感情や気分が記憶の再生に影響を与える現象のこと
簡単な説明
例えば、試験勉強をしているときにリラックスしていたら、試験当日もリラックスしていると学んだ内容を思い出しやすくなります。逆に、勉強中に緊張していた場合は、試験当日も緊張していると内容を思い出しやすくなるのです。
由来
感情状態依存効果は、特定の感情状態にあるときに経験した出来事や学んだことが、同じ感情状態にあるときに思い出しやすくなる現象です。1970年代にゴードン・バウワー(Gordon Bower)によって提唱され、記憶と感情の関係を示す多くの研究が行われてきました。
具体的な説明
人が何かを学習したり体験したりするとき、その時の感情状態が記憶の一部として保存されます。そして、後で同じ感情状態になると、その記憶が再生されやすくなるのです。例えば、悲しいときに覚えたことは、再び悲しい気分のときに思い出しやすくなるといった現象がこれに当たります。
ゴードン・バウワーの実験では、被験者にポジティブな気分(ユーモラスなビデオを視聴させる)とネガティブな気分(悲しい音楽を聴かせる)を誘発し、それぞれの状態で単語リストを覚えさせました。その後、同じ気分状態または異なる気分状態で単語リストを思い出させたところ、同じ気分状態での思い出し成績が優れていることが確認されました。
感情状態依存効果は、記憶のエンコーディングとリトリーバルの過程において感情が重要な役割を果たすことを示しています。これは、感情が記憶の手がかりとして機能するためです。研究では、被験者が特定の感情状態で学習し、その後同じ感情状態でテストを受けた場合、異なる感情状態でテストを受けた場合に比べて記憶成績が良好であることが示されています。
例文
「テスト勉強をする時は、なるべく試験本番と同じ気持ちで勉強すると、感情状態依存効果によって覚えたことを思い出しやすくなるよ。」
疑問
Q: 感情状態依存効果は、どのような感情でも効果がありますか?
A: はい、ポジティブでもネガティブでも、感情が記憶に与える影響はあります。
Q: 感情状態依存効果はどれくらいの期間持続しますか?
A: 効果の持続期間は個人差がありますが、一般的には感情状態が強ければ強いほど長く持続するとされています。
Q: 感情状態依存効果は特定の記憶にしか影響を与えないのですか?
A: いいえ、学習した情報全般に影響を与えます。
Q: 感情状態依存効果はどの年齢層でも見られますか?
A: はい、年齢に関係なく見られますが、感情の影響が大きい思春期や青年期に特に顕著です。
Q: 感情状態依存効果を活用して勉強する方法はありますか?
A: はい、勉強する時と同じ環境や感情状態を再現することで、効果的に記憶を定着させることができます。
理解度を確認する問題
感情状態依存効果の研究を行った心理学者は誰ですか?
a) ゴードン・バウワー
b) シグムンド・フロイト
c) ジャン・ピアジェ
d) B.F.スキナー
回答: a) ゴードン・バウワー
関連キーワード
- エンコーディング
- リトリーバル
- 記憶の手がかり
- 感情誘発
- ゴードン・バウワー
関連論文
Bower, G. H. (1981). Mood and Memory. American Psychologist, 36(2), 129-148.
- この論文では、感情状態がどのように記憶の形成と再生に影響を与えるかについて詳しく述べられています。バウワーの初期の研究結果や、その後の発展を含む包括的なレビューです。
Eich, E., & Metcalfe, J. (1989). Mood dependent memory for internal versus external events. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 15(3), 443-455.
- この研究は、内的および外的な出来事に対する感情状態依存記憶の違いを調査しています。感情状態が記憶の異なる側面に与える影響についての新たな知見を提供しています。
覚え方
ゴードン・バウワー同じ感情で思い出す
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