リスクアセスメント

Risk Assessment ストラテジ系

危険を見つけて、その影響や起こる可能性を評価すること

簡単な説明

リスクアセスメントは3つのステップで進めます:

  1. リスクの特定(何が危ないか)
  2. リスクの分析(どのくらい起きやすく、どれくらいの被害になるか)
  3. リスクの評価(どのリスクに対策が必要かを決める)

由来

「リスクアセスメント(Risk Assessment)」という言葉は、産業安全の分野から始まりました。特に労働安全衛生法などで用いられることが多く、もともとは工場や建設現場などの「危険な作業」における事故や災害を防ぐための方法でした。現在では、ITセキュリティ、企業経営、災害対策など広い分野で使われています。

具体的な説明

例えば、ある会社がパソコンを使って仕事をしているとしましょう。
このとき、次のようなリスクが考えられます:

  • パソコンが壊れる → 仕事が止まる
  • ウイルスに感染する → データが漏れる

このリスクに対して、次のようにリスクアセスメントを行います:

リスク起こる可能性影響の大きさ優先度
パソコンが壊れる
ウイルス感染最高

この表をもとに、ウイルス対策ソフトの導入や、バックアップの整備などの対策を立てます。

たとえば、IT企業で「社内のシステムに対するサイバー攻撃リスク」をアセスメントする場合:

  1. 過去1年間の攻撃ログを分析(観察)
  2. 発生確率を求める(例:1ヶ月に2回攻撃 → 年間24回)
  3. 攻撃の影響度(データ流出・業務停止など)を評価
  4. リスクスコアを算出し、対応の優先順位を決定

結論:対応すべきリスクが明確になり、効率的に資源を使えるようになります。

【1】リスクの特定(何が危ないか)

まずは「どんな危険があるか」を洗い出す段階です。以下のような分類で考えると分かりやすいです。

カテゴリ想定リスク例
システム障害サーバーダウン、通信障害、データベースの破損
セキュリティマルウェア感染、パスワード漏洩、不正アクセス
人的ミス操作ミス、設定ミス、重要ファイルの削除
自然災害・物理環境地震、停電、水害、火災
外部委託・サプライヤー委託先の情報流出、納期遅延、契約違反
法的・制度的個人情報保護法違反、ライセンス違反、法改正への未対応

リスクアセスメントは、「定量的」または「定性的」に評価されます。

【2】リスクの分析(発生可能性と影響度)

次に、それぞれのリスクが「どれくらいの確率で起きて」「どれくらい深刻なのか」を評価します。

リスク内容発生可能性影響度備考
サーバーダウン中(年1回)業務が停止し、顧客に影響を与える
パスワード漏洩高(週1件)不正アクセスや情報漏えいにつながる
操作ミス復旧に時間がかかる可能性がある
停電電源喪失によりシステムが止まる
外部委託先のミス顧客情報流出や納期遅延に直結
法改正未対応指導・罰金のリスクがある

※ 評価は「低」「中」「高」の3段階で示しています(定性的評価)

【3】リスクの評価(優先順位づけと対策の判断)

分析結果をもとに、「どのリスクを優先して対応すべきか」を決めます。

リスク項目優先度対策例
パスワード漏洩★★★パスワードポリシーの強化、2段階認証の導入
サーバーダウン★★☆冗長構成(クラスタリング)、UPS導入
外部委託先のミス★★☆セキュリティ監査、契約書に情報保護条項を記載
操作ミス★☆☆操作マニュアルの整備、教育訓練
停電★☆☆非常用電源設備、クラウド利用による分散化
法改正未対応★☆☆定期的な法務チェック、法改正のモニタリング体制構築
  • 定量的評価:数値を使ってリスクを計算(例:年間で100回中5回事故が発生 → 発生確率5%)
  • 定性的評価:高・中・低などでリスクを分類

リスクマトリクス(テキスト形式)

markdownコピーする編集する影響度↓  発生可能性→     低(Low)      中(Medium)      高(High)
---------------------------------------------------------------
高(High)            中リスク         高リスク         最優先リスク(★)
---------------------------------------------------------------
中(Medium)          低リスク         中リスク         高リスク
---------------------------------------------------------------
低(Low)             許容可能         低リスク         中リスク

リスク(R)の数式表現: R=P×IR = P \times IR=P×I

  • R:リスク値
  • P:発生確率(Probability)
  • I:影響度(Impact)

例文

「会社のネットワークに新しい機器を入れる前に、リスクアセスメントをして安全性を確認した」

疑問

Q: リスクアセスメントとリスク管理(リスクマネジメント)はどう違いますか?

