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詐病(Malingering)

Malingering コラム
Malingering

ウソの病気で得をしようとすること

簡単な説明

「ウソついて“病気のフリ”して、なんか得しようってヤツ。それが詐病!保険金もらったり、仕事サボったりね。だけどバレたらマジやばいから、ちゃんと検査で見抜かれちゃうよ〜。」

由来

「詐病(さびょう)」は英語で Malingering(マリンガリング) といい、もともとは軍隊や労働現場で「仕事をサボるために病気のフリをする人」を指していました。語源はフランス語の malin(悪意のある)から来ていて、「悪意を持って病気を装う」という意味を含んでいます。

具体的な説明

詐病とは、実際には病気やけががないにもかかわらず、病気であると偽って振る舞うことです。その目的は、以下のように「外的報酬」を得るためです。

  • 労働や軍務を回避したい
  • 保険金や賠償金を得たい
  • 刑罰や裁判を回避したい

これは精神疾患の症状ではなく、意図的な行動である点が重要です。

たとえば、学校に行きたくない中学生が「お腹が痛い」とウソをついて休もうとする場合、これは軽い詐病にあたります。ただし、これは病的なものではなく、一時的な意図によるものです。

DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル 第5版)では、詐病は精神疾患とは分類されず、「他の状態に影響を及ぼす可能性のある行動上の問題」として記載されています。

詐病は「事実の誇張やねつ造」が意図的に行われ、「外的動機」が明確です。これは虚偽性障害(Factitious Disorder)と異なり、前者は外的報酬目的、後者は「病人としての役割を得るため」という内的動機が動機となります。

記憶テスト心理検査の結果を利用し、詐病かどうかを判断することができます。たとえば、「記憶に関する簡単すぎる問題で異常に間違える」など、不自然な回答パターンがある場合、詐病の可能性があります。

有名な例は「TOMM(Test of Memory Malingering)」という記憶テストです。これは詐病のスクリーニングに用いられ、正常な人ならほぼ100%正解できるのに、わざと間違える人をあぶり出すことができます。

例文

「裁判を有利に進めたくて、あの人はうつ病を装っていたけど、検査で詐病だと判明したんだ。」

疑問

Q: 詐病と虚偽性障害(作為症)との違いは何ですか?


A: 詐病は「お金や回避などの外的報酬」が目的で、虚偽性障害は「病人として扱われたいなどの内的動機」が目的です。


Q: 詐病は精神疾患に分類されますか?


A: DSM-5では精神疾患ではなく、他の状態に影響を及ぼす行動問題として扱われます。


Q: どんな検査で詐病を見分けられますか?


A: TOMM(Test of Memory Malingering)やMMPIの矛盾ある回答パターンなどが参考になります。


Q: 詐病は法律上、どう扱われますか?


A: 保険金詐欺や虚偽申告として刑事責任を問われることがあります。


Q: 子どもが仮病を使ったときも詐病になりますか?


A: 動機や程度によりますが、短期的で明確な回避目的がある場合、広義では詐病の一例です。

Q: 詐病は演技ですか?本当に苦しんでいる人との違いは何ですか?


A: はい、詐病は意図的な演技です。本人が「うそをついている」自覚がある点が特徴です。本当に苦しんでいる人は、自覚なく症状を訴えますが、詐病の人は「病気のフリ」をして、外的報酬を得ようとしています。


Q: 詐病は医師や心理士が簡単に見抜けるのですか?


A: 一見わかりにくいこともありますが、心理検査(例:TOMM)や行動観察、話の矛盾などを総合的に見て判断します。簡単ではありませんが、専門家が使うツールを駆使することで見抜くことが可能です。


Q: 詐病を見抜く時に注意しなければならないことはありますか?


A: はい、「本当に症状がある人を疑ってしまう」リスクがあるため、慎重な判断が求められます。誤って診断すると、患者の信頼を損なうだけでなく、本当に支援が必要な人を見逃してしまいます。


Q: どんな人が詐病をしやすいのですか?


A: 特定の性格の人というよりも、「現在の状況」が詐病を引き起こしやすいです。たとえば、刑事責任を逃れたい被告人、保険金が欲しい人、学校や仕事を休みたい人などが詐病をすることがあります。


Q: 詐病と転換症(旧:ヒステリー)との違いは何ですか?


A: 転換症は、身体的な症状があるのに医学的には原因が見つからない状態で、本人は無自覚です。一方、詐病は意図的に症状を装う点で明確に異なります。つまり、転換症は本当に症状が出ていても理由がわからない、詐病はそもそも症状が「ウソ」です。


Q: 「仮病」はすべて詐病にあたりますか?


A: 厳密には違います。仮病は日常的な言い回しで、軽い意味で使われることが多いです。詐病はより専門的・医学的な概念で、特に「外的報酬を目的とした意図的な行動」と定義されます。したがって、仮病=詐病とは限りません。


Q: 子どもが「お腹が痛い」と言って学校を休みたがる場合も詐病ですか?


A: 動機が明確で、一時的に学校を避けたいという意図がある場合は、広義の詐病と考えられますが、心理的なストレスや不安が原因で訴える場合もあります。見極めには丁寧な観察が必要です。


Q: 詐病を見抜いたあとはどう対応すべきですか?


A: 詐病が疑われた場合でも、相手を責めるのではなく、「なぜそうする必要があったのか?」という背景に目を向けることが大切です。福祉的・心理的な支援が必要な場合もあります。


Q: 詐病の研究はどんな目的で行われているのですか?


A: 主に法廷での判断、保険制度の公正性、医療資源の適正利用、精神疾患との鑑別などを目的として研究されています。誤診や誤解が重大な影響を及ぼすため、正確な評価が求められています。


Q: 詐病を訴える人が後に本当に病気になることはありますか?


