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アイコニックメモリ(iconic memory)

iconic memory 神経・生理
iconic memory

「目に見えた情報が一瞬だけ残る記憶」のこと

簡単な説明

見たものが、ほんの一瞬だけ脳に残るやつ。
チラ見でも「なんか覚えてる気がする」ってやつ、それ。
すぐ消えるけど、判断とかリアクションにめっちゃ使われてる!

超ざっくり言うと、脳の一瞬メモ機能!

由来

「アイコニックメモリ」という用語は、アメリカの心理学者ユリック・ネイサー(Ulric Neisser)らによって提唱され、視覚情報に限定された「感覚記憶(sensory memory)」の一部として定義されました。

具体的な説明

人間の五感のうち「視覚」からの情報は膨大ですが、それを全部記憶していたら脳がパンクしてしまいます。
だから、ほんの一瞬だけ記憶にとどめて、その後、必要なものだけが短期記憶へ移されます。

アイコニックメモリは、その「選別の前段階」にあたる大切な記憶です。

アイコニックメモリは、視覚から入った情報がごく短時間(約0.5〜1秒間)だけ頭の中に残っている記憶のことです。
この記憶は意識しないうちに消えてしまいますが、次の行動に移るまでの「つなぎ」として重要です。

たとえば、雷が光ったあとに目の中に残像が残るような現象も、アイコニックメモリの一種と考えられます。

例文

「今、相手のパスカットしたとき、よく後ろに味方がいるのわかったね!」
「うん、ボール来る前にパッと見えたんだよね。誰かいた気がして。」
「それ、アイコニックメモリだよ。見た映像が一瞬だけ頭に残ってて、それを使って判断してたんだよ。」

疑問

Q: なぜアイコニックメモリはすぐに消えてしまうのですか?

A: 大量の視覚情報を一時的に処理するための「一時保存スペース」なので、すぐ消えるのが普通です。必要な情報だけが短期記憶に移されます。

Q: アイコニックメモリと短期記憶の違いはなんですか?

A: アイコニックメモリは0.5〜1秒程度で消える「無意識の記憶」で、短期記憶は意識的に保持されるもので15〜30秒程度持続します。

Q: アイコニックメモリは誰でも使っているのですか?

A: はい、全ての健常な人が日常的に使っています。意識しなくても働いています。

Q: 聴覚にも似たような感覚記憶がありますか?

A: はい、「エコー記憶(echoic memory)」と呼ばれ、聴覚情報が数秒間記憶に残る現象です。

Q: アイコニックメモリは訓練で伸ばせますか?

A: 一時的記憶なので基本的には訓練しても持続時間は伸びませんが、注意の向け方で記憶効率は改善されます。

Q: アイコニックメモリと「残像」との違いは何ですか?

A: 「残像」は網膜の物理的な残り(光の刺激が消えても網膜がしばらく反応し続ける現象)であり、生理的な現象です。一方、アイコニックメモリは心理的な記憶システムで、脳が一時的に視覚情報を保持しているものです。似ているようで仕組みが異なります。

Q: 子どもや高齢者ではアイコニックメモリに違いがありますか?

A: 一般的に、加齢により感覚記憶の保持時間が短くなる傾向があります。子どもでは比較的保持時間が長いことが多く、発達段階による違いがあるとされています。

Q: アイコニックメモリはどの脳部位と関係していますか?

A: 主に後頭葉の視覚野(V1など)が関与していると考えられています。これらの部位は視覚情報の最初の処理を担っており、感覚記憶の保持にも関わっています。

Q: アイコニックメモリの容量はどれくらいですか?

A: スパーリングの実験によれば、一瞬で10〜12個の視覚的情報を保持可能だとされます。しかしその情報は急速に消失し、意識的には4〜5個程度しか思い出せません。

Q: アイコニックメモリは注意を向ける前でも働いていますか?