A: リスクアセスメントは「リスクを見つけて評価する」までのプロセスで、リスクマネジメントはその後の「対策を決めて実行する」までを含みます。

Q: リスクの影響度はどうやって決めるのですか?

A: 影響度は、業務への影響、金銭的損失、信頼の低下などを数値または評価で示します(例:高・中・低)。

Q: リスクアセスメントは誰が行うのですか?

A: 多くの場合、リスク管理担当者やプロジェクトマネージャー、セキュリティ担当者などが行います。

Q: 家庭や日常生活でもリスクアセスメントは使えますか?

A: はい、使えます。たとえば地震の備えや通学路の安全確認も、リスクアセスメントの一種です。

Q: リスクアセスメントを行うタイミングはいつが良いのですか?

A: 一般的には、新しいシステムの導入前、業務の変更時、定期的な点検時などに行うのが望ましいです。また、トラブルが発生した後にも、再評価のために実施されることがあります。

Q: リスクアセスメントの結果はどのように活用されますか?

A: リスクの優先度に応じて、対策の内容や順序を決めるために使われます。予算や人材の割り当てにも大きく関わってきます。

Q: すべてのリスクに対策をしなければならないのですか?

A: いいえ、発生可能性が低く影響も小さいリスクは、対策せず「許容する」こともあります。この判断もリスクアセスメントの一部です。

Q: リスクアセスメントをチームでやるメリットは何ですか?

A: 視点の異なる人たちが集まることで、見落としがちなリスクを発見できる可能性が高まります。例えば、IT担当だけでなく現場のユーザーからの意見も重要です。

Q: 子どもや家庭でもリスクアセスメントはどう使えますか?

A: たとえば、地震が来たらどうなるかを想像し、家具の転倒、避難経路、食料の備えなどを点検するのは立派なリスクアセスメントです。家族で一緒にやると理解が深まります。

理解度を確認する問題

問題:次のうち、リスクアセスメントに含まれるプロセスとして最も適切なものはどれか?

A. 事故が起きた後の報告書作成
B. 危険の特定と影響度の評価
C. 対策後の再点検
D. 保険への加入手続き

正解:B. 危険の特定と影響度の評価

関連論文や参考URL

「A Systematic Review of IT Risk Assessment Methods」

内容:ITにおけるリスクアセスメントの手法を20件以上比較し、それぞれの特徴(定量的・定性的)と実用性を評価しています。
結果:どの手法を使うかは、組織の規模やITの重要性によって最適なものが異なるとされています。

“A Comparative Study of Risk Assessment Methods in Information Security”

この論文は、情報セキュリティ分野で使われる複数のリスクアセスメント手法(例:OCTAVE、CRAMM、NIST SP800-30など)を比較したものです。
目的は、各手法の特徴、強み、弱点、適用しやすさを明らかにし、どのような場面でどの手法が適しているかを明確にすることです。

リスクアセスメント手法は一つに決まった正解があるわけではなく、組織のニーズやIT資産の重要性、規模、導入のしやすさによって選択すべきである。

多くの手法が「リスクの特定→分析→評価」という基本フレームワークを共通して持っているが、それを「どう実行するか」には違いがある。

「OCTAVE(オクターブ)」はユーザー参加型で中小企業に向いており、「NIST SP800-30」は米国政府や大企業向けのガイドラインに準拠した手法。

結果(研究の結論)
  • 汎用性が高いのはNIST SP800-30(国際的にもよく使われている)
  • 導入が簡単なのはOCTAVE-S(中小企業や非営利団体向け)
  • 定量的な分析に優れているのはCRAMM(コスト計算も含めた評価ができる)

また、リスクアセスメントの実施においては「文書化」「参加者の意識向上」「継続的な改善」が重要とされています。

まとめ

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