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ヒューリスティック(Heuristic)

Heuristic 行動経済学
Heuristic

ヒューリスティックとは、「素早く判断するための思考の近道」のこと

簡単な説明

めんどいから「とりあえずこれでいいや!」って判断しちゃう脳のクセ。

いちいち全部ちゃんと考えてたら、脳がもたない!
だから「パパッと判断」できるショートカットを使ってるだけ。
でも、その近道、たまに道間違えるんだよね…

由来

ヒューリスティック(Heuristic)という言葉は、ギリシャ語の「heuriskein(見つける)」に由来します。1970年代に心理学者ダニエル・カーネマンエイモス・トヴェルスキーが提唱し、非合理的な判断や選択の原因として注目されました。

この理論は、のちに行動経済学の中核理論となり、カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。

具体的な説明

人はいつも合理的に判断するわけではありません。特に時間がない、情報が多すぎる、よく分からないときなどに「直感的なルール(ヒューリスティック)」を使って判断します。

これは効率的ですが、ときに誤った判断や偏見のもとになります。

ヒューリスティックは、「限定合理性(bounded rationality)」の中で機能する情報処理戦略であり、完全な情報や時間がない状況で人間が意思決定を行う際の適応的な手法とされます。

代表的なヒューリスティックには以下のようなものがあります:

  • 代表性ヒューリスティック:ある出来事がどれだけ典型的かに基づいて判断する
  • 利用可能性ヒューリスティック:思い出しやすさによって判断する
  • アンカリング(係留)ヒューリスティック:最初の情報(アンカー)に引きずられて判断する

具体的な実験や観察手法と結論

利用可能性ヒューリスティックの例(トヴェルスキー&カーネマン, 1973)

被験者に、”K”という文字が単語の最初にくることが多いか、それとも3番目にくることが多いかを尋ねたところ、多くの人が「最初」と答えました。

実際には”K”は3番目に来ることの方が多いのですが、人は最初に来る単語(King, Kiteなど)を思い出しやすいため、判断がゆがみました。

例文

「宝くじ売り場の前に『1等当選者出ました!』って書いてあると、当たる気がして買っちゃうよね。でも、それって利用可能性ヒューリスティックだよ。」

疑問

Q: ヒューリスティックとバイアスの違いはなんですか?

A: ヒューリスティックは判断のルール(手法)で、バイアスはその結果として生じるゆがみです。

Q: ヒューリスティックは悪いことですか?

A: 必ずしも悪いわけではありません。多くの場面で効率的な判断を助けていますが、誤判断の原因にもなります。

Q: 代表性ヒューリスティックとは何ですか?

A: ある事象がどれだけ典型的かによって確率を判断する傾向のことです。

Q: なぜ人はヒューリスティックを使うのですか?

A: 時間や情報が限られた状況では、ヒューリスティックを使うことで素早く判断できるからです。

Q: 行動経済学ではヒューリスティックをどう扱っていますか?

A: 非合理的な意思決定の原因として注目し、経済行動の現実的な理解に役立てています。

Q: アンカリング効果とは何ですか?

A: アンカリング効果とは、最初に与えられた数値や情報(アンカー)が、その後の判断や評価に大きく影響を与える現象です。たとえば、商品価格を「10,000円→今だけ5,000円!」と提示されると、実際には5,000円が妥当でも「安く見える」のはこの効果によるものです。

Q: 「支払意思額」と「受容意思額」はどのようにアンカリングに影響されるのですか?

A: メタ分析によれば、消費者は最初に提示された価格や金額に引っ張られて、実際に払ってもよいと思う金額(支払意思額)や、売ってもよいと思う金額(受容意思額)を設定してしまいます。つまり、「最初に何を聞いたか」がその後の金銭的判断を左右します。

Q: サンクコストの誤謬は年齢とともにどう変化しますか?

A: 年齢が上がるにつれて、サンクコストの誤謬(すでにかけたお金や時間にこだわって、非合理な決定をしてしまう傾向)は減少することがわかっています。経験を重ねることで、過去の投資ではなく「今何がベストか」を考える力が養われると解釈されます。

Q: フレーミング効果とは何ですか?また、年齢によって違いがありますか?

A: フレーミング効果とは、同じ内容でも表現の仕方によって人の選択が変わる現象です(例:「成功率90%」vs「失敗率10%」)。この効果は年齢に関係なく安定して見られますが、高齢者はネガティブな情報に対してより敏感に反応する傾向があります。

Q: 利用可能性ヒューリスティックはどのように判断をゆがめますか?

