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チェリーピッキング(cherry-picking)

cherry-picking 行動経済学
cherry-picking

自分に都合のいい情報だけを選んで使うこと

簡単な説明

「チェリーピッキング」ってのはね、
「おいしいとこだけ持ってって、都合悪いのは無視〜」ってやつ!
テストの点数だけ良いとこ自慢して、悪い点は「言ってな〜い」みたいな。
でもそれって、ほんとの姿じゃないでしょ?ってことなんよ!

由来

「チェリーピッキング(cherry-picking)」という言葉は、英語圏で「さくらんぼの実の中でも、一番赤くて美味しそうなものだけを摘み取る」ことから来ています。
そこから転じて、「自分にとって都合のいいデータや証拠だけを選び、不都合な情報は無視する」という意味で使われるようになりました。

具体的な説明

チェリーピッキングは、心理学や統計学、政治、経済など幅広い分野で見られる「認知バイアス(思考の偏り)」の一種です。
本来なら、物事を判断するときにはすべての情報を公平に見なければなりません。
しかし、チェリーピッキングをしてしまうと、自分の主張を強化する情報ばかりを集めてしまい、間違った判断や偏った考えにつながる可能性があります。

たとえば、ある健康食品の広告が「90%の人が効果を実感!」と書いていたとします。
しかし実際には、効果がなかった人のデータを意図的に省いているかもしれません。
このように、自分の主張を有利に見せるために都合の良い情報だけを使うことを、チェリーピッキングと呼びます。

チェリーピッキングは、「確認バイアス(confirmation bias)」と密接に関係しています。
確認バイアスとは、自分の信念や仮説を支持する情報だけを選び、反証する情報を無視する傾向です。
研究論文や実験でも、都合の悪い結果を報告しなかったり、特定のサンプルだけを抽出することで、研究の信頼性が損なわれることがあります。
このようなデータの扱い方は、科学的誠実性(scientific integrity)の観点からも問題です。

具体的な実験・観察手法と結論

例:Lord, Ross, & Lepper (1979) の実験

実験内容
被験者に対して、「死刑制度は犯罪抑止に効果があるか?」というテーマに関する異なる証拠を提示しました。
参加者はすでに死刑制度に賛成または反対の立場を持っており、それぞれ自分の立場に合った情報を重視し、反対の情報を無視する傾向が見られました。

結論
人は自分の信念を裏付ける証拠を選び取る傾向があり、対立する証拠は軽視しがちです。これがチェリーピッキングの典型です。

例文

「その人は自分の意見を正当化するために、成功例ばかり挙げていて、失敗例には触れていない。これはチェリーピッキングの典型ですね。」

疑問

Q: チェリーピッキングと確認バイアスは同じものですか?

A: 非常に近い関係にありますが、チェリーピッキングは情報の選択行動を指すのに対し、確認バイアスは情報の認知的な処理の偏りです。

Q: チェリーピッキングは無意識に起こるのですか?

A: 多くの場合は無意識ですが、意図的に行うこともあります(例:広告や政治的な発言など)。

Q: チェリーピッキングを防ぐにはどうすればよいですか?

A: 異なる立場からの情報も積極的に取り入れ、自分の意見に反する証拠にも目を向けることが重要です。

Q: 科学論文でもチェリーピッキングは見られますか?

A: はい、報告バイアスや出版バイアスといった形で、都合の良いデータだけが公表されることがあります。

Q: チェリーピッキングは倫理的に問題がありますか?

A: はい、意図的に偏った情報提供を行うことは、他人を誤解させるリスクがあり、特に学術や報道では不誠実な行為とされます。

Q: チェリーピッキングは日常生活でもよくあることなのですか?

A: はい、とてもよくあります。たとえば、友達に「このゲーム最高だった!」という話をするとき、良かった部分だけを話して、つまらなかったところは言わないことがあります。これもチェリーピッキングの一例です。

Q: 統計の発表にもチェリーピッキングは使われるのですか?

A: はい、使われることがあります。たとえば、「1年間で売上が50%アップした」と発表していても、そのデータがたまたま良かった月だけを切り取っていた場合、全体としてはそれほど伸びていない可能性があります。

Q: チェリーピッキングをしているかどうか、どう見抜けばいいのですか?

A: 一つの見方として、「反対の情報や不利なデータにも触れているか?」を確認するとよいです。都合のいいデータだけを使っている場合は、チェリーピッキングの可能性があります。

Q: チェリーピッキングは誰でもしてしまうものですか?

A: はい、基本的には誰でも無意識のうちにしてしまう傾向があります。人間は自分の考えに自信を持ちたい生き物なので、それを裏付ける情報を優先してしまうのです。

Q: チェリーピッキングを避けるためにはどうすればいいですか?

A: 自分にとって不都合な情報も意識的に取り入れる努力が必要です。また、複数の情報源から確認したり、他人の意見に耳を傾けたりすることも有効です。

Q: 教育現場ではチェリーピッキングをどう扱うべきですか?

A: 教育の場では、チェリーピッキングが思考の偏りを生むことを伝え、「なぜ反対意見も見ることが大切なのか」をしっかり教えることが重要です。批判的思考力を育む教材としても使えます。

Q: 「チェリーピッキング」と「選択的記憶」は違いますか?

