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グリット(grit)

GRIT コラム
GRIT

成功するまであきらめない心の粘り強さのこと

簡単な説明

グリットって、「途中であきらめないメンタル筋トレ」みたいなもん!
どんなにしんどくても「自分の夢を信じてやり抜けるやつ」が、最後に勝つって話!

由来

提唱者:アンジェラ・ダックワース博士(Angela Duckworth)

  • 元々は数学教師で、教育現場で「頭がいいのに続かない生徒」「普通でも努力して成果を出す生徒」に出会ったことがきっかけ。
  • 2007年にアメリカ心理学会(APA)の有名誌『Journal of Personality and Social Psychology』で論文を発表。

「IQや才能」よりも「継続する力」が人の成功を予測するとして注目を浴びました。

具体的な説明

グリットとは、長期的な目標を追い続ける「情熱(passion)」と、それを実現するために努力を継続する「粘り強さ(perseverance)」の組み合わせでできています。

情熱(Passion):目標をずっと変えずに持ち続けられる力

粘り強さ(Perseverance):失敗しても立ち上がって努力を続けられる力

例えば、スポーツ選手やアーティストは、すぐに成果が出ない時でも長い時間かけて練習や研究を重ねますよね。それが「グリット」です。

つまり、「途中で投げ出さない」「失敗してもまた挑戦する」「同じ夢をずっと追い続ける」そんな人に共通する力のことです。

大学・心理学検定レベルの説明

他の性格特性との違い
  • 誠実性(Conscientiousness)に似ているが、グリットはより「長期目標」に向かう性質に特化。
  • 自己統制(Self-control)とは違い、短期的誘惑を断つというより「数年単位の計画を維持」する能力。
測定方法
  • Grit Scale(グリット尺度):Duckworthらが開発した12項目の質問票。後に簡易版(Grit-S)が作られました。
    • 例:
      • 「私は途中でやめてしまうことが多い(逆転項目)」
      • 「私は同じ目標を長く持ち続けている」
    • 信頼性:α係数 = 0.85 以上

例文

「あの選手は才能だけじゃなくて、10年間一つの目標を追い続けて結果を出した。本当にグリットがあるね。」

疑問

Q: グリットは才能がなくても身につけられますか?
A: はい、習慣化や目標設定を通じて後天的に育てることが可能です。

Q: グリットが高すぎると問題もありますか?

A: はい。時に「やめるべきタイミング」を見失い、非効率な努力を続けてしまうリスクがあります(“grit trap”)。

Q: グリットはどうやって測定されますか?

A: Grit-Sという質問票で、自己申告で「情熱と粘り強さ」を数値化します。

Q: グリットと自己効力感(self-efficacy)は違いますか?

A: 自己効力感は「やればできると思う気持ち」、グリットは「続ける力」です。関連はありますが別の概念です。

Q: グリットを育てる教育的工夫はありますか?

A: 成長思考(growth mindset)やフィードバックの質が、グリットの育成に影響します。

Q: グリットと意図的練習は同じ意味ですか?

A: いいえ、グリットは「性格特性」、意図的練習は「行動戦略」です。

Q: 意図的練習を支える心理的資質には何がありますか?

A: グリットや自己効力感、成長マインドセットなどが関与します。

Q: 意図的練習の3条件は?

A: ①明確な目標、②即時のフィードバック、③意識的な反復です。

Q: グリットがあっても意図的練習をしなければどうなりますか?

A: 継続しても質の低い努力になり、成果は出にくくなります。

Q: 逆に意図的練習だけあってグリットがないと?

A: 継続が困難となり、途中でやめる可能性が高くなります。

Q: グリットはどんな場面で特に重要とされますか?

A: 長期的な目標に向けて何年にもわたって努力を継続する必要がある分野(例:受験、スポーツ、音楽、起業など)で特に重要とされています。

Q: グリットは遺伝的な要素もありますか?

A: 一部の研究では、性格特性のうちおよそ40~50%程度が遺伝によって説明されるとされていますが、グリットは環境・教育・経験によって大きく形成されると考えられています。

Q: 成長マインドセット(growth mindset)との違いは何ですか?

