事業部制組織(Divisional Organization)

divisional-organization ストラテジ系

事業部制組織とは、「会社の中を商品や地域ごとに分けて、それぞれがミニ会社のように動くしくみ」のこと

簡単な説明

会社の組織を「職種(営業部・製造部・総務部など)」で分けるのが機能別組織です。 一方、「製品ごと」や「地域ごと」に会社を分けるのが事業部制組織です。

由来

もともとは製品ラインや地域が多様化した大企業で使われるようになりました。 1920年代、アメリカのゼネラル・モーターズ社(GM)がはじめて導入し、企業経営に革新をもたらしたとされています。

具体的な説明

事業部制組織は、会社を「事業部」という単位に分け、それぞれに「営業」「開発」「人事」などの機能を持たせることで、スピーディで自律的な経営ができるようになります。

例えば:

ソニー株式会社

  • テレビ事業部
  • ゲーム事業部
  • カメラ事業部
    それぞれが売上・利益・戦略を自分で考えて動くようになっています。

【会社全体:ABC株式会社】

├─ 本社(経営戦略・財務・人事など共通機能)

├─ 家電事業部
│ ├─ 営業部(テレビ・冷蔵庫などの販売)
│ ├─ 商品企画部(新モデルの企画)
│ ├─ 開発部(家電製品の設計・製造)
│ └─ 管理部(事業部内の経理・総務)

├─ 自動車事業部
│ ├─ 営業部(ディーラー対応)
│ ├─ 商品企画部(新車種の戦略)
│ ├─ 開発部(エンジン・車体設計)
│ └─ 管理部(原価管理・人事対応)

└─ 医療機器事業部
├─ 営業部(病院・クリニック対応)
├─ 商品企画部(新製品開発プラン)
├─ 開発部(装置設計)
└─ 管理部(法務・薬事対応など)

事業部制組織は分権化(権限の分散)を進めるための構造であり、M. Chandlerの「構造は戦略に従う(Structure follows Strategy)」という理論でも有名です。

  • 経営資源を柔軟に分配できる
  • 責任と成果が明確化される
  • 外部環境の変化に迅速に対応できる

という利点があります。

経営学の研究では、機能別組織と事業部制組織で「新製品の開発スピード」や「市場対応力」を比較したところ、多様な製品を持つ大企業ほど事業部制が効果的という結果が得られています。

「事業部制組織」以外にも、企業の組織形態にはさまざまな種類があります。

組織形態特徴適した企業規模・用途
機能別組織職能で部門分け小〜中規模、単一事業
事業部制組織製品・地域ごとに分ける中〜大規模、多角経営企業
マトリクス組織縦横で管理大企業、国際的な企業
プロジェクト型目的ごとの一時的チーム新規開発、スタートアップ系
カンパニー制事業部を会社のように独立させる超大企業、持株会社制企業

例文

「うちの会社は事業部制だから、ゲーム事業部は海外向けのマーケティングも自分たちでやってるんだ。」

疑問

Q: 事業部制組織はどのような企業に向いていますか?

A: 製品数が多く、異なる市場に対応する必要がある大企業や多角経営の企業に向いています。

Q: 事業部制のメリットは何ですか?

A: 意思決定が早くなる、自主性が高まる、事業ごとの利益責任が明確になる、などです。

Q: 事業部制のデメリットは何ですか?

A: 部門間の連携が弱くなったり、同じような機能(人事・経理など)が重複してコストが増えることがあります。

Q: なぜ機能別組織から事業部制に移行するのですか?

A: 市場や技術の変化にスピード感を持って対応するためです。特に新規事業やグローバル展開を行う際に有効です。

Q: 事業部ごとに独立採算制をとるのはなぜですか?

A: 各事業の収益性を明確にすることで、経営判断がしやすくなるからです。

Q: 事業部ごとに営業や人事があるのって、ムダじゃないの?

A: 一見ムダに見えますが、それぞれの事業部が「市場や顧客にすばやく対応できる」ようにするためです。
たとえば、カメラ事業部とゲーム事業部では、売り方も人の使い方も違うので、それぞれに最適なやり方ができる方が効率的なんです。

Q: なぜ中小企業ではあまり事業部制を使わないのですか?

A: 事業部制は、人や予算がある程度そろっていないと機能しにくいためです。中小企業では、組織が小さいため機能別組織の方がシンプルで運用しやすいことが多いです。

Q: 事業部同士がライバルになってしまうことはありませんか?

A: あります。実際、同じ会社の中で競争意識が強すぎて、協力しにくくなることもあります。
このような「事業部間の壁(サイロ化)」が起きないように、全社視点を持つトップの調整力がとても重要です。

Q: 本社の役割はどうなるのですか?事業部が全部やるなら本社はいらないの?

A: 本社は「全社の方針決定」「資源の配分」「ブランド管理」など、会社全体を統括する重要な役割を担っています。事業部に任せきりではなく、「会社全体の最適化」を図るのが本社の仕事です。

Q: 将来、1つの事業部だけ独立させることはできますか?

