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限定合理性(bounded rationality)

bounded-rationality 行動経済学
bounded-rationality

「人間の判断には限界がある」という考え方のこと

簡単な説明

人って完璧に考えて決めてるようで、実は時間も知識も足りてないんだよね。
だから「まあこれでいいか」ってレベルで決めがち、っていうのが限定合理性。
要するに「人間、そんなに賢くもヒマでもない」って話!

由来

この概念は、経済学者ハーバート・サイモン(Herbert A. Simon)が1950年代に提唱しました。
彼は、伝統的な経済学が前提とする「人間は完全に合理的で最善の選択をする」という考え方に疑問を持ちました。現実には人間の
情報処理能力、時間、記憶、知識
には限界があるため、常に最適な選択をすることはできないと考えたのです。

具体的な説明

私たちは毎日の生活で、買い物・進路選択・人間関係などたくさんの判断をしています。でも、すべての情報を集めて完璧に判断するのは不可能です。だから人間は、「十分に良い」選択をしているのです。

限定合理性とは、人間は「すべての選択肢を比較して最善の判断を下す」ことはできず、「ある程度満足できる選択肢(満足化:satisficing)」で意思決定する傾向があるという理論です。

たとえば、100個のアイスの中から1番おいしいものを選ぼうとしても、時間も頭も足りません。そこで、ある程度おいしければそれを選んで満足する、というのが限定合理性の考え方です。

サイモンによれば、完全合理性モデル(Classical Rationality)は最適化(optimization)を前提としますが、限定合理性では、満足化(satisficing)による意思決定が中心となります。

また、意思決定の過程では、「認知的資源の制約(例:短期記憶の容量は7±2チャンク)」や、「時間制約」「不完全な情報」が行動に影響します。こうした制約の中で、人はヒューリスティックス(経験則)を用いて迅速に判断します。

例文

「彼は限定合理性に基づいて、完璧な彼女を探すのをやめて、性格が合う人を選んだんだ。」

疑問

Q: 限定合理性と完全合理性の違いは何ですか?

A: 完全合理性は「最も良い選択肢を選べる」とする考えですが、限定合理性は「限られた情報と能力の中でそこそこ満足できる選択をする」考えです。

Q: 満足化とは何ですか?

A: 「十分に良い」選択肢を選ぶ行動です。最善ではないけれど、時間や手間を考えると妥当な選択です。

Q: 限定合理性が働く場面を教えてください。

A: スーパーで商品を買うとき、すべての成分や価格を比較するのは難しいので、「まあまあ良さそう」で選ぶ場面です。

Q: ヒューリスティックスとの関係は?

A: 限定合理性のもとで、人間は複雑な判断を簡略化するためにヒューリスティックス(直感的ルール)を使います。

Q: 限定合理性は意思決定のミスにもつながりますか?

A: はい。情報が不足していたり偏っていたりすると、誤った判断をすることもあります。

Q: なぜ人間は最も合理的な選択をするのが難しいのですか?

A: 人間には記憶の容量や情報処理のスピード、注意力などに限界があるためです。また、選択肢が多すぎると情報過多に陥り、判断が難しくなります。

Q: 限定合理性はどのような場面で特に見られますか?

A: 時間が限られているとき、情報が十分に手に入らないとき、あるいは自分の専門外の領域で判断を下すときに、限定合理性が強く影響します。

Q: 限定合理性において「直感」は役立ちますか?

A: はい。直感(ヒューリスティックス)は、情報をすべて分析できないときに素早く判断するための手段として役立ちます。ただし、誤りを引き起こすこともあります。

Q: 満足化と妥協は同じ意味ですか?

A: 似ていますが異なります。満足化は「十分に良い選択肢を見つけたときにそれを選ぶ」ことであり、妥協は「理想から離れてでも選ぶ」ニュアンスが強いです。

Q: 限定合理性の考え方はビジネスや政策に応用されていますか?

A: はい。マーケティングでは消費者が最適ではなく「そこそこ満足」できる製品を選ぶ傾向があることを考慮しますし、公共政策でも人々が複雑な手続きを避けることを前提に制度設計がなされることがあります。

Q: 選択肢が多いと判断しづらくなるというのは本当ですか?

A: 一般的には「選択肢過多の逆説」として知られていますが、Scheibehenneらのメタ分析(2010)によれば、その影響は一貫しているとは言えず、効果はほぼゼロでした。ただし、条件によっては混乱や不満が生じることもあるため、状況次第といえます。

Q: 医療現場での限定合理性はどのように現れますか?

A: Yuら(2024)の研究では、患者は医療情報を完全には理解できず、感情的要因や社会的評価に影響されて判断していることが示されました。これは、情報の制約だけでなく、感情や信頼が意思決定に影響することを意味します。

Q: 学習時間の配分も限定合理性の影響を受けるのですか?

