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海馬(hippocampus)

hippocampus 神経・生理
hippocampus

記憶をつかさどる脳の司令塔の一つのこと

簡単な説明

海馬ってのは、脳の「記憶の受付嬢」みたいなもん。
新しい情報が入ってくると、「おっ、新しい記憶ですね〜ちょっと預かっときます〜」って感じで、脳の倉庫に送ってくれるの。

でも、海馬が壊れると…新しいこと全然覚えられない!
昨日何食べた?…「え?昨日?」ってなる。

つまり、海馬がちゃんと働いてくれないと、毎日が“初めまして”状態なんだよ。やばくない?

由来

「海馬(hippocampus)」という名前は、ラテン語でタツノオトシゴ(seahorse)を意味します。
これは脳内の「海馬」の形がタツノオトシゴに似ていることから名付けられました。
1850年代、フランスの解剖学者ピエール・グリオリが名付けたとされています。

具体的な説明

海馬は、大脳辺縁系に属し、側頭葉の内側に位置します。
主に「エピソード記憶(経験した出来事の記憶)」や「空間記憶」の形成と保存に関与しています。
たとえば、「昨日どこで誰と何をしたか」を覚えているのは、海馬のおかげです。

私たちが日々の出来事を記憶として「残す」ために必要な脳の部位です。
ただし、海馬自体は記憶を長期保存する場所ではなく、記憶を「一時的に預かって、脳の他の場所に送る」役割を担っています。

海馬は記憶のエンコーディング(符号化)に重要であり、特に明示記憶(エピソード記憶・意味記憶)に関与しています。
海馬には「長期増強(LTP: Long-Term Potentiation)」と呼ばれる神経可塑性のメカニズムが存在し、これは学習や記憶形成の神経基盤とされています。
また、海馬は空間ナビゲーションに関連し、動物実験では**”場所細胞(place cells)”**の存在も確認されています。

具体的な実験・観察手法と結論

実験名:ブレンダ・ミルナーの研究(1957年)

患者H.M.(ヘンリー・モレゾン)の症例が有名です。
てんかん治療のために両側海馬を除去した結果、H.M.は手術後の新しい記憶が形成できなくなる
(前向性健忘)という症状を示しました。
→ このことから、海馬が新しい記憶の形成に不可欠であることが明らかになりました。

例文

「昨日のテストの内容を思い出せたのは、海馬がしっかり働いてくれたおかげだよ!」

疑問

Q: 海馬はすべての記憶を保存しているのですか?

A: いいえ、海馬は主に新しい記憶の形成に関与しており、長期記憶の保存場所は大脳皮質です。

Q: 海馬が損傷するとどうなりますか?

A: 損傷すると新しい出来事が記憶できなくなる(前向性健忘)ことがあります。

Q: 海馬はどの脳の部位にありますか?

A: 海馬は側頭葉の内側(内側側頭葉)に位置します。

Q: 海馬はどんな記憶に特に関係していますか?

A: 海馬はエピソード記憶や空間記憶に深く関与しています。

Q: 海馬は加齢でどう変化しますか?

A: 海馬は加齢とともに萎縮する傾向があり、アルツハイマー病では特に顕著です。

Q: 海馬が強く働くのはどんなときですか?

A: 海馬は「新しい経験」や「空間的に複雑な環境」に接したときに特に活性化します。たとえば、新しい町を探検したり、初めて行く学校の構内を歩いたりする時に活発に働きます。

Q: ストレスや不安が海馬に与える影響はありますか?

A: はい、慢性的なストレスや高レベルのコルチゾール(ストレスホルモン)は、海馬の萎縮を引き起こす可能性があります。特に長期間続くストレスは、海馬の神経新生(新しい神経細胞の生成)を阻害します。これにより記憶力が低下することがあります。

Q: 発達心理学の観点から、子どもの海馬はいつごろから機能し始めるのですか?

A: 海馬の発達は出生後も続き、3歳前後から記憶形成の機能が急激に発達します。これは、子どもが「物心がついた頃(3歳前後)」の記憶が多く残っていることと一致しています。この現象を幼児期健忘といいます。

Q: 高齢になると海馬にはどのような変化がありますか?

