問題行動の代わりにとる、望ましい行動のこと
簡単な説明
「ムカついて机バーン!ってしちゃうなら、代わりに『今ちょっとムリ』って言えばいいよね、って話。これが代替行動。やり方変えたら、怒られずに済むし、ちゃんと伝わるし、いいことづくめ!」
由来
「代替行動」は行動分析学(応用行動分析:ABA)で発展した概念で、特に発達障害や行動問題を持つ子どもへの支援に多く使われています。行動主義心理学、特にB.F.スキナーのオペラント条件づけ理論を基にしています。
具体的な説明
何かうまくいかないときに、悪いことをしてしまうことってありますよね。でも、それを別のいい方法に変えるのが「代替行動」です。たとえば、「お母さんに気づいてほしくて怒鳴っちゃう」子が、「お母さん、話したいよ」と言えるようになったら、それが代替行動なんだ。
代替行動とは、望ましくない行動(例えば暴れる、叫ぶ、逃げるなど)を減らすために、その行動の機能(目的)を保ったまま、より適切な行動を教えたり促したりする方法です。
たとえば、子どもが「注目されたい」という理由で教室で大声を出してしまうとき、代わりに「手を挙げて話す」という代替行動を教えることで、問題行動を減らします。
代替行動(substitution behavior)は、問題行動の機能(強化子)を保持したまま、より社会的に受容されやすい形で置き換える行動を指します。これはオペラント条件づけにおいて、機能的行動分析(Functional Behavior Assessment: FBA)に基づき導入される介入手法の一つです。
例文
「最近、クラスでイライラして教科書を投げてしまう子がいたけど、先生が『気持ちを言葉で伝える練習』をしたら、投げるのをやめて『ちょっと疲れた』って言えるようになったんだよ。これが代替行動だよ!」
疑問
Q: なぜ問題行動の代わりに他の行動を教える必要があるのですか?
A: 問題行動には必ず何かしらの目的(注目を得る、逃避するなど)があるため、その目的をかなえる方法を適切に置き換える必要があるからです。
Q: 代替行動を選ぶときは何を基準に選べばいいですか?
A: 問題行動の「機能」に着目して、同じ目的を達成できるが、より社会的に受け入れられる行動を選ぶことが大切です。
Q: 代替行動を教えても問題行動が減らないときはどうすればいいですか?
A: 行動の強化がきちんと行われているかを見直したり、問題行動の機能分析(FBA)を再検討したりする必要があります。
Q: 代替行動はどの年齢でも効果がありますか?
A: 幼児から成人まで、すべての年齢層で有効とされています。ただし教え方や強化の仕方は年齢に応じて変える必要があります。
Q: 代替行動とただのしつけはどう違いますか?
A: 代替行動は行動の「目的」に注目して、それを達成する別の方法を教えるものであり、単なる「良いことを教える」しつけとは目的が異なります。
Q: 代替行動はどれくらいの期間で身につくものなのですか?
A: 個人差がありますが、行動の難易度や強化の頻度によって異なります。比較的シンプルな代替行動であれば、数日から1週間程度で定着することもあります。一方で複雑な行動は数か月かかることもあります。
Q: 代替行動を教えるとき、ご褒美(強化子)は必ず必要ですか?
A: はい、初期段階では特に必要です。代替行動を取ったときにすぐに望ましい結果が得られる(例:注目してもらえる、休憩できる)ことで、その行動が定着しやすくなります。ただし徐々に自然な強化へと移行することが目標です。
Q: 代替行動は、どんな種類の問題行動にも適用できますか?
A: 基本的には可能ですが、自己刺激行動(例:髪の毛を抜く、指を噛む)など、外部からの強化ではなく内的強化によって維持されている行動には、慎重な対応と専門的な判断が必要です。
Q: 代替行動を教えるときに、周囲の大人が気をつけるべきことはありますか?
A: はい、子どもが代替行動を取ったときにすぐに適切に反応することが大切です。また、問題行動を無視していても代替行動を無視してしまうと、子どもは「どうせどっちも無視される」と感じてやる気を失うことがあります。
Q: 複数の代替行動を教えるのは逆効果になりますか?
A: 必ずしも逆効果にはなりませんが、初期段階ではシンプルに1つの代替行動を定着させる方が効果的です。複数の選択肢を与えるのは、基礎が身についてからが望ましいとされています。
Q: メタ分析で代替行動(FCT)はどれくらい効果があるとされていますか?
A: Heathら(2015)のメタ分析では、Robust IRD(改善率差)で非常に大きな効果量が示されました。特に「言葉による代替行動(verbal)」が最も効果的でした。これは問題行動の大幅な減少と、適切なコミュニケーション行動の増加を意味します。
Q: 代替行動の効果は年齢によって違いがありますか?