A: はい、注意を向ける前から働いています。感覚記憶は「無意識的」な段階の記憶であり、私たちが意識して注意を向ける前に自動的に働いています。

Q: アイコニックメモリの保持時間はどうやって測るのですか?

A: 主に呈示時間を変えた視覚提示課題や、スパーリングのような提示後に指示を出す実験方法によって、情報の保持時間や容量が測定されます。

Q: デジタル機器の使いすぎでアイコニックメモリは影響を受けますか?

A: 直接的な影響はまだ明確にわかっていませんが、注意の分散や視線の動きの変化がアイコニックメモリの活用効率に影響する可能性はあります。
集中力が続かない場合は記憶の選別に支障が出ることも考えられます。

Q: プロアスリートはアイコニックメモリが優れているのですか?

A: はい、多くの研究でプロアスリートは一般人に比べて視覚情報を素早く正確に取り出す能力が高いことが示されています。アイコニックメモリ自体の持続時間に大差はありませんが、その後の情報処理能力(注意の向け方、選別、記憶の転送)が優れています。

Q: プロアスリートはどのようにアイコニックメモリを活用しているのですか?

A: 競技中に瞬間的に状況を把握する場面(例:サッカーで味方の位置、バスケで相手のディフェンス)では、一瞬の視覚情報をもとに即時判断を下す必要があります。アイコニックメモリを素早く使い、その情報を短期記憶や運動計画に結びつけていると考えられています。

Q: アイコニックメモリ自体にトレーニング効果はありますか?

A: アイコニックメモリの「保持時間」自体は神経生理的に決まっていて伸びませんが、情報の取り出し速度や正確さ、注意の向け方はトレーニングで向上します。アスリートはこれを繰り返し鍛えているため、見た瞬間に必要な情報を素早く捉えられるのです。

Q: 具体的にどんな競技でアイコニックメモリが重要なのですか?

A: 特に球技系スポーツ(サッカー、バスケ、テニス、野球など)や格闘技で重要です。
たとえばテニスでは、相手のラケットの角度や体の向きを一瞬で判断して返球の準備をします。
この時、目に入った視覚情報をすぐに「記憶→認知→運動」へと変換する必要があります。

Q: 一般人とアスリートでアイコニックメモリの量(容量)に違いはありますか?

A: 保持できる視覚情報の物理的な量はほぼ同じと考えられています(約10〜12個程度)。
違いは、保持された情報の中から「何を選んで使うか」「どれを無視するか」の判断速度や精度にあります。つまり「選別の質」に差があります。

Q: アスリートのアイコニックメモリを鍛えるような訓練法はありますか?

A: はい、ビジュアルトラッキング(視覚追跡)トレーニングや、瞬間視(tachistoscopic training)、スポーツ用ビジョントレーニングなどがあります。
例:画面に一瞬だけ表示される図形や選手配置を記憶する練習などです。
これにより、注意の範囲を広げ、情報処理スピードを高めることが可能です。

Q: アイコニックメモリの研究はスポーツパフォーマンスの向上にどう役立ちますか?

A: 「一瞬での判断が勝敗を分ける」ようなスポーツにおいて、どんな情報がどのように記憶・判断されるかを知ることで、戦術指導や認知トレーニングの設計に活用されます。
選手ごとの視覚認知傾向を理解することで、個別の育成計画も立てやすくなります。

Q: 一般人が日常でアイコニックメモリを活用できる場面はありますか?

A: あります。たとえば、運転中に標識や周囲の状況を一瞬で確認することや、スーパーでチラシを一瞬見て商品を探すといった場面で活用されています。アスリートでなくても、私たちは日常的にこの能力を使っています。

Q: eスポーツのプレイヤーにもアイコニックメモリは関係しますか?

A: はい、非常に関係しています。プロゲーマーも一瞬の画面の変化を正確に認識し、迅速に対応する必要があるため、視覚記憶と認知の連携が極めて重要です。
最近ではeスポーツ分野でも認知トレーニングが注目されています。

Q: プロ選手と一般人の差は才能ですか?訓練ですか?

