音や感覚をまねた言葉のこと
簡単な説明
オノマトペってのは、「なんか音とか気持ちをそのまんま言葉にしちゃうやつ」だよ!
たとえば、犬が「ワンワン」って言ってるのとか、心臓が「ドキドキ」してるとか、めっちゃあるじゃん?
それ、オノマトペ。日本語はそういうの超得意!マンガとかアニメ見てたらいっぱい出てくるよね〜!
由来
「オノマトペ(onomatopoeia)」は、ギリシャ語の「onoma(名前)」と「poiein(作る)」から来ています。つまり「名前を作る」という意味で、自然の音や人の感情・動作などを音で表現した言葉です。
具体的な説明
オノマトペは、言葉では伝えにくい音・感覚・感情を、直接的・直感的に伝える役割を持っています。たとえば「ワンワン(犬の鳴き声)」「ドキドキ(心臓の高鳴り)」「キラキラ(光る様子)」などがあります。
日本語は世界でも特にオノマトペが豊富な言語で、約4,500種類以上のオノマトペがあるとされています。会話、マンガ、文学、広告など、さまざまな場面で使われています。
心理学では、オノマトペは「象徴機能」と「感覚知覚の媒介」として注目されます。特に、音象徴(sound symbolism)という分野で研究が進められ、ある音と意味の間に非恣意的な対応があるとされています。
たとえば、「キラキラ」という言葉には高い周波数の音(明るく・軽い印象)が含まれており、視覚的な光のきらめきと対応しています。これは音と感覚の結びつきが文化や言語に関係なく共通している可能性があることを示唆します。
具体的な実験や観察手法と結論
▶ 有名な「ブーバ・キキ効果」(Bouba-Kiki Effect)
実験者:ヴォルフガング・ケーラー(1929年)、後にV.S.ラマチャンドランらが再検証
方法:
- 2つの図形(1つは角ばっている、もう1つは丸い)を見せ、
- それぞれに「ブーバ(Bouba)」と「キキ(Kiki)」という名前を付けてもらう。
結果:
- 多くの人が、角ばった形を「キキ」、丸い形を「ブーバ」と名付けました。
結論:
- 特定の音と形の間に直感的なつながりがあると考えられる。
- オノマトペは人間の感覚認知と深く関係している。
例文
「お腹がぐーぐー鳴ってきたから、何か食べようか。」
→この「ぐーぐー」は、腹が鳴る音をそのまま表したオノマトペです。
疑問
Q: オノマトペはどの心理学の分野で研究されますか?
A: 主に言語心理学、発達心理学、認知心理学の分野で研究されます。
Q: オノマトペは文化によって異なりますか?
A: はい、文化や言語ごとに使われるオノマトペは異なりますが、音象徴には共通する傾向もあります。
Q: 赤ちゃんはオノマトペを早く覚えるのですか?
A: はい。オノマトペは音と意味が結びついているため、赤ちゃんにとっても覚えやすいと言われています。
Q: オノマトペを使うと記憶に残りやすいですか?
A: はい。感覚に訴えるため、記憶や学習効果が高まることが研究で示されています。
Q: オノマトペは心理療法にも使われるのですか?
A: 一部では表現療法(アートセラピー)や語彙感情訓練などで使われることがあります。
Q: オノマトペは脳のどの領域と関係していますか?
A: オノマトペは主に音声処理を行う側頭葉(特に上側頭回)と、感覚統合を担う前頭前野が関係しています。また、感情処理に関係する扁桃体も活性化されることがあり、言語処理だけでなく情動や感覚認知にも関係していることが示唆されています。
Q: オノマトペの理解は、発達段階に影響されますか?
A: はい。発達心理学の研究では、乳児期から幼児期にかけてオノマトペは語彙の習得を助ける役割を果たすことがわかっています。特に、1歳〜2歳ごろの子どもはオノマトペに敏感で、「ワンワン」「ブーブー」などを早期に理解・使用する傾向があります。これは音と意味の直感的な対応が理解を助けるためと考えられています。
Q: オノマトペは感情の理解にどう役立ちますか?
A: オノマトペは感情状態を直感的に表現できる手段です。「イライラ」「ワクワク」「ズーン」など、言語化が難しい心の動きを音で補えるため、感情認識の精度や共感能力を高める効果があるとされます。心理療法では、クライアントの感情を言語化する手助けとしてオノマトペが利用されることもあります。
Q: オノマトペは記憶にどのような影響を与えますか?
A: オノマトペは感覚や情動に訴えるため、意味記憶やエピソード記憶の定着率を高める効果があります。たとえば、「サラサラ」「ガチガチ」などの語を使った記憶材料は、抽象語だけよりも記憶されやすいことが実験で確認されています。これは**マルチモーダルな符号化(音・意味・感覚)**が起こるためと考えられます。
Q: 言語にオノマトペが豊富な文化と少ない文化の違いには、心理的な特徴がありますか?
A: 興味深いことに、オノマトペの多い言語(日本語など)では感覚や感情を繊細に表現する文化傾向があるとされます。一方で、オノマトペの少ない言語文化では抽象的・論理的な表現が好まれる傾向があります。これは言語と認知スタイル(感覚主導 vs 論理主導)との関連を示唆しており、文化心理学の重要な研究テーマでもあります。
Q: 音象徴は言語発達のどの段階で有効に働き始めるのですか?
