WBS

WBS マネジメント系

作業を細かく分けて、計画的に管理するための表のこと

簡単な説明

WBSは、プロジェクトの作業全体を小さな作業に分解して一覧にしたものです。目的は、何をどこまでやるべきかを明確にし、「抜け」や「遅れ」を防ぐことです。
例えば、「Webサイトを作る」プロジェクトがあるとすると、「デザイン」「ページ作成」「テスト」などに分け、さらに「ページ作成」を「トップページ作成」「お問い合わせページ作成」などに細かく分けていきます。

由来

WBSは「Work Breakdown Structure(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャー)」の略です。プロジェクト管理の考え方の一つで、1960年代にアメリカの国防総省が大規模な軍事プロジェクトを効率的に管理するために導入しました。その後、民間企業にも広がり、現在ではIT業界をはじめ、さまざまな業界で使われています。

具体的な説明

WBSは、作業を「階層的」に並べて構成します。大きな作業を親(親タスク)、それを分割したものを子(子タスク)として木のように構造化します。

例えば

  1. Webサイト制作
    1.1 デザイン
    1.1.1 ロゴ作成
    1.1.2 配色選定
    1.2 ページ作成
    1.2.1 トップページ
    1.2.2 サービス紹介ページ
    1.3 テスト
    1.3.1 表示確認
    1.3.2 リンク確認

このようにすると、誰が何をいつまでにやるかが明確になり、プロジェクトの管理がしやすくなります。

WBSはPMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)において、スコープ管理の中心的な手法の一つです。WBSによりプロジェクト全体の作業を100%網羅することが前提とされており、「100%ルール」と呼ばれる原則に基づいています。

WBSを作ることで以下が可能になります:

  • 作業の網羅性(抜け漏れ防止)
  • 作業単位の見積もり
  • リソースの割り当て
  • 進捗の測定

具体的な実験や観察手法と結論

大学のプロジェクトマネジメント授業では、同一課題(例えばアプリ開発)をWBSあり・なしの2チームで行わせ、納期遵守率と品質を比較する実験がよく行われます。

結果として、WBSを作成したグループの方が、

  • 作業の重複や抜けが少ない
  • タスクの完了率が高い
  • メンバー間の認識のずれが少ない
    という傾向が見られました。

例文

「このアプリ開発プロジェクトのWBSを作成しないと、どの作業が誰の担当かわからなくなってしまうよ。」

疑問

Q: WBSはなぜ必要なのですか?

A: 作業を細かく分けることで、全体の見通しが良くなり、作業漏れや無駄が減るからです。

Q: WBSを作るのは誰ですか?

A: 主にプロジェクトマネージャーが中心になって、チームメンバーと一緒に作ります。

Q: WBSの最小単位はどれくらいですか?

A: 実行可能なタスク単位まで細かくします。目安としては、1〜5日以内で終わる作業が多いです。

Q: WBSとスケジュール表は何が違うのですか?

A: WBSは「何をやるか」の一覧で、スケジュール表は「いつやるか」を表します。

Q: WBSはIT業界以外でも使えますか?

A: はい。建設、製造、イベントなど、ほとんどのプロジェクト型の仕事で使われます。

Q: WBSにおける「100%ルール」とは何ですか?

A: 100%ルールとは、WBSで分解されたすべての作業項目が、プロジェクト全体の作業範囲(スコープ)を100%カバーしていなければならないという原則です。漏れがあると、計画のズレや納期遅延の原因になります。

Q: WBSを使うことで、どのような効果が得られますか?

A:以下のような効果があります:

  • 作業範囲が明確になる
  • 進捗管理がしやすくなる
  • コストや工数の見積もりがしやすくなる
  • 作業の重複や漏れが減る
  • 担当者と納期が明確になる

Q: WBSで「階層的に分解する」とは、どのような意味ですか?

A:「階層的に分解する」とは、プロジェクトの大きな作業を上位に置き、それをさらに小さな作業に分けて下位に配置する構造のことです。木のように親子関係で表現し、全体から部分へと段階的に詳細化していきます。

Q: WBSを作成する前に行うべきプロセスは何ですか?

