映像の前後の文脈によって、見る人の感情や意味の解釈が変わる現象のこと
簡単な説明
クレショフ効果ってのは、同じ顔でも前後の映像で「この人、怒ってる?」とか「悲しんでる?」って感じ方が変わっちゃうって話。
つまり、顔の表情そのものよりも「どんなシーンで見せられたか」が大事ってこと。
映画とかCMで感情を操作されてるの、だいたいコレのせい。
由来
クレショフ効果(Kuleshov Effect)は、1920年代のソビエトの映画監督 レフ・クレショフ(Lev Kuleshov) によって発見された心理的現象です。
彼は、同じ俳優の無表情な顔のショットを、異なる場面(例えば:食べ物、棺、女性)と組み合わせて観客に見せました。すると、観客は「俳優がその場面に合った感情(空腹、悲しみ、欲望)を表している」と感じたのです。
具体的な説明
ある人の顔の写真が出てきて、その次に「ごちそうの映像」が流れると、「あ、この人お腹すいてるんだな」と思う。
でも、その人の顔の写真はまったく同じ。でも次に「お葬式の映像」が流れると、「あ、この人悲しんでるのかも」と感じてしまう。
つまり、人は表情だけじゃなくて、その前後にある映像や状況で意味をつけてしまうのです。
クレショフ効果は、「文脈効果(contextual effect)」の一種です。無表情の顔(刺激)と、その後に提示される異なるコンテクストが、知覚される感情の意味づけに影響を及ぼすことが、観察されたものです。
この現象は、知覚心理学、社会心理学、認知心理学など多くの分野に応用され、表情認知や意味づけのメカニズムの研究にもつながっています。
実験・観察手法と結論
実験(クレショフの実験)
- 参加者:観客(映画の視聴者)
- 刺激1:俳優の無表情の顔
- 刺激2:①料理の映像、②少女の映像、③棺の映像
- 観察結果:観客は、「料理の後 → 空腹そう」、「少女の後 → 優しそう」、「棺の後 → 悲しそう」と感じた。
- 結論:同じ顔でも、前後の映像の文脈が感情認知を変える。
例文
「映画を見てて、同じ顔なのに『うれしそう』とか『こわがってる』って思っちゃうのは、クレショフ効果のせいかもしれないね。」
疑問
Q: クレショフ効果は視覚以外の感覚にも起こるのでしょうか?
A: 主に視覚(映像)の文脈に関する現象ですが、近年は聴覚や言語情報でも似た文脈効果が報告されています。
Q: この効果は文化によって違いがありますか?
A: はい、文化によって表情の解釈や文脈の意味づけが異なるため、効果の出方には違いが生じます。
Q: クレショフ効果は意識的に感じるものですか?
A: 多くの場合は無意識的に起こります。観客は自分が影響を受けていることに気づかないことが多いです。
Q: この効果は現代の映像作品にも使われていますか?
A: はい、多くの映画、CM、ニュース映像などで文脈による感情操作のテクニックとして使われています。
Q: 心理学以外での応用例はありますか?
A: 映像編集、広告、プロパガンダ、教育コンテンツ、AIによる映像認識など幅広く応用されています。
Q: クレショフ効果が脳内でどのように処理されるかを調べた研究はありますか?
A: はい、Mobbsら(2006年)のfMRI研究では、同じ顔の映像でも前後の文脈によって扁桃体など感情処理に関連する脳領域の活動が変化することが示されました。これにより、文脈情報が無表情な顔の感情解釈に神経レベルで影響を与えていることが実証されました。
Q: クレショフ効果は、実験室的な映像でしか起こらないのでしょうか?
A: いいえ、Calbiら(2019年)の研究では、実際の映画のシーンを用いた自然な文脈でもクレショフ効果が観察されました。これは、日常的な映像体験においても文脈が感情認知に影響を与えていることを示しています。
Q: クレショフ効果は再現性のある現象なのでしょうか?
A: Barrattら(2016年)のメタ分析では、複数の研究データを統合し、文脈による感情認知の変化が一貫して観察されることが確認されました。これにより、クレショフ効果が心理学的に再現性のある現象であると裏付けられました。
Q: クレショフ効果はどのような文脈で特に強く現れると報告されていますか?
A: メタ分析の結果から、ポジティブおよびネガティブといった感情的に強い文脈(例えば食事や死など)の方が、中立的な文脈よりもクレショフ効果がより顕著に表れることがわかっています。
Q: この効果の研究は、現代のどのような領域に応用されているのでしょうか?
A: 映像編集、広告戦略、ニュース報道、SNSのサムネイル設計など、視覚的な文脈が人の印象に影響を与えるあらゆる場面に応用されています。fMRI研究などの成果は、AIの感情認識システムの設計にも活かされています。
理解度を確認する問題
次のうち、クレショフ効果の説明として最も適切なものはどれか?
A. 観察者が他者の感情を顔の筋肉の動きから正確に読み取る現象
B. 同じ顔でも前後の映像によって異なる感情が感じられる現象
C. 他人の行動を自分の視点で解釈する傾向
D. 人の注意が動いている対象に集中する現象
正解:B
関連キーワード
- 文脈効果(Contextual effect)
- 表情認知
- 無意識的処理
- 知覚の主観性
- 視覚心理学
- 意味づけ
- 認知バイアス
- 印象形成
関連論文
Mobbsら(2006年)のfMRI研究
概要:Mobbsらは、同一の無表情な顔を異なる感情的文脈(ポジティブ、ネガティブ、中立)と組み合わせて提示し、fMRIを用いて脳活動を測定しました。
結果:文脈に応じて、参加者の脳内で感情処理に関連する領域(扁桃体など)の活動が変化し、同じ顔に対する感情評価も異なりました。
解釈:視覚的文脈が感情認知に影響を与え、脳の感情処理ネットワークが文脈に敏感に反応することが示されました。
Calbiら(2019年)の行動およびfMRI研究
概要:Calbiらは、実際の映画シーンを用いて、クレショフ効果が現実的な映像文脈でも生じるかを検討しました。
結果:行動実験では、文脈に応じて顔の感情評価が変化し、fMRIでは感情処理に関連する脳領域の活動が文脈によって変化することが確認されました。
解釈:クレショフ効果は実験的な設定だけでなく、現実的な映像文脈においても生じることが示され、映画編集の文脈操作が視聴者の感情認知に影響を与えることが明らかになりました。
Barrattら(2016年)のメタ分析
概要:Barrattらは、クレショフ効果に関する複数の研究を統合し、文脈が顔の感情認知に与える影響を定量的に評価しました。
結果:文脈が顔の感情評価に有意な影響を与えることが確認され、特にポジティブおよびネガティブな文脈で効果が顕著でした。
解釈:クレショフ効果は再現性が高く、文脈が感情認知に与える影響は一貫して観察されることが示されました。
まとめ
レショフ効果とは、同じ無表情な顔でも前後の映像文脈によって感情の意味づけが変わる現象です。
人は顔そのものではなく、文脈に基づいて「怒っている」「悲しんでいる」などと解釈します。
この効果は映画編集や広告など、多くの場面で視聴者の印象操作にも活用されています。


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