毎日の“いつもの行動”が、犯罪リスクを左右する理論のこと
簡単な説明
「ルーティン活動理論って、簡単に言うと“悪い人が出くわしたチャンス”のこと!
毎日いつも通り行動してる中で、悪い人が『あ、今ならいける!』ってなる瞬間があるって話だよ〜。
ゲームで例えるなら、宝箱あって、モンスターもいない、誰も見てない…ってときに盗む、みたいな感じ!」
由来
ルーティン活動理論(Routine Activity Theory)は、1979年にローレンス・コーエン(Lawrence E. Cohen)とマーカス・フェルソン(Marcus Felson)によって提唱されました。この理論は、犯罪の発生を「加害者の心理や動機」だけでなく、「日常の生活パターン」によって説明しようとする画期的なものでした。
元々、犯罪学では「犯罪者の特性」に注目するのが主流でしたが、ルーティン活動理論では、「犯罪は日常の中で偶然に起こる機会によって決まる」と考えました。
具体的な説明
ルーティン活動理論は、「人の行動パターン(たとえば通勤、通学、買い物など)」が犯罪の発生にどう影響するかを説明する理論です。
人々の生活が変わると、犯罪の機会も変わります。
たとえば、共働き家庭が増えると、昼間に家に誰もいない家庭が増え、空き巣のターゲットになりやすくなる、という考えです。
この理論では、次の3つの要素が同時に存在することで犯罪が起こるとされます:
- 動機ある加害者(motivated offender)
- 魅力的な標的(suitable target)
- 監視の欠如(absence of capable guardianship)
この3つが重なる時に、犯罪は発生しやすくなります。
例えば、無人の駐車場に高級車(魅力的な標的)があって、監視カメラも人もいなければ(監視の欠如)、盗難を狙う犯人(動機ある加害者)が行動に出る可能性が高くなる、ということです。
ルーティン活動理論は、古典的犯罪学やラショナル・チョイス理論と関係しています。特に、**状況的犯罪予防(situational crime prevention)**との結びつきが強く、犯罪の機会そのものを減らすことで犯罪率を下げるアプローチに繋がります。
この理論では、「犯罪機会の構造的要素」に注目し、犯罪者の性格や過去の経験よりも、**その場の条件(コンテクスト)**を重視します。
これは心理学の「状況論的視点(situational approach)」とも関係します。
例文
毎朝決まった時間に通学していたA君は、帰宅時間が遅くなった日にカバンを盗まれてしまいました。普段と違うルーティンにより、「監視の目がない道+高価なゲーム機を持ったA君+近くにいた犯人」が揃ってしまったのです。これはルーティン活動理論で説明できます。
疑問
Q: ルーティン活動理論は犯罪者の心理や性格は重視しないのですか?
A: はい、この理論では「犯罪者の内面」よりも「状況や機会」に重点を置きます。もちろん加害者の動機は前提にありますが、それよりも環境要因の組み合わせに注目します。
Q: ルーティン活動って具体的にどんなものですか?
A: 通勤、通学、買い物、外食、旅行など、日々の決まった行動パターンがルーティン活動にあたります。
Q: 監視の欠如とは何ですか?
A: これは「見張る人がいない」「警備が甘い」「監視カメラがない」など、犯罪の抑止力が働かない状態を意味します。
Q: 対策としては何が有効ですか?
A: 防犯カメラの設置、地域の見回り強化、住宅のセキュリティ強化など「監視力の強化」が有効です。
Q: ルーティン活動理論はどの犯罪に特に適用されますか?
A: 住宅侵入盗、自転車盗難、ひったくり、車上荒らしなど、日常生活と関連の深い犯罪でよく使われます。
Q: ルーティン活動理論はどのように防犯対策に活かせますか?
A: この理論に基づくと、犯罪の発生には「加害者」「標的」「監視の欠如」の3要素が必要です。したがって、例えば「監視カメラを設置する」「照明を明るくする」「地域で見回りをする」などにより“監視の目”を強化すれば、犯罪が起きにくくなります。また、貴重品を見えるところに置かないようにすることで“魅力的な標的”になることを防ぐことも有効です。
Q: ルーティン活動理論と犯罪心理学におけるプロファイリングはどう違うのですか?
A: ルーティン活動理論は「犯罪の環境・機会」に注目する理論であり、個人の性格や内的要因にはあまり関心を持ちません。一方、プロファイリングは「犯人像の心理的・行動的特徴」を分析する手法です。つまり、ルーティン活動理論は「なぜ今ここで起こったか」に注目し、プロファイリングは「どんな人物が犯行に及んだか」に注目します。
Q: 犯罪率が高い地域とルーティン活動理論にはどのような関係がありますか?
