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ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)(gambler’s fallacy)

gambler's fallacy 行動経済学
gambler's fallacy

偶然の出来事に法則性があると勘違いしてしまう心理のこと

簡単な説明

コインとかサイコロの結果って、毎回ぜんぶバラバラ。
でも「そろそろ裏が出るでしょ」って思っちゃうのがギャンブラーの誤謬。
そう思って賭けると、だいたい痛い目にあうよ!

由来

「ギャンブラーの誤謬」は、カジノなどでギャンブルをする人たちがしばしば陥る思考のクセとして知られています。18世紀のヨーロッパでのルーレットやサイコロ遊びの中で観察され始め、現代では心理学や経済学の領域でも重要な概念です。

具体的な説明

人は、ランダムな出来事でも「バランスが取れているはず」と考える傾向があります。これは「確率の誤解」とも呼ばれ、人間の認知バイアスのひとつです。

例えば、コインを投げて「表」が5回連続で出たとします。このとき、多くの人は「次はさすがに裏が出るだろう」と思いますよね?
でも実際には、コインの1回ごとの結果は独立しており、6回目も「表」が出る確率は50%です。
このように、過去の偶然の出来事から「次は違う結果になる」と思い込む誤った直感が「ギャンブラーの誤謬」です。

ギャンブラーの誤謬は、「独立事象の誤解(independence misconception)」とも言われます。確率論では、互いに独立した事象(たとえばコインの裏表)は、過去の出目によって未来の出目の確率が変わることはありません

この誤謬は、系統的バイアス(systematic bias)として、行動経済学の分野でも重視されています。特にトヴェルスキーとカーネマンの「ヒューリスティックスとバイアス研究」によって体系的に分析されました。

具体的な実験・観察手法と結論

Tversky & Kahneman(1971)は、人々にコイン投げのシミュレーションをしてもらい、人は「ランダム性」を正しく理解できないことを示しました。
実験では、被験者がランダムに表裏を並べるとき、「表・表・表・裏・裏・表」といった見た目にバランスの取れた配列を好む傾向があるとわかりました。

ギャンブラーの誤謬でも儲かる?

ギャンブラーの誤謬で儲かるのか?」という問いに対する答えは、基本的には儲かりません。その理由を心理学・確率論・行動経済学の観点から説明します。

なぜ儲からないのか?(要点)
  • ギャンブラーの誤謬は「誤った確率判断」に基づいているからです。
  • 確率的に独立した事象(コイン投げやルーレットなど)は、過去の結果が未来の結果に影響を与えることはありません
  • よって、「そろそろ裏が出る」「今度こそ当たる」は非論理的な期待です。
心理学的にはどう考える?

人間の脳は「偏りが続くのは不自然」と感じ、バランスを取ろうとします。これは「代表性ヒューリスティック」による直感的判断です。しかし現実の確率は人間の感覚とは無関係です。

実例:ルーレットでの赤・黒の連続

カジノのルーレットで「赤」が5回連続で出たとします。多くの人は「次は黒が出るはず!」と思います。でも実際には、次に「赤が出る確率」はやはり約47.4%(0と00を除く場合)です。過去の赤の回数とは完全に無関係です。

行動経済学の知見:損失回避バイアスとの組み合わせで危険

ギャンブラーの誤謬は「損失回避バイアス」と組み合わさることで、より危険になります。
「今まで負け続けたから、そろそろ当たるだろう」という期待で、さらにお金をつぎ込んでしまうのです。これは「マーチンゲール戦略」として知られていますが、破産のリスクが高い戦法です。

結論

ギャンブラーの誤謬に基づく投資や賭け事では、長期的に見て儲かりません。
むしろ「確率を誤解している人を狙った仕組み」で、カジノやギャンブル業界が儲けています。

例文

「昨日のパチンコで10回連続で当たらなかったから、次は絶対に当たると思って続けたけど、全然ダメだった。完全にギャンブラーの誤謬だったね。」

疑問

Q: なぜ人はギャンブラーの誤謬に陥るのですか?

A: 人間は「世界は公平である」と信じる傾向があり、偶然の偏りもすぐに均されると錯覚してしまうからです。

Q: ギャンブラーの誤謬と「ホットハンド現象」は同じですか?

A: いいえ、逆です。ギャンブラーの誤謬は「次は違う結果になる」と考えるのに対し、ホットハンド現象は「当たりが続くと、次も当たる」と思う現象です。

Q: ギャンブラーの誤謬はどのような状況で起きやすいですか?

A: サイコロ、コイン投げ、宝くじなど、結果がランダムであるにもかかわらず「流れ」を読みたくなるときです。

Q: この誤謬を防ぐ方法はありますか?