A: 加齢により海馬は徐々に萎縮していきます。これが「記憶力の低下」に関係しており、特にアルツハイマー型認知症では、海馬の萎縮が最も顕著な初期症状とされています。MRI画像などでも萎縮が確認できます。

Q: 「海馬での神経新生」は大人でも起こるのですか?

A: はい、以前は「神経細胞は再生しない」と考えられていましたが、近年の研究では大人の海馬でも神経新生が起こることが分かっています。運動や学習、瞑想などが神経新生を促進するといわれています。

Q: 「場所細胞(place cells)」とは何ですか?

A: 「場所細胞」は海馬にある特定のニューロンで、特定の場所にいるときだけ活動する細胞です。これにより、動物や人は「自分がどこにいるか」を脳内で地図のように把握できます。これは空間記憶にとって非常に重要です。

Q: 海馬と関連する疾患にはどのようなものがありますか?

A: 海馬は以下の疾患と強く関連しています:

  • アルツハイマー病:海馬の萎縮が初期症状。
  • うつ病:慢性ストレスによる萎縮が報告されている。
  • てんかん:側頭葉てんかんの発作焦点となることが多い。

Q: 海馬は情動(感情)と関係していますか?

A: 直接的な情動制御は扁桃体が担いますが、海馬は記憶と情動の関連付けに関与します。たとえば、「ある場所で怖い思いをした」という記憶が定着するのは、扁桃体と海馬の連携によるものです。

Q: 学習によって海馬の構造や機能は変わりますか?

A: はい、海馬は「経験依存的可塑性」を持っています。たとえば、タクシー運転手の海馬(特に後部)が一般人より大きいことが報告されています(ロンドン・タクシー運転手研究)。学習すればするほど、海馬は鍛えられるのです。

Q: 運動は海馬にどのような影響を与えるのですか?

A: 有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)は、海馬の体積を増やす効果があります。2025年のメタ分析によると、特にうつ症状を抱える人や高齢者において、1年の運動で海馬体積が平均2%前後増加したことが報告されています。これは記憶力や学習力の改善にもつながります。

Q: 成人でも海馬で神経新生が起きるのですか?

A: はい、最新の研究では成人後も海馬の「歯状回」という部分で神経新生が続いていることが分かっています。この**成人神経新生(AHN)**は、記憶形成だけでなく、ストレスへの柔軟な対応や感情のコントロールにも関係していると考えられています。

Q: 神経新生は、うつ病やPTSDなどの精神疾患にどのように関わりますか?

A: 成人神経新生が低下すると、感情の柔軟性が失われ、ストレスに弱くなることが分かっています。2024年のレビューでは、神経新生が「うつ病」「不安障害」「PTSD」などの情動障害に関連しており、神経新生の促進が新たな治療手段になる可能性が示唆されています。

Q: 海馬の「パターン分離」とは何ですか?

A: パターン分離とは、「似ているけど違う」出来事や場所を正確に区別する能力のことです。たとえば、昨日行ったカフェと今日行った別のカフェの違いを記憶するなどの機能です。メタ分析では、神経新生がこの能力に大きく関与しているとされ、神経新生を抑制すると区別が難しくなることがわかりました。

Q: 神経新生は行動や学習にどの程度影響を与えているのですか?

A: 2014年のメタ分析では、神経新生が行動(記憶テストなど)に与える影響は小さいが確かに存在するという結果が出ています。一方で、行動への影響は神経新生だけでなく、他の脳構造や環境的要因との相互作用が重要であることも示されました。

Q: ストレスは海馬の機能にどう影響するのですか?

A: 慢性的なストレスやトラウマは、海馬の神経細胞の萎縮や神経新生の抑制を引き起こします。その結果、記憶力や学習能力が低下するほか、恐怖や不安の記憶だけが強く残る傾向もあります。これにより、うつ病やPTSDの発症リスクが高まります。

Q: 運動以外で神経新生を促す方法はありますか?

