偽装請負

Disguised Subcontracting ストラテジ系
Disguised Subcontracting

見せかけだけの業務委託で、実際は違法な働かせ方のこと

簡単な説明

ホントは「業務を丸ごとお願いする契約(請負)」のフリしてるけど、
実際は他社の社員を自分の社員みたいに指示して働かせてるのが偽装請負です。
バレたら法律違反でアウト、下手すりゃ会社名も公表されちゃうこともあります!

由来

日本では1990年代後半から派遣労働が増加しましたが、派遣契約には厳しいルールがあるため、
企業がコストを抑える目的で「請負契約」に偽装して働かせる手口が出てきました。
労働者派遣法(1985年施行)で派遣と請負は明確に区別されており、偽装請負はその抜け道を使った違法行為です。

具体的な説明

「偽装請負」がなぜ問題なのかを理解するには、まず「正しい請負(=適法な請負)」の姿を知ることがとても大切です。
ここでは、理想的な請負契約のあり方と、それと比較したときに見えてくる偽装請負の問題点をセットで解説します。

正しい請負(適法な請負)のあるべき姿

観点請負契約の特徴(適法)
指示命令受託企業が自社の社員にのみ指示を出す(発注元からの指示なし)
責任範囲完成責任が受託側にある(成果物納品がゴール)
管理監督作業日程・人事・休憩時間も含め、すべて受託側が管理
成果物成果物・完成品・サービスなど、形あるアウトプットを納品する
作業場所原則として受託側が用意する場所で作業(常駐も可能だが要注意)
契約目的業務の完成に対して報酬が発生する

偽装請負の特徴(違法な状態)

観点偽装請負に陥りがちなポイント
指示命令発注元の社員が、受託企業の社員に直接「やって」「やめて」と指示
責任範囲完成ではなく、「人を出す」ことが目的化(=実態は労働力の提供)
管理監督出退勤・評価・休憩などを発注元が管理している
成果物成果がなくても「作業時間」で報酬が発生(人の時間=派遣に近い)
作業場所発注元の現場に常駐し、発注元のチームの一員のように働いている
契約目的実態が「人材派遣」と同じだが、法的手続きをとっていない

例えばある製造工場で、A社がB社に「ライン業務を一括請負」と契約したとします。
でも実際はA社の現場リーダーがB社の社員に「これやって」「休憩入って」と直接指示していたら、
これは「請負」ではなく「派遣」です。このような形態は偽装請負とされ、違法になります。

偽装請負は、形式上は請負契約を締結しているが、実質的には派遣労働者としての使用関係が存在する状態を指します。
これは「使用従属性」という労働法上の概念を基に、発注者による指揮命令関係や就業規則の適用状況などにより判断されます。
法的には「労働契約に準じた実態」があるとされ、労働者派遣法第40条などに違反する可能性があります。

例文

「この現場、請負って言ってるけど、発注元の社員がうちのメンバーに毎日指示出してるし、
これって偽装請負なんじゃない?」

疑問

Q: 偽装請負はなぜ違法なのですか?

A: 労働者派遣法に違反し、労働者の安全や権利が守られなくなるためです。

Q: 偽装請負と派遣の違いは何ですか?

A: 派遣は派遣元が雇い、指示も発注元が行いますが、請負はあくまで業務単位の契約で、指示は請負元が行います。

Q: 偽装請負がバレるとどうなりますか?

A: 是正指導や契約解除、企業名の公表など、社会的信用も失われます。

Q: 偽装請負が多い業種はどこですか?

A: 製造業やIT業界、特に中小企業の常駐業務などで見られます。

Q: 自分が偽装請負かもと思ったらどうすれば?

A: 労働基準監督署や労働局に相談しましょう。匿名でも対応してもらえます。

Q: 偽装請負が発覚した場合、委託された側の会社にも責任がありますか?

A: はい、委託された側(受注者)も違法行為に加担していたと判断されれば、是正命令や契約の打ち切り、改善報告の提出などが求められます。

Q: IT業界で偽装請負が問題になるケースにはどんなものがありますか?

A: SIerなどで「常駐SE」が客先で指揮命令を受けているケースや、派遣契約を結ばずに開発現場に人員を送り込む形態などが問題になります。

Q: 派遣契約と偽装請負の違いは見た目で区別できますか?

A: 見た目だけでは難しく、指揮命令系統、評価制度、業務の独立性など実態を見て判断されます。厚生労働省のガイドラインに沿って確認します。

Q: 偽装請負かどうか自分で判断するには、どこに注目すればよいですか?

A: 日々の業務指示を誰が出しているか、出勤・休憩・評価などの管理を誰が行っているかがポイントです。発注元が行っていれば偽装の可能性があります。

Q: 偽装請負を未然に防ぐために企業が行うべき対策はありますか?

A: 契約時に業務の独立性を明確にし、発注元が現場の指示を出さないよう社内研修を実施したり、監査体制を設けたりすることが有効です。

理解度を確認する問題

次のうち、「偽装請負」に該当する可能性が高い状況はどれか?

A. 発注先企業の社員が自社の作業手順で業務を完結している
B. 発注元企業の社員が委託先の社員に日常的に業務指示をしている
C. 委託元と委託先で定期的な進捗報告会だけを行っている
D. 委託先企業の管理者が現場の作業全体を統括している

正解:B

関連論文や参考サイト

  • 「偽装請負の実態と施策 – 労働者派遣・業務請負適正化の取組みについて」(工藤滝光/労働法学研究会報 58巻4号, 2007年2月刊)
     偽装請負の国内事例を多数分析し、行政の是正指導や制度整備の歴史的経緯をまとめています。
  • 「『事例』で考える労働法(第8回)〜偽装請負状況下における発注者の雇用責任とは?」(北岡大介, 労働法学研究会報 58巻22号, 2007年11月刊)
     偽装請負で発注者にどのような法的責任が課されるかを裁判例をもとに具体的に解説しています。
  • 「Disguised Contracting and the Deemed Labor Contract Application …」(JILPT, 2023年4月~大阪高裁・神戸地裁事例分析)
     2021年の大阪高裁判決「鳥ケース」を取り上げ、偽装請負と判断される基準や法的論点(指揮命令の実態等)を整理し、裁判例として詳しく解説しています。
  • 厚労省ガイドライン・JILPT 英文資料「Legal Issues Surrounding Employment-like Working Styles」(2020年刊)
     ILOの観点を交えながら、偽装請負を「雇用類似」問題として整理し、労働法的保護の曖昧さを論じています。

まとめ

偽装請負とは、業務委託(請負)のように見せかけて、実際は指揮命令を他社が行っている労働形態です。
法律では労働者派遣と請負は明確に区別されており、偽装請負は違法行為となります。
労働者派遣法や労働基準法に違反しており、企業は厳しい罰則を受ける可能性があります。

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