「今のままが一番安心」と感じて、変化を避ける心理のこと
簡単な説明
人間って、変わるのめんどくさい生き物なんだですよ。いつも同じお弁当を選んじゃうのは、失敗したくないからだよ。知らない味より、知ってる味が安心だよねっていう心理が現状維持バイアスです。
由来
「現状維持バイアス」は1988年、サミュエルソン(William Samuelson)とゼックハウザー(Richard Zeckhauser)によって提唱されました。経済行動や意思決定において、人間は合理的な判断よりも感情に左右されやすいことを示した研究の中でこのバイアスが明らかになりました。
具体的な説明
人は、新しい選択肢があっても「今の状態を変えない方が無難」と考えてしまう傾向があります。これは変化に対する不安や、損をしたくないという感情によるものです。
現状維持バイアスは、意思決定理論(decision-making theory)や行動経済学(behavioral economics)の分野で研究されており、選択の初期状態がデフォルトとされている場合、それを変更せず選び続ける傾向が強まることが知られています。
このバイアスは、損失回避(loss aversion)や確証バイアス(confirmation bias)とも関連しています。
実験例:サミュエルソンとゼックハウザーの実験(1988)
被験者にいくつかの投資プランを提示しました。あるグループには「Aが現状の投資です」と伝えたところ、他の選択肢がAよりも合理的でも、多くの人がAを選びました。
結論:
「現状」とラベルが貼られるだけで、選択行動が偏ることが確認されました。
例文
「毎朝、同じパン屋さんでパンを買うけど、新しい店に行くのが面倒だから変えない。これが現状維持バイアスです。」
疑問
Q: なぜ人は現状を好む傾向があるのですか?
A: 変化には不確実性やリスクが伴うため、損失を避けたいという心理(損失回避)が働くからです。
Q: 現状維持バイアスと保守性バイアスの違いは何ですか?
A: 現状維持バイアスは「変化しない選択」を好む傾向で、保守性バイアスは「既存の信念に固執する」傾向です。似ていますが焦点が異なります。
Q: このバイアスはどんな場面で現れやすいですか?
A: 投資、転職、政治的選択、契約更新など、大きな決断を伴う場面でよく見られます。
Q: 現状維持バイアスに打ち勝つにはどうしたらいいですか?
A: 変化の利益を定量的に評価し、感情ではなくデータに基づく判断をすることが有効です。
Q: デフォルト効果と現状維持バイアスの関係は?
A: デフォルト効果(初期設定がそのまま選ばれる傾向)は、現状維持バイアスの一形態と考えられています。
Q: 現状維持バイアスはどの年齢層に強く現れる傾向がありますか?
A: 一般に、年齢が高くなるほど現状維持バイアスが強まる傾向があります。これは加齢に伴ってリスク回避傾向が強まり、変化よりも安定を優先する心理が働きやすくなるからです。
Q: 現状維持バイアスはポジティブな面もあるのですか?
A: はい、あります。すべての変化が良いわけではないため、不用意な変更を避けるという意味では安全性を確保する効果があります。特に災害対応や医療などの場面では、安定した手順を保つことが重要な場合もあります。
Q: マーケティングや広告ではこのバイアスをどのように利用していますか?
A: 「今のプランのままで安心」「現状プランに満足していませんか?」というような表現で、変更への抵抗感を和らげつつ、現状の維持を誘導する戦略が使われます。また、選択肢を増やすよりも、既存プランにプレミアム機能を追加する方法もよく使われます。
Q: 現状維持バイアスと「後悔回避」との関係はありますか?
A: 非常に密接な関係があります。人は、新しい選択をして失敗すると「後悔」が大きくなりがちです。そのため、後悔を避けるために現状を維持しようとする傾向が強まります。
理解度を確認する問題
以下のうち「現状維持バイアス」の説明として最も適切なものはどれか?
A. 自分の信念を支持する情報ばかり集める傾向
B. 一度得た情報を基準として判断する傾向
C. 現在の選択肢を変更せずに維持しようとする傾向
D. 他人の意見に流される傾向
正解:C
関連キーワード
- 損失回避(loss aversion)
- デフォルト効果(default effect)
- 行動経済学(behavioral economics)
- フレーミング効果(framing effect)
- 意思決定理論(decision-making theory)
関連論文
覚え方
「げんじょー、いじ、がいっす!(現状、維持がいいっす)」


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