加します。

ストレスチェック制度

従業員のメンタルヘルスの状態を定期的にチェックし、ストレスの原因を特定することで、職場環境の改善や従業員の健康を守るための制度のこと

この制度は、働く人の心の健康を守るために、2015年に日本で法律に基づいて導入されました。働き手のメンタルヘルス問題が社会的な課題となり、企業におけるメンタルヘルスケアの重要性が高まっていることを背景に、職場でのストレスが従業員の心身の健康に与える影響に注目が集まりました。

ソーシャルサポート

人が他者から受ける心理的または物質的な援助や支援のことで、ストレスの緩和や健康の維持・向上に寄与する重要な要素です。

ソーシャルサポートの4分類

ソーシャルサーポートの概念は1970年代に心理学や社会学の分野で注目され始めました。人間関係が精神健康に及ぼす影響に焦点を当てた研究が増え、社会的なつながりがストレスや疾患の予防、さらには早期回復に有効であることが明らかになったためです。ソーシャルサポートの研究は、人々が社会的なネットワーク内でどのように支援を受け取り、提供するか、そしてそれが健康にどのように影響するかを探求しています。

  1. 情緒的サポート:共感、愛情、信頼など、感情的な支援を提供すること。
  2. 情報的サポート:アドバイスや情報提供を通じて支援すること。
  3. 物質的サポートまたは具体的サポート:金銭的援助や物質的な資源の提供。
  4. 評価的サポート:自己評価の向上を助けるフィードバックやアドバイスを提供すること。

これらのサポートは、人がストレスを感じた時や困難に直面した時に、精神的な安定感や解決策を見出すのに役立ちます。

直接効果

特定の要因が個体の心理的または身体的状態に直接的に影響を与える現象のこと

直接効果は、何かが直接にあなたの健康や幸福に良い影響を与えるときに起こります。これは、その効果が特定の状況や条件に依存しないことを意味します。たとえば、十分な睡眠を取ることは、ストレスが高いか低いかにかかわらず、一般的な健康状態に直接良い効果をもたらします。

緩衝効果

社会的サポートが個人のストレス反応を軽減し、精神的な健康を保護する効果のこと

緩衝効果は、難しい時期やストレスが多い時に、人々がお互いを助け合うことで、そのストレスが少しでも軽くなることを意味します。友人や家族のサポートがあると、問題が少しは楽に感じられたり、乗り越えやすくなったりします。これは、精神的な負担を軽減し、健康や幸福を守るのに役立ちます。

認知的共感

他人の視点を理解し、その人がどのように感じているかを認識する能力のこと

認知的共感は、友人が悲しんでいる時に、なぜ悲しんでいるのかを理解しようとする能力です。その人がどのような気持ちでいるかを「感じる」のではなく、「理解」しようとすることで、あなたはより支援的でありながらも適切なアドバイスを提供することができます。

情動的共感

他人の感情を自分自身の感情として感じ取る能力のことで、他者の喜びや悲しみを共有すること

情動的共感は、他人の感情を見たり聞いたりして、その感情が自分にも伝わり、同じような感情を感じる現象です。例えば、友人が喜びの涙を流しているのを見て、自分も幸せを感じたり、映画で悲しいシーンを見て自分も泣いたりするのは、情動的共感の一例です。この能力は、他者と深い感情的なつながりを築くのに役立ちます。

アウトリーチ

特定の目的を持って積極的に外部の個人やコミュニティに接触し、情報提供、サービス提供、または参加を促す活動のこと

アウトリーチは、支援や情報が必要な人々に手を差し伸べる活動です。これにより、彼らが利用できるサービスやプログラムについて知り、それらを活用することができます。例えば、健康検診の無料キャンペーンや教育プログラムの情報提供などがあります。アウトリーチを通じて、人々は自分たちが必要としているリソースや支援により簡単にアクセスできるようになります。

レジリエンスの諸条件

困難やストレスの状況に直面しても、それを乗り越えて回復し、時には成長することができる個人の精神的な強さや柔軟性のことです。レジリエンスの諸条件とは、このような回復力を支える要因や条件のこと

レジリエンスを形成する諸条件には、個人的な要因と環境的な要因があります。

  • 個人的な要因には、ポジティブな自己観、問題解決能力、感情の調整能力、自己効力感(自分の行動で結果を変えられるという信念)などが含まれます。
  • 環境的な要因には、支援的な家族環境、強い人間関係のネットワーク、コミュニティや社会からのサポートなどがあります。

これらの要因は、ストレスや逆境に直面した際に、個人が回復し、時にはそれを成長の機会として利用するための基盤を提供します。

レジリエンスは、人生の困難を乗り越えるための「精神的な筋肉」のようなものです。この強さは、生まれつき持っている部分もあれば、育っていく中で学んでいく部分もあります。家族や友人からの支援、前向きな考え方、自分自身を信じる力など、多くの要因がこの「筋肉」を強くします。

健康生活習慣

身体と心の健康を保持し、病気のリスクを低減するために行う、日常生活の中での健康的な行動や習慣のこと

日本人の死因

日本人の主な死因は、がん、心疾患、脳血管疾患が上位を占めており、これらは生活習慣病に関連していることが多いです。

高度経済成長期以降、食生活の西洋化や運動不足、ストレスの増加など、生活習慣が大きく変化しました。これらの変化は、がんや心疾患、脳血管疾患といった病気のリスクを高め、日本人の死因のトップを占めるようになりました。

生活習慣病

不健康な食生活、運動不足、喫煙、過度の飲酒などの日常的な生活習慣が原因で発症する病気の総称のこと

日本人の睡眠時間

日本人の平均睡眠時間は、国際的に見ても短い傾向にあり、多くの場合、1日あたり6時間から7時間程度とされています。

日本では、成人の多くが推奨される1日7〜8時間の睡眠を取っていない状況が指摘されています。特に、働き盛りの世代では、仕事のプレッシャーやストレス、さらには社会的な飲み会などの文化が、十分な睡眠時間を確保することを難しくしています。睡眠不足は、集中力の低下、記憶力の減退、免疫力の低下など、健康上の様々な問題を引き起こす可能性があります。

糖尿病の三大合併症

糖尿病が長期にわたって進行することで起こる、重大な健康問題のことで、主に糖尿病性網膜症糖尿病性腎症糖尿病性神経障害がこれに該当します。

  • 糖尿病性網膜症:糖尿病による高血糖が長期間続くと、目の網膜の微細な血管が損傷し、これが視力低下や最悪の場合は失明を引き起こす可能性があります。
  • 糖尿病性腎症:糖尿病が原因で腎臓の血管が徐々に傷つき、腎臓の機能が低下します。腎不全に至ることもあり、透析や腎移植が必要になる場合もあります。
  • 糖尿病性神経障害:高血糖が原因で神経が損傷すると、手足のしびれや痛み、消化器系の障害、性機能障害など、さまざまな神経障害が起こります。

これらの合併症は、糖尿病の血糖管理を適切に行うことで、その発生リスクを減少させることが可能です。

エイゼンの計画的行動規範

個人の行動意図と行動の背後にある心理的プロセスを説明する心理学理論のことで、この理論は、個人が特定の行動を起こすかどうかは、その行動に対する意図によって大きく左右されると主張します。

この理論は、アイスク・エイゼン(Icek Ajzen)によって1980年代に提唱されました。元々は「行動の理論(Theory of Reasoned Action, TRA)」としてマーティン・フィッシュバインと共に開発されたものを、エイゼンがさらに拡張しました。行動を起こす前の意図を形成する要因として、態度、主観的規範、そして新たに追加された知覚された行動コントロールを重視します。

計画的行動規範によれば、行動意図は主に以下の3つの要因によって形成されます。

  1. 態度:特定の行動を行うことに対する個人の肯定的または否定的な評価。
  2. 主観的規範:重要な他者(家族、友人、同僚など)がその行動を承認または不承認すると個人が感じる度合い。
  3. 知覚された行動コントロール:個人がその行動を行う上での容易さや困難さをどの程度自己コントロールできると感じるか。

エイゼンの計画的行動規範は、人がある行動をするかどうかを決める際に、どのような考えが影響するかを説明します。自分がその行動に対してどう思っているか(態度)、周りの人がその行動をどう見るか(主観的規範)、そして自分にその行動をする能力があるかどうか(知覚された行動コントロール)が、行動を起こす強さを決めるというわけです。

ブレスローの7つの健康生活習慣

長寿と健康維持に貢献するとされる生活習慣のセットです。これらの習慣を実践することで、慢性病のリスクを低減し、全体的な健康を向上させることができます。

この概念は、アメリカの公衆衛生学者ブレスローによって1970年代に提唱されました。ブレスローは、長期間にわたる研究を通じて、特定の生活習慣が人々の健康と寿命に大きな影響を与えることを明らかにしました。これらの習慣を日常生活に取り入れることで、健康寿命を延ばし、生活の質を高めることが可能になります。

行動変容

健康を改善したり、特定の目標を達成したりするために、個人が自身の行動や習慣を意識的に変えるプロセスのこと

ヘルスプロモーション

人々の健康を向上させるために、健康の決定要因に積極的に取り組むことにより、健康レベルを高める活動やプロセスのこと

ヘルスプロモーションの概念は、20世紀後半に公衆衛生の分野で発展しました。特に、1986年にカナダのオタワで開催された第一回国際健康促進会議において採択された「オタワ憲章」によって、ヘルスプロモーションの理念が世界的に広まりました。

ヘルスプロモーションは、個人だけでなく、コミュニティや社会全体の健康を向上させることを目指します。これには、以下のような活動が含まれます。

  1. 健康教育:健康的な生活習慣や行動についての知識を提供し、意識を高める。
  2. 環境の改善:健康に良い選択がしやすい環境を作るため、職場や学校、地域社会の環境を改善する。
  3. 健康政策の策定:健康を促進する政策を作り、実施する。
  4. コミュニティ開発:健康に良い行動や生活習慣を支援するためのコミュニティ資源を開発する。

ヘルスプロモーションは、健康な選択が個人だけでなく、社会全体で支援され、容易になることを目指しています。

ストレスマネジメント

ストレスの原因を理解し、それに対処する技術や方法を身につけること

ストレスマネジメントには、以下のような方法があります。

  1. 認知行動療法:否定的な考え方や信念を認識し、それらをより現実的で肯定的なものに変える技術。
  2. リラクゼーション技術:深呼吸、瞑想、ヨガ、プログレッシブ筋弛緩法など、心身をリラックスさせる方法。
  3. タイムマネジメント:時間を効率的に使い、仕事や生活の優先順位をつける技術。
  4. 運動:定期的な身体活動がストレス反応を軽減し、気分を向上させる。
  5. 社会的サポート:家族や友人との良好な関係を維持し、サポートを求める。

