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リンゲルマン効果

Ringelmann Effect 社会・感情・性格
Ringelmann Effect

「集団になると、人はサボりやすくなる」効果のこと

簡単な説明

「リンゲルマン効果ってさ、みんなでやると逆に“俺がやらなくてもいいか”ってなるアレよ。グループ掃除でスマホいじってる子、絶対これ出てるよね!」

由来

この効果は、フランスの農学者 マクシミリアン・リンゲルマン(Maximilien Ringelmann) が1913年に行った実験によって発見されました。彼は、人が綱引きなどの共同作業で力を出す量を人数ごとに測定しました。

具体的な説明

リンゲルマン効果とは、集団で作業を行うときに、個人の努力量が減少する現象のことを指します。つまり、人数が増えるほど、1人あたりの頑張りが少なくなるという傾向があるのです。

たとえば、クラスで掃除をしているとき、3人だけなら一生懸命やるけど、10人もいると「他の人がやってくれるだろう」と思って手を抜く人が出てくるようなものです。

リンゲルマン効果は、社会的手抜き(social loafing)の一形態とされ、集団内でのモチベーションと責任感の分散に起因します。個人が自分の貢献度を評価されにくいとき、努力の量が減少するという心理的メカニズムが働きます。

また、リンゲルマンの実験では以下のような結果が出ています:

  • 1人で綱を引くときの平均力:約63kg
  • 2人で引いた場合:1人あたり約53kg
  • 3人:約45kg
  • 8人:約31kg

つまり、人数が増えるほど、1人あたりの出力が下がる結果となりました。

例文

「今日は掃除当番だったけど、クラス全員がいたから誰も真剣にやらなかった。リンゲルマン効果が出てたな〜」

疑問

Q: なぜ集団だと努力しなくなるのですか?

A: 自分の努力が目立たなくなるため、責任感が薄れ「他の人がやってくれるだろう」という心理が働くからです。

Q: リンゲルマン効果と社会的手抜きは同じですか?

A: ほぼ同じですが、リンゲルマン効果は物理的作業に関する実験で、社会的手抜きはその一般化された心理学用語です。

Q: 集団でも努力を維持する方法はありますか?

A: 各人の役割を明確にし、成果が見えるようにすることで、リンゲルマン効果を減らすことができます。

Q: この効果はどのくらい一般的ですか?

A: 実験でも現実でも多く観察されており、学校・職場・スポーツなどあらゆる集団で見られます。

Q: 少人数なら効果は出ませんか?

A: 小規模なグループでも、明確な目標や責任がないとリンゲルマン効果は起こる可能性があります。

Q: リンゲルマン効果は知的作業(勉強や会議)にも起こるのですか?

A: はい、起こります。知的作業でも、集団で課題に取り組む際に、個人の責任が曖昧になると「自分はあまり貢献しなくてもいい」と感じ、努力を抑えてしまうことがあります。これは「頭の綱引き」とも言える現象です。

Q: 「社会的促進」とリンゲルマン効果は反対の概念ですか?

A: 似ているけれど、反対というわけではありません。社会的促進は「他人に見られているとパフォーマンスが上がる」効果で、リンゲルマン効果は「他人と一緒にやることで努力が下がる」現象です。状況によってどちらが出るかは変わります。

Q: 責任の明確化でリンゲルマン効果は本当に防げますか?

A: 多くの研究が、役割や成果の可視化(例:名前を出す、成果を個人で提出させる)を行うことで、リンゲルマン効果が減少すると報告しています。つまり、「誰が何をやったか」がわかるようにすると、手抜きは減ります。

Q: リンゲルマン効果と「傍観者効果」は違うものですか?

A: はい、違います。傍観者効果は「誰かが助けを必要としているときに、周囲に他の人がいると自分は動かなくなる」現象で、緊急時の援助行動に関するものです。一方、リンゲルマン効果は日常の集団作業における努力量の低下に関するものです。

Q: 子どもの教育現場ではどのようにリンゲルマン効果を防げますか?

A: 教室でのグループワークにおいては、次のような工夫が効果的です:
・役割分担(書記、発表者、タイムキーパーなど)
・個人の成果評価(ルーブリックで各自の貢献を採点)
・グループサイズを小さく(3〜4人程度)
このように「責任」と「評価」を明確にすることで、子どもたちの意欲的な参加を促せます。

Q: 一部の人だけが頑張ってしまう「フリーライダー問題」との違いは?

A: フリーライダー問題は、意図的に他者の努力にただ乗りするという経済学や政治学の用語です。リンゲルマン効果は、無意識に努力が減ってしまう心理的現象で、故意ではない点が異なります。

Q: SNSやオンラインの共同作業でもリンゲルマン効果は起きますか?

A: はい、特に顔が見えない環境では評価されにくいため、リンゲルマン効果は起きやすくなります。逆に、チャットやタスク管理ツールで「誰が何をやっているか」が見えると、効果を軽減できます。

Q: 文化によってリンゲルマン効果の強さは変わりますか?

