「犯罪は“人の性格”だけでなく、“場所や環境”にも原因がある!」と考える学問のこと
簡単な説明
犯罪って、悪い人が突然ポンとやるって思われがちだけど、「やりやすい場所」があると、誰でもつい…ってことがあるんだよね。
環境犯罪学ってのは、「どうすればそんな場所を減らせるか?」をガチで研究する分野。防犯カメラとか、明るい街灯とか、ゴミのない道とか、全部この考えに基づいてるってわけ!
由来
環境犯罪学は1970年代以降、アメリカやイギリスで発展してきた比較的新しい分野です。従来の犯罪学が「犯人の心理」や「社会的背景」に注目していたのに対して、「犯罪が起こりやすい場所」や「時間帯」「空間の特徴」など、犯罪が発生する“環境”に焦点を当てたのが特徴です。
代表的な理論としては以下のものがあります:
- ルーティン活動理論(Routine Activity Theory)
- 犯罪機会理論(Opportunity Theory)
- 割れ窓理論(Broken Windows Theory)
- 犯罪予防環境デザイン(CPTED:Crime Prevention Through Environmental Design)
具体的な説明
環境犯罪学では、「犯罪は偶然起こるものではなく、“条件がそろったとき”に発生する」と考えます。たとえば、「人通りが少ない路地裏」「監視カメラがない駐車場」などは、犯罪が起きやすい環境です。
そのため、犯罪を減らすには、犯人の心理だけでなく「環境を工夫する」ことが重要とされます。
環境犯罪学は、犯罪の「空間的」「時間的」「社会的」な配置に焦点を当て、犯罪機会の構造的要因を理論的に探る分野です。
例:ルーティン活動理論(Cohen & Felson, 1979)
→ 犯罪は、①やる気のある加害者(motivated offender)、②適切な標的(suitable target)、③監視者の不在(absence of capable guardianship)の3要素が同時に揃ったときに発生する。
例文
コンビニの前にゴミが散らかっていて、暗くて誰もいないと、たばこのポイ捨てやいたずらが増える。これは環境が犯罪を誘っている例で、環境犯罪学が示す「犯罪の起こりやすい状況」です。
疑問
Q: 環境犯罪学は加害者の性格や動機を無視しているのですか?
A: 無視しているわけではありませんが、それよりも「犯罪の起こりやすい場所や状況」に注目しています。
Q: どんな場所が犯罪を引き起こしやすいのですか?
A: 人の目が届かず、逃げやすい場所や、管理がされていない場所が危険です。
Q: 割れ窓理論は本当に効果があるのですか?
A: ニューヨーク市などでは軽犯罪の取り締まりで重大犯罪が減ったという実績があります。ただし批判もあります。
Q: 犯罪者が計画的に犯罪を行う場合も環境は関係ありますか?
A: はい。計画的であっても、「狙いやすい場所」があるとそこを選びやすくなるという研究があります。
Q: 環境犯罪学は都市設計とどのように関わっていますか?
A: 環境犯罪学は「犯罪が起きにくい街づくり」を目指す都市設計と密接に関係しています。たとえば、人通りの見える場所に公園を設置したり、死角を減らす設計を行うことで犯罪を未然に防ぐ工夫がされています。
Q: 犯罪予防環境デザイン(CPTED)とは何ですか?
A: CPTEDは「環境をデザインすることで犯罪の発生を防ごう」という考え方で、照明の工夫、視認性の向上、出入り口の管理などが含まれます。これにより犯罪のチャンスを減らします。
Q: 地理情報システム(GIS)はどのように使われますか?
A: GISは犯罪が起きた場所のデータを地図上で可視化するツールです。これにより、犯罪のホットスポット(多発地帯)を分析し、重点的な対策を講じることができます。
Q: 環境犯罪学は感情や衝動的な犯罪にも対応できますか?
A: 一部の衝動的な犯罪に対しても、環境が影響していることがあります。例えば、混雑した駅や暗くて不安を感じる道などは、衝動的な暴力が起こりやすくなるため、環境の改善は効果的です。
Q: 環境犯罪学は少年犯罪にも効果がありますか?