A: はい。ZhangとWang(2024)の研究によると、学生はフレーミング(例:試験が「差し迫っている」か「時間がある」かという伝え方)に影響されて、必ずしも合理的とはいえない時間配分を行うことが示されました。

Q: 限定合理性は組織の意思決定にも関係がありますか?

A: あります。Vargas-Hernándezら(2019)は、組織も完璧な情報を持っておらず、限られた情報と資源の中で「そこそこ良い」意思決定をしていると述べています。これは満足化の概念と一致します。

Q: 限定合理性はどの学問分野で使われていますか?

A: 心理学だけでなく、経済学、経営学、政治学、教育学、さらには人工知能や認知科学など、多くの分野で応用されています。意思決定のリアルな理解に欠かせない理論です(Stanford Encyclopedia of Philosophy, 2024)。

理解度を確認する問題

限定合理性に関する説明として最も適切なものを選びなさい。

A. 人間は常に最も合理的な判断を下すことができる
B. 人間はすべての選択肢を比較して最善の選択をする
C. 人間は制約の中で、ある程度満足できる選択をする
D. 人間は非合理的に行動するため、判断は常に誤っている

正解:C

関連キーワード

  • ハーバート・サイモン
  • 満足化(Satisficing)
  • ヒューリスティックス
  • 意思決定
  • 認知バイアス
  • 認知資源
  • 制約付き合理性

関連論文

Scheibehenne, B., Greifeneder, R., & Todd, P. M. (2010). “Can There Ever Be Too Many Options? A Meta-Analytic Review of Choice Overload.” Journal of Consumer Research, 37(3), 409–425.

概要: このメタ分析では、選択肢の数が多すぎると意思決定が困難になる「選択肢過多の逆説」について、50の実験から63の条件を分析しました。

結果: 全体的な効果サイズはほぼゼロであり、選択肢の数が多いことが必ずしも意思決定の質を低下させるわけではないことが示されました。ただし、研究間でのばらつきが大きく、特定の条件下では選択肢過多が影響を及ぼす可能性があることが示唆されました。

解釈: 限定合理性の観点から、選択肢の多さが常に悪影響を及ぼすわけではなく、状況や個人の特性によって異なることが示されています。

u, Q., Wang, X., Huang, X., Li, J., Jin, C., Chen, J., & Sha, M. (2024). “Bounded rationality in healthcare: unraveling the psychological factors behind patient satisfaction in China.” Frontiers in Psychology, 15, 1296032.

概要: 中国・杭州の1,442人の入院患者を対象に、限定合理性が患者満足度に与える影響を調査しました。

結果: 医療リスク認知、医療環境の社会的認知、社会的望ましさバイアスが患者満足度に正の影響を与える一方、否定的な感情は満足度に負の影響を与えることが明らかになりました。

解釈: 患者は情報の制約や感情的要因の影響を受けて判断を下すため、限定合理性の枠組みで患者満足度を評価することが重要であると示唆されています。

Zhang, Y., & Wang, L. (2024). “Bounded Rationality in Study Time Allocation: Evidence Based on Framing Effects.” Frontiers in Psychology, 15, 11590912.

概要: 学習者が学習時間をどのように配分するかについて、フレーミング効果が限定合理性に基づく意思決定に与える影響を調査しました。

結果: 学習者は時間制約や情報の提示方法(フレーミング)に影響され、必ずしも最適な学習時間配分を行っていないことが示されました。

解釈: 学習者の意思決定は限定合理性の枠組みで理解されるべきであり、教育設計においては情報の提示方法が重要であることが示唆されています。

Vargas-Hernández, J. G., & Pérez-Ortega, R. (2019). “Bounded rationality in decision–making.” MOJ Current Research & Review, 2(1), 1–8.

概要: 組織における意思決定プロセスにおいて、限定合理性がどのように影響を及ぼすかを理論的に検討しました。

結果: 組織は情報の制約や環境の不確実性の中で、最適ではないが満足できる意思決定を行う傾向があることが示されました。

解釈: 組織の意思決定は限定合理性の枠組みで理解されるべきであり、完全な合理性を前提としたモデルでは現実の行動を説明しきれないことが示唆されています。

Stanford Encyclopedia of Philosophy. (2024). “Bounded Rationality.”

概要: 限定合理性の概念の起源、理論的背景、そして現代における発展について包括的に解説しています。

結果: 限定合理性は、完全合理性の前提を緩和し、実際の人間の意思決定行動をより現実的にモデル化するための枠組みとして発展してきたことが示されています。

解釈: 限定合理性は、経済学、心理学、認知科学など多くの分野で重要な概念となっており、人間の意思決定を理解する上で不可欠な理論であることが示唆されています。

覚え方

限定合理性とは、人間の判断や意思決定が「情報」「時間」「認知能力」の制約を受けるという考え方です。
最善の選択ではなく「十分に満足できる選択(満足化)」を行う傾向があります。
提唱者はハーバート・サイモンで、経済・心理・教育など多分野に影響を与えています。

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