トランスセオレティカルモデル

人が健康行動の変化を遂げる過程を理解するための心理学的理論です。このモデルは、行動変容が一連の段階を経て進行すると考え、個々人がその変化の過程で異なる段階にいること

このモデルは、ジェームズ・プロチャスカ(James O. Prochaska)とカルロ・ディクレメンテ(Carlo C. DiClemente)によって1980年代に開発されました。当初は喫煙者の禁煙過程を理解するために考案されましたが、後に運動、健康的な食生活、ストレス管理など、様々な健康行動に適用されるようになりました。

トランスセオレティカルモデルは、以下の5つ(あるいは6つ)の段階を包含します。

  1. 前思考段階(Precontemplation):変化の必要性を認識していない段階。
  2. 思考段階(Contemplation):変化について考え始めているが、まだ行動に移していない段階。
  3. 準備段階(Preparation):変化を起こすための具体的な計画を立て始めている段階。
  4. 行動段階(Action):実際に新しい健康行動を始めている段階。
  5. 維持段階(Maintenance):新しい健康行動を継続している段階。

一部のバージョンでは、**終結段階(Termination)**も含まれ、ここでは変化した行動が完全に定着し、再び古い行動に戻ることがないとされます。

健康自己統制観

個人が自身の健康状態をどの程度自分自身の行動や意思決定でコントロールできると感じるか、または外部の力(運命、他者、医療システムなど)に依存していると感じるかを示す心理学的な概念のこと

この概念は、1970年代に心理学者のジュリアン・ローターによって提唱された「統制の所在(locus of control)」理論を基にしています。ローターは、人々が自分の人生や周囲の出来事をコントロールできると感じるかどうかには個人差があり、これが行動やモチベーションに影響を与えると考えました。健康自己統制観は、この理論を健康の文脈に適用したものです。

健康自己統制観は大きく分けて三つのタイプに分類されます。

  1. 内的統制観:自分の健康は自分の行動や選択によって大きく左右されると感じる観点。この観点を持つ人は、健康的なライフスタイルを送る傾向があります。
  2. 外的統制観-強力他者:医師や家族など、他者が自分の健康状態をコントロールしていると感じる観点。
  3. 外的統制観-運命:健康は運や運命によって決まると感じる観点。このタイプの人は、健康に対して能動的な姿勢を取りにくいことがあります。

個人の健康自己統制観は、健康行動の選択や疾病への対処方法に大きな影響を与えます。

自己効力感の概念

個人が自分自身の能力を信じ、特定の行動を成功させることができるという確信のこと

自己効力感の理論は、1977年にバンデューラによって提唱されました。彼は社会学習理論の枠組みの中でこの概念を開発し、個人の行動、思考、感情が互いに影響し合う過程を説明しました。バンデューラは、自己効力感が高い人は、挑戦的な目標を設定し、困難に直面しても粘り強く取り組む傾向があると指摘しています。

自己効力感は、以下の4つの主要な情報源から形成されるとされています。

  1. 成果体験:以前に成功した経験が自信を与え、類似の状況で成功できるという信念を強化します。
  2. 代理体験:他人が成功するのを見ることで、自分も同じことができると信じるようになります。
  3. 言語的説得:他者からの肯定的なフィードバックや励ましが、自己能力を信じる気持ちを強化します。
  4. 情動的興奮の状態:自分の感情や生理的な反応をコントロールすることで、困難な状況でも落ち着いて行動できるという信念が高まります。

健康信念モデル

人が健康関連行動をとるかどうかを予測するための心理社会的健康行動理論のこと

健康信念モデルによると、人が健康行動をとるためには以下の要素が関係しています。

  1. 脆弱性の認識:特定の健康問題に対する個人の脆弱性やリスクの認識。
  2. 深刻さの認識:健康問題の深刻さやその結果に対する評価。
  3. 利益の認識:特定の健康行動が健康問題を防ぐ効果を持つという信念。
  4. 障壁の認識:健康行動を取ることの障壁やコストに対する認識。
  5. 自己効力感:特定の健康行動を成功させることができるという信念(後にモデルに追加された要素)。

これらの要素がポジティブに働くほど、個人は健康行動を起こす可能性が高くなります。

健康教育・健康学習

人々が健康に関する知識を深め、健康的な選択ができるようになるためのプロセスです。これには、健康リスクの認識向上、予防的行動の促進、健康的な生活習慣の習得などが含まれます。

プリシード・プロシードモデル

健康問題を特定し、それに対処するためのプログラムを開発する過程で、目標達成のための具体的な手段を段階的に構築する方法を提供するモデルのこと

プリシード・プロシードモデルは、1970年代にローレンス・W・グリーンとマーシャル・W・クラインによって開発されました。当初は「プリシードモデル」として提案され、後に「プロシード」部分が追加され、プログラムの実施と評価に焦点を当てたモデルへと拡張されました。

  1. プリシード(PRECEDE):「Predisposing, Reinforcing, and Enabling Constructs in Educational Diagnosis and Evaluation」の略で、健康問題を診断し、プログラムの目標を設定するための計画段階です。これには、対象となる人々の健康問題の特定、それらの問題に影響を与える要因の評価、およびプログラムの目標と優先順位の設定が含まれます。
  2. プロシード(PROCEED):「Policy, Regulatory, and Organizational Constructs in Educational and Environmental Development」の略で、計画したプログラムを実施・評価する段階です。実施計画の策定、プログラムの実行、そしてその効果の評価を行います。

このモデルは、健康行動の変容に影響を与える多様な要因を体系的に考慮し、効果的な健康促進プログラムを設計・実施するためのガイドとして広く使用されています。

食育基本法

日本において2005年に施行された法律で、国民一人ひとりが健全な食生活を送ることができるように支援し、食に関する正しい知識と理解を深めることを目的としています。

食育基本法では、「食育」とは、健康で文化的な食生活を営むために必要な能力を身につけること、及びその支援を行うことと定義されています。法律には、以下のような内容が含まれています。

  • 食に関する正しい知識の習得と健康的な食生活の実践
  • 地域や季節に根ざした食材の利用の促進
  • 学校教育や家庭での食育の推進
  • 食を通じたコミュニケーションの大切さの認識
  • 食品の生産から消費に至る過程の理解と食の安全の確保

学習援助型

メタボリックシンドローム

腹部肥満を中心とした、高血圧、高血糖、高脂血症などの複数の危険因子が一つに集まった状態のこと

BMI

人の体重と身長の関係から算出される値で、肥満や低体重の判定に用いられる指標のこと

BMIは、19世紀にベルギーの統計学者アドルフ・ケトレによって考案されました。当初は人口統計学的な研究のために使用されていましたが、後に肥満の測定方法として広く普及しました。BMIは簡単に計算でき、成人の体重の健康状態を評価する便利な方法として世界中で用いられています。

BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値で求められます。計算式は以下の通りです。

BMI=体重(kg)/身長(m)2​

  • 低体重:BMIが18.5未満
  • 正常体重:BMIが18.5~24.9
  • 過体重:BMIが25~29.9
  • 肥満(1度):BMIが30~34.9
  • 肥満(2度):BMIが35~39.9
  • 肥満(3度):BMIが40以上

依存

他者や物質に心理的または物理的に強く依存し、自立した行動が難しくなる状態のこと

プロセス依存

学習や記憶、判断などの精神活動が、その時々の状況や条件、経験の積み重ねなどによって異なる過程を経ること

簡単に言うと、私たちが何かをよりよく覚えているか、または忘れてしまうかは、どのような状況でその情報に接したか、どのような状態でいたかに大きく依存します。例えば、同じ曲を聴きながら勉強した内容は、後日その曲を聴いたときに思い出しやすいということがあります。

物質依存

アルコールや薬物など、ある物質に対して身体的または心理的に強く依存してしまう状態のこと

これにより、その物質なしでは身体的な不快感や心理的な不安を感じるようになり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

関係依存

自分自身よりも他人の意見や感情を重視し、他人からの承認や愛を得ることに強い依存感を持つ状態のこと

これにより、自立性が低下し、他人との関係性において過剰に人を喜ばせようとする行動や、断ることができないといった特徴が見られることがあります。

精神依存

特定の物質を摂取することや、ある行為を繰り返すことによって得られる心理的な満足感や安心感に強く依存する状態のこと

このような依存は、物理的な依存とは異なり、物質や行為がもたらす精神的な効果に対する欲求が中心となります。

身体依存

特定の物質を定期的に摂取することによって、その物質なしでは身体が正常に機能しなくなる状態のこと

薬物をやめようとすると、体が反応して様々な離脱症状を示すことがあります。これは身体がその物質なしでの生活に再適応する過程です。

自助グループ

特定の問題や状況を共有する人々が支援、情報交換、経験の共有を目的に自主的に組織する集まりのこと

自助グループは、同じ悩みや問題を抱える人々が集まり、お互いの経験を共有し、支え合うことで、その問題を乗り越えようとする集まりです。このグループは、特定の疾患、依存症、または人生の困難な段階を経験している人々にとって有益なサポートシステムとなり得ます。

プリンクマン指数

代替療法

伝統的な西洋医学以外の手段を用いて健康の問題を治療する方法のこと

代替療法は、医薬品の使用を避け、自然な手段や伝統的な治療法を通じて健康を促進し、病気を治療するさまざまなアプローチを指します。これには、ハーブや栄養療法、身体的治療(マッサージやカイロプラクティックなど)、心理的治療(瞑想や心理療法など)が含まれます。

心身相関

心理的な状態が身体の健康に影響を与える、またはその逆の関係のこと

心身相関は、私たちの感情や心理的状態が健康に大きな影響を与えるという考え方です。ストレスや不安が高血圧や心疾患などの身体的症状を引き起こすことがあるように、心と体は密接に連携しています。健康を維持するためには、心のケアと体のケアの両方が重要です。

心身症

心理的なストレスや感情的な問題が原因で引き起こされる身体的な症状や疾患のこと

心身症は、ストレスや感情的な困難が原因で生じる身体的な健康問題です。これは、「頭の中」の問題が「体」に影響を及ぼす典型的な例であり、心理的なストレスが身体に具体的な影響を与えることを示しています。

病気不安症

実際には重大な健康問題がないにも関わらず、深刻な病気であるという強い恐怖や不安に悩まされる心理的な状態のこと

病気不安症は、重病を持っているという根拠のない恐怖に基づいた不安障害の一種です。これにより、個人は日常生活において過剰な健康に関する心配や医療機関への頻繁な受診が見られます。病気に関する不断の思い込みが、生活の質の低下を引き起こす可能性があります。

