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アプレイザル(appraisal)

appraisal コラム
appraisal

出来事の意味を自分でどう評価するか?のこと

簡単な説明

「アプレイザルってのは、物事が起こったときに“これヤバいかも”とか“全然いけるっしょ!”って自分の中で判断するアレだよ。ストレスも感情も、それ次第で変わるんだよね。人生って結局、起きたことじゃなくて、どう思うかで変わるんよ。つまり、アプレイザルで世界の見え方が変わるってこと!」

由来

「アプレイザル(Appraisal)」という言葉は英語で「評価」や「査定」という意味があります。心理学では、特にストレスや感情の研究において重要な用語です。1960年代に心理学者リチャード・ラザルス(Richard S. Lazarus)がストレス研究の中でこの概念を提唱しました。

具体的な説明

アプレイザルとは、ある出来事が起こったときに、それを自分がどう受け止め、どう評価するかという心のプロセスを指します。たとえば、テストで30点を取ったときに、「自分はダメだ」と感じるのか、「次に頑張ればいい」と思うのか、これは人それぞれ違います。

この受け止め方こそが「アプレイザル」です。

ストレスは出来事(ストレッサー)によって自動的に発生するのではなく、その出来事をどう評価するかによって強くもなり、弱くもなります。つまり、同じ出来事でも「怖い」と思う人もいれば、「挑戦だ」と思う人もいるということです。

大学レベルでの説明

ラザルスによるアプレイザル理論では、次の2つの評価が重要だとされます:

1. 一次的アプレイザル(Primary Appraisal)

出来事が自分にとって有害か、有益か、中立かを判断する。

2. 二次的アプレイザル(Secondary Appraisal)

その状況に対して、自分は対処できるかどうかを評価する。

この2段階の評価を通して、感情反応やストレス反応が決まります。

具体的な実験や観察手法と結論

【スピールバーガーらの実験(1970年代)】

学生にストレスのかかる課題(例:スピーチ)を課し、その際のアプレイザルとストレス反応を測定。

結果
「この課題は自分にとって危険だ」と評価した学生は、心拍数や不安レベルが高くなり、
「この課題は自分を成長させる」と評価した学生は、ストレス反応が軽減された。

同じ課題でも、アプレイザルの違いが生理的反応を変えるという証拠になりました。

例文

「明日の発表、緊張するけど、自分の力を見せるチャンスだって思えた。これは良いアプレイザルだったと思う。」

疑問

Q: 一次的アプレイザルと二次的アプレイザルはどちらが先に起こるのですか?
A: 一次的アプレイザルが先に起こり、その後に二次的アプレイザルが行われます。

Q: アプレイザルは無意識で起こることもありますか?
A: はい、多くの場合は自動的かつ無意識的に起こりますが、意識的に変えることも可能です。

Q: アプレイザルは訓練で変えられますか?
A: はい、認知行動療法(CBT)などでアプレイザルの仕方を意図的に変える訓練が行われます。

Q: ストレスの強さはアプレイザルだけで決まりますか?
A: 主にアプレイザルが関与しますが、個人の性格や過去の経験、社会的サポートなども影響します。

Q: アプレイザルは感情とどう関係していますか?
A: アプレイザルの内容によって、怒り、不安、喜びなどの感情が引き起こされます。

Q: アプレイザルは一度決めたら変えられないのですか?

A: いいえ、アプレイザルは後から変えることができます。たとえば、最初は「怖い」と思った出来事でも、考え方を変えることで「挑戦」ととらえるようになることがあります。これを「再評価(リアプレイザル)」といいます。

Q: 結局「挑戦になった」と思えるようになった場合、それは二次的アプレイザルなのですか?