A:WBSを作成する前には、「スコープ定義」を行う必要があります。スコープ定義とは、「プロジェクトで何を作るのか」「どこまでを対象にするのか」を明確にする工程です。これがないと、WBSの範囲が曖昧になってしまいます。

理解度を確認する問題

WBSの説明として最も適切なものはどれか。

A. プロジェクトの進捗をグラフで可視化したもの
B. プロジェクトの作業を階層的に分解したもの
C. プロジェクトに必要な資源の一覧表
D. プロジェクトで発生するリスクを洗い出したもの

正解: B

関連論文や参考URL

“Work Breakdown Structure in Project Management: A Framework for Implementation in Agile Environments”(2021, Journal of Project Management)

解説:
この論文では、WBSがアジャイル開発においても効果的に使えることを論じています。特に「スプリント単位でのWBS化」によって、作業の可視化とチームのコミュニケーションが向上したとされています。

結果:
WBS導入チームは、バグ件数が約25%減少し、納期遵守率も15%向上しました。

“A Work Breakdown Structure for Implementing and Costing an IT Governance Framework”(著者:Almeida, B., Caldeira, M./掲載誌:Information Systems Management, 2018)

この論文は、ITガバナンス(組織におけるITの管理と最適化)を実装する際のプロジェクト管理手法として、WBSの有効性を分析した研究です。

特に、COBITやITILなどのフレームワーク導入時に、どのようにタスクを分解し、実行可能な単位に落とし込むかに焦点を当てています。

研究は、実際の企業におけるITガバナンス導入プロジェクト(複数社)を調査対象とし、WBSの構築・実行・コスト分析までを追跡しています。

研究結果:
  1. WBS導入により、タスクの網羅性が向上
     → 計画初期段階でのタスク抜けが約40%減少
  2. 担当者ごとの責任範囲が明確になった
     → トラブル発生時の原因追跡時間が30%短縮
  3. WBSを使うことで、初期見積もりとの乖離が小さくなった
     → プロジェクトの予算超過率が**12% → 4%**に改善
  4. 関係者間のコミュニケーション効率が向上
     → プロジェクト完了までの期間が平均2週間短縮
解釈:

この研究は、WBSが単なる計画ツールではなく、実行の質を高める統制手段であることを明確に示しています。

特にITガバナンスのような抽象的な取り組みにおいても、WBSで「具体的なアクション」に変換することで、実施の確度が高まり、コストや工期にも好影響を与えると解釈できます。

また、関係者全員が同じ作業分解図を共有することで、共通認識の土台となり、コミュニケーションの質が高まる点も注目に値します。

WBSを作る時の「とっかかり」5ステップ

ステップ①:「ゴール(成果物)」を明確にする

まず、「このプロジェクトでは、最終的に何を完成させたいのか?」をはっきりさせます。
例:

  • Webサイトを作る
  • アプリをリリースする
  • 社内マニュアルを完成させる

ゴールが明確でないと、WBSがブレます。


ステップ②:大きな作業単位(フェーズ)で分けてみる

いきなり細かくせず、「大まかに3〜5つくらい」に分類します。

例:Webサイト制作の場合

  • 企画
  • デザイン
  • コンテンツ作成
  • 実装(コーディング)
  • テスト・公開

ここでは「ザックリ」感でOKです!


ステップ③:各フェーズを「どうやるか」で分解する

次に、各フェーズを作業単位(やること)で分解します。

例:
「デザイン」→ ロゴ制作、配色決定、レイアウト設計
「テスト」→ 表示確認、スマホ対応確認、リンク動作確認

細かくしすぎず、「1人で完了できる作業レベル」が目安です。


ステップ④:担当者・期限・成果物の形をメモ

この時点で、ざっくりでもいいので

  • 誰がやる?
  • いつまでに?
  • 完成の定義は?(例:原稿が揃った、画像がそろった)

を意識すると、後のスケジュール化が楽になります。


ステップ⑤:WBSツールやテンプレートを使って見える化する
  • Excel(行にタスク、列に期限や担当)
  • Backlog、Trelloなどの無料ツール
  • Googleスプレッドシート(複数人で編集できて便利)

最初はシンプルに!まずは紙に書いてもOKです


具体例:WBSのとっかかり【例:夏祭りの準備】

フェーズタスク内容担当期限
企画出店内容を決める5/10
企画予算を決める親子5/12
準備ポスターを作る5/20
準備食材を注文する5/22
実施当日の受付準備6/1

👉 これも立派なWBSです!


とっかかりのコツ:まとめ

コツ内容
ゴールから逆算する「何を完成させたいか?」から考える
木を育てるように大きな幹(フェーズ)から枝(タスク)へ分解
小さなレンガを積む1つ1つの作業は「終わりが見える」くらい小さく
人に見せてみる他の人に説明できると、WBSが明確になります
とりあえず作ってみる最初は完璧じゃなくてOK!試作から始めよう

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