性格特性

個人の行動、思考、感情の傾向性を表す安定した特徴です。

性格特性は、人が持つ独特の行動や感情のパターンです。これらは、私たちが他人とどのように関わるか、困難な状況にどのように対処するかなど、個人の特徴を形作る重要な要素です。性格特性は、一人一人が持つ独自の性格の「成分」であり、人と自分を区別するのに役立ちます。

タイプA

競争心が強く、時間に対して非常に敏感で、急いで物事を成し遂げようとする性格特性の一種のこと

タイプAの人は、非常に競争心が強く、常に先を急ぐ性格を持っています。彼らは成功を強く望み、仕事や目標に対して非常に情熱的ですが、その結果、ストレスを多く感じることがあります。彼らはまた、忍耐力が低く、イライラしやすい傾向があると言われています。

タイプB

比較的リラックスしており、時間に対してあまり敏感ではなく、競争心が少ない性格特性の一種のこと

タイプBの人は、リラックスしており、ストレスを感じにくい性格です。彼らは競争よりも人生を楽しむことに重点を置き、事柄を急がずにのんびりと進めることができます。また、他人との関係で争いを避け、和やかな関係を築くことを好みます。

タイプC

感情を抑制し、衝突や対立を避け、協調性が高いが、自己表現に困難を感じる性格特性の一種のこと

タイプCの人は、協調的で平和を好む一方で、自己の感情を抑えがちで、自己表現に苦労することがあります。彼らは対立を避けるために自己犠牲を払うことが多く、これがストレスの蓄積や健康問題につながることが懸念されます。

自律訓練法

自己催眠に似たリラクゼーション技法であり、意識的な努力によって身体的および精神的なリラクゼーション状態を引き起こす方法のこと

自律訓練法は、深いリラクゼーションを得るための練習であり、日々のストレスや不安から解放されるのに役立ちます。自分自身に特定の暗示を与えることで、心と体をリラックスさせることができます。これは、心身の健康を向上させる効果的な方法とされています。

健康・医療と社会

健康や病気の問題が社会的な要因や構造とどのように関わっているかを探究する学問領域です。

アドヒアランス

患者が医師の指示に従って治療計画を守ること、特に薬の服用、食事療法、運動療法などを正確に実行すること

アドヒアランスは、医師と患者の間で共有される治療目標に対する共通の理解と約束を基にしています。患者が治療計画に沿って行動することで、病気のコントロールや回復を目指します。アドヒアランスは、単に薬を飲むことだけではなく、ライフスタイルの変更や定期的な医療機関への受診も含まれます。

医師誘発需要

医療サービスの過剰利用を促す医師の影響力のこと

日常生活で例えるなら、ある専門家があなたに特定の高価な製品を推奨して、それが絶対に必要であると確信させたとします。この専門家の意見により、本来ならば必要としなかったかもしれない製品を購入することになります。医師誘発需要も同様に、医師の推奨によって患者が本来必要としないかもしれないサービスを受けることになるのです。

バーンアウト

長期的なストレスや過労により、心身ともに疲弊してしまう状態のこと

考え方としては、長時間労働や高いストレス下での仕事を続けることで、体と心が疲れ切ってしまい、もう何もする気が起きない状態になることです。趣味や楽しみにさえ興味を失い、日常生活においても消極的な態度が目立ち始めます。

ラロンド報告

健康を決定する要因に関して新たな枠組みを提案した革新的な公衆衛生報告書のこと

ラロンド報告は、1974年にカナダの保健福祉大臣だったマーク・ラロンドによって発表されました。この報告書は、「新しい健康の視点 (A New Perspective on the Health of Canadians)」と題され、健康政策に対する考え方に大きな転換をもたらしました。

簡単に言うと、ラロンド報告は健康を多面的に捉え、単に病気の治療だけでなく、環境や個人の生活習慣、社会経済的条件なども健康に大きな影響を与えると提案しました。これは、健康を守り向上させるためには、医療以外の分野にも目を向けるべきだという考え方を広めたことで、公衆衛生の分野におけるパラダイムシフトとなりました。

疾病利得

病気や障害を持つことによって、個人が得られる心理的または社会的な利益のこと

簡単に言えば、疾病利得とは、病気を理由に周囲から同情を集めたり、普段は担わなければならない責任から解放されたりするなど、病気になることで得られるさまざまな「メリット」のことです。これは病気になりたいと意識的に考えているわけではなく、多くの場合、無意識のうちに生じる心理的なメカニズムです。

ポジティブ心理学

ポジティブ心理学は、人々がどのようにして幸福感を得るか、また人生をより充実させるためにはどのような要素が必要かを探求します。

ポジティブ心理学の父

ポジティブ心理学の父は、マーティン・セリグマンとされています。セリグマンは、1998年にアメリカ心理学会の会長を務めていた際に、心理学の研究と実践が長年にわたり病気や障害、人間の弱点に焦点を当ててきたことを問題視しました。彼は、心理学が人間の強みや美徳、幸福といったポジティブな側面にもっと注目すべきだと提唱し、これを科学的に研究し、人々の幸福感を高めるための方法を探求するポジティブ心理学の概念を広めました。セリグマンのこのアプローチは、心理学の新たな分野を切り開くきっかけとなり、多くの研究者や実践家がポジティブ心理学の研究や応用に関わるようになりました。

マインドフルネス

現在の瞬間に意識を集中させ、判断や評価をせずにその瞬間を受け入れる心のあり方のこと

たとえば、マインドフルネスを実践することは、食事をするときにその味、匂い、見た目に完全に注意を向けることや、散歩をするときに足の感覚や周りの音に意識を集中させることに似ています。この練習を通じて、日常生活の中で自分の自動的な反応や習慣を意識し、それに対してより意識的な選択をすることができるようになります。

ハーディネスの3成分

ハーディネス(Hardiness)の3成分とは、心理的な強靭性(レジリエンス)を構成する要素で、個人がストレスや逆境に対して耐え、それを乗り越える力を持つために重要な役割を果たします。これらの成分は、サルバトーレ・マダイ(Salvatore Maddi)とその同僚によって開発されました。具体的には以下の3つです

コミットメント

あらゆる状況において、関与し続ける意志。

コミットメントは、個人が逆境やストレスがある状況でも、自分の活動や人生に積極的に関わり続ける能力を指します。仕事、家庭生活、個人的な関心事において、自己の価値や目的を見出し、そこから離れないことで、困難を乗り越える力を育みます。

チャレンジ

変化や困難を成長の機会として捉える視点

チャレンジは、逆境やストレスを脅威と見なすのではなく、自己成長や学習の機会として捉える能力を指します。この見方により、個人は新しい状況や難問に直面しても、それをポジティブな経験として受け入れ、自己の能力を拡張することができます。

コントロール

状況を自分で影響を与え、制御しようとする信念。

コントロールは、個人が自分の行動や思考を通じて、周囲の環境や発生する出来事に対して何らかの影響を及ぼせると信じることです。この成分は、自己効力感と密接に関連し、困難な状況に対処する際に積極的な姿勢を保つことを助けます。

健康生成論

健康は単に病気の不在ではなく、積極的な生活の質の向上と幸福感から生まれるという考え方のこと

アーロン・アントノフスキー(Aaron Antonovsky)によって1970年代後半に提唱されました。アントノフスキーは、なぜ人々がストレスの多い状況下で健康を維持または向上させることができるのかに興味を持ち、病気の原因ではなく健康を生み出す要因に焦点を当てることで、この問いに答えようとしました。

仕事エンゲージメント

仕事に対して積極的で情熱的に取り組む心理的状態のこと

仕事エンゲージメントは、自分の仕事に対してポジティブで、活動的で、意味を見出している状態です。エンゲージメントの高い従業員は、自分の仕事に情熱を持ち、それを通じて自己実現を図っています。

高齢者心理学

高齢期における心理的変化や課題、高齢者の幸福と心理的健康を研究する心理学の分野です。

高齢者心理学は、人口の高齢化が進む社会において、ますます重要性を増しています。この分野は、高齢者が直面する様々な心理的、社会的課題を理解し、彼らの生活の質を向上させることを目的としています。また、高齢者心理学は、加齢に伴う認知機能の変化、感情の調整、社会的関係の維持、生活の意義や目的の見出し方など、高齢期の心理的適応に関連するさまざまなトピックを扱います。

統合 対 絶望

人生の終わりに近づく高齢期において、過去の人生を受け入れることができるか、それとも過去に対する後悔や未達成の目標に焦点を当て絶望するかの心理的な葛藤のこと

「統合 対 絶望」は、エリク・エリクソンによって提唱された心理社会的発達の理論の第八段階に位置づけられています。エリクソンの理論は、人生の各段階で個人が直面する葛藤に焦点を当て、それらを乗り越えることで成長し、次の段階へ進むという考え方に基づいています。この最終段階は、主に人生の晩年に位置し、通常は65歳以降の人々が経験します。

65歳以上

多くの国で「高齢者」と分類されます。この年齢層の人々は、退職、健康の変化、社会的役割の変化など、人生の重要な遷移期を迎えることが一般的です。高齢者心理学は、この時期における心理的適応、健康維持、生活の質の向上に焦点を当てています。また、高齢化社会の進展に伴い、高齢者の福祉、介護、社会参加、生涯学習など、さまざまな分野でのサポートが重要視されています。

老視

加齢により近くのものが見にくくなる状態のこと

老視(プレスビオピア)は、目の水晶体の弾力性が加齢に伴って低下することによって起こります。通常、40歳頃から始まり、60歳頃まで進行します。水晶体の弾力性が失われると、目の焦点を近くから遠くへ自由に変える能力が低下し、特に近距離のものを見る際に不便を感じるようになります。

聴力低下

聴覚の感度が低下し、音が聞き取りにくくなる状態のこと

聴力低下は、高音域から徐々に始まり、時間とともに低音域にも影響を及ぼすことが一般的です。これにより、特に人の声や日常生活の音が聞き取りにくくなります。初期段階では、背景音がある環境や複数人が話している状況での会話の理解が難しくなることが多いです。

高年齢者のパーソナリティ類型

高年齢者のパーソナリティ類型を研究する際には、以下のような類型が考慮されることがあります:レジリエント型(回復力がある型):逆境やストレスに強く、柔軟性があり、ポジティブな情緒を保つことができる高年齢者。困難に直面しても回復力を発揮し、前向きな態度を保ちます。堅実型(誠実性が高い型):高い責任感と組織性を持ち、計画的で規律正しい生活を送る高年齢者。社会的規範やルールを守り、一貫した行動をとります。社交的型(外向性が高い型):人との交流を好み、社会的な活動に積極的に参加する高年齢者。友人や家族との関係を大切にし、コミュニケーションを通じて満足感を得ます。慎重型(神経症的傾向がある型):心配性で、ストレスや変化に対して敏感な高年齢者。不安や悲観的な思考が見られることがありますが、これらの特性は適切なサポートや介入によって管理されることもあります。開放的型(開放性が高い型):新しい経験やアイデアに対して受け入れやすく、創造的で柔軟な思考が特徴の高年齢者。学ぶことや新しい活動に対する好奇心が強く、人生の後半においても成長し続ける意欲を持っています。これらのパーソナリティ類型は、高年齢者の多様性を示すものであり、個々の高年齢者が複数の特性を併せ持っていることも珍しくありません。また、パーソナリティは生涯を通じてある程度の変化が見られることもありますが、基本的な傾向は比較的安定しているとされます。高年齢者のパーソナリティ類型を理解することは、彼らのニーズに対する適切なサポートや介入を計画する上で役立ちます。