A: 利用可能性ヒューリスティックとは、「思い出しやすい情報」を過大評価してしまう傾向です。たとえば、テレビで連続して飛行機事故のニュースを見たあとに「飛行機は危険だ」と感じるのはこの効果です。実際のリスクと感覚が一致しないことが問題になります。

Q: メディアが与える影響はどのようにヒューリスティックと関係していますか?

A: メディアは視聴者の記憶に残りやすいインパクトの強い情報を伝えることが多く、それが利用可能性ヒューリスティックを引き起こします。そのため、実際の発生率よりも「目立ったニュース」に影響されて非合理な判断をすることがあります。

Q: なぜ人はアンカリングに抗えないのですか?

A: アンカリングは無意識に働く心理メカニズムであり、最初に目にした情報が「基準」として脳に刻まれるためです。たとえそれが無関係な情報でも、そこからの修正が不十分になる傾向があるのです。

Q: 高齢者はヒューリスティックにどのように影響を受けるのですか?

A: 高齢者は代表性や利用可能性など一般的なヒューリスティックの使用頻度において若年層と大きな差はない一方で、サンクコストの誤謬(投資したコストにこだわる判断)に陥る割合が若年層より低いことが示されています。これは人生経験や認知スタイルの変化によるものと考えられます。

Q: 年齢によってアンカリング効果の大きさは変わりますか?

A: メタ分析では年齢による大きな差は見られませんでした。ただし、認知的リソースの違いや選択肢の複雑さによって、高齢者はアンカーに依存する傾向が高まることがあります。

Q: 高齢者はリスクのある選択肢に対してどのように反応しますか?

A: フレーミング効果の研究によると、高齢者はネガティブな情報提示(例:「失敗する可能性」)に対してリスクを避ける傾向が強いことがわかっています。これは感情処理の優先順位が変化するためと解釈されています。

Q: 複雑な選択肢が多いと、高齢者の意思決定はどう変化しますか?

A: 選択肢が多くなると、誰にとっても意思決定は難しくなりますが、高齢者は特に情報処理に時間がかかりやすく、非最適なヒューリスティックに頼る割合が高くなる傾向があります。

Q: 年齢によってヒューリスティックを避ける力は強まるのですか?

A: ヒューリスティックを使わないようにする力(メタ認知や戦略的判断)は、経験によってある程度高まる側面があります。ただし、すべての種類のヒューリスティックに対して強くなるわけではなく、認知資源が関与するものはむしろ加齢で弱まる場合もあります。

理解度を確認する問題

次のうち「利用可能性ヒューリスティック」の例として最も適切なのはどれか?

A. 初対面の人を見た目で判断する
B. 最初に聞いた価格を基準にして安いか高いか判断する
C. 最近ニュースで見た事故を思い出して旅行を避ける
D. 友人が言ったことをそのまま信じる

正解:C

関連キーワード

  • バイアス(bias)
  • 限定合理性(bounded rationality)
  • 行動経済学(behavioral economics)
  • 直感と熟慮(System 1 & System 2)
  • 意思決定(decision making)

関連論文

Tversky, A., & Kahneman, D. (1974).Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science, 185(4157), 1124–1131.

この論文は、人間が不確実な状況において判断や意思決定を行う際、必ずしも論理的・統計的思考に基づくのではなく、**ヒューリスティック(簡便な思考ルール)を使っていることを示しています。これらのヒューリスティックは、通常は有用ですが、しばしば系統的なバイアス(偏り)**を引き起こすこともあると述べられています。

論文では、主に3つのヒューリスティックが紹介され、実験によってその効果とバイアスの生じ方が示されました。

  1. 代表性ヒューリスティック(Representativeness Heuristic)
     → 人はある対象がどれだけ「典型的か」に基づいて確率を判断する傾向があります。これによりベースレートの無視(基礎情報の軽視)が生じやすくなります。
  2. 利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic)
     → 人はすぐに思い出せる事象を、実際よりも頻繁・重要と判断します。これが過大評価や誤ったリスク判断を引き起こします。
  3. アンカリング&調整ヒューリスティック(Anchoring and Adjustment Heuristic)
     → 最初に与えられた情報(アンカー)に強く引きずられ、そこから不十分にしか調整できないため、最終的な見積もりが偏る傾向があります。

この論文の意義は、経済学や意思決定理論が従来前提としていた「人間は合理的に判断する」というモデルに疑問を投げかけた点にあります。
TverskyとKahnemanは、**直感的思考(System 1)**が多くの場面で働き、その結果として人は合理性を欠いた判断をすることがあると指摘しました。