A: はい。少年が集まりやすい場所(公園、商業施設など)での監視や照明、利用者の見守りなどの環境整備は、非行や犯罪の予防に有効であることが多くの研究で示されています。
理解度を確認する問題
次のうち、環境犯罪学の考え方に該当するものはどれか。
A. 犯罪はすべて個人の性格によって決まる
B. 犯罪は遺伝によって予測できる
C. 犯罪は状況や環境によって誘発される
D. 犯罪は精神疾患の有無によって判断できる
正解:C
関連キーワード
- ルーティン活動理論
- 割れ窓理論
- 犯罪機会理論
- 空間犯罪学
- 犯罪予防環境デザイン(CPTED)
- 防犯政策
- セキュリティ心理学
- 地理情報システム(GIS)と犯罪分析
関連論文
「Disorder Policing(無秩序対策)による犯罪抑制」
概要
- 対象:56件の研究、59回の介入評価。同分野では過去最大規模。
- 比較対象:コミュニティ問題解決型 vs 攻撃的秩序維持型。
結果
- 全体効果:犯罪が平均 26.2% 削減(log RIRR ≈ 0.233, p < .001)。
- 暴力犯罪:約23.4%減
- 財産犯罪:約31.1%減
- 逸脱・薬物関連:約23.9%減
- 波及効果(周辺地域):犯罪がさらに約24.1%減少。
- 介入タイプ別:
- コミュニティ問題解決型 → 約33.1%犯罪抑制(log RIRR≈0.286, p < .001)
- 攻撃的秩序維持型 → 有意な効果なし(log RIRR≈0.090, 有意水準外)。
- ホットスポット vs 広域エリア:
- ホットスポット地域での問題解決型 → 約33.9%減
- 広域エリア → 約18%減。
解釈
- 軽微な秩序維持だけでは不十分で、地域社会と協働した問題解決的アプローチが犯罪抑制に最も有効です。
- ホットスポットへの狙い打ちはさらに効果的。
- 周辺地域にも効果(ディフュージョン)が波及し、犯罪抑制の範囲が広がります。
「The Greening of Environmental Criminology」(Girling et al., 2025)
概要
- 英国マクルズフィールドでの定性調査と住民インタビューにより、”ディスオーダー(秩序の乱れ)”の意味が変化。
- 90年代とは異なり、「ゴミ、ポイ捨て、放置建築、道路の荒廃など」への認識が深まり、“慢性的な害”と捉える新観点を提示。
結果
- 住民は秩序の崩れを「ただの軽犯罪」ではなく、無視できない地域の風土的問題と認識。
- 環境犯罪学は、今後グリーンクリミノロジー(環境と犯罪の接点)と統合し、環境保護・都市インフラ・地域安全の視点も取り込む必要ありと結論。
解釈
- 環境犯罪学の焦点は「犯罪環境」からさらに広がり、都市の“環境健全性”と市民感覚に基づく安全保全へと進化中。
- 都市再生・環境政策と犯罪対策が一体化すべき未来像が示されています。
「Temperature, Crime, and Violence: A Systematic Review and Meta‑Analysis」
概要
- 83件の研究を対象に、PRISMA に従ったシステマティックレビュー+メタ分析(1946–2023年)。
- 暑さと犯罪件数の短期関連を調査。
結果
- 暴力犯罪:短期平均気温が10°C上昇すると、暴力犯罪リスクが9%増加(95% CI 7–12%)。
- 強姦・窃盗・侵入などの関連は、一部不一致あり。
解釈
- 「熱は暴力を増す(heat‑aggression)」仮説を支持。
- routine activity theory と照応し、気温上昇によってアウトドア活動が増え、犯罪機会も高まる可能性が大きい。
- 一方で、財産犯罪との関係は混在し、温度と犯罪のタイプ別関連の解明が引き続き必要。
覚え方
「環境犯罪学=『場所が犯人をつくる!』」
→ 性格じゃなくて、“場所のせい”で悪いことが起きるって覚えよう!


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