業務の「公式な記録」を管理する中核システム のこと
簡単な説明
System of Record(SOR)とは、企業や組織にとって、業務上もっとも重要な「基幹データ(公式記録)」を保持・管理するシステムのことを指します。
たとえば:
- 人事情報(誰が社員か、給与はいくらか)
- 顧客情報(誰が取引先か、契約内容は何か)
- 受発注履歴や在庫記録(製造・物流系)
- 会計記録(売上、仕入、決算)
これらはすべて「公式で改ざんしてはいけない記録」=System of Record に該当します。
由来
「System of Record」という言葉は、1990年代後半〜2000年代初頭に、ガートナー(Gartner)社などのITアナリストによって広まった用語です。 当時、企業のITシステムが複雑化し、同じ顧客や社員の情報が複数のシステムでバラバラに管理されているという課題がありました。 そこで「どれが“正”の情報なのか?」「どのデータを信じるべきなのか?」という観点から、「公式な記録を管理する中核システム」として System of Record(記録の基準となるシステム) という考え方が導入されました。
具体的な説明
以下のような状況に対する解決策として「SoR」という概念が注目されました。
状況 | 問題点 |
---|---|
顧客データが複数の部署で管理されている | 情報が不整合・重複・古い可能性がある |
社員情報が給与システムと人事評価システムで異なる | どれが正しいのか判断できない |
在庫情報が販売・物流・会計でズレている | 管理が煩雑でミスが起こる |
これらの問題を解決するために、「この情報はこのシステムを“正”とする(= SoR)」という方針が必要になったのです。
SORは「データの信頼性・整合性・可用性・監査性」が強く求められるシステム群であり、企業ITアーキテクチャの「バックボーン(背骨)」として位置づけられます。
- トランザクションデータの正確性が重要(ACID特性)
- 一貫性を保つために厳格なアクセス制御
- 監査・法令対応(SOX法やGDPRなど)にも対応する設計がされる
似ている用語との違い
用語 | 説明 | 例 |
---|---|---|
System of Record(SOR) | 正式な記録・台帳を扱う中核システム | 人事・会計・在庫 |
System of Engagement(SOE) | 顧客やユーザーとの「接点」を管理するシステム | SNS、Webサイト、アプリ |
System of Insight(SOI) | 蓄積されたデータを分析し、洞察を得るためのシステム | BIツール、AI分析 |
例文
- 「給与情報はSystem of Recordに格納されており、HRシステムで一元管理されている。」
- 「マーケティング部門はSystem of Engagementを使ってキャンペーンを展開し、その結果をSORに記録する。」
疑問
Q: System of Recordとは何を管理するシステムですか?
A: 正式な業務記録(社員情報、会計記録、契約など)を一元的に保持・管理するシステムです。
Q: SORとSystem of Engagementの違いは?
A: SORは記録を保存するシステム、System of Engagementは顧客など「外部とのやりとり」を管理するシステムです。
Q: SORが重要視される理由は?
A: 組織の意思決定・法令順守・会計処理などにおいて、正確かつ変更履歴のあるデータが必要だからです。
Q: クラウド環境でSORを使う際の課題は?
A: データのセキュリティ、可用性、コンプライアンス(法的要件)への対応が課題となります。
Q: SORが更新されるタイミングとは?
A: トランザクション(購買、出荷、人事異動など)が発生したときに、リアルタイムまたはバッチで更新されます。
1: SORの情報はどうして「変更しにくく」なっているの?
A:
SORは、業務の「公式な記録」や「証拠」としての役割を持っているため、むやみに変更できないように設計されています。
- データベースでは「トランザクションログ」を保存し、誰が・いつ・何を更新したかを記録
- 会計記録や雇用情報など、監査や法令対応が必要なデータが多いため、変更履歴の保持が義務付けられることもあります
例:社員の退職日を変更するには、人事部の承認が必要など、ワークフローが設定されている場合があります。
Q2: どうして企業は「System of Record」と「System of Engagement」を分けるの?
A:
用途が違うからです!
用途 | SOR(記録) | SOE(接点) |
---|---|---|
情報の性質 | 正式記録(人事・会計など) | 顧客とのコミュニケーション |
目的 | 取引・契約の記録 | 顧客との関係構築・反応取得 |
例 | 給与計算システム | LINE公式アカウント、Instagram広告 |
Q5: 中小企業や個人事業主にもSORは必要?
A:
はい。組織の大小を問わず、業務に必要な「記録」を一元管理することは非常に重要です。
たとえば:
- 会計ソフト → 会計SOR(弥生会計、freeeなど)
- 顧客管理 → CRMとしてのSOR(Salesforce Essentialsなど)
- 勤怠・給与 → 人事SOR(SmartHR、ジョブカン)
Excelでの管理も可能ですが、自動バックアップやアクセス制限がないと「公式記録」としての信頼性が下がるため、専用のSORツール導入が望ましいです。
理解度を確認する問題
次のうち、「System of Record(SOR)」に該当するシステムとして最も適切なものはどれか?
A. TwitterなどのSNSシステム
B. 顧客との会話ログを保存するチャットツール
C. 売上や仕入のトランザクションを記録する会計システム
D. 商品を推薦するAIエンジン
正解:C
関連論文や参考URL
「A Secure Land Record Management System using Blockchain Technology」arXiv
- 概要: 本論文は、土地記録管理システムにおけるセキュリティと効率性の向上を目指し、ブロックチェーン技術を活用した新しい管理システムを提案しています。
- 結果: 提案されたシステムは、既存の紙ベースのシステムをデジタル化し、非対称暗号方式を用いて記録のプライバシーを確保しています。また、記録の完全性を保持し、土地取引のプラットフォームを提供することで、所有権変更のプロセスを大幅に迅速化しています。さらに、C2Iテーブルという新しい文字から整数へのマッピング手法を提案し、テキストから整数への変換におけるオーバーヘッドを約33%削減しています。
- 解釈: この研究は、ブロックチェーン技術を活用することで、土地記録管理の透明性、セキュリティ、効率性を向上させる可能性を示しています。特に、C2Iテーブルの
まとめ
System of Record(SOR)は、企業の公式な業務記録を保持・管理する中核システム。
ERP・CRM・人事・会計などに多く活用されている。
SOE・SOIと連携することで、企業全体のデジタル基盤が構成される。
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