これは後の「行動経済学」の礎となり、2002年にはカーネマンがノーベル経済学賞を受賞するきっかけにもなった重要な研究です。

Anchoring in Economics: A Meta-Analysis of Studies on Willingness to Pay and Willingness to Accept

概要: この研究は、経済学におけるアンカリング効果(初期情報が後の判断に影響を与える現象)を調査した複数の研究を統合し、メタ分析を行いました。

結果: アンカリング効果は、消費者の支払意思額や受容意思額に一貫して影響を与えることが確認されました。

解釈: 初期の価格提示や情報が、消費者の評価や意思決定に強く影響を及ぼすため、価格設定やマーケティング戦略において注意が必要です。

Decision-making heuristics and biases across the life span

概要: この研究は、サンクコストの誤謬やフレーミング効果などの意思決定バイアスが、年齢とともにどのように変化するかを調査しました。

結果: サンクコストの誤謬は年齢とともに減少する傾向があり、フレーミング効果は生涯を通じて比較的安定していることが示されました。

解釈: 年齢や経験が意思決定バイアスに影響を与えるため、教育や介入策は年齢層に応じて調整する必要があります。

A Survey of Availability Heuristics in Behavioral Economics and Its Application Analysis

概要: この研究は、利用可能性ヒューリスティック(思い出しやすい情報に基づいて判断する傾向)が、投資判断、広告、倫理的意思決定にどのように影響するかを調査しました。

結果: 人々は、最近の出来事や印象的な情報に基づいてリスクや確率を過大評価する傾向があることが確認されました。

解釈: メディアや広告が提供する情報が、消費者の判断に大きな影響を与えるため、情報の提示方法に注意が必要です。

Heuristic Decision-Making Across Adulthood

概要: 20歳から90歳までの成人を対象に、代表性、利用可能性、認知、アンカリング、サンクコストの各ヒューリスティックの使用傾向を調査しました。
結果: 代表性、利用可能性、認知、アンカリングのヒューリスティックの使用には年齢差が見られませんでしたが、サンクコストの誤謬に関しては、高齢者の方がこの誤謬を回避する傾向が強いことが確認されました。
解釈: 高齢者は、蓄積された知識や経験に基づいて、非合理的な投資継続を避ける傾向があると考えられます。

Ageing and Decision-Making: A Systematic Review and Meta-Analysis

概要: 60歳以上の高齢者と若年成人を比較し、財務、社会、健康、安全に関する意思決定の質を評価した57件の研究を統合したメタ分析です。
結果: 高齢者は、財務(効果量d = -0.25)および社会的(d = -0.38)な意思決定において、若年成人よりも目標達成度が低い傾向が見られました。健康に関する意思決定では有意な差は確認されませんでした。
解釈: 加齢に伴う認知機能の変化や動機付けの違いが、特定の意思決定領域でのパフォーマンスに影響を与えている可能性があります。

Age Effects and Heuristics in Decision Making

概要: 健康保険や退職金プランなどの選択課題を通じて、年齢による意思決定の違いを実験的に調査しました。
結果: 選択肢の数が増えると、最適な選択をする確率が全体的に低下し、この傾向は高齢者でより顕著でした。また、高齢者は非最適なヒューリスティックに依存する傾向が強いことが確認されました。
解釈: 情報処理能力の低下や認知的負荷の増加が、高齢者の意思決定の質に影響を与えている可能性があります。

Age Differences in the Effect of Framing on Risky Choice

概要: リスク選好におけるフレーミング効果(情報の提示方法による影響)について、年齢差を調査しました。
結果: ポジティブなフレーム(例:成功率)では、若年成人がリスクを取る傾向が高く、ネガティブなフレーム(例:失敗率)では、高齢者の方がリスク回避的な選択をする傾向が見られました。
解釈: 高齢者は、感情的な情報に対してより敏感に反応し、リスク回避的な意思決定を行う傾向があると考えられます。

Decision-Making Strategies and Performance Among Seniors

概要: 高齢者の意思決定戦略とパフォーマンスの関係を調査しました。
結果: 高齢者は、一般的なヒューリスティックへの依存が減少し、意思決定の一貫性が低下する傾向が見られました。
解釈: 加齢に伴う認知的柔軟性の低下や、意思決定戦略の変化が、パフォーマンスの低下に影響を与えている可能性があります。

覚え方

「ヒューリスティック=”ひゅーっと”判断しちゃう思考の近道」
→ 速いけど、たまに道間違えるよ!

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