A: はい、似ていますが異なります。チェリーピッキングは意識的・無意識的に情報を選ぶ行動であり、選択的記憶は無意識的に「記憶そのものが偏る」現象です。どちらも認知バイアスに関係しています。

Q: チェリーピッキングを意識的に使う人はどういう意図があるのですか?

A: 主に説得や印象操作のためです。政治家や広告業界などでは、自分の主張や商品の良さを強調するために、あえて都合のいいデータだけを見せる戦略がとられることがあります。

Q: メタ分析でもチェリーピッキングが問題になるのですか?

A: はい、非常に大きな問題です。Yoneoka & Rieck(2023)の研究では、メタ分析で都合の良い研究だけを選ぶと、実際には効果がないのに「有意な効果がある」と誤解されることが理論的にもシミュレーション的にも示されています。

Q: なぜメタ分析でチェリーピッキングが起きるのですか?

A: 一つは「結果ありき」の分析です。研究者が事前登録をせず、効果が大きく出そうな研究だけを意図的または無意識に選ぶと、分析結果が偏ってしまうのです。これは科学的な信頼性を大きく損ないます。

Q: メタ分析の大規模調査でもチェリーピッキングの影響が見つかっているのですか?

A: はい。Bartošら(2022)は68,000件以上のメタ分析を調査し、多くの心理学分野で効果が過大評価されていることを示しました。例えば効果サイズ(d)は0.37から0.26に、効果確率は99%から55%に下がるなど、実質的な影響が明確です。

Q: 心理学ではチェリーピッキングや出版バイアスが特に問題なのですか?

A: その通りです。心理学は統計的検証に基づく学問である一方、出版バイアスやポジティブ・リザルト・バイアス(肯定的結果の偏重)に影響されやすく、特に注意が必要です。実験失敗例が公表されにくい文化も影響しています。

Q: 読者側はどうやってチェリーピッキングの有無を見抜けばよいですか?

A: 研究にプロトコル登録があるかどうか除外された研究やデータについても報告されているかを確認するとよいでしょう。また、結果が一方的にポジティブである場合や、引用されている研究がごく一部に偏っている場合も注意が必要です。

Q: なぜチェリーピッキングが意図的でなくても起こるのですか?

A: 人間には「確認バイアス」があり、自分の仮説を支持する証拠に目が行きやすく、反証的な情報は見落としがちです。そのため、研究者が誠実に作業していても、無意識のうちにチェリーピッキング的な選択が生じてしまうのです。

理解度を確認する問題

チェリーピッキングとは、次のうちどれを指すか。

A. 他人の意見を常に否定する傾向
B. 都合の良い情報だけを選んで使うこと
C. 無意識に記憶をねつ造すること
D. 他者の行動を過小評価する傾向

正解:B

関連キーワード

  • 認知バイアス
  • 確認バイアス
  • 報告バイアス
  • 出版バイアス
  • 科学的誠実性
  • 信念防衛機制

関連論文

Yoneoka & Rieck (2023) “A Note on Cherry‑Picking in Meta‑Analyses”

概要
メタ分析の中で、研究者が意図的または無意識的に自分に都合の良い研究だけを抜き出して(inclusion/exclusion)結果をゆがめる「チェリーピッキング」現象の存在を、理論(定理)/シミュレーション/実臨床データの3段階で検証しています。

結果

  • 定理1:治療効果が実際にはゼロでも、統計的に「有意あり」と誤示される可能性が高まる(Type Iエラーの増加)。
  • 定理2:逆に、実際に効果がある場合でも「有効でない」と誤結論に至る可能性(Type IIエラー)。
  • シミュレーションでは、抜き取りサンプル数(S)が少ないほど誤結論を導く確率が大幅に上昇
  • 実例では、「うつにセントジョーンズワート」、「心筋梗塞へのマグネシウム」など2つのRCTメタ分析の抜き取りにより、異なる結論を導くことを示しています。

解釈

  • メタ分析において「事前プロトコル登録なし・恣意的な基準設定」は信頼性の大きなリスクです。
  • 著者らは、事前登録・プロトコル遵守・Inclus/exclusの明示と検証が標準手続きとして必須であると強調しています。

Bartoš et al. (2022) “Footprint of publication selection bias on meta‑analyses…”

概要
医療・環境・心理学・経済学で68,000件以上のメタ分析を対象に、**出版バイアス(publication/selection bias)**の影響を調査しています。

結果

  • 心理学分野中心のメタ分析では、バイアス調整前は効果存在確率99 %→調整後55 %に低下。
  • 効果サイズ(標準化平均差 d)は、心理学で 0.37 → 0.26 に削減。
  • 医学分野でも d = 0.24→0.13に低下するなど、バイアスにより効果が過大評価されている実態が明示されています。

解釈

  • 出版バイアスやチェリーピッキング的選択により、多くの領域で効果の「見せかけ向上」が起きているのが統計的に明らかです。
  • 調査手法としては選択バイアスの定量推定が有効であり、メタ分析の信頼性を高める要です。

覚え方

チェリーピッキングとは、自分に都合の良い情報だけを選んで使い、他のデータを無視する思考の偏りです。
メタ分析や科学的議論でもこの偏りが生じると、効果の誤認や誤解釈につながる危険があります。
防ぐには事前登録・包括的分析・反証への配慮が重要です。

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