A: 最新のメタ分析(Fort et al., 2018)によれば、音象徴の影響は生後4ヶ月から見られますが、2歳以降で顕著に語彙習得を支援するようになります。特に「ワンワン」「キラキラ」などのオノマトペは、視覚・聴覚・運動といった感覚と直結しているため、言葉の意味を学ぶ「手がかり(セマンティック・ブートストラップ)」として働くと考えられています。
Q: なぜオノマトペは記憶に残りやすいのでしょうか?
A: Sidhuらのレビュー(2024)では、オノマトペが音と意味の連合(音象徴)を持つため、抽象語に比べて記憶保持率が高いと述べられています。また、ERP(事象関連電位)研究では、オノマトペが早期(100ms台)に形式的処理を起こし、後期(600ms〜)まで意味処理が続くことがわかっており、段階的・持続的に脳が反応することも記憶への寄与を裏付けます。
Q: オノマトペは脳のどの部位と関係がありますか?
A: Catricalà & Guidi(2022)の神経研究によれば、オノマトペは**上側頭回(音声処理)、帯状回(注意制御)、前頭前野(統合判断)などを活性化させます。特に、複数の感覚を統合する「多感覚統合(cross-modal integration)」が活発であることから、オノマトペは単なる言語刺激ではなく、「五感に訴える刺激」として処理されることが示唆されています。
Q: 言語によってオノマトペの使用や音象徴は異なりますか?
A: 文化や言語体系によって、オノマトペの量・構造・使用頻度は異なりますが、「丸い音=柔らかい」「鋭い音=硬い」などの音象徴は言語を超えて共通して見られることが、28言語を対象とした多文化調査(Ramachandranらによる再現研究)でも報告されています。これにより、音と意味の直感的結びつきは人類共通の認知傾向だと解釈されています。
Q: オノマトペの処理は通常の語彙処理と異なる認知過程をたどるのですか?
A: EEG研究では、オノマトペが100〜200msの「初期音響処理」、N400の「意味処理」、そして600ms以降の「文脈再評価処理」と、段階的に処理されていることが示されています。特にオノマトペは、通常の語と比較して意味と音が密接にリンクしているため、脳はより早く・強く反応し、視覚や感情と結びつけて理解することがわかっています。
理解度を確認する問題
次のうち「音象徴(sound symbolism)」の例として最も適切なものはどれか?
A. モチベーション理論
B. スキナーのオペラント条件づけ
C. ブーバ・キキ効果
D. ワーキングメモリの容量
正解:C
関連キーワード
- オノマトペ(擬音語・擬態語)
- 音象徴(Sound Symbolism)
- ブーバ・キキ効果
- 言語発達
- 感覚認知
- 表現療法
関連論文
Symbouki: A Meta‑Analysis on Sound Symbolism in Early Language Acquisition (Fort et al., 2018)
- 概要: 幼児(4〜15ヶ月)を対象とした11件(425名)の研究を統合したメタ分析です。
- 結果:
- 音象徴(onomatopoeticな音の形–意味対応)は中程度の有意な効果を示しました。
- 年齢が低い(4〜15ヶ月)と効果が小さく、2歳以降に効果が増大。
- 例:「kiki–bouba」型の一致感は年齢とともに明瞭に発現する。
- 解釈: 幼児期の感覚的言語獲得において、音象徴が語彙学習の支え(ブートストラップ)として機能しているとすれば、その影響は言語発達の初期段階から見られ、3歳以降で構造が安定する可能性が示唆されます。
Sound Symbolism in the Lexicon: A Review of Iconic‑Systematicity (Sidhu, 2024)
概要: 言語の基本語彙における音象徴の系統的・象徴的機能をレビューした論文です。
結果:
- 音の物理特性(例:丸音/尖音)と語彙中の形象との対応が広く見られる。
- 「maluma/takete」効果が英語語彙にも存在しており、/m/や/u/が丸さを連想し、/k/や/ɪ/が尖りを連想する傾向が示されました。
解釈: 音象徴は単なる「子音や母音の響き」に留まらず、意味論的にも体系的に構造化された言語システムの一部として機能していると評価されます。
Neural Basis of Sound‑Symbolic Crossmodal Correspondence (Catricalà & Guidi, 2022)
- 概要: 音形対応(例:オノマトペ)に関する神経基盤を、fMRIなどで調査した研究です 。
- 結果:
- オノマトペ処理時には聴覚・視覚・感覚統合に関わる脳領域(超側頭回、帯状回など)が活性化しました。
- 解釈: オノマトペは多感覚を横断するマルチモーダルな認知処理を引き起こし、単なる音の模倣ではなく、感覚統合としても機能していることが裏付けられます。
Electrophysiological Signatures of English Onomatopoeia (EEG研究)
概要: 英語話者にオノマトペと他の一般語を提示し、ERP(事象関連電位)を計測した実験です 。
結果:
- 100–200 msの早期成分で形式的処理の差異が、300–500 ms(N400)で意味処理の差異が確認されました。
- 遅発成分(600–900 ms)は後処理に関与している可能性。
解釈: オノマトペは形式面から意味面まで異なる認知処理を段階的に誘発し、通常語とは処理軸が異なることを示しています。
覚え方
「お腹がグー、心がドキドキ、表現するのがオノマトペ」
→「音で感じる=オノマトペ」とリズムで覚えましょう。


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