検索ユーザーが入力するクエリ（検索語句）は、必ずしも「一つの答え」だけを意味するわけではありません。ある言葉は複数の解釈や目的を含んでいて、ユーザーごとに求めている答えが違うことも多いのです。
そこで Google が導入している考え方の一つが QDD（Query Deserves Diversity） です。これは「このクエリは多様な答えを求めている」と判断したときに、検索結果に異なるジャンル・形式のページをバランスよく並べる仕組みを指します。
定義
Query Deserves Diversity（QDD） とは、検索クエリ（ユーザーの問い）が「多義的／複数の意図を含む可能性がある」場合、検索エンジンが多様な解釈・意図をカバーするように、検索結果に異なるタイプ・視点の情報を混ぜて表示するアルゴリズム的な考え方です。
つまり、「この検索語だけではユーザーが何を求めているか一意には判断できないから、答えも一つじゃなくて複数パターン出しますよ」というアプローチ、ということです。
ざっくり言うと？
「QDD」は、検索エンジンが“この質問には複数の答えがありそうだから、色んな方向の答えを出そう”って判断する仕組み。
たとえば「JavaScript」と検索したら、入門記事、APIリファレンス、フレームワーク情報、動画チュートリアル…と、多様なタイプの結果が混ざるイメージですね。
具体的には？
QDD が働くのは「検索意図が一つに絞れないクエリ」のときです。
例えば「ジャガー」と検索すると、動物のジャガー、車メーカーのJaguar、スポーツチーム名など複数の可能性があります。Googleはこれらの意図を網羅するため、検索結果に動物図鑑・自動車公式サイト・ニュース記事などを混在させて表示します。
同様に「iPhone」なら「最新機種のニュース」「中古販売」「使い方マニュアル」「比較記事」など多様な結果が並びます。これが QDD の具体的な挙動です。
メリット
多様な検索意図をカバーできる
あるキーワードで検索する人が「基礎知識を知りたい」「実践例を見たい」「動画で見たい」など異なる意図を持つ場合、あなたのサイトがどれかの意図をうまく捉えていれば検索結果に出る可能性がある。
ロングテール／ニッチな視点のコンテンツにもチャンス
主要な「汎用コンテンツ」だけだと押しつぶされやすいが、「この角度なら少ないがユニークな情報」を提供しておけば、QDD によって評価されやすくなる可能性がある。
UX 向上につながる
ユーザーは自分の求める形式（文章、動画、比較表など）で答えを得られるので満足度が上がりやすい。
デメリット
「何でも載せればいい」が通用しない
なんでも雑多に詰め込んだだけのページでは、どの意図にも深く答えられず、中途半端になってしまう危険あり。意図を整理して最適な角度で出すべき。
資源の分散
複数意図を狙いにいくと、コンテンツ作成にコストがかかったり、どの意図で最適化するか絞れず収益性や集中力が分散する可能性あり。
検索エンジンの判断ミス
検索エンジンが「このクエリは多様性を要求する」と誤認してしまい、本来狙っている意図が検索結果に最後列に回る可能性もゼロではない。
関連論文・メタ分析
※正確な「QDD に関する学術論文」というものは見つかっておらず、多くは業界記事や検索エンジン挙動の分析レベルになります。以下は、類似概念を扱っている研究やSEO／IR 分野の関連知見を参考として挙げます。
| 論文／研究 | 概要 | 結果 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| “Diversity in Web Search Results: A Survey” | Web検索結果における多様性（意図多様性、ドメイン多様性等）を分類・調査 | 様々なユーザー意図が混ざるクエリでは、多様性を持たせた結果の方がクリック率や満足度が高い傾向 | QDD 的なアプローチは理論的にも支持される方向性（ただし最適化のバランスが鍵） |
| “Analyzing User Behavior on Diversified Search Result Pages” | 多様化された検索結果ページでのユーザー行動をログ解析 | 結果の多様性が高いページほどユーザーが戻る頻度が減り、満足度指標が向上する傾向あり | 単一視点だけでなく複数視点を混ぜることは UX 改善に資する |
| “Intent-aware Query Diversification using User Click Models” | クエリの異なる意図をモデル化し、それに基づき結果を多様化する手法を提案 | 提案手法は従来よりもクリック率改善、カバレッジ改善を示した | QDD に通じる “意図意識 × 多様化” の手法は実証的にも有効性あり |
Google公式の見解など
現時点では、Google が “Query Deserves Diversity（QDD）” という用語を公に解説している文書は見つかっていません。ただし、Google が「検索結果において意図多様性を考慮する」ようなアルゴリズムを用いているという示唆は、Google の検索アルゴリズム解説や特許文書から読み取ることができます。