A: 「挑戦になった」と感じる評価は、一次的アプレイザルの一種です。

一次的アプレイザルでは、その出来事が自分にとって「脅威」「損失」「無関係」「挑戦」などのどれに当たるかを判断します。つまり、「これは挑戦だ」と感じるのは、出来事の“意味”を評価している段階=一次的アプレイザルです。

一方、二次的アプレイザルは「この挑戦に対して自分は対処できるか?」という評価です。たとえば:

  • 「発表は挑戦だ」と思った(一次的アプレイザル)
  • 「練習してきたから自信がある」と思えた(これは二次的アプレイザル)

Q: 感情の強さはアプレイザルの強さに関係していますか?

A: はい、大きく関係しています。出来事を「とても重大だ」とアプレイザルすると、それに伴う感情も強くなります。逆に「たいしたことない」と思えば、感情も弱くなります。

Q: アプレイザルは全ての感情に関係していますか?

A: 多くの感情には関係していますが、反射的な感情(びっくりなど)は一部、アプレイザルを経ないで発生することもあります。ただし、ほとんどの複雑な感情(怒り、悲しみ、喜びなど)はアプレイザルを経て生じます。

Q: アプレイザルが誤っていると問題が起きますか?

A: はい、実際以上に「危険だ」と評価すると、強いストレスや不安につながることがあります。逆に「大丈夫だ」と過信しすぎると、準備不足などで問題になることもあります。正確なアプレイザルが重要です。

Q: アプレイザルは文化によって違いますか?

A: はい、大きく異なります。同じ出来事でも、ある文化では「恥」ととらえられることが、別の文化では「挑戦」とされることもあります。文化的背景もアプレイザルに影響を与える要因です。

Q: アプレイザルと「自己効力感(self-efficacy)」には関係がありますか?

A: はい、密接に関係しています。自己効力感が高い人は「自分ならなんとかなる」と評価しやすく、アプレイザルも前向きになる傾向があります。つまり、アプレイザルは自信の有無にも左右されます。

Q: 子どもと大人でアプレイザルの傾向は違いますか?

A: 一般的に、経験の少ない子どもは自動的・感情的なアプレイザルに頼ることが多いです。一方、大人は過去の経験や社会的スキルに基づいたアプレイザルを行う傾向があります。

Q: アプレイザルの仕方を変えるにはどんな方法がありますか?

A: 認知再構成やマインドフルネス、日記をつけて自分の思考を客観視する方法などがあります。心理療法では認知行動療法(CBT)がよく使われます。

Q: アプレイザルと感情の関連は本当に実証されているのですか?

A: はい、Yeo & Ong(2024)のメタ分析では、47種類のアプレイザルと63種類の感情との間に平均相関 r=0.33という有意な関係が見つかっています。これは中程度から強い効果を意味し、「アプレイザルが感情を形成する」という理論的主張を裏付ける実証的な証拠です。

Q: 「挑戦」「脅威」などの一次的アプレイザルと感情の関係は?

A: メタ分析では、「脅威」というアプレイザルは不安・恐怖と強く結びつき、「挑戦」というアプレイザルはやる気や希望などのポジティブ感情と関連していることが明らかになりました。つまり、出来事の意味づけがそのまま感情の方向性を決めているのです。

Q: アプレイザルを意図的に変える「再アプレイザル」にはどんな効果がありますか?

A: 認知的再評価(Cognitive Reappraisal)に関するメタ分析では、ストレス耐性(レジリエンス)との強い正の相関が報告されています。つまり、「どう受け止めるかを変える力」はストレスへの強さにも直結しています。

Q: 感情の強さはアプレイザルの種類によって変わりますか?

A: はい。Yeo & Ongのメタ分析では、アプレイザルの内容によって異なる感情の強度が出ることが確認されています。たとえば「コントロールできない」と感じると、より強いネガティブ感情(絶望・怒り)に繋がりやすくなります。

Q: メタ分析で「予測されていなかった関係」も見つかったとはどういう意味ですか?

A: 研究者がもともと想定していなかったアプレイザルと感情の組み合わせ(たとえば「自己関連性」と「恥」)にも**中程度の効果(平均 r=0.27)**があることが分かりました。これはアプレイザル理論の柔軟性や広がりを示すもので、感情の個人差理解に貢献しています。

Q: メタ分析ではどのような評価方法が使われているのですか?