A: まれにあります。最初は意図的でも、長期的に「その状態」に慣れてしまい、本当に心身の症状が現れてしまうことがあります。これは「役割の内在化」とも言われ、詐病と心理的症状の境界が曖昧になるケースです。

Q: SIMSのメタ分析で、詐病と判定される割合が36%もあるのはなぜですか?


A: SIMSは「詐病の疑いがあるかどうか」をスクリーニングするツールであり、明確に詐病と確定するものではありません。臨床環境では、実際に苦しんでいる患者が高得点を出すこともあるため、「偽陽性(本当は詐病でない人を詐病と判断)」が生じやすく、その結果36%という高い割合になります。


Q: TOMMは感度がやや低いとされますが、なぜそれでもよく使われるのですか?


A: TOMMは特異性が非常に高く(0.90以上)、詐病ではない人を「詐病」と誤って判断するリスクがとても低いという特徴があります。つまり、「詐病でないこと」を確認するには非常に信頼できるツールです。そのため、裁判や保険の審査など、間違いが許されない場面で重宝されています。


Q: ADHDの模擬詐病において、SVT(症状妥当性テスト)よりPVT(パフォーマンス妥当性テスト)が効果的だったのはなぜですか?


A: SVTは自己申告形式であるため、詐病者が「それらしく」答えることが可能です。一方、PVTは記憶や注意力などの認知課題に基づいていて、わざと悪い成績を出そうとすると逆に不自然さが目立つため、詐病の検出力が高くなります。


Q: TOMMでカットオフ値を「<42」から「<49」に緩めることにメリットはありますか?


A: はい、<49に設定すると感度(詐病を見つける力)が向上することがメタ分析で示されました。特異性も維持されるため、実務的には「より多くの詐病を見逃さずに済む」利点があります。ただし、文脈に応じて調整が必要です。


Q: SIMSの偽陽性リスクを減らすにはどうすればよいですか?


A: SIMS単体ではなく、他の妥当性指標(例:PVT・TOMM・行動観察)と併用することが重要です。また、SIMSで高得点でも、文脈(訴えている症状の一貫性や環境的背景)をしっかり評価すれば、誤った判断を減らすことができます。


Q: TOMMやSIMSなどの検査は子どもや高齢者にも使えるのですか?


A: 一部は使用可能ですが、TOMMは主に16歳以上の成人向けに設計されています。子どもや高齢者には認知能力やテストへの理解力にばらつきがあるため、結果の解釈には特別な配慮が必要です。別のツール(例:MSVTなど)を使う場合もあります。


Q: 詐病評価における「偽陰性」とは何ですか?


A: 「偽陰性」とは、実際には詐病している人を“正常”と判断してしまうことを指します。感度が低い検査ではこのリスクが高まります。例えばTOMMで従来のカットオフ(<42)を使った場合、詐病者を見逃す可能性があります。


Q: 詐病を評価する際に、どんな組み合わせで検査を進めると信頼性が高くなりますか?


A: 最新の知見では、PVT(例:TOMM)とSVT(例:SIMS)を併用し、加えて臨床面接や生活歴の観察を加えることが推奨されています。複数の角度から詐病の兆候を確認することで、診断の精度が格段に上がります。


Q: ADHDなどの精神疾患は詐病と誤診されやすいですか?


A: はい、特にADHDは客観的検査が少なく、自己申告が中心になるため、模擬詐病が成立しやすい疾患といわれています。そのため、PVTや行動観察を取り入れた多面的な評価が必要です。

理解度を確認する問題

以下のうち、詐病に該当する特徴として最も適切なものを1つ選びなさい。

A. 無意識的に症状を作り出す
B. 外的報酬を目的として症状を装う
C. 病人であることに満足する
D. 他者を助けるために症状を偽る

正解:B

関連キーワード

  • 虚偽性障害
  • 外的報酬
  • DSM-5
  • TOMM
  • 二次的利益(二次利得)

関連論文

SIMS(Structured Inventory of Malingered Symptomatology)のメタ分析(2025年・臨床患者対象)

概要

  • 34研究・計40サンプル、合計8,844名の臨床患者を対象に、非法廷(非 forensic)環境でSIMSの失敗率(=基準カットオフ点以上を示す率)を調査したメタ分析です。

結果

  • 平均SIMSスコアは 15.9(SD = 5.2)
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  • 異質性指標 I² = 96.6%(研究間ばらつき大)

解釈

  • 臨床環境でもSIMSで一定割合の患者が「有効性テストで失敗」する傾向があり、単純に詐病と断定できない点に注意が必要です。
  • 偽陽性(真に症状がある人を「詐病」と誤分類)を避けるために、慎重なカットオフ設定と文脈の考慮が推奨されます。

TOMM(Test of Memory Malingering)のメタ分析(2020年:成人対象)

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結果

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解釈

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ADHD 詐病検出に関するメタ分析(2019年・大学生模擬詐病)

概要

  • 大学生サンプルを使ったADHD詐病(模擬 ADHD)検出のためのパフォーマンス妥当性テスト(PVT)と症状妥当性テスト(SVT)を比較した、11研究によるメタ分析。

結果

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解釈

  • ADHDの模擬詐病ケースでは、パフォーマンスベースの妥当性検査(PVT)が特に有効であるという結果が示されています。
  • 症状自己報告型(SVT)よりも、行動面のテストを含む評価の重要性が高いことが示唆されます。

覚え方

「詐欺の“詐”は、詐病の“詐”!」
→ 詐欺のように、何かをだまして得ようとするのが詐病。目的は“外的報酬”

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