他人を傷つけたり、ルールを無視する行動が長期間続く心の問題のこと
簡単な説明
「行為障害ってのは、ただの“ワルガキ”って話じゃなくて、止めたくても止められない深刻な心のブレーキ故障なんだよね。早めのブレーキ修理(支援)が大事!」
由来
「