A: 両方の要素があります。先天的な処理速度や注意の広さは影響しますが、多くのアスリートは訓練で能力を引き上げていることが分かっています。つまり、一般人もトレーニング次第でかなり近づくことが可能です。

Q: スパーリングの実験は今でも信頼できるのでしょうか?

A: はい、Béchampら(2023年)の再現研究では、スパーリングの「部分報告法」で得られた結果(約9〜12個の要素保持)が現代の被験者でも再確認されました。
保持時間もおよそ0.3秒程度と、元の実験とほぼ一致しています。

Q: 「アイコニックメモリはすぐ消える」と言いますが、どのように消えるのですか?

A: Pratte(2018)らの研究によると、アイコニックメモリは**徐々にフェードアウトするのではなく、ある時点で突然消える(急死的に崩壊する)傾向があることが示唆されています。
これは
「all-or-none(全か無か)」**の性質とも言われています。

Q: Coltheart(1980)が指摘した「可視持続」と「情報持続」の違いとは何ですか?

A: 「可視持続(visible persistence)」は物理的な残像のような視覚体験で、「情報持続(informational persistence)」は後の記憶や判断に使われる視覚情報の保持です。
つまり、「見えている感覚」と「記憶として使える情報」は異なるメカニズムで処理されているということです。

Q: アイコニックメモリには視覚的特徴によって保持しやすさの違いがありますか?

A: はい、**Pearsonら(2012年)**によると、色や向きは動きよりも保持しやすいという結果が得られています。
これは、低次視覚特徴(色・形)ほどアイコニックメモリに強く残りやすいということを示しています。

Q: アスリートやゲーマーはこの特徴を活かせるのですか?

A: 活かせます。動くものを追う場合、アイコニックメモリが一瞬前の状況を保っているからこそ、予測や反応が可能になります。
ただし、「動き」は他の特徴より保持が弱いため、訓練で反応速度や注意の向け方を補う必要があります。

理解度を確認する問題

次のうち、アイコニックメモリに関する説明として最も適切なものはどれか?

A. 長期的に保存される視覚記憶
B. 音の情報を保持する感覚記憶
C. 0.5〜1秒だけ保持される視覚情報の記憶
D. 意識的に保持する記憶システム

正解:C

関連キーワード

  • 感覚記憶(Sensory memory)
  • エコー記憶(Echoic memory)
  • スパーリングの実験(Sperling’s experiment)
  • 一時記憶
  • 注意と記憶の関係

関連論文

Béchamp et al.(2023)“Capacity and duration of iconic memory from partial reporting…”(再現研究)

概要:スパーリングの部分報告法を、大規模・多様なサンプル(n = 64)でオンライン実験により再検証。

結果

  • アイコニックメモリの容量は最小9要素、持続時間は約0.3秒という古典的知見を裏付け。

解釈

  • 元実験の信頼性が高く、現代の被験者環境下でも再現可能。
  • アイコニックメモリの基本的メカニズムは普遍性があると確認された。

Coltheart(1980)“Iconic memory and visible persistence”

概要:意識される映像としての「visible persistence」と、記憶としての「informational persistence」を明確に分離。

結果

  • 光の持続時間や強さと持続性は逆相関(inverse duration/intensity effect)。

解釈

  • アイコニックメモリは単なる一括保持ではなく、複数の階層構造が絡む複雑なメカニズムである。

Bradley & Pearson et al.(2012)“The Sensory Components of High‑Capacity Iconic Memory…”

  • 概要:色・向き・動きといった低レベル視覚特徴を対象に、保持容量と持続時間を検討。
  • 結果
    • 色・向き>動きの順で保持情報量が多い。
    • 約1秒以内は注意資源に依存。2秒超ではワーキングメモリに移行。
  • 解釈
    • アイコニックメモリは高容量かつ自動的だが、特徴や注意次第で質や量が変化する。

Quilty‑Dunn(2019)“IS ICONIC MEMORY ICONIC?”

