「知能はひとつじゃない!」と主張した心理学者のこと
簡単な説明
「ガードナーって人が言ったんだよ、『頭の良さって、テストの点だけじゃ測れないよね』って。音楽が得意な人もいれば、スポーツが得意な人もいる。みんな違って、みんないいってことさ!」
由来
ハワード・ガードナー(Howard Gardner)は1943年生まれのアメリカの心理学者です。
ハーバード大学の教育学教授で、1983年に『Multiple Intelligences(多重知能)理論』を提唱しました。
この理論は、教育現場に革命を起こしたとも言われており、IQテストだけでは測れない人間の知能の多様性に焦点を当てています。
具体的な説明
学校ではよく「頭がいい=テストの点がいい」と考えられがちですが、ガードナーは「人の知能には8つのタイプがある」と考えました。
例えば、
- 音楽が得意な子
- 体を動かすのがうまい子
- 人との会話が上手な子 など、それぞれ違った「かしこさ」があるという考えです。
ガードナーの多重知能理論(Multiple Intelligences Theory)は、従来の知能観(特にg因子=一般知能)に対する批判から生まれました。
彼は「知能は文化的・状況的な文脈の中で使われる能力の集合」と定義し、以下の8つの知能を提唱しました:
| No | 知能名 | 特徴例 |
|---|---|---|
| 1 | 言語的知能 | 話す、書く、読むのが得意 |
| 2 | 論理・数学的知能 | 数学、論理、パズルが得意 |
| 3 | 空間的知能 | 絵を描く、地図を読むのが得意 |
| 4 | 身体運動的知能 | ダンス、スポーツが得意 |
| 5 | 音楽的知能 | 音感、リズム感がある |
| 6 | 対人的知能 | 人付き合い、コミュ力が高い |
| 7 | 内省的知能(内面的) | 自分の気持ちを理解できる |
| 8 | 博物的知能(自然志向) | 動植物、自然に興味がある |
※後に「実存的知能」も追加で提唱しています。
ガードナーは実験よりも文化的・事例的分析を重視し、音楽家・科学者・運動選手・宗教的指導者などを分析対象にしました。
たとえば、ピカソ(空間的知能)、モーツァルト(音楽的知能)、ガンジー(対人的知能)など、それぞれ異なる知能の天才であることから「知能は単一ではない」と結論づけています。
例文
「うちの子は勉強は苦手だけど、ピアノの才能があるの。ガードナーの理論で言うと、音楽的知能が高いのね。」
疑問
Q: ガードナーの理論はIQテストとどう違うのですか?
A: IQテストは主に論理・数学的知能や言語的知能を測りますが、ガードナー理論はそれ以外の知能も重要視します。
Q: どの知能が一番すごいのですか?
A: すべての知能に価値があり、状況によって必要とされる知能は異なります。優劣はありません。
Q: 自分の子どもがどの知能タイプかどうやって見分けますか?
A: 子どもの行動・興味・得意なことを観察することで、どの知能が強いかが見えてきます。
Q: この理論は教育にどう役立ちますか?
A: 子ども一人ひとりの特性に合わせた指導ができるため、個別最適な教育を提供できます。
Q: 多重知能理論は科学的に証明されていますか?
A: 一部の心理学者は実証性の低さを指摘していますが、教育現場では非常に支持されています。
Q: それでもなお、多重知能理論が教育現場で支持される理由は何ですか?
A:MITは、学習者の多様性を尊重し、子どもの「得意」を活かす教育につながるため、実践的価値が高く、現場で有効と評価されています。エビデンスの厳密さとは別の次元で、実用性に富むとされます。
理解度を確認する問題
ガードナーが提唱した多重知能理論で「他人との関係構築が得意」な知能はどれか?
A. 音楽的知能
B. 内省的知能
C. 対人的知能
D. 空間的知能
正解:C. 対人的知能
関連キーワード
- 多重知能理論(Multiple Intelligences)
- 教育心理学
- g因子
- 認知能力
- 適性教育
- パーソナライズ学習
関連論文
Baş, G. (2016). The Effect of Multiple Intelligences Theory-Based Education on Academic Achievement: A Meta-Analytic Review. Educational Sciences: Theory & Practice, 16, 1833–1864.
概要: この研究は、1998年から2014年までにトルコで行われた75の修士論文および博士論文を対象に、MIT(Multiple Intelligences Theory)に基づく教育が学生の学業成績に与える影響をメタ分析手法で検討しました。
結果: MITに基づく教育は、学生の学業成績に大きな効果をもたらすことが示されました。
解釈: この結果は、MITに基づく教育が学生の学業成績を向上させる可能性を示唆しています。
Baş, G. (2016). The Effect of Multiple Intelligences Theory-Based Education on Academic Achievement: A Meta-Analytic Review. Educational Sciences: Theory & Practice, 16, 1833–1864.
概要: この研究は、MITに基づく教育が学生の学業成績に与える影響を検討したもので、特に数学教育における効果を分析しました。ERIC
結果: MITに基づく教育は、学生の学業成績に大きな効果をもたらすことが示されました。
解釈: この結果は、MITに基づく教育が学生の学業成績を向上させる可能性を示唆しています。
覚え方
「知能は8つの顔を持つ」と覚えると、ガードナーの多重知能理論の核心を簡潔に捉えることができます。


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