相手に初めに低いハードルの要求を提示し、その後でハードルを高くする方法のこと
簡単な説明
例えば、ある商品が「特別価格で1000円」と宣伝されているとします。顧客が購入を決定し、支払い段階で「この価格には配送料が含まれていない」と知らされることがあります。顧客はすでに購入を決意しているため、追加のコストを受け入れる可能性が高くなります。
由来
ローボール・テクニックは、アメリカの心理学者ロバート・チャルディーニによって研究されました。彼は説得の心理学を専門としており、このテクニックを利用することで、人々がどのようにして意思決定を行うかを理解しようとしました。
具体的な説明
ローボール・テクニックは、まず相手に魅力的な提案をし、その提案を受け入れさせます。その後、実際にはその提案に隠れたコストや条件があることを明かします。相手は最初の提案を受け入れたため、変更後の条件をも受け入れやすくなります。
1978年、チャルディーニらは大学生を対象に実験を行いました。最初に「午前7時に実験に参加してくれるか」と尋ねると、多くの学生は拒否しました。しかし、「実験に参加してくれるか」とだけ尋ねてから、後で「午前7時に行う」と付け加えたところ、より多くの学生が参加を承諾しました。この実験は、ローボール・テクニックが有効であることを示しています。
ローボール・テクニックは、最初に小さな要求を承諾させることで、その後のより大きな要求を受け入れやすくする心理的なメカニズムです。これには一貫性の原則が関与しており、人々は一度決定を下した後、その決定を維持しようとする傾向があります。心理学者は、このテクニックが人々の意思決定プロセスにどのように影響するかを実験的に検証しています。
例文
「スーパーでセール品を購入しようとしたら、レジで追加料金がかかると言われたけど、もう買う気になっていたからそのまま支払った。これがローボール・テクニックの典型例です。」
疑問
Q: ローボール・テクニックはなぜ有効なのですか?
A: 人々は一貫性を保つことを好むため、一度下した決定を覆すことに抵抗を感じます。
Q: ローボール・テクニックはどのような場面で使われることが多いですか?
A: 販売やマーケティング、交渉の場面でよく使用されます。
Q: ローボール・テクニックとフット・イン・ザ・ドア・テクニックの違いは何ですか?
A: フット・イン・ザ・ドアは最初に小さな要求をし、その後に大きな要求をする方法ですが、ローボール・テクニックは最初の要求の条件を後から変更する方法です。
Q: ローボール・テクニックは倫理的に問題がありますか?
A: 情報の隠蔽や誤解を招くような方法は倫理的に問題があるとされることがあります。
Q: ローボール・テクニックの成功率を高める要因は何ですか?
A: 最初の要求が受け入れやすいものであり、変更後の条件がそれほど大きな負担と感じられない場合、成功率が高まります。
Q: ローボール・テクニックを回避する方法を教えてください。
A: ローボール・テクニックを回避するためには、以下の方法があります。
- 最初の提案を受け入れる前に、すべての条件を確認する。
- 提案が変更された場合、再度検討する時間を持つ。
- 情報を隠されていると感じた場合は質問をする。
- 冷静に考える時間を確保し、即決を避ける。
- 一貫性のプレッシャーを感じても、条件が変わった場合は断る勇気を持つ。
理解度を確認する問題
ローボール・テクニックの説明で正しいものを選びなさい。
- A) 最初に大きな要求をし、断られた後に小さな要求をする方法。
- B) 最初に小さな要求をし、その後に大きな要求をする方法。
- C) 最初に低いハードルの要求を提示し、その後にハードルを高くする方法。
- D) 最初に魅力的な提案をし、その提案をそのまま維持する方法。
- 答え: C
ローボール・テクニックが効果的な理由として最も適切なものはどれか。
- A) 人々は常に最初の提案を忘れがちであるため。
- B) 人々は一貫性を保つことを好むため。
- C) 人々は変更を嫌うため。
- D) 人々は常に新しい提案を受け入れたがるため。
- 答え: B
ローボール・テクニックを利用した実験で知られている心理学者は誰ですか。
- A) スタンレー・ミルグラム
- B) フィリップ・ジンバルドー
- C) ロバート・チャルディーニ
- D) ソロモン・アッシュ
- 答え: C
ローボール・テクニックが倫理的に問題となるのはどのような場合ですか?
- A) 提案が最初から魅力的である場合。
- B) 提案の条件が変更されずそのままの場合。
- C) 情報が隠されるか誤解を招く方法で使用される場合。
- D) 提案が最初から拒否される場合。
- 答え: C
関連キーワード
- 説得
- 一貫性の原則
- 意思決定
- マーケティング
- 行動経済学
関連論文
Cialdini, R. B., Cacioppo, J. T., Bassett, R., & Miller, J. A. (1978). Low-ball procedure for producing compliance: Commitment then cost.
この論文では、ローボール・テクニックの基本的なメカニズムとその効果について検証しています。著者たちは、まず参加者に魅力的な提案を受け入れさせ、その後で実際のコストを明かす方法を用いて、参加者の一貫性を引き出すことの効果を実証しました。
Burger, J. M., & Petty, R. E. (1981). The low-ball compliance technique: Task or person commitment?
この研究では、ローボール・テクニックが人々のタスクへのコミットメントと個人へのコミットメントのどちらに依存するかを調査しました。結果として、個人へのコミットメントがより強い効果を持つことが示されました。
Guéguen, N., Pascual, A., & Dagot, L. (2002). Low-ball and compliance: Commitment and the two faces of the low-ball technique.
この研究は、ローボール・テクニックの2つの側面、すなわち最初の低い要求とその後の高い要求の関係を検討しています。結果として、最初の要求が魅力的であればあるほど、後の高い要求も受け入れやすくなることが確認されました。
覚え方
「ローボール・テクニック」を覚える際は、「最初に低いハードルを超えたら、その後はどんどん高くなる」というイメージを持つと良いです。例えば、山登りをする際に最初はなだらかな道を進み、その後急な登り坂に差し掛かる様子を思い浮かべてください。これにより、最初の簡単な提案が受け入れられた後に、難しい条件が提示されるというテクニックの本質を視覚的に理解しやすくなります。
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