概要:アイコニックメモリが「徐々に消える」のではなく、「突然消える(all-or-none)」か検証。

結果

  • 表象はある瞬間まで完全に存在し、その後は一気に消失する傾向が確認された。

解釈

  • 高容量保持と有意な情報の急失の両方を説明可能な階層構造メモリモデルの支持材料となる。

覚え方

アイコニックメモリは、視覚情報が0.5〜1秒だけ脳に残る一時的な記憶です。
大量の視覚情報の中から、必要なものだけを選んで短期記憶に移します。
「チラ見で覚えてた」は、この記憶が働いている証拠です。

アイコニックメモリ向上させるトレーニング方法

繰り返しになりますが、アイコニックメモリ(視覚的感覚記憶)は本来、保持時間が0.5〜1秒程度の「自動的な記憶」なので、直接「持続時間」を伸ばすことは難しいとされています。
しかし、心理学的観点から「アイコニックメモリの有効活用能力(情報抽出・注意・転送)」を高めるトレーニングは可能です。

以下に、心理学理論に基づいたトレーニング方法を提案します。

1. 瞬間視(Tachistoscopic Training)

理論背景:

瞬間的に表示される情報から、いかに正確に情報を取り出すかを鍛える方法です。
スパーリングの実験とも関連し、視覚注意と記憶転送の速度を高める訓練になります。

方法:
  • 画面に数字・文字・図形を50〜200ミリ秒だけ表示
  • 表示後に何があったかを答える(例:文字列・位置・色など)
  • 表示時間や複雑さを徐々に調整
効果:
  • アイコニックメモリの中から必要な情報を瞬時に抜き取る能力が向上
  • スポーツや日常生活での「パッと見判断」が正確に

2. 視野拡大トレーニング(Peripheral Vision Training)

理論背景:

人間は中心視野(フォービア)ばかりに注意を向けがちですが、周辺視野からの情報もアイコニックメモリに取り込まれています
その範囲を意識的に広げることで、より多くの視覚情報を保持できます。

方法:
  • 中央に注視点(例えば○)を置き、画面の四隅に文字や記号を一瞬だけ表示
  • 注視を動かさず、周辺視野に表示された情報を答える
  • スポーツビジョントレーニングにも利用されます
効果:
  • 周辺のアイコニック情報の認識能力が向上
  • ゲームやスポーツ中の「見えているのに気づかない現象(無注意盲)」の予防にも

注意制御トレーニング(Selective Attention Training)

理論背景:

アイコニックメモリが記録するのは**「全体の映像」**ですが、それを短期記憶へ移すには「どこに注意を向けるか」が重要です。
選択的注意(Selective attention)をコントロールできれば、有効な情報のみ抽出できます。

方法:
  • 多くの刺激の中から「特定の色・形・位置」などを探し出す課題(例:ビジュアルサーチ)
  • 似た情報の中から異なるパターンを選ぶ訓練(例:Where’s Waldo的な課題)
  • ストループ課題(Stroop Task)やフランキング課題(Flanker Task)も有効
効果:
  • アイコニックメモリの選別能力と転送効率の向上
  • 視覚刺激に対する認知のフィルター機能の強化

4. 記号記憶トレーニング(Symbol Recall Training)

理論背景:

「覚えるべき情報のコード化能力」を高めることで、アイコニックメモリ→短期記憶への橋渡しがスムーズになります。
特に視覚的コード化の効率化がカギです。

方法:

  • ランダムに並んだ記号や文字を一瞬見せ、その後どれが表示されたかを選ぶ
  • 図形・文字・色などの「混合情報」の保持トレーニングを行う

効果:

  • 視覚刺激のパターン認識力が高まり、短期記憶への転送精度が向上
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