離脱理論

高齢者が社会的役割から自然に離れ、社会との関わりが少なくなることが互いに有益であるとする理論のこと

1961年にエリック・カミングスとウィリアム・ヘンリーによって提唱されました。この理論は、高齢者が社会的役割から自然に離脱し、より内省的で自己中心的な生活を送ることが、個人と社会の両方にとって自然であり、望ましい過程であると主張します。離脱理論は、高齢者の社会的関与の減少を正当化する最初の理論の一つでした。

活動理論

高齢者が社会的活動や役割を維持することが、幸福感と生活の質の向上につながるとする理論のこと

活動理論は、高齢者が社会的に活動的で関わりを持ち続けることが、健康や幸福に良い影響を与えるという考え方です。趣味や交友関係を通じて活動的な生活を送ることで、高齢者はより満足感のある人生を享受できるとされています。

知能低下

認知機能の減退や、学習、記憶、問題解決能力などの知的能力の低下のこと

知能低下は、単に「物忘れがひどくなる」こと以上の意味を持ちます。判断力や学習能力、記憶力などの知的機能全般にわたる低下が含まれ、日常生活のさまざまな面での困難を引き起こすことがあります。

知能低下の対処には、原因に応じたアプローチが必要です。例えば、生活習慣の改善、適切な栄養摂取、定期的な運動、社会的交流の促進などが一般的に推奨されます。また、認知症などの疾患が原因の場合は、医学的な介入や専門的なケアが必要になります。早期発見と早期介入が、症状の進行を遅らせる上で重要とされています。

死ぬ瞬間

生命活動が停止し、生理的な機能が完全に終了する瞬間です。

死と向き合うことは、生きている私たち全員にとって避けられない課題です。個人や家族は、終末期におけるケア、遺言の作成、人生の意味についての反省などを通じて、死ぬ瞬間に備えることができます。ホスピスケアやパリアティブケアは、死にゆく人が尊厳を持って、できるだけ苦痛を感じることなく人生の終わりを迎えられるように支援します。また、死を理解し受け入れることは、人生をより豊かに生きるための重要なステップとなり得ます。

老年精神医学

高齢者に特有の精神的健康問題や認知障害を扱う医学の分野です。

老年精神医学は、高齢化社会の進展と共に、その重要性が高まってきました。高齢者の精神健康は、若年層や中年層のそれとは異なる特有の課題を抱えており、この分野はこれらの特殊なニーズに対応するために発展してきました。精神疾患の診断、治療、予防だけでなく、高齢者の生活の質の向上に焦点を当てています。

中核症状

特定の疾患や障害を特徴づける、最も代表的で本質的な症状のこと

たとえば、うつ病の中核症状には、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、エネルギーの低下などがあります。ADHD(注意欠陥・多動性障害)の場合、注意力の欠如、衝動性、過剰な活動が中核症状とされます。これらの症状は、それぞれの疾患や障害に特有であり、診断や治療の指針となります。

長谷川式認知症スケール

認知症の診断や重症度の評価に用いられる簡易な心理テストのこと

長谷川式認知症スケールは、9つの項目からなるテストで、計30点満点です。評価項目には、時計の読み方、即時記憶、遅延記憶、計算、類似点の説明、3つの物体の即時提示と回想などが含まれます。スコアによって、認知機能の障害の程度を評価し、認知症のスクリーニングや進行度のモニタリングに用いられます。

レビー小体型認知症

脳内に異常なタンパク質の塊であるレビー小体が形成され、記憶、思考能力、運動機能などに影響を与える進行性の認知症のこと

レビー小体型認知症は、思考や記憶の問題だけでなく、幻視や身体の動きに影響を及ぼす認知症です。日によって症状が大きく変わることが特徴で、パーキンソン病に似た運動障害も見られることがあります。

リアリティ・オリエンテーション

認知症などで現実の認識が困難になった人を対象に、時間、場所、人物などの現実を認識するための支援を提供する介護方法のこと

リアリティ・オリエンテーションは、認知症の人が現在地や日時、自分の周りの人々について混乱することが少なくなるように支援する方法です。これは、彼らに定期的に基本的な情報を提供することにより、日々の生活での自信とオリエンテーションを取り戻すのに役立ちます。

パーキンソン病

パーキンソン病は、脳の特定の部分がうまく働かなくなることで、体の震えや動きにくさを引き起こす病気です。この病気は徐々に進行し、患者さんの日常生活にさまざまな影響を及ぼします。

パーキンソン病は、1817年にジェームズ・パーキンソンによって「振戦麻痺」として初めて記述されました。この病気は、脳内のドーパミンを産生する神経細胞の損傷や減少により引き起こされます。ドーパミンは、運動や動作の流れをスムーズにするために不可欠な神経伝達物質です。

高次脳機能障害

脳の特定の部位が損傷することにより、思考、記憶、注意、理解、判断などの複雑な認知機能が障害される状態のこと

高次脳機能障害は、脳梗塞、脳出血、外傷性脳損傷(例えば交通事故による頭部の打撲)、脳腫瘍など、脳に物理的な損傷が生じる病態や事故によって引き起こされます。また、神経変性疾患の進行に伴って発生することもあります。

リハビリテーション

リハビリテーションは、古くから医療の一環として行われてきましたが、特に第二次世界大戦後、多くの負傷兵の社会復帰を助けるために重要性が高まりました。以来、慢性疾患の増加、高齢化社会の進展に伴い、その需要はさらに拡大しています。

アメリカ合衆国

ADL

日常生活動作(Activities of Daily Living)の略で、自分の身の回りのことを自分で行える能力のこと

ADLの概念は、1960年代にアメリカのリハビリテーション医学者シドニー・カッツによって提唱されました。彼は、高齢者や障害者の自立度を評価するために、日常生活での基本的な活動を指標として用いることを提案しました。これにより、個々のケアが必要なレベルやリハビリテーションの目標設定が行えるようになりました。

ADLは、私たちが日常的に行う、食べる、歩く、身だしなみを整えるといった基本的な活動のことです。これらの活動を自分で行えるかどうかは、健康状態や独立した生活が送れるかどうかを示す重要な指標となります。

作業療法

人々が日常生活や社会生活で必要とする活動(作業)を効果的に行えるように支援する医療およびリハビリテーションの一分野のこと

作業療法士は、病気やけが、障害などで日常生活に困難を抱える人たちが、食事や着替えなどの基本的な活動から、仕事や趣味などのより複雑な活動まで、彼らができるだけ自立して行えるように支援します。これにより、生活の質の向上を目指します。

回想法

個人が過去の経験を思い出し話すことで、心理的な健康や自己理解を促進する介護や心理療法の技法のこと

回想法は、特に高齢者を対象にした心理療法の一つで、自分の過去を振り返ることで心の安定や幸福感を得ることを目的としています。思い出話をすることで、過去と現在をつなぎ、人生を肯定的に捉えることができます。

ナラティブセラピー

個人が自己の人生や問題を物語(ナラティブ)として語り直すことにより、問題との関係を再構築し、解決を図る心理療法のアプローチです。

ナラティブセラピーは、人が自分自身を語る物語を通じて問題を理解し、それを乗り越える手助けをする心理療法です。私たちの人生観や自己認識は、自分の経験に基づく物語で形成されると考え、その物語を変えることで、より肯定的な自己像や未来像を描くことができます。

特定疫病

法律や政策によって特別な取り扱いを受けることが定められている、特に重要とされる感染症のこと

特定疫病は、その感染症が広がると大きな健康危機や社会的影響を引き起こす可能性があるため、政府や保健当局によって特に注意深く監視され、管理される病気のことです。これらの疾患に対しては、迅速な対応と厳格な予防措置が求められます。

リワーク

職場復帰支援プログラムの一つで、病気や怪我から回復した人が再び職場に復帰しやすくするための取り組みのこと

リワークは、病気や怪我で仕事を離れた人が再び職場に戻る際に、その過程をサポートするプログラムです。復帰に向けての心理的・物理的な調整を助けることで、復帰後の職場での適応をスムーズにし、仕事のパフォーマンスを向上させることを目指しています。

福祉の視点

福祉の視点は、19世紀の社会改革運動に端を発し、公正な社会を実現するために個人だけでなく社会全体が取り組むべき課題として発展してきました。この考え方は、社会福祉、社会正義、人権の尊重に基づくサービス提供に重点を置きます。

ノーマライゼイション

障害のある人もない人も同じように生活できる社会を目指し、障害のある人が普通の生活を送れるようにする考え方や取り組みのこと

ノーマライゼイションは、障害のある人々が一般社会で普通の生活を送ることができるよう、教育、就労、住居、余暇など生活のあらゆる面での機会均等を目指します。この理念に基づく取り組みには、障害者の社会参加を促進するための支援体制の整備や、障害者に対する偏見や差別の撤廃などが含まれます。

エンパワメント

個人やコミュニティが自らの問題解決能力や自己決定能力を高め、自立して行動できるようにするプロセスや支援のこと

エンパワメントは、人々が自分たちの生活やコミュニティをより良くするために、自ら行動する力を育てることです。自分自身の問題を自分で解決できるようになることや、自分の意見をしっかりと持ち、それを実現する力を身につけることを目指します。

合理的配慮

障害を持つ人が、他の人々と同等の機会を享受できるようにするために、個々のニーズに応じて提供される必要な支援や調整のこと

合理的配慮とは、障害がある人もない人も平等に活動できるように、必要に応じて特別な支援や環境の調整を行うことです。例えば、車椅子を使用する人のためにスロープを設置する、視覚障害のある人が情報を読めるように資料を点字に変換するなど、障害に応じた配慮がそれにあたります。

アドボカシー

個人や集団が直面する問題に対して、彼らの権利を守り、利益を代弁し、社会的変化を促す活動のこと

アドボカシーは、人権運動、市民権運動、環境保護運動など、多くの社会運動の中で発展してきました。これらの運動は、社会の不公正や不平等に対抗し、政策変更や公衆の意識向上を目指しています。アドボカシーは、声なき声に力を与え、社会正義の実現を目指す重要な手段となっています。