A: はい、事業部がある程度独立して機能している場合は、スピンオフ(会社分割)として新しい会社にすることも可能です。実際、パナソニックや日立などでは、事業部を独立させて別会社にした事例があります。

Q: 機能別組織とはどんな形ですか?

A: 営業・開発・人事・総務などの「職能」で部門を分ける方式です。
中小企業や単一の製品・サービスで構成される企業でよく使われます。
メリット:専門性が高まりやすい
デメリット:部門間の連携がとりづらい

Q: マトリクス組織とは何ですか?

A:
マトリクス組織は、「縦(機能別)と横(製品・地域など)」の両方で人や仕事を管理する組織です。
たとえば、ある社員が「営業部」に所属しながら「テレビ製品開発プロジェクト」にも関わるようなイメージです。
メリット:柔軟な人材活用
デメリット:上司が2人になりやすく、指示が複雑になる

Q: プロジェクト型組織とはどんなものですか?

A:
ある目的(例:新商品開発、イベント開催など)ごとに一時的にチームを作って運営する方式です。
プロジェクト終了後は解散します。
メリット:スピーディで自由な発想が活かせる
デメリット:プロジェクト外との調整が難しいことがある

Q: カンパニー制組織とは何ですか?

A:
会社の中に、別の「会社のような単位(カンパニー)」を設ける方式です。
事業部制をさらに進化させ、法的にも独立した利益責任や決済権限を持つようになります。
メリット:ほぼ完全に独立した経営判断ができる
デメリット:全体最適が難しくなる恐れがある

Q: 事業部制組織が非効率になることはありますか?

要因内容
部門間の壁(サイロ化)連携が取れず、情報や技術が分断される
機能の重複経理・人事・開発などのムダな重複
経営方針の不一致各事業部が自分の方向へ動きすぎる
全体最適の欠如グループとしての方向性が弱まる

理解度を確認する問題

問題:
事業部制組織の説明として最も適切なものはどれか。

A. 職種ごとに組織を分ける方法
B. 地域や製品ごとに会社を分けて運営する方法
C. プロジェクト単位でチームを組む方式
D. 外部の企業に業務を委託する体制

正解: B

関連論文や参考URL

「多角化企業における事業部制組織の有効性」(一橋ビジネスレビュー/2020年)

概要:
日本の製造業を中心に、事業部制がどのように利益率や市場対応に影響を与えたかを調査。

結果:
多角化した企業では、事業部制の導入により収益性が15%以上向上した事例が多く見られた。

解釈:
市場の変化に迅速に対応できる体制が整い、経営のスピードと責任明確化が成長を後押ししている。

「近年の日本企業における組織進化の考察:自己組織化の視点から」

概要: この論文では、1990年代以降の日本企業が、分散自律型の組織を目指して行った組織変革について、自己組織化の視点から分析しています。​バブル経済崩壊後の本社間接部門のスリム化から始まった組織改革が、指揮命令型組織の解体を促進し、新たな組織進化を遂げた過程を考察しています。​

主な結果: 日本企業は、自己組織化の過程を経て、より柔軟で自律的な組織形態へと進化していることが示されています。​この変革は、環境変化への適応力を高める効果があるとされています。​

解釈: 組織の自己組織化は、企業が外部環境の変化に迅速に対応し、持続的な成長を遂げるための重要な要素であることが示唆されています。

「Structures makes the world go around; financially?」

概要: この論文では、組織構造(事業部制、機能別、階層型、水平型、マトリクス型)が企業の財務パフォーマンス(総資産利益率、自己資本利益率、投下資本利益率)に与える影響を分析しています。​216社のデータを用いて、組織構造と財務指標の関連性を検証しています。​

主な結果: 組織構造が企業の財務パフォーマンスに直接的な影響を与えるという明確な証拠は見つかりませんでした。​ただし、業界や国といった要因が財務パフォーマンスに影響を与える可能性が示唆されています。​

解釈: 組織構造単独ではなく、業界特性や国の経済状況など、多様な要因が企業の財務パフォーマンスに影響を及ぼすことが示されています。

「Beyond the matrix organization」

概要: この論文では、マトリクス組織の欠点を検証し、より効果的な組織設計のアプローチを探求しています。​マトリクス組織が直面する課題や限界を指摘し、代替となる組織形態の可能性を考察しています。​

主な結果: マトリクス組織は、複数の上司への報告義務や意思決定の遅延などの問題を抱えており、これらを解決するためには、組織の目的や戦略に応じた柔軟な設計が必要であるとされています。​

解釈: 組織設計は一律ではなく、企業の戦略や環境に適した形態を選択し、必要に応じてカスタマイズすることが重要であることが示唆されています。

まとめ

事業部制組織とは、会社を製品や地域ごとに分け、それぞれが独立して経営を行う仕組みです。
意思決定が速くなる一方で、部門間の連携不足やコストの重複が課題となります。

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