A: あります。新しい経験(学習や旅行)、十分な睡眠、バランスの取れた食事(オメガ3脂肪酸など)、瞑想やマインドフルネスなども神経新生に良い影響を与えるとされています。これらを生活に取り入れることで、海馬の健康を保つことができます。

Q: 海馬の研究は今後どのような方向に進みそうですか?

A: 今後は、海馬の神経新生が精神疾患の予防や治療のカギになるかどうか、さらに、脳刺激技術(tDCSやrTMS)との組み合わせが有効かどうかを検証する研究が進んでいくと予想されています。また、AIによるMRI画像の解析で、海馬の構造変化を早期に検出する取り組みも進んでいます。

Q: 子どもや思春期の海馬はどう発達していくのですか?

A: 海馬は胎児期から成長し、3歳ごろに急速に発達します。思春期にも再び発達のピークがあり、学習能力や感情の安定性に関わる神経接続が強化されます。この時期のストレスやトラウマは、海馬の構造や機能に長期的な影響を与える可能性があるため、心理的サポートが重要です。

Q: 臨床現場で海馬の知見はどのように活かされていますか?

A: 海馬の萎縮は、うつ病、認知症、PTSDなどの診断補助に利用されています。MRIによって体積の変化を評価したり、記憶検査によって海馬機能の状態を間接的に測定することがあります。さらに、運動療法や心理療法を通じて海馬機能の回復を促す試みも始まっています。

理解度を確認する問題

以下のうち、海馬の機能として正しいものはどれか。

A. 呼吸や心拍を調節する
B. 筋肉の運動制御を行う
C. エピソード記憶の形成に関与する
D. 感情の表出を直接制御する

正解:
C. エピソード記憶の形成に関与する

関連キーワード

  • 記憶形成
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  • 空間記憶
  • 長期増強(LTP)
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  • H.M.症例
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  • 場所細胞

関連論文

Scoville, W. B., & Milner, B. (1957). Loss of recent memory after bilateral hippocampal lesions. Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry, 20(1), 11–21.

この論文では、H.M.という患者の海馬を両側切除した結果、新しい記憶が全く形成できなくなったことが報告されています。
この研究により、海馬が記憶形成に重要な役割を果たすことが世界的に認識されるようになりました。

「The Role of Physical Exercise on Hippocampal Volume in Depression」

内容概要: 運動が海馬の体積減少を抑制したり回復させたりする効果を、ヒトおよび動物研究で評価。
結果: 定期的な有酸素運動によって、抑うつモデル被験者や高齢者において海馬体積の増加が確認されました(例:1年で左海馬約+2.1%/右海馬約+1.97%)。
解釈: 海馬は慢性的なストレスや加齢によって萎縮しやすいが、運動はその負の影響を逆転できる有力な非薬理的介入であり、記憶改善や感情調節に寄与する可能性があります。

「The impact of adult neurogenesis on affective functions: of mice and men」(Alonso et al., 2024)

内容概要: 大人の海馬で生じる神経新生(AHN)が、感情・気分関連機能にどのように関与するかを総覧。
結果: 動物・ヒトの研究をまとめ、AHNがパターン分離、柔軟性、忘却、ストレス抵抗性に寄与し、うつやPTSDなどの感情障害の病理に深く関わる可能性が示唆されています。
解釈: AHNは単なる記憶形成だけでなく、適応的行動や情動制御においても重要な役割を果たし、将来の心理療法や精神治療の標的となり得ます。

成人神経新生と行動パターン分離に関するメタ分析(2017年)

内容概要: 神経新生を人工的に抑制した動物実験のデータを統合。
結果: パターン分離タスク(似た刺激を区別する能力)において、神経新生抑制の効果は一貫して観察されました。ただし一部例外あり。
解釈: 神経新生はエピソード記憶の類似場面の区別(pattern separation)に不可欠であり、適切に働かないと誤認・混乱に繋がる可能性があります。

覚え方

海馬は脳の側頭葉にある記憶の形成に重要な領域です。
エピソード記憶や空間記憶に深く関わり、新しい出来事を記録する役割を担います。
ストレスや加齢で萎縮しやすく、運動や学習で機能が改善されることもあります。

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