社会的不利

個人や集団が、経済的、教育的、健康的、社会的な面で他者よりも劣った状況に置かれること

社会的不利は、人々が平等な機会を得られず、生活の質が低下することを指します。これには、経済的な困難、教育へのアクセス不足、健康問題、差別などが含まれ、これらの要因が組み合わさることで問題がさらに深刻化します。

社会福祉援助技術

個人や集団が直面するさまざまな社会的問題を解決し、生活の質を向上させるために社会福祉士が用いる専門的な方法や手段のこと

社会福祉援助技術とは、社会福祉士が利用者の問題解決や生活向上のために使う専門的なスキルや方法です。これには、個人や家族、地域コミュニティに対して行うさまざまな支援活動が含まれます。

直接援助技術

社会福祉の分野で、個人や集団に直接的に提供されるサポートやサービスの手法や技術のこと

直接援助技術は、社会福祉の実践において、利用者のニーズに応え、その問題解決や生活の質の向上を目指して開発されてきました。これらの技術は、利用者との直接的な関わりを通じて、その人々の自立や社会参加を支援するために用いられます。

間接援助技術

社会福祉分野で、個人や集団への直接的な支援ではなく、社会的環境や制度、ポリシーなどの改善を通じて間接的に利用者の福祉を向上させる手法や技術のこと

間接援助技術とは、直接個人に介入するのではなく、彼らが暮らす社会や制度を改善することで、人々の生活の質を向上させる方法です。これには、法律や政策の変更、地域社会の活性化など、さまざまな形があります。

関連援助技術

社会福祉の分野で、個人や集団が持つ社会的な問題を解決するために、他の機関や専門家との連携を通じて提供される支援のこと

相対的剥奪

個人や集団が、自分たちの状況を周囲や他の集団と比較して不利や不足を感じること

相対的剥奪は、人が自分の状況を他人と比較して不満を感じることです。たとえ自分が基本的なニーズを満たしていても、他の人がより良い条件で生活していると感じると、不公平感や不満が生じます。

受容と偏見

受容は他者を理解し、尊重する姿勢のことで、偏見はある集団や個人に対して無根拠に持つ否定的な態度や先入観です。

価値転換理論

個人や集団が新しい状況や情報に直面したときに、以前持っていた価値観や信念を変化させるプロセスを説明する理論です。

価値転換理論は、人々の態度や価値観がどのように変化し、新しい社会的環境や情報に適応していくかを理解するために社会心理学や社会学で研究されています。この理論は、個人が経験するさまざまな変化(例えば、重大な人生の出来事、社会的な変動、文化的な交流など)に対する反応を分析するために用いられます。

障害受容段階

障害を持つ個人が自身の障害を受け入れるまでの心理的な過程を段階的に表したモデルです。

障害受容の段階には、以下のようなフェーズがあります。ショックと否認: 障害の診断を受けた当初、個人はショックを受け、現実を受け入れられないことがあります。怒り: 自分の状況に対して不公平さを感じ、怒りを抱くことがあります。交渉: 「もしも…」という思考を持ち、何かを変えることができれば障害が改善されると考える段階です。抑うつ: 自身の状況に対する悲しみや絶望を感じることがあります。受容: 最終的には、自身の障害を現実として受け入れ、新たな自己のアイデンティティを形成し、前向きな生活へと進んでいきます。

器官劣等感

個人が自分の身体の特定の部位や機能に対して劣っていると感じる心理的な状態のこと

器官劣等感の概念は、オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーによって提唱されました。アドラーは、個人が持つ劣等感がその人の性格形成や行動に大きな影響を与えると考えました。彼は、この劣等感が人間の成長や発達における重要な動機付けとなり得るとしています。

器官劣等感は、身体的な障害、疾患、または個人が自身の身体に対して持つ主観的な不満から生じます。たとえば、視力や聴力の問題、身長、体重、体形に関する悩みなどが該当します。アドラーは、これらの劣等感が人間を行動に駆り立てる原動力になると同時に、過度になると自尊心の低下や社会的な適応困難を招く可能性があると指摘しました。

態度の3成分

態度を構成する三つの要素であり、認知成分、情緒成分、行動成分から成ります。

この概念は心理学において、態度とは単に好き嫌いだけでなく、それに関連する思考や感情、そしてそれに基づく行動傾向も含む複雑な心理状態であると理解するために提唱されました。これにより、個人が特定の対象や概念に対して持つ態度をより深く理解し、分析することが可能になります。

認知成分:対象に関する知識や信念、思考が含まれます。たとえば、「喫煙は健康に悪い」という認識。

情緒成分:対象に対して抱く感情や気持ちです。喫煙に対して不快感や恐怖を感じるなど。

行動成分:対象に対する具体的な行動傾向や意図を指します。例えば、健康のために禁煙を試みる行動。

スティグマ

特定の個人や集団に対して社会的に抱かれる否定的なラベルや偏見です。

スティグマとは、人々が特定の特徴や状況を持つ人に対して持つ、否定的な偏見や差別的な見方のことです。このような見方は、対象者が社会で公平に扱われることを妨げ、多くの場合、心理的な苦痛や孤立を引き起こします。

社会的入院

社会的入院とは、病気の治療のためではなく、社会的な理由で人が病院に長く留まることを意味します。これには、適切な住まいやケアの不足、家族による支援の不足が原因である場合が多いです。

精神保健

精神保健とは、人々が精神的に健康であること、つまりストレスに対処し、生産的に活動し、自分自身と他人との健全な関係を築ける状態を指します。これには、精神障害の予防と治療だけでなく、日々の精神的ウェルビーイングの促進も含まれます。

陽性症状

精神障害において、通常の行動や感覚に加わる異常な現象や体験、たとえば幻聴や妄想などのことです。

陰性症状

あるべき反応や感情が見られない、または薄れている状態を指します。例えば、普段楽しいと感じる活動に対しても興味を示さなかったり、感情表現が乏しくなったりすることが挙げられます。これは統合失調症の患者さんによく見られる特徴で、社会生活や職場での機能に影響を及ぼす可能性があります。

自傷他害

自分自身や他人に対して危害を加える行動のこと

自傷行為には、カッティング(皮膚を切る行為)、自己打撃(自分を叩く)、過剰な摂取(薬物やアルコールの過剰摂取)などがあります。これらの行為は、精神的な痛みや苦悩からの一時的な逃避や、感情のコントロールを目的として行われることが多いです。他害行為は、暴力行為や言葉による攻撃など、他者に対する身体的、心理的な危害を含みます。

いのちの電話

心の悩みを抱える人々に対し、匿名で相談に応じる電話サービスのこと

いのちの電話は、日本で1969年に設立されました。このサービスは、自殺防止を目的としてスタートし、心に悩みを抱える人々が匿名で相談できる場を提供しています。このような相談サービスは、世界中で展開されており、人々の精神的苦痛を軽減し、自殺を防ぐ手助けをしています。

電気けいれん療法

特定の精神疾患を治療するために、患者の脳に短時間電気刺激を与えて意図的にけいれんを引き起こす医療処置のこと

電気けいれん療法は1938年にイタリアで初めて実施されました。この治療法は、特に重度のうつ病、双極性障害、統合失調症などの症状が著しく、他の治療法が効果を示さない場合に用いられます。初期の頃は誤解や悪用による問題もありましたが、現在では治療技術の進歩により、安全性と効果性が大きく向上しています。

病識

自分が病気であることや病状に関する理解と認識のこと

病識がある場合、患者は自分の病気を認識し、適切な治療や支援を求めることができます。逆に病識が不足している場合、患者は自分が病気であることを否定し、必要な治療を受けなかったり、治療に対して否定的な態度をとったりすることがあります。病識の不足は、特に精神疾患の治療において大きな障壁となり得ます。

EE

表現型環境相関(Expressed Emotion, EE)は、家族の中での感情の表現方法が、特定の精神疾患を持つ家族成員の再発率や治療結果に影響を及ぼす度合いのこと

表現型環境相関(EE)の概念は、1950年代にイギリスの心理学者ジョージ・ブラウンと他の研究者によって導入されました。彼らは、統合失調症の患者が家族と再統合した後の再発率が、家族内での批判的、敵対的、または過度に感情的なコミュニケーションのスタイルと関連していることを発見しました。この発見から、EEと精神疾患の再発や治療成果との間に重要な関連があると考えられるようになりました。

オープン・ダイアログ

精神健康の危機にある人々を支援するために、その人々の社会的ネットワークを活用し、即時に開かれた会話を促す治療法のこと

オープン・ダイアログは、単に精神疾患の症状を治療するのではなく、患者の社会的な環境とその中での対人関係を重視します。このアプローチでは、信頼できる空間での対話を通じて、患者とその家族が自身の感情や考えを開放的に表現できるようになります。これにより、互いの理解が深まり、支援的な関係が築かれ、治療過程での協力が促進されます。

子ども家庭福祉

この分野は、子どもの権利の保護と促進、家庭の支援が社会の基盤となるべきだという考えに基づいています。20世紀に入ってから、子どもの権利に関する国際条約や国内法の整備が進み、子どもが健全に成長するための支援体制の重要性が高まってきました。これに伴い、子どもと家庭に対する包括的な支援を目的とした子ども家庭福祉の枠組みが発展しました。

児童

児童とは、成人に達していない未成年者、特に法律上や社会的に定められた一定の年齢範囲(例えば、0歳から18歳まで)に属する子どもたちのこと

児童という言葉は、家庭内外での育成や保護に関わる多くの文脈で使用されます。これには、児童の権利の保護、虐待からの保護、教育へのアクセスの保証、適切な医療の提供などが含まれます。児童期は、個人の生涯において基礎を築く重要な時期であり、この時期に提供される支援やサービスは、児童の将来に大きな影響を及ぼします。

家族機能縮小論

現代社会において家族が担ってきた役割や機能が縮小または変化しているという考え方のこと

家族機能縮小論によると、現代社会では家族が果たすべき多くの役割が外部の機関に代替されています。例えば、子どもの教育は学校が、高齢者のケアは介護施設や社会福祉サービスが担うようになりました。これにより、家族内での結びつきや役割分担が以前に比べて薄れていると言われています。

ヘッドスタート

低所得家庭の幼児に教育、健康、栄養、親の参加と支援を提供することを目的としたアメリカ合衆国の連邦政府のプログラムのこと

ヘッドスタートは、1965年にリンドン・B・ジョンソン大統領によって始められた「貧困との戦い」の一環として設立されました。このプログラムの主な目的は、社会的および経済的に不利な状況にある子どもたちに、小学校入学前の教育を通じて平等なスタートを提供することです。それ以来、ヘッドスタートは多くの子どもとその家族に前向きな影響を与え続けています。