A: 相関係数(r値)を平均化し、異なる研究の結果を統合します。また、出版バイアスの検討や異質性(研究間の違い)の検証など、統計的信頼性も担保しています。こうしたプロセスにより、再現性のある結論が導かれます。

Q: アプレイザル研究はどんな応用が期待されますか?

A: 教育・臨床・職場メンタルヘルスなど、さまざまな領域での感情調整スキルの向上が期待されます。再評価を促すワークや、思考記録シートなどもすでに多くの心理教育プログラムに組み込まれています。

Q: 「47種類のアプレイザル」とは具体的にどんなものですか?
A: 主なものとしては次のようなアプレイザル(認知評価)があります:

  • Goal congruence(目標との整合性):出来事が自分の目標や欲求と一致するか
  • Accountability(原因帰属):誰がその出来事に責任があるか
  • Normative significance(規範的一貫性):社会的・文化的な規範に沿っているか
  • Threat(脅威):危険や損失の可能性があるか
  • Challenge(挑戦):成長や達成の機会として捉えられるか
  • Uncertainty(不確定性):結果が予測できるかどうか
  • Control / coping potential(制御感や対処可能性):自分でコントロールできるか、対応可能か
  • Self-esteem relevance(自我や自尊心への影響):自分の価値がどう影響を受けるか

これらの評価軸が組み合わさって47種類に分類・体系化されています。

Q: これらのアプレイザルはどんな感情と結びついているのですか?
A: メタ分析では、多くの予測関係(例:Threat→不安、Challenge→やる気)が有意(75%、平均 r=0.33)に支持されています 。例えば:

  • Threat(脅威):恐怖、不安、緊張
  • Challenge(挑戦):希望、モチベーション、達成感
  • Control(制御可能性):安心感、自己効力感
  • Accountability(責任帰属):怒りや恥などの対人感情

理解度を確認する問題

以下のうち、ラザルスが提唱したアプレイザルに該当するのはどれか?

A. 反射的な怒りの爆発
B. 外的報酬による動機づけ
C. 出来事の意味を評価する認知過程
D. 無意識下の防衛機制

正解:C

関連キーワード

  • ストレス理論
  • ラザルス
  • 認知評価理論
  • 一次的評価
  • 二次的評価
  • 認知行動療法
  • コーピング
  • 感情調整
  • 自動思考
  • 認知の枠組み(フレーミング)

関連論文

Yeo & Ong (2024)「Associations Between Cognitive Appraisals and Emotions: A Meta‑Analytic Review」

概要:309件・2634の効果量を分析し、47種類のアプレイザルと63種類の感情の関係性を調査したメタ分析です 。

結果

  • 予測された関係の75%が有意(平均効果量 r=0.33 中程度~大)
  • 未予測の関係でも平均 r=0.27 と中程度の効果あり 。

解釈
認知的アプレイザル(一次的評価など)が感情の発生に大きく寄与しており、定義されていない関係にも実証的根拠があると示されています。心理学的理論の精緻化に寄与すると同時に、臨床および応用研究への発展が期待されます。

「A meta-analysis of cognitive reappraisal and personal resilience」

概要:認知的再評価(Reappraisal)スキルとレジリエンス(心理的回復力)の関連を定量的にまとめたメタ分析 。

結果
再評価スキルを持つ人は、ストレス・逆境への耐性が向上しているという有意な関連が示されました。

解釈
認知的再評価という再アプレイザルの練習は、単なる感情調整だけでなく、レジリエンス向上にも効果があることが示唆され、教育・臨床・予防プログラムに有効です。

覚え方

アプレイザルとは、出来事に対して「これは自分にとってどういう意味があるか?」を評価する心のプロセスです。
この評価によって生じる感情(例:不安・やる気・怒りなど)が変わります。
一次評価(意味づけ)と二次評価(対処可能性)の2段階で行われます。

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