A: 犯罪率が高い地域では、「魅力的な標的が多い」「監視が不十分」「動機を持つ人が多い」といった要素が集中している場合が多いです。例えば、街灯が少なく監視カメラもない地域で、貴重品を持ち歩く人が多ければ、犯罪のリスクは高まります。ルーティン活動理論は、このように地域特性と犯罪発生の関係を分析する際にも有用です。
Q: この理論は暴力犯罪や組織的犯罪にも適用できますか?
A: 基本的には、日常的な機会犯罪(窃盗・侵入盗・ひったくりなど)への説明に強い理論ですが、状況によっては暴力犯罪にも当てはまります。例えば、監視のない場所で口論が起こりやすい環境があるとすれば、それは暴力事件の発生につながる可能性があります。ただし、計画的な組織犯罪には他の理論(たとえばラショナル・チョイス理論や社会構造理論)との併用が望ましいです。
Q: 現代社会の変化(リモートワークやスマホの普及など)はルーティン活動理論にどう影響しますか?
A: 例えば、リモートワークが普及すると「日中に家に人がいる」家庭が増えるため、空き巣のリスクは減るかもしれません。一方で、スマホ利用の増加により「注意力が下がった歩行者」が増えると、スリやひったくりのリスクが高まる可能性もあります。このように、生活様式の変化は犯罪の機会構造を変えるため、ルーティン活動理論の視点からの分析が有効です。
Q: ルーティン活動理論を使って都市設計に活かすことはできますか?
A: はい、できます。たとえば、犯罪の起こりやすい「死角」を減らす設計(防犯設計:Crime Prevention Through Environmental Design=CPTED)は、ルーティン活動理論と相性が良いです。人通りの多い道に照明を設置したり、公共空間に監視カメラを導入したりすることで、犯罪発生の三要素の一つ「監視の欠如」をなくすことができ、犯罪の抑止につながります。
Q: 子どもや高齢者を対象とした犯罪とルーティン活動理論の関係はありますか?
A: 子どもや高齢者は「魅力的な標的」になりやすいと考えられます。また、移動が限られていたり、注意力が低下していたりすることで、自分を守る力(自己防衛力)が弱いとも言えます。周囲に監視の目がなければ、犯罪者にとって「チャンス」となります。このため、通学路の見守り活動や高齢者宅の訪問活動など、社会的監視の強化が非常に重要になります。
Q: 加害者側の「動機」はこの理論ではどう扱われているのですか?
A: ルーティン活動理論では、「動機ある加害者」の存在は前提とされていますが、その“動機がなぜ生まれたのか”について深く分析はしません。つまり、「やる気のある犯人は常に存在するもの」と仮定して、その上で犯罪を実行できる“機会”があるかどうかに注目するのがこの理論の特徴です。
理解度を確認する問題
次の場面のうち、ルーティン活動理論における「犯罪が起こりやすい状況」はどれか?
A. 犯人がいても、防犯カメラがあり人通りも多い
B. 高級品を持った人がいても、警備員が常に巡回している
C. 高価な自転車が放置され、周囲に人もカメラもいない
D. 通学路に交番があり、見守り隊が立っている
正解:C. 高価な自転車が放置され、周囲に人もカメラもいない
関連キーワード
- 犯罪機会理論(Opportunity Theory)
- 状況的犯罪予防(Situational Crime Prevention)
- 犯罪地理学(Environmental Criminology)
- 生活パターン(Routine Pattern)
- 加害者の意思決定(Rational Choice)
関連論文
Cohen, L. E., & Felson, M. (1979). Social Change and Crime Rate Trends: A Routine Activity Approach. American Sociological Review, 44(4), 588-608.
概要:
この研究では、アメリカの犯罪統計を用いて「日常生活の変化(特に共働き世帯の増加)」がどのように犯罪の増加と関係しているかを分析しました。
結果:
「家庭の無人化」→「監視の目がない」→「空き巣増加」など、犯罪の機会構造が大きく変化したことが示されました。
覚え方
覚え方:「ルーちゃん、ドキドキ!ターゲット発見、見張りゼロ!」
- ルー(ルーティン活動)
- ドキ(動機ある加害者)
- ターゲット(魅力的な標的)
- 見張りゼロ(監視の欠如)


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