3歳児健康診査

この健康診査は、子どもの成長と発達における重要な時期である幼児期における、早期の健康問題や発達障害の早期発見と対応を目的としています。幼児期は身体的、認知的、感情的、社会的スキルが急速に発達するため、この時期に健康や発達の問題を発見し、適切な支援や介入を行うことは、子どもの将来にとって非常に重要です。

就学している障害児

身体的、知的、または心理的な障害を持ちながら、教育制度の中で学んでいる子どもたちのこと

障害児の教育への統合は、20世紀後半から国際的に推進されるようになりました。これは、すべての子どもが教育を受ける権利を持つという考えと、障害を持つ子どもたちが可能な限り普通学校で教育を受けるべきだという包括教育の原則に基づいています。多くの国では、障害児への特別支援教育制度を整えることで、これらの子どもたちがそれぞれのニーズに合った教育を受けられるよう努めています。

ファミリーホーム

児童福祉の一環として、家庭的な環境の中で育児を必要とする子どもたちに対し、保護とケアを提供する住居や施設のこと

ファミリーホームの主な目的は、子どもたちが安心して成長できる家庭環境を提供することにあります。これには、日常生活のケアだけでなく、教育、健康管理、感情的サポートも含まれます。ファミリーホームは、子どもたちが自分の可能性を最大限に発揮し、将来的に自立して社会に貢献できるようにするための基盤を作ります。

虐待とDV

虐待と家庭内暴力(DV)に対する社会的認識は、20世紀後半に高まりました。それまで私事とみなされがちだったこれらの問題が、個人の健康、精神的な福祉、そして社会全体の安全性に重大な影響を与えることが明らかになり、公的な問題として扱われるようになりました。各国で法律が制定され、被害者支援のシステムが整備され始めています。

児童虐待の4類型

児童虐待は、子どもたちが受ける身体的、精神的、性的な害や、適切なケアや必要な基本的な生活要件の提供を怠ることによるネグレクト(育児放棄)の4つの主要な類型に分類されます。これらの虐待形態は、子どもの健康、発達、尊厳に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。

1. 身体的虐待

身体的虐待とは、子どもに対する暴力行為であり、打撲、焼傷、骨折、頭部損傷などの身体的傷害を引き起こします。このタイプの虐待は、故意に身体的な痛みや損傷を与える行為として定義されます。

2. 精神的虐待(心理的虐待)

精神的虐待、または心理的虐待は、子どもの感情的発達や自尊心に悪影響を与える行為です。これには、脅迫、侮辱、孤立、過度の要求、愛情の拒絶などが含まれます。心理的虐待は、子どもの精神健康に長期的な影響を及ぼすことがあります。

3. 性的虐待

性的虐待とは、成人が子どもを性的行為に巻き込むことを指します。これには、身体的接触のある性的行為だけでなく、子どもをポルノグラフィに利用することや、性的な意図を持って子どもを視覚的に搾取する行為も含まれます。性的虐待は、被害児童に深刻な精神的トラウマを残すことがあります。

4. ネグレクト(育児放棄)

ネグレクトは、子どもの基本的な生活ニーズ(食事、衣服、適切な住居、医療、教育)の提供を怠ることによって発生します。ネグレクトは、子どもの健康や発達に必要なケアや支援が欠如している状態を指します。これは、身体的な害よりも目に見えにくいかもしれませんが、子どもの発達に重大な影響を及ぼす可能性があります。

児童相談所

児童の福祉を守るための問題や虐待の相談に応じ、必要に応じて保護や支援を提供する公的機関のこと

児童相談所は、児童やその家族が直面するあらゆる問題に対する一次的な連絡先です。児童虐待、家庭内の問題、育児に関する悩みなど、子どもの安全と福祉に関するあらゆる相談に対応しています。相談者のプライバシーは守られ、必要に応じて適切な支援が提供されます。

福祉事務所

地域社会における公的な社会福祉サービスを提供する政府機関です。生活保護、児童福祉、高齢者支援など、様々な福祉サービスの提供を担当しています。

代理ミュンヒハウゼン症候群

保護者や世話人が、自らの世話を受ける子どもや他の被保護者に故意に病気を引き起こしたり、病気であると偽ったりする心理的・行動的障害のこと

この障害は、非常に深刻な児童虐待の一形態であり、被害者である子どもが実際には健康であるにも関わらず、病気や怪我を持っていると誤って信じるように医療従事者を欺く行為を含みます。保護者は、医療的な知識を使って症状を偽造することがあり、これが病院や医師を欺く原因となります。この行為の背後には、保護者の側の注目を集めたい、あるいは必要とされたいという強い欲求があります。

虐待の連鎖

虐待された人が成長した後に、自分の子どもや他の弱い立場の人を虐待する可能性が高まるという現象のこと

虐待の連鎖の概念は、1970年代に心理学や社会学の研究で注目され始めました。この概念は、子ども時代の虐待体験が、成人した際の親としての行動に深刻な影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。研究により、虐待された子どもは、将来的に自分の子どもを虐待するリスクが高まることが示されていますが、すべての虐待経験者が虐待者になるわけではありません。

破壊的権利付与

親や保護者が子どもに不適切な権限や責任を与えることで、子どもの発達や心理的健康を害する行為のこと

DVの周期性

家庭内暴力が一定のパターンを繰り返し示す傾向のことで、緊張の構築、暴力の発生、和解の「ハネムーン」期間という三つのフェーズからなるサイクルを指します。

1970年代に心理学者レノア・ウォーカーによって提唱されました。ウォーカーは、DVを経験する多くの女性が、暴力の発生が一定の反復パターンに従っていることを報告していることから、この理論を発展させました。この周期的なパターンは、被害者が加害者との関係に留まる一因となることが多く、DVのダイナミクスを理解する上で重要な概念です。

  1. 緊張構築フェーズ:このフェーズでは、家庭内の緊張が徐々に高まります。些細なことがきっかけで怒りが増大し、被害者は加害者を怒らせないように行動を制限するようになります。この期間は、不安定で予測不可能な環境が続きます。
  2. 暴力発生フェーズ:緊張がピークに達し、最終的には身体的、性的、または精神的な暴力の発生につながります。このフェーズでは、加害者はコントロールを失い、暴力を行使してしまいます。
  3. 和解の「ハネムーン」フェーズ:暴力の後、加害者はしばしば後悔し、謝罪し、被害者に対して愛情を示します。加害者は変わることを約束し、二度と暴力を振るわないと誓います。この期間中には、被害者と加害者の間の絆が強まることがあり、被害者が関係を続けることを望む理由となります。

共依存

人が他者の世話を焼くことで自分の自尊心を高めようとする心理的傾向を指します。この傾向が強くなると、その人は他者の問題に深く関与し過ぎることで、自分自身の健康や幸福をおろそかにするようになります。共依存の人々はしばしば、他者から必要とされることに大きな満足感を得るため、自己犠牲的な行動を続けます。

イネイブラー

他人の有害または依存性のある行動を意図せずに支援または容認してしまう人のことです。

イネイブラーは、その行動が依存症者の状況を悪化させていることに気づかないことが多いです。彼らは依存症者を「助けたい」という思いから行動していますが、結果的には依存行動を助長してしまうことになります。イネイブラーになってしまう理由はさまざまですが、共依存の関係が背景にあるケースも少なくありません。

障害児/者の支援

障害児や障害者への支援の考え方は、過去数十年にわたり大きく進化しました。以前は、障害を持つ人々を社会から隔離することが一般的でしたが、現在ではインクルージョン(包摂)や自立支援が重視されています。この変化は、障害者権利条約などの国際的な動きや、障害を持つ人々の権利と可能性に対する理解の深まりによって推進されています。

身体障害者手帳の対象

身体の機能に障害があることにより、日常生活や社会生活において著しい制限を受けている人に交付される証明書です。

身体障害者手帳の対象となる障害には、以下のようなものがあります。

視覚障害 – 目の不自由な人。視力の低下や全盲など、視覚に重大な障害がある人。

聴覚障害 – 耳の不自由な人。聴覚に障害があることで、日常生活においてコミュニケーションに困難を抱える人。

言語障害 – 言葉の不自由な人。発声や発音、言語の理解に障害がある人。

肢体不自由 – 手足の不自由な人。手足の機能障害により、歩行や日常生活に制限がある人。

内部障害 – 心臓病や腎臓病など、内部臓器の障害により、日常生活に制限がある人。

障害者総合支援法3条

障害者の権利と福祉の向上に関する基本的な考え方を定めたものです。この法律は、障害を持つ人々が社会の中で自立した生活を送り、社会参加できるようにするための支援を提供することを目的としています。

障害者総合支援法第3条では、以下のような基本理念が明確に示されています。

障害を持つ人々の人格の尊重と、その能力に応じた自立した生活を支援する。

社会の中で障害を持つ人々が自由に活動できるように、障害のある人とない人が共に生活できる社会の実現を目指す。

障害者が社会の様々なサービスや福祉にアクセスしやすい環境を整備する。障害者の社会参加を促進し、障害の有無にかかわらず、すべての人が互いに支え合う共生社会を目指す。

有病率

特定の時間点または期間において、特定の疾患を持つ人々の割合を示す指標のこと

簡単に言うと、有病率はある疾患がどれだけ一般的であるかを示す数値です。例えば、ある地域の有病率が高い場合、その疾患が一般的であり、多くの人々がその疾患に苦しんでいることを意味します。有病率は、短期間(ポイント有病率)や長期間(期間有病率)にわたって計算することができます。

重症心身障害児

重度の身体的障害と知的障害を併せ持ち、日常生活や社会生活において広範囲にわたる支援を必要とする子どもたちのこと

重症心身障害児に対する支援の必要性は、その障害の複合性と深刻さに由来します。これらの子どもたちは、身体的な機能障害に加えて、学習やコミュニケーションの面で重大な困難を抱えています。20世紀後半以降、これらの子どもたちへのより良い医療ケアと社会的支援の提供に向けた社会的な関心が高まりました。この変化は、障害者の権利の普遍性と、全ての子どもが教育を受ける権利を持つという認識の拡大を反映しています。

きょうだい児

障害を持つ兄弟姉妹がいる子どもたちのこと

きょうだい児は、障害を持つ兄弟姉妹に関連するさまざまな感情や状況に直面する可能性があります。これには、家族内での役割の変化、親の注意が障害を持つ兄弟姉妹に集中することによる疎外感、または将来への不安などが含まれます。しかし、きょうだい児が経験する状況はすべてネガティブなものではなく、多くの場合、彼らは共感力、責任感、強い家族の絆などの価値ある特性を発達させます。