A: 成長マインドセットは「能力は努力で伸ばせる」という信念。グリットは「その信念を持ちながらも、継続して努力し続ける力」です。両者は補完関係にあります。

Q: グリットと自己効力感(self-efficacy)の関係は?

A: 自己効力感が高い人は「自分ならできる」と信じるため、困難に直面してもあきらめず挑戦を続けやすく、結果としてグリットも高くなりやすい傾向があります。

Q: グリットと近い性格特性に「誠実性(conscientiousness)」がありますが、違いは?

A: 誠実性は計画性や責任感を含む広い性格特性で、グリットはその中の「粘り強く目標を追い続ける部分」に特化したものと位置づけられます。

Q: グリットが高すぎると問題になることはありますか?

A: はい。執着しすぎて「やめ時を見失う」「新しい選択肢を見逃す」など、非柔軟な行動に繋がるリスクがあります(これを「grit trap」と呼ぶこともあります)。

Q: グリットはどのような教育的支援によって育てられるとされていますか?

A: 明確な目標設定、成長マインドセットの育成、達成体験の積み重ね、努力に対する肯定的フィードバックなどが有効です。

Q: グリットと意志力(willpower)は同じですか?

A: 関連はありますが異なります。意志力は短期的な衝動に耐える力、グリットは「長期にわたる困難にも耐えながら努力を続ける力」です。

Q: 子どもにグリットを育てるにはどんな声かけが有効ですか?

A: 結果より「努力の過程」を褒める、失敗しても「挑戦をやめなかったこと」を評価する、少しずつできる成功体験を作ることが大切です。

Q: グリットはどんな尺度で測られますか?

A: Duckworthらが開発した「Grit-S(Short Grit Scale)」という8項目の自己評価式質問票が代表的です。

Q: Duckworthら(2007)はグリットが何よりも成功を予測すると述べていますが、実際に何を使って調査しましたか?

A: ウエストポイント士官候補生の訓練脱落率、大学生のGPA、全米スペリングビーの成績など、多様な実生活データを用いて調査しました。グリットはIQや体力検査よりも強力に成功を予測しました。

Q: Duckworthらの研究では、グリットはどのような性格特性とは異なるとされていますか?

A: 特に誠実性(Conscientiousness)や自己統制(Self-control)と相関はあるものの、それらとは独立した予測因子であるとされました。ただし、後の研究ではこの点が再検討されています。

Q: Credéら(2017)のメタ分析では、グリットのどの側面がより成果に影響を与えるとされていますか?

A: 粘り強さ(Perseverance of Effort)が、情熱(Consistency of Interests)よりも強く学業・仕事の成果を予測することが示されました。情熱は効果が小さく、信頼性もやや低いと指摘されています。

Q: 同じメタ分析で、グリットと誠実性の関係はどのように評価されていますか?

A: 非常に高い相関(r ≈ 0.84)があり、「グリットは誠実性と大きく重なっている可能性がある」と結論づけられました。そのため、グリットは誠実性の一要素とみなされることもあります。

Q: Duckworth & Quinn(2009)はどのような尺度を開発しましたか?またその利点は?

A: 8項目の**Grit-S(Short Grit Scale)**を開発しました。これは元の12項目尺度を短縮したもので、心理測定上の信頼性が高く、応答負担が軽いため、広く用いられるようになりました。

Q: グリットに対する批判的な見解にはどのようなものがありますか?

A: 「文脈の重要性を無視している」「貧困などの社会構造の影響を軽視している」「個人責任の強調が過ぎる」などの批判があります。特に教育現場では、グリット重視が生徒に過剰なプレッシャーを与える可能性が指摘されています。

Q: メタ分析ではグリットと学業成績の関連はどの程度とされていますか?

A: Credéら(2017)によると、学業成績との相関はr ≈ 0.20と中程度以下です。これはIQや誠実性よりも弱い予測力とされており、誇張されすぎた評価を見直す動きがあります。

Q: 最新の統合的レビュー(例:2021年以降)では、グリットの構造についてどのような再検討が行われていますか?