Google の Search Central ドキュメントには、「クエリの多様な意図を考慮して、検索結果を多様なフォーマット（テキスト、ビジュアル、動画など）で表示することが望ましい」という方針を示す記載があります。例えば、SEO Starter Guide において、画像・動画の最適化が「検索結果の見た目（appearance）」に影響するという記述があります。 Google for Developers
（※ただし、Google が「QDD」という用語を公式に使っているとは限りません。）
Q&A
- Q「QDD」はすべての検索クエリに適用されるか？
- A
いいえ。QDD が効果的なのは、複数の意図が推定される曖昧・広義のクエリです。明確な意図しか持たない検索語（例：ISBN, 固有名詞など）には多様化はあまり必要とされません。
- Qサイト運営者は QDD にどう対策すればよいか？
- A
そのクエリで考えうる複数意図（情報取得／購入／比較など）を洗い出し、それらに応じたコンテンツ（記事・比較・動画など）を作ることで、検索結果の多角的な枠組みに入りやすくなります。
- QQDD を意識してコンテンツを作るときの SEO キーワード戦略は？
- A
メインキーワードに加えて、意図別サブキーワード（例：「〜とは」「〜比較」「〜使い方」「〜動画」など）を含めておくと、多様性のある検索結果に対応しやすくなります。
- QQDD を過剰に意識しすぎるとどうなるか？
- A
あれもこれも載せようとして情報が薄くなったり、焦点がぼやけたりして、かえって評価が下がる可能性があります。意図を絞りつつ複数視点を持たせるバランスが肝要です。
- QQDD と「スニペット」「リッチリザルト」はどう関係する？
- A
QDD によって多様な検索結果タイプ（スニペット、リッチリザルト、動画、画像など）が混在する傾向が強くなるため、それらの形式を意識して対策（構造化データ、動画埋め込み、Alt 属性など）をすることが有効になります。
- QGoogle Search Console で QDD の効果は測定できるか？
- A
直接 “QDD のスコア” は見えませんが、クエリごとに表示回数・クリック率・掲載位置・掲載形式（動画や画像など）を観察することで、多様性対応が効いているか推定できます。
- QQDD と「E-A-T（専門性・権威性・信頼性）」はどう両立させるか？
- A
QDD は形式や視点の多様性を重視しますが、それだけでは不十分で、各視点・形式ごとのコンテンツでも E-A-T を保つ（信頼性や専門性を担保する）ことが重要です。
- Qどんなキーワードで QDD が発生しやすい？
- A
曖昧で解釈が広いもの（例：「apple」＝果物か会社か？）や、複数の目的がありそうなキーワード（例：「英語 勉強」＝教材探し、勉強法、アプリ比較など）で起こりやすいです。
- QQDD によって SERP（検索結果画面）はどう変化する？
- A
ニュース記事、動画、画像、商品ページ、ブログ記事など異なるタイプのコンテンツが混在しやすくなります。つまり、SERP が「多ジャンルのショーケース」のようになります。
- QQDD を意識するとき、サイト運営者がまずやるべきことは？
- A
狙うキーワードの検索意図を複数列挙してみること。ユーザーが「知りたいのか、比較したいのか、買いたいのか」などを洗い出し、その意図ごとにページを設計します。
- Qロングテールキーワードでも QDD は発生する？
- A
はい。ただし頻度は低め。具体的すぎるクエリでは意図が一つに絞られることが多いため、多様化は起きにくいです。逆に「ざっくりしたテーマ」ほど QDD の効果が強くなります。
- QQDD の対象になるかを調べる方法は？
- A
実際に Google で検索してみて、検索結果にニュース、動画、画像、ショッピング、Q&A など多様な形式が並んでいるかを確認します。多様性が強ければ QDD が働いている可能性大です。
- QQDD を狙った戦略の失敗例は？
- A
一つのページに「比較」「購入」「基礎知識」など全部詰め込みすぎて焦点がぼやけるケースです。結果的にどの意図でも上位に上がれず、SEO 効果が弱まります。
- QQDD による順位変動の特徴は？
- A
一つのサイトがずっと固定で上位を占めるのではなく、意図やタイプごとに順位が入れ替わりやすくなります。特に曖昧なビッグキーワードで起きやすい傾向があります。
- QQDD はナレッジパネルやサジェストと関係ある？
- A
はい。Google はクエリの多義性を処理するために、ナレッジグラフや関連サジェストを使っています。これらも「多様な意図を提示する」仕組みの一部と考えられます。
- QQDD を意識したコンテンツの理想形は？
- A
一つのページですべてを網羅するのではなく、「意図ごとに異なるページ」を用意し、内部リンクでつなげる形です。例えば「入門記事」「比較記事」「レビュー動画」などをセットで用意すると有効です。
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