障害者雇用率制度

特定の雇用主が一定の割合以上の障害を持つ人を雇用することを法律で義務付ける制度のこと

障害者雇用率制度は、公共部門や民間企業に対して、全従業員に占める障害を持つ人々の最低割合(障害者雇用率)を定め、それを達成することを義務付けています。この割合は国や地域によって異なり、また雇用主の規模によっても異なる場合があります。雇用率を達成できない雇用主には罰金が科されたり、代わりに特定の貢献金を支払うことが求められたりすることもあります。

バリアフリー社会

バリアフリー社会の概念は、もともと障害を持つ人々が直面する物理的な障壁を取り除くことから始まりましたが、次第に情報のアクセス、コミュニケーション、サービスなど、さまざまな分野での障壁をなくすことへとその範囲が広がってきました。この考え方は、障害者の権利の普及とともに発展し、高齢化社会の進展や多様性の尊重といった社会的ニーズの変化に応える形で進化しています。

社会的障壁

特定の集団の人々が社会のさまざまな分野で平等に参加することを妨げる制度的、構造的、または文化的な障害のこと

社会的障壁には、雇用、教育、医療、住宅、政治参加など、生活のあらゆる側面にわたる多くの形態があります。例えば、性別に基づく賃金格差、障害を理由とした職場での差別、経済的な困難による高等教育へのアクセスの制限、人種や民族に基づく住宅市場での不公平な扱いなどがこれに該当します。社会的障壁は、しばしば複数の要因が重なり合うことでさらに複雑化します。

トータルコミュニケーション

聴覚障害者のコミュニケーションを支援するために、言語や非言語の手段を全て活用するアプローチのこと

トータルコミュニケーションでは、手話、口話法、読唇術、書き言葉、ジェスチャー、表情、視覚的な補助具など、あらゆる手段を利用してコミュニケーションを取ります。このアプローチの目的は、聴覚障害者がコミュニケーションの場面で直面する障壁を最小限にし、彼らが自分の考えや感情をより効果的に表現できるようにすることです。

UD7原則

製品や環境をすべての人が利用しやすいように設計するための指針です。これらの原則は、障害の有無にかかわらず、年齢や能力の違いを超えて、すべての人が公平にアクセスし、使用できるようにすることを目的としています。

1. 均等な使用の可能性 (Equitable Use)製品や環境は、すべての人が差別されることなく、同等の方法で使用できるように設計されるべきです。これは、障害がある人もない人も、製品を同じように利用できることを意味します。

2. 柔軟な使用 (Flexibility in Use)製品は、幅広い個人的な好みや能力に対応できるように、使用方法に柔軟性を持たせるべきです。例えば、左利きの人も右利きの人も使いやすいデザインなどがこれに当たります。

3. シンプルで直感的な使用 (Simple and Intuitive Use)デザインは、ユーザーの経験や知識のレベルにかかわらず、理解しやすく直感的に使用できるようにすべきです。これには、複雑さを避けることや、直感的に理解できるインターフェースの提供が含まれます。

4. 情報の認識可能性 (Perceptible Information)デザインは、必要な情報を効果的に伝えるために、さまざまな方法(視覚的、聴覚的など)を用いるべきです。これにより、異なる感覚に依存するユーザーでも情報を簡単に認識できます。

5. 誤りの許容 (Tolerance for Error)デザインは、誤った操作が起きにくく、もし起きた場合にも最小限の影響で済むようにするべきです。これには、事故や誤用からユーザーを守る安全機能の組み込みが含まれます。

6. 身体的負担の少ない使用 (Low Physical Effort)製品や環境は、利用者が快適に使用できるよう、身体的な労力を最小限に抑えるように設計するべきです。これには、長時間の利用でも疲れにくいエルゴノミックな設計が求められます。

7. サイズと空間の利用の配慮 (Size and Space for Approach and Use)製品や環境は、ユーザーの身体サイズ、姿勢、動きの範囲を考慮して、アクセスしやすく使いやすいように設計されるべきです。これには、車椅子ユーザーが利用しやすい広さや高さの配慮などが含まれます。

視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)

視覚障害者が杖や足で感じ取れるように地面に設置された突起を備えたブロックで、彼らの移動を支援するためのものです。

点字ブロックは、視覚障害者にとって非常に重要なナビゲーションツールです。これにより、彼らは周囲の環境についての情報を得ることができ、より自信を持って外出することが可能になります。点字ブロックの普及は、社会全体のバリアフリー化を進める上で重要な役割を果たしています。

LGBTQ

性的指向や性同一性のスペクトラム全体を認め、尊重するための用語です。これにより、個人が自分自身を自由に表現し、自己同一性を認識できるようにすることを目指しています。LGBTQコミュニティの目的は、全ての人が差別や偏見なく生きることができる社会を実現することにあります。

レズビアン(Lesbian): 同性である女性に対して性的、恋愛的な魅力を感じる女性。

ゲイ(Gay): 主に同性である男性に対して性的、恋愛的な魅力を感じる男性。時には、同性愛者全般を指すこともあります。

バイセクシャル(Bisexual): 男性と女性の両方に対して性的、恋愛的な魅力を感じる人。

トランスジェンダー(Transgender): 出生時に割り当てられた性別とは異なる性同一性を持つ人々。

クィア/クエスチョニング(Queer/Questioning): 従来の性別や性的指向のカテゴリにはっきりと収まらない人々、または自分の性的指向や性同一性について探求している人々を指します。

ピクトグラム

情報を伝えるために用いられる図や記号のことです。これらは、国際的に理解されやすいシンプルなビジュアル表現を通じて、言葉に頼らずに意味を伝達します。

ピクトグラムは、簡潔で理解しやすいビジュアルデザインが特徴です。人々が直感的に理解できるよう、現実世界のオブジェクトやアクションを図式化して表現します。例えば、トイレ、エレベーター、出口などの場所を示すサインや、禁煙、携帯電話使用禁止などの規則を伝えるサインなどがあります。また、オリンピックのような国際イベントでは、スポーツ種目を示すピクトグラムが広く使用されています。

ソーシャルワーク

ソーシャルワークは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、都市化、産業革命、そしてそれに伴う社会問題が増加する中で、特に欧米諸国で発展しました。当初は、貧困や社会的排除に直面している人々への慈善活動やボランティア活動として始まりましたが、徐々にその方法論や理論が体系化され、今日では多様な専門知識と技術を持つ専門職として認識されています。

ハルハウス

集団内の相互作用とその影響を研究すること

ハルハウスの概念は、20世紀初頭に社会心理学の分野で発展しました。この理論の根底には、集団が個人の行動、態度、意見形成に与える影響を理解するという目的があります。特に、ドイツの心理学者カート・レヴィンによる研究が有名で、彼は集団動力学の父とも呼ばれています。

ハルハウスは、個人ではなく「集団」を分析の主な対象とします。集団内での個人の振る舞いや、集団によってどのように個人の意見や態度が形成され変化するかを研究します。この分野では、リーダーシップ、社会的影響、集団圧力、集団内コミュニケーションなど、多岐にわたるトピックが扱われます。

ケースワークの母

ケースワークの母とは、メアリー・リッチモンドのことで、社会福祉分野における個別援助の方法論、すなわちソーシャルワーク(社会事業)の基礎を築いた人物です。

メアリー・リッチモンドは、1861年にアメリカで生まれました。彼女は、20世紀初頭のアメリカにおける社会改革運動の中で活躍し、特に貧困層や社会的に弱い立場にある人々への個別援助の重要性を提唱しました。1917年に出版された『ソーシャル・ダイアグノーシス』は、社会福祉分野におけるケースワーク(個別援助技術)の方法論を確立したとされ、その後のソーシャルワークの発展に大きな影響を与えました。

診断主義

個人の心理的、精神的な問題を特定し、分類するプロセスや思想のこと

診断主義では、クライアントや患者が示す症状や行動を詳細に観察し、それらを特定の障害や疾患に関連付けるための基準に照らし合わせます。このプロセスには、標準化された診断基準やアセスメントツールが用いられ、個人の状態を客観的に評価することを目指します。診断を行うことで、適切な治療法や介入の方向性を決定するための基礎情報を提供します。

ケースワークの4つのP

「4つのP」として知られる要素は、**Person(人)、Problem(問題)、Place(場所)、Process(過程)**のことを指します。これらは、ソーシャルワークにおける個別援助の基本的な枠組みを形成しており、クライアントに対する包括的な理解と効果的な支援を行うために重要です。

Person(人)

この要素は、援助を受けるクライアント自身のことを指します。ソーシャルワーカーは、クライアントの性格、生活状況、価値観、ニーズ、強みなど、個人としての特性を深く理解する必要があります。クライアント一人ひとりが異なるため、この理解は個別の対応策を考える上で基盤となります。

Problem(問題)

クライアントが直面している問題や困難を明らかにします。これには、経済的問題、家族関係の問題、健康問題、精神的な問題など、さまざまな形があり得ます。問題を明確にすることで、何に焦点を当て、どのような支援が必要かを判断することができます。

Place(場所)

クライアントが生活している「場所」もまた、援助のプロセスに大きく影響します。これには、物理的な環境だけでなく、社会的、文化的な環境も含まれます。クライアントの居住環境、地域社会のサポート体系、利用可能なリソースなどが、支援計画の策定に影響を及ぼします。

Process(過程)

援助の「過程」は、ソーシャルワーカーとクライアントが共に取り組む一連の行動やステップを指します。問題の評価から目標の設定、介入計画の立案、実施、評価に至るまでの全てのプロセスです。この過程を通じて、クライアント自身が自己の問題を理解し、解決に向けて能動的に取り組むことを促します。

これら4つのPを理解し、適切に組み合わせることで、ソーシャルワーカーはクライアントに対してより有効な支援を提供することができます。各要素は相互に関連しており、包括的なアプローチを取ることが重要です。

エコマップ

個人や家族が社会的環境の中でどのように相互作用しているかを視覚的に表現するツールです。主にソーシャルワークの分野で使用され、クライアントの社会的な関係やリソース、ストレス要因を図示化します。

エコマップの中心には、クライアントや家族の図が描かれ、その周囲には学校、職場、友人、家族、趣味、支援団体など、さまざまな社会的関係やシステムが円や他の形で図示されます。これらの要素間の関係性は線で表され、その種類(強い、弱い、緊張関係など)や方向性(一方的、双方向)を示します。エコマップを作成することで、ソーシャルワーカーはクライアントの社会的支援の強度や問題領域を迅速に把握し、適切な介入策を立案することができます。

ジェノグラム

家族の歴史や関係性、医学的歴史を表す視覚的な図表のこと

ジェノグラムは、1970年代に心理学や家族療法の分野で使用され始めました。家族の構造、関係性、そしてその中で発生する心理的な問題や行動パターンの理解を深めるために開発されました。ジェノグラムは、家族内のパターンを特定し、クライアントやその家族の問題解決や治療を助けるための洞察を提供します。