A: グリットは「情熱+粘り強さ」だけでなく、「文脈(家庭環境、社会的支援)」「動機づけ」なども含む複合的モデルであるべきという提案がなされ、従来の二因子モデルの限界が指摘されています。

Q: グリットと意図的練習(deliberate practice)の関係はどう説明されていますか?

A: グリットが高い人は、失敗に屈せず、意図的練習を継続する傾向があります。つまり、グリットは「努力し続ける動機の源泉」、意図的練習は「上達するための手段」として補完関係にあります。

Q: 現在の研究動向では、グリットのどのような側面を強調すべきだとされていますか?

A: 特に「粘り強さ(Perseverance of Effort)」の方が信頼性・予測力ともに高いため、これを個別に評価・育成すべきという流れがあります。今後は単一概念ではなく、多因子構造としてのアプローチが主流になると予想されます。

理解度を確認する問題

グリットの構成要素は?
 a. IQと体力
 b. 情熱と粘り強さ
 c. 共感力と協調性
 d. 記憶力と計算力


→ 正解:b

関連キーワード

  • 情熱(passion)
  • 粘り強さ(perseverance)
  • 誠実性(conscientiousness)
  • 自己統制(self-control)
  • 成長思考(growth mindset)
  • 意志力(willpower)

関連論文

Duckworth et al. (2007) “Grit: Perseverance and Passion for Long‑Term Goals”

概要:グリットの原典論文。ウエストポイント士官学校、スペリングビー、大学生GPAなど、多様なサンプルで“情熱と粘り強さ“を測定。
結果:グリットはIQや性格特性よりも、GPA・訓練継続・大会成績などの実績を独立して有意に予測。ウエストポイントでは脱落率を低下させるもっとも強力な変数となった。
解釈:「才能」より「続ける力」が長期目標達成において重要であることを実証した基礎的研究です。

Credé, Tynan & Harms (2017) “Much Ado About Grit: A Meta‑Analytic Synthesis…”

概要:グリット研究88件、66,807名を対象としたメタ分析。情熱(consistency of interest)と粘り強さ(perseverance of effort)の両面について検証。
結果

  • グリットは全体としてパフォーマンスや定着に「中程度」の関連(ρ ≈ 0.20前後)
  • 「粘り強さ」の方が「情熱」よりもアウトカムを強く予測
  • グリットと「誠実性」は非常に強い相関がある(重複構成の可能性)

解釈:「情熱」より「努力し続ける姿勢」が成果に結びつきやすい。従来言われてきた“全体構成のグリット”よりも、粘り強さ単体を重視した方が妥当という示唆があります。

Critique & 限界論(Engber, Slate, New Yorker 他)

概要:グリットに対する批判的視点。社会経済的要因の影響や“grit万能説”への警鐘。
結果

  • 教育格差・貧困への強調が不足
  • 「粘り強くすれば全てうまくいくわけではない」との批判
  • 親や教師による「努力至上主義」が生む副作用の指摘も

解釈:適切な文脈がないままグリットを押しつける教育は逆効果。「継続する力」だけで全て解決できない現実が浮き彫りになっています。

Integrative Review(Beyond Passion and Perseverance, 2021)

概要:多様な成果(well‑being、健康、神経科学など)を含めたグリットの再考。
結果

  • 情熱(interest consistency)の構成要素としての再検討
  • 三要素構造(interest, effort, some contextual factors)へのモデル化提案
  • 行動変容や介入研究のガイドライン提示

解釈:「グリット=情熱+粘り強さ」だけでは不十分。環境や動機づけの文脈を含む複合的構造として理解すべき、という新たな展望です。

覚え方

グリットとは、長期的な目標に向けて情熱を持ち続け、困難があっても努力を継続する力のことです。
「粘り強さ」が成果に強く関係し、「情熱」は目標の一貫性を支える要素です。
誠実性や自己統制と関連しますが、成功予測因子として独立した役割も果たします。

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