A: 文化による違いも報告されています。**個人主義的文化(例:アメリカ)**ではリンゲルマン効果が顕著になりやすく、**集団主義的文化(例:日本)**ではグループの調和を重んじるため発生しにくいこともあります。ただし、日本でも責任が曖昧な状況では発生します。

Q: リンゲルマン効果が出やすいのはどんな課題ですか?

A: 単調で意味が感じられない課題、または成果が曖昧な課題では出やすいです。逆に、自分の貢献が明確に見えたり、課題が魅力的だったりすると努力は維持されます。

Q: リーダーの存在はリンゲルマン効果に影響しますか?

A: はい、大きく影響します。信頼されているリーダーが、目的や評価の仕組みを明示すると、メンバーの努力が高まりやすくなります。また、リーダーがメンバーの努力を認知し、フィードバックを与えることも有効です。

理解度を確認する問題

次のうち、リンゲルマン効果の説明として最も適切なものはどれか。

A. 人が集団にいるとき、他人を模倣する傾向が強くなる現象
B. 集団作業において、個人の努力が分散し低下する現象
C. 他者の感情に同調する傾向が高まる現象
D. 自分の行動を他者の目線で評価する傾向

正解: B

関連キーワード

社会的手抜き(social loafing)

集団心理

責任分散

モチベーション

努力の見える化

評価可能性(evaluability)

自己効力感

関連論文

Karau & Williams (1993) 『Social loafing: A meta‑analytic review and theoretical integration』

概要:社会的手抜きに関する78件以上の研究を対象にしたメタ分析。集団の大きさ、文化、性別、タスクの性質などの要因を統合的に検討。

主な結果

  • 社会的手抜きはタスクやサンプルを超えて「堅固に」認められた現象である。
  • 性別や文化(個人主義vs集団主義)、タスクの意味づけや目標の明確性などが影響を及ぼす。
  • 女性や東洋文化圏出身者では社会的手抜きが小さい傾向。
  • 集団サイズが大きくなると、社会的手抜きは増加する傾向あり。

解釈

  • Karau & Williamsは「Collective Effort Model(集団的努力モデル)」を提唱し、個人の努力は「努力→集団成果→個人成果」の期待や、仕事の価値、評価可能性などによって決まり、集団ではこれらが弱まるため手抜きが生じやすいと説明。

覚え方

心理学の理論に基づいた予防策

リンゲルマン効果(集団になると個人の努力が低下する現象)を発生させないためには、心理学の理論に基づいた予防策が効果的です。以下では、実証研究と理論をベースに、具体的な対策を整理しました。

1. 評価可能性(Evaluability)を高める

理論的根拠:
  • Karau & Williamsの「Collective Effort Model(集団的努力モデル)」
  • Williams et al.(1981):成果が個別に評価されると手抜きが減る
実践例:
  • グループワークで「誰が何を担当したか」を記録
  • 成果を個人単位でも提出させる(例:個人レポート)

2. 課題の意味づけ(Task Value)を明確にする

理論的根拠:
  • 自己決定理論(Deci & Ryan, 1985):人は内発的動機づけが高いときによく動く
  • Karau & Williams:価値ある課題では手抜きが起きにくい
実践例:
  • 「この仕事が誰にどんな良い影響を与えるのか」を伝える
  • タスクの社会的・教育的意義を話し合う時間をとる

3. 役割の明確化(Role clarity)

理論的根拠:
  • 社会的比較理論(Festinger, 1954):他人との比較が可能だと人は努力する
  • 役割が不明確だと「他人がやってくれるだろう」と感じやすい
実践例:
  • 「書記」「進行」「発表」などの役割をグループ内で分担
  • 各人の責任を事前に明示しておく(名札やチェックリストなど)

4. 集団の規模を適切に保つ

理論的根拠:
  • リンゲルマンの元実験:人数が増えるほど1人あたりの努力は下がる
  • 小規模の方が責任感・監視効果が高まる
実践例:
  • 2~4人程度の小グループで作業させる
  • 大人数で活動する場合も「サブグループ制」にする

5. 個人の貢献をフィードバックする

理論的根拠:
  • 強化理論(Skinner):行動は結果によって強化される
  • 自己効力感(Bandura):達成の実感がモチベーションを高める
実践例:
  • 作業後に「あなたの○○が役立った」と個別に声をかける
  • 自分のパフォーマンスが見えるグラフや記録を導入する

6. 自己責任感を高める心理教育

理論的根拠:
  • 帰属理論(Weiner):成功・失敗を「自分の責任」ととらえると努力が続く
  • 道徳的同調(moral conformity):他者の視線によって自己制御が働く
実践例:
  • 「みんながやるから手を抜く」のではなく、「自分の価値観で動こう」という行動指針を明示
  • 内省シートやリフレクションを用いて、自分の役割を見直す習慣をつける

心理学に基づくチェックリスト

項目実施状況(〇/△/×)
個人の成果が見えるようにしているか?
役割分担が明確になっているか?
グループサイズは適正か?
課題の価値を共有しているか?
貢献がフィードバックされているか?
自己責任感を育む教育がされているか?
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