ケースワークの7原則

ケースワーク、つまり個別援助における7つの原則は、効果的なソーシャルワークの実践を導くための基本的なガイドラインです。これらの原則は、クライアントの尊厳を尊重し、彼らのニーズに応じた支援を提供するために重要です。

1. 個別化の原則クライアント一人ひとりが持つ独自のニーズ、背景、状況を理解し、それに基づいた個別の支援を提供します。個々のクライアントに合わせたアプローチを取ることが重要です。

2. 目的意識の原則ソーシャルワーカーとクライアントが共に明確な目標を持ち、その達成を目指すことが重要です。介入の各段階での目的を明確にし、目標達成に向けて努力します。

3. 自己決定の原則クライアントが自らの人生についての決定を下す能力を尊重し、促進します。クライアントが自分の選択を行い、その責任を負うことを支援します。

4. コントロールされた感情的関与の原則ソーシャルワーカーは、クライアントに対して適切な感情的関与を保ちつつ、専門的な境界を維持する必要があります。過度な感情的関与は避け、客観性を保ちます。

5. 受容の原則クライアントをその人自身として受け入れ、偏見なく接します。クライアントの価値観や行動、経験を尊重し、ポジティブな関係を築きます。

6. 機密保持の原則クライアントから得られる情報は機密として扱い、適切な場合と条件下でのみ共有します。信頼関係の基盤となる原則です。

7. クライアントの強みに焦点を当てる原則クライアントの問題だけでなく、その強みやリソースにも焦点を当て、

これらを活用して問題解決を図ります。クライアントが持つ潜在的な能力を引き出し、自助努力を促します。これらの原則を実践することで、ソーシャルワーカーはクライアントに対してより効果的な支援を提供できるようになります。各原則は相互に関連し合っており、包括的なアプローチを通じてクライアントの福祉を促進します。

ソーシャルワークの過程

ソーシャルワーカーがクライアントと共に取り組む一連の段階で構成され、クライアントの問題を理解し、解決策を見つけ、実行するための枠組みを提供します。この過程は大きく分けて以下の段階に分類されます。

1. 問題の同定(アセスメント)概要: ソーシャルワーカーは、クライアントの現状、問題点、ニーズを把握するための情報を収集し、評価します。この段階では、クライアントの生活状況、心理的・社会的背景、利用可能なリソースなどが検討されます。具体的な活動: インタビュー、観察、エコマップやジェノグラムの作成、既存の記録のレビューなど。

2. 目標の設定概要: アセスメントの結果をもとに、ソーシャルワーカーとクライアントは共同で具体的な目標を設定します。この目標は、問題の解決やクライアントの生活状況の改善に向けたものであるべきです。具体的な活動: 目標の優先順位付け、SMART(具体的、測定可能、達成可能、現実的、時間的に制限された)基準に基づく目標設定。

3. 介入計画の立案概要: 目標達成に向けて、どのような介入が必要かを計画します。この段階で、具体的なアクションプランが作成され、必要なリソースやサポートが検討されます。具体的な活動: サービスの手配、セラピー、カウンセリングセッションの計画、支援グループへの参加促進など。

4. 介入の実施概要: 計画された介入を実行します。この段階では、ソーシャルワーカーはクライアントを支援し、さまざまなサービスへのアクセスを促進したり、具体的な支援を提供したりします。具体的な活動: 個別カウンセリング、家族療法、社会福祉サービスへの紹介、緊急支援の提供など。

5. モニタリングと評価概要: 介入の効果をモニタリングし、進捗を評価します。この段階では、目標に対する進捗状況を定期的にレビューし、必要に応じて計画を調整します。具体的な活動: クライアントのフィードバックの収集、介入効果の測定、目標達成状況の評価など。

6. 終了(終結)概要: クライアントが目標を達成し、自立して問題に対処できるようになった時点で、ソーシャルワークの関与を終了します。終了の準備として、今後の計画やクライアントが自力でリソースを利用する方法について話し合います。具体的な活動: 支援の終了計画の作成、未解決の問題に対するリソースの紹介、フォローアップの計画。

ソーシャルワークの過程は、クライアントの状況やニーズに応じて柔軟に対応する必要があります。それぞれの段階は、クライアントとの協力関係を基盤とし、彼らの自立と福祉の向上を目指しています。

ソーシャルワークで扱う領域のレベル

個人、家族、集団、組織、そして社会全体にわたる幅広いレベルでの問題に取り組みます。これらの領域は、マクロ、メゾ、ミクロの三つのレベルに分けて考えることができ、それぞれ異なるアプローチや介入の方法が必要です。

ミクロ

対象: 個人や家族。

焦点: 個人の問題やニーズ、個人間の関係、日常生活で直面する困難。

介入の例: 個別カウンセリング、家族療法、生活スキルのトレーニング、メンタルヘルスの支援。

メゾ

対象: 集団、コミュニティ、地域社会の小規模な組織。

焦点: 集団やコミュニティ内での関係、地域社会のニーズや問題。

介入の例: コミュニティ開発、支援グループ、地域資源の活用促進、地域コミュニティとの連携。

マクロ

対象: 社会全体、政策、社会制度、大規模な組織や機関。焦点: 社会的、経済的、政治的な問題、社会政策、社会福祉制度、社会正義。介入の例: 社会政策の策定や改善への影響、社会運動、法律や政策に基づくアドボカシー、制度改革。

心理・福祉の専門知識

心理学および社会福祉の分野では、専門知識が非常に幅広く、多岐にわたります。

家庭支援専門相談員

家庭内で起こり得るさまざまな問題や困難に対応し、支援を提供する専門職です。彼らは、家庭の健康と福祉を促進するために重要な役割を担っています。

家庭支援専門相談員は、家庭が直面する様々な問題に対応するための専門知識とスキルを持ち、家庭の健康と福祉の向上を目指して活動しています。

児童心理司

児童やその家族が抱える心理的な問題や困難に対して専門的な支援を提供する職業です。この専門職は、児童の発達段階や心理状態を深く理解し、教育的なサポートやカウンセリング、心理療法などを通じて、児童の健全な発達を促進し、家族の機能向上を支援します。

臨床心理技術者

心理学の専門知識と技術を活用して、個人の心理的な問題や障害の評価、診断、治療を行う専門職です。彼らは、心理テストの実施、カウンセリング、心理療法などを通じて、クライアントの精神的健康の改善を目指します。臨床心理技術者は、医療機関、心理相談所、学校、福祉施設など、様々な場で活躍しています。

資質向上の責務

資質向上の責務は、個人や組織が持続的に自己の専門知識、スキル、能力を高めることに対して責任を持つという考え方です。特に、専門職においては、常に最新の知識や技術を学び続け、質の高いサービスを提供することが求められます。これは、医療、心理学、教育、社会福祉などの分野で特に重要視されています。

個人の責務自己啓発: 定期的に専門分野の学習や研修に参加し、最新の知識や技術を習得します。

自己反省: 実務経験から学び、自身の実践を振り返り、改善点を見つけ出して適用します。

専門性の維持・向上: 資格の更新や専門的な認定を通じて、自身の専門性を維持し、さらに向上させます。

組織の責務教育機会の提供: 従業員に対して継続的な教育や研修の機会を提供し、職場内外での学習を奨励します。

資源の提供: 学習に必要な資源や時間を提供し、従業員がスキルアップできる環境を整えます。

成長促進の文化の醸成: 組織内で成長と学習を促進する文化を育て、従業員の資質向上を支援します。

社会的責務専門職のエシックス: 社会的な信頼に応えるため、専門職は倫理的な行動基準を守り、常に自己の資質向上に努めます。

公共の利益の保護: 専門職は、自らの専門知識や技術を通じて、公共の利益を保護し、社会に貢献します。資質向上の責務は、個人と組織の双方に利益をもたらし、より良い社会的結果を生み出します。

専門職にとっては、専門性の維持と向上を通じて、より高いレベルのサービス提供が可能になり、職業的満足感やキャリアの発展にもつながります。一方で組織は、高い専門性を持つ従業員を通じて、組織の信頼性や競争力を高めることができます。

スーパービジョンの3機能

スーパービジョンは、特に心理学、社会福祉、医療などの分野で重要なプロセスです。スーパービジョンには主に3つの機能があり、これらはスーパーバイザーがスーパーバイジー(指導を受ける側)の成長と発展を支援するために不可欠です。

1. 教育的機能(Educative Function)目的: スーパーバイジーの専門知識と技術の向上を目指します。これには、新しい理論や技術の紹介、ケーススタディを通じた学習、実践スキルの向上などが含まれます。重要性: スーパーバイジーが直面する様々な状況に適応し、効果的な介入を行うために必要な知識と技術を習得することができます。

2. 支援的機能(Supportive Function)目的: スーパーバイジーの感情的な負担やストレスを軽減し、仕事の動機づけや自尊心の向上を支援します。これには、感情的なサポート、職場での問題への対処方法の提案、プロフェッショナルとしてのアイデンティティの強化などが含まれます。重要性: スーパーバイジーが職業生活における挑戦や困難に対処し、精神的な健康を維持するために役立ちます。

3. 管理的機能(Managerial Function)目的: スーパーバイジーの仕事の質と効率を確保し、組織のポリシーや手続き、倫理規定に沿った実践が行われるように管理します。これには、パフォーマンスのモニタリング、目標設定、評価、フィードバックの提供などが含まれます。重要性: 組織の目標達成と高いサービスの質を保証するために必要です。また、スーパーバイジーが自己の実践を評価し、改善する機会を提供します。これら3つの機能は相互に関連しており、バランス良く実施されることで、スーパーバイジーの専門的成長、個人的な発展、そして組織の目標達成を促進します。スーパービジョンは、単に知識やスキルの伝達に留まらず、スーパーバイジーの職業人としての総合的な成長を支える重要なプロセスです。

産業医

職場の健康管理と労働者の健康を守ることに特化した医師です。彼らは企業や組織に所属し、労働者の健康状態の監視、職場環境の改善、労働に関連する病気の予防と対策など、職場の健康管理全般に責任を持ちます。

医師の指示

医師が患者の診断、治療、またはケア管理のために出す具体的な指示や命令のことです。これには、薬の処方、治療手順、検査の実施、ライフスタイルの変更勧告、フォローアップの指示などが含まれます。医師の指示は、患者の健康状態や治療計画に基づき、医学的知見と経験に基づいて行われます。

↓↓よろしければクリックをお願いいたします
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心理学へ 心理学ランキング
健康・福祉
スポンサーリンク
スポンサーリンク
hosomeganeをフォローする
心理学用語の壁

コメント

タイトルとURLをコピーしました