性暴力に関する間違った思い込みのこと
簡単な説明
「“短いスカート履いてたからレイプされてもしょうがない”とか、“男なら我慢できないのが普通”って言う人いるけど、全部ただの偏見!それが“レイプ神話”ってやつ。そういうの信じてたら、本当の加害者が逃げて、被害者だけが苦しむんだよ。」
由来
「レイプ神話(rape myths)」という言葉は、アメリカの心理学者Martha Burtが1970年代に提唱しました。
彼女はこの言葉を、性暴力の加害者や被害者に対して社会がもつ誤った信念や偏見を表現するために使いました。
具体的な説明
たとえばこんな思い込みがあります:
- 「知らない人に襲われるのがレイプで、知り合いなら違う」
- 「夜に一人で出歩いた方が悪い」
- 「露出の多い服を着ていたから襲われた」
こうした思い込みは、事実と違うだけでなく、被害者を責めたり、加害者をかばったりする危険な考え方なんです。
こういう間違った思い込みを「レイプ神話」といいます。
レイプ神話とは、性暴力に関する社会的・文化的に根づいた誤った信念であり、主に以下のような特徴があります:
- 被害者の責任を強調する(例:「被害者が誘った」)
- 加害者の責任を軽視または否認する(例:「加害者も我慢できなかっただけ」)
- 「本物のレイプ」と「そうでないレイプ」の区別を持ち込む
これらの神話は、司法の場面(裁判や警察対応)や、加害者・被害者の心理、社会の態度形成に深刻な影響を及ぼします。
代表的なレイプ神話の例(Bohnerら, 2009)
| カテゴリ | 神話の例 |
|---|---|
| 被害者責任型 | 「服装が挑発的だったから仕方ない」 |
| 加害者正当化型 | 「酔っていたから判断ができなかった」 |
| 合意歪曲型 | 「相手もその気だったに違いない」 |
| 被害否認型 | 「抵抗しなかったから、レイプではない」 |
実証研究と結果
研究者:M. Burt(1980)
調査:レイプ神話を信じる度合いと、性暴力に対する態度の関係を調査
結果:レイプ神話の信奉度が高い人ほど、
- 被害者に否定的、加害者に寛容
- 通報を「大げさ」と思いやすい
- 性暴力を「たいしたことない」ととらえやすい
という傾向があることが明らかになりました。
例文
「“夜に出歩いてたからレイプされても仕方ない”という考え方は、レイプ神話にあたります。」
疑問
Q: レイプ神話はなぜ問題なのですか?
A: 被害者を責めることで、通報や相談がしづらくなり、被害の隠蔽や加害者の免罪につながってしまうからです。
Q: レイプ神話はどこで広まりやすいですか?
A: SNS、ドラマ、漫画、報道などを通して、知らず知らずのうちに広まることが多いです。
Q: 男性もレイプ被害に遭いますか?
A: はい。男性やLGBTQ+の人も被害者になりますが、偏見のために相談しづらいという問題があります。
Q: レイプ神話をなくすためにできることは?
A: 正しい知識を持ち、偏見のある発言を見かけたらやさしく事実を伝えることが大切です。
Q: レイプ神話を信じている人の特徴はありますか?
A: 一般に、性役割に対する固定観念(例:「女は男に従うべき」)が強い人に多く見られる傾向があります。
Q: レイプ神話を信じる人が多い環境では、加害者にどのような影響がありますか?
A: 自分の行為を正当化したり、「たいしたことじゃない」と軽視したりする傾向が強まり、再犯や暴力の正当化につながる可能性があります。
Q: 「レイプ神話」が心理的に根づく背景には何がありますか?
A: 性役割の固定観念や「男は積極的で女は受け身」といった古いジェンダー観が、神話の温床になっています。
Q: 教育現場ではレイプ神話にどう対応すればよいですか?
A: 性教育の中で「同意とは何か」「性暴力はどんな形でも暴力である」ことを正しく教え、偏見を持たない話し合いの機会をつくることが大切です。
理解度を確認する問題
次のうち、「レイプ神話(rape myth)」に該当する考えとして不適切なものを1つ選びなさい。
A. 性暴力の責任は加害者にある
B. 被害者が酔っていたなら、レイプではないことがある
C. 性的同意は途中でも取り消すことができる
D. 服装や行動にかかわらず、被害者を責めるべきではない
正解:B
関連キーワード
- 性暴力(sexual violence)
- 同意(consent)
- 被害者非難(victim blaming)
- ジェンダー・バイアス
- 性役割ステレオタイプ
- レイプカルチャー(rape culture)
- 加害者中心思考
- 心的外傷(トラウマ)
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解釈:社会の無意識的な偏見が、性暴力問題の根深さを支えていることを示唆。
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解釈: レイプ神話の受容は、被害者支援の妨げとなり、性暴力の社会的容認につながる可能性があるため、教育的介入が重要です。
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解釈: レイプ神話の受容が、性的暴力の加害行動を正当化し、増加させる可能性があるため、予防的介入が必要です。
覚え方
「レイプ神話」は“正しいようで間違っている”社会の常識。
→ 思い込みじゃなく、事実で考えよう!


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