A: はい、年齢による効果の差が報告されています。Heathらの研究では、低年齢(就学前~小学生)の子どもで最も効果が大きく、年齢が上がるにつれて効果がやや減少する傾向が見られました。早期介入の重要性が示されています。
Q: 代替行動に使うコミュニケーション手段によって効果は違いますか?
A: はい、違いがあります。メタ分析によると、発声(verbal)による代替行動が最も効果的で、次に「支援型AAC(補助器具使用)」、「非支援型AAC」の順でした。可能であれば、本人の言語能力を活用した方法が望ましいとされています。
Q: 代替行動の効果に影響する障害の種類はありますか?
A: Chezanらの研究によると、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ児童の方が、知的障害児よりもFCTの効果が高い傾向がありました。これはASDの子どもが特定の機能に敏感に反応しやすいことが関係している可能性があります。
Q: 単一事例研究(Single-Case Design)は信頼できますか?
A: Chezanらは、WWC(What Works Clearinghouse)の基準を使って単一事例研究の信頼性を評価し、多くの研究が厳密な基準を満たしていたことを確認しました。また、Tau-Uや視覚分析といった統計手法との一致率も高く、信頼性は高いとされています。
Q: 代替行動の効果はどのくらい持続するのですか?
A: 一部のメタ分析やレビュー(Ghaemmaghamiら, 2021)では、効果はある程度持続するが、一般環境(教室・家庭)への汎化や長期的な維持には追加支援が必要とされています。定期的な再学習や強化スケジュールの調整が効果維持に役立ちます。
Q: メタ分析で示された今後の課題は何ですか?
A: 主な課題は以下の通りです:
- 自然環境での実施・維持の困難さ
- 強化スケジュールの適正化
- 一般化能力の育成(家庭・地域での応用)
これらは今後の研究と実践の焦点になります。
Q: 効果的な代替行動介入を設計するために何が重要ですか?
A: 機能的行動分析(FBA)によって問題行動の目的を正確に把握し、それを満たすことができる簡潔で習得しやすい行動を選ぶことが重要です。さらに、介入初期には即時かつ明確な強化を行うことが成功のカギです。
Q: 実験的研究と実際の現場(学校・家庭)での介入はどう違うのですか?
A: 実験研究では強化のタイミングや条件が厳密に管理されていますが、現場ではそうしたコントロールが難しい場合があります。そのため、実践的には、柔軟で継続的なモニタリングやフォローアップが不可欠です。
理解度を確認する問題
次のうち、代替行動の説明として最も適切なものはどれか?
A. 問題行動を禁止することで自然に改善される行動
B. 社会的注目を与えることで問題行動を消去する方法
C. 問題行動と同じ機能を持ち、より適切な形での行動
D. ご褒美によってすべての行動を強化する方法
正解:C
関連キーワード
- 応用行動分析(ABA)
- 強化子
- 機能的行動分析(FBA)
- 問題行動
- オペラント条件づけ
- 行動変容技法
関連論文
Heath et al.(2015年)によるメタ分析
障害のある対象者を含む36件の単ケース(single‑case)研究を統計的に統合。FCT の効果を Robust IRD(Improvement Rate Difference)で評価
結果
- 全体として非常に強い効果が認められた。
- 発声(verbal)の代替行動が最も効果的で、支援付き AAC(援助型代替・補助的コミュニケーション)が次、その次に非支援 AAC。
- 年齢別では、低学年児(primary-aged)が最も効果が大きく、小学生→中高生→成人の順で効果は減少傾向。
- 自閉症スペクトラム障害(ASD)対象では、知的障害のみの対象よりも効果が大きかった。
解釈
- 年齢やコミュニケーション形態、機能(自閉症 vs 知的障害)によって効果の差がある。
- なるべく「話す言葉」で代替行動を教えるのが効果的であることが示唆されます。
Chezan et al.(2017年/2018)によるメタ分析
概要
1985–2020年の研究を対象に SCRD(single‑case research design)の研究を収集し、WWC(What Works Clearinghouse)の基準で評価。Tau‑U(単ケースメタ分析指標)や視覚分析との対応を調査した研究。
結果
- FCT は問題行動の減少と代替コミュニケーション応答(ACR)の増加に対して有効。
- 研究の過半数が WWC 標準を満たしており、Tau‑U と視覚分析との一致率も高かった。
- 効果のばらつきは障害種別・年齢・研究条件によって存在。
解釈
- 設計基準の高い研究ほど信頼性が高く、FCT の普遍的な有効性を裏付ける。
- 障害の種類や介入方法による効果差を考慮した実践設計が重要です。
覚え方
代替行動とは、問題行動の目的を満たしつつ、より適切な行動に置き換える方法です。
主に子どもや障害のある人への支援で使われ、強化子を用いて学習させます。
成功には「問題行動の機能理解」と「即時の強化」がカギになります。


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