A: 「事象の独立性」を理解することと、「確率は長期的な傾向」であることを意識することが大切です。

Q: ギャンブラーの誤謬は日常生活でも起こりますか?

A: はい、たとえば「今日はついてないから明日はうまくいく」といった思考もこの誤謬にあたります。

Q: ギャンブラーの誤謬が強く出やすい性格や傾向はありますか?

A: はい、特に「コントロールの錯覚(illusion of control)」を持ちやすい人、つまり自分が結果に影響を与えられると感じやすい人ほど、ギャンブラーの誤謬に陥りやすい傾向があります。また、直感に頼る傾向の強い人も注意が必要です。

Q: ギャンブラーの誤謬は教育によって防げますか?

A: 一定の効果があります。確率論や統計的独立性の概念を正しく理解する教育を受けた人は、誤謬に気づきやすくなるという研究結果があります。ただし、感情が強く働く場面では、知識だけでは完全に防げないこともあります。

Q: 「次は逆の結果が出る」という直感は、なぜそれほど説得力があるのですか?

A: 人間の脳は「パターンを見つける」ことが得意で、ランダムな出来事にも意味を見出そうとする傾向があるからです。これは進化の過程で身についたサバイバルスキルの名残ともいわれています。

Q: ギャンブラーの誤謬と「代表性ヒューリスティック」は関係がありますか?

A: あります。代表性ヒューリスティックとは、「ある出来事が典型的であればあるほど、それが確率的にも起こりやすいと判断する」思考です。ギャンブラーの誤謬は、「偶然の並び」が「典型的(交互に出る)」であると信じることで起きやすくなります。

Q: ギャンブラーの誤謬が実際に大きな問題になるのはどんな場面ですか?

A: 投資、ギャンブル、スポーツの賭け事、さらには日常の判断(例:占いやくじ引き)など、ランダムな要素がある中で「読み」を入れる場面です。特に、損失を取り返そうとする「損失回避バイアス」と組み合わさると、大きな経済的損失につながることがあります。

理解度を確認する問題

ギャンブラーの誤謬に関する記述として、正しいものを選びなさい。

A. 確率的な独立事象は、過去の結果によって影響を受ける。
B. 長期的な視点で見たとき、偶然の偏りは必ず修正される。
C. 連続した偶然の結果があると、次は違う結果になると錯覚する。
D. ギャンブラーの誤謬は、計画的行動によって生じる合理的な判断である。

正解:C

関連キーワード

  • 認知バイアス
  • 独立事象
  • 確率判断
  • ヒューリスティック
  • 行動経済学
  • ホットハンド現象
  • 系統的誤謬

関連論文

The gambler’s fallacy in problem and non-problem gamblers

概要: この研究では、問題ギャンブラー(PG)と非問題ギャンブラー(N-PG)の間で、ギャンブラーの誤謬(GF)に対する傾向の違いを調査しました。

結果: 問題ギャンブラーは非問題ギャンブラーよりもギャンブラーの誤謬に陥りやすい傾向がありました。

解釈: ギャンブラーの誤謬は、ギャンブル問題の発症や維持に寄与する可能性があり、特に問題ギャンブラーにおいて顕著であることが示唆されました。

The Gambler’s Fallacy and the Hot Hand: Empirical Data from Casinos

概要: この研究では、カジノでの実際のギャンブルデータを用いて、ギャンブラーの誤謬とホットハンド効果の存在を検証しました。

結果: プレイヤーは、連続した結果に基づいて次の結果を予測する傾向があり、ギャンブラーの誤謬やホットハンド効果が観察されました。

解釈: これらのバイアスは、プレイヤーの意思決定に影響を与え、ギャンブル行動における非合理的な判断を引き起こす可能性があります。

The Gambler’s Fallacy Is Associated with Weak Affective Decision Making

概要: この研究では、ギャンブラーの誤謬と感情的な意思決定の関連性を調査しました。

結果: ギャンブラーの誤謬に陥りやすい人々は、感情的な意思決定能力が弱い傾向がありました。

解釈: 感情的な意思決定の弱さが、ギャンブラーの誤謬の発生に寄与している可能性が示唆されました。

Measuring cognitive distortions in pathological gambling

概要: このメタ分析では、病的ギャンブルにおける認知の歪み、特にギャンブラーの誤謬の影響を評価しました。

結果: ギャンブラーの誤謬は、病的ギャンブルの発症や維持において重要な役割を果たす認知の歪みであることが確認されました。

解釈: ギャンブラーの誤謬を含む認知の歪みは、ギャンブル障害の治療や予防において重要なターゲットとなり得ることが示されました。

覚え方

過去に縛られるな、未来は50%びゅう。

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