目に見える“行動”から見えない“こころ”を読み解く方法のこと
簡単な説明
「作業検査法ってのは、“何ができるか”より、“どうやってやるか”を見る心理テスト!計算早くても性格バレるし、粘り強さとか、地味に心のクセが出ちゃうやつ!」
由来
作業検査法は、第二次世界大戦中の兵士の適性評価などから発展した手法です。
日本では1950年代以降、産業分野(就職・職業適性)や臨床現場(行動観察)で活用されるようになりました。
目に見える「行動」や「仕事のやり方」から、その人の性格傾向や精神状態を測ることが目的です。
具体的な説明
作業検査法は、被検者に一定の課題(例:図形模写、線の引き写し、記号処理など)を実施してもらい、作業の様子やスピード、正確さ、取り組み方などから心理的特性を評価する方法です。
代表的な作業検査には次のようなものがあります。
| 検査名 | 内容 | 評価対象 |
|---|---|---|
| 内田クレペリン検査 | 1桁の足し算を繰り返し行う | 作業曲線・持続力・集中力・性格傾向 |
| ベンダー・ゲシュタルト検査 | 図形の模写 | 脳機能障害の有無、発達 |
| 作業遂行検査(棒作業検査など) | 棒やビーズを並べる | 手先の器用さ、持続力、集中の偏り |
作業検査法は、性格検査の一種でありながら、言語に依存しない非言語的アセスメントが可能という特長があります。
特に以下の点で評価されます:
- 信頼性(reliability):同一人物が複数回行っても一貫した傾向が出る
- 妥当性(validity):性格傾向や精神状態との関連が示されている
- 投影的要素:作業の「取り組み方」に無意識的な性格傾向が現れる
実際の検査例と解釈
■ 内田クレペリン検査(UCテスト)
- 内容: 1桁の数字をひたすら隣同士で足し算(例:3+5=8)していく
- 時間: 15分×2回(間に1分休憩)
- 評価点: 作業のスピード、誤答数、波形(作業曲線)のパターン
- 結果例:
- 最初から最後まで安定 → 粘り強さ・集中力あり
- 後半に失速 → 疲れやすい・短期集中型
- 極端な上下動 → 感情の波が激しい可能性
例文
「就職前に作業検査法の一つである内田クレペリン検査を受けたら、自分の集中力の強さがわかって自信がついた。」
疑問
Q: 作業検査法は性格を直接測っているのですか?
A: 正確には、「作業行動を通して性格傾向や心理状態を推測する」方法です。質問紙のように“自分で答える”のではなく、“行動に出る特徴”を読み取ります。
Q: 内田クレペリン検査って、ただの計算じゃないの?
A: いいえ、計算の正誤だけでなく、「どんなふうに取り組むか」が重要です。集中力の波、ミスの出方、スピードの変化などを通して、行動特性や性格傾向が分析されます。
Q: 作業検査法は誰でも使えるの?
A: 基本的には、心理職など専門家が訓練を受けて実施・評価する検査です。特にクレペリン検査は「専門機関による分析」が必要とされます。
Q: 作業検査法と質問紙法の違いは?
A: 質問紙法は「自分が思うこと」を言葉で答える方法。
作業検査法は「無意識に出る行動のパターン」を観察する方法です。
Q: 検査結果はどう使われますか?
A: 採用試験、発達評価、臨床支援などに使われます。特に「自分の強み・弱みの傾向」を客観的に知る手段として活用されています。
Q: 作業検査法は発達障害の評価にも使われますか?
A: はい、使われます。
たとえば、ADHD(注意欠如・多動症)では注意の持続性や衝動的な反応傾向が作業検査で観察されやすく、ベンダー・ゲシュタルト検査などで書き写しの様子を通して、視覚的注意や構成力の問題が確認されることがあります。
Q: 作業検査法で得られる“作業曲線”って何ですか?
A: 作業曲線とは、作業時間の経過に伴う作業量や正答率の変化をグラフ化したものです。
たとえば「最初は速いが後半に落ち込む」「休憩後に急に改善する」などのパターンが、その人の集中力や精神的スタミナの個性を示します。
Q: 作業検査法の結果は数値化されますか?
A: 一部は数値化されますが、全体の傾向や波形、取り組み方の質的評価も重視されます。
たとえば、誤答の数や正答率は数値ですが、波形の安定性や性急さ・慎重さなどは、作業中の態度から読み取られる非数値的な情報です。
Q: 検査結果は性格診断にそのまま使えるのですか?
A: いいえ、作業検査法の結果は“傾向”や“可能性”を示すものであり、単独では診断には使いません。
他の心理検査(質問紙法・面接法など)と組み合わせて、多面的に理解する補助的資料として用いられます。
Q: 作業検査法の“投影性”とはどういう意味ですか?
A: 投影性とは、自分でも気づかない無意識の性格傾向が行動に表れることです。
たとえば、無言で行う単純作業の中で出てくる急ぐ・雑になる・慎重になる・ペースが乱れるといった行動が、内面の特性(不安傾向や粘り強さ)を反映していると考えられます。
理解度を確認する問題
次のうち、作業検査法に該当するものはどれか?
A. MMPI
B. YG性格検査
C. 内田クレペリン検査
D. ロールシャッハテスト
正解: C
作業検査法の特徴として最も適切なものは?
A. 言語を使って自己評価する
B. 非言語的作業で性格を推測する
C. 心理職でなくても誰でもできる
D. 結果は点数だけで判断される
正解: B
関連キーワード
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覚え方
「やってるうちに、心が出る!」
→ 作業検査法は“やる気”や“粘り”がグラフに出ちゃう、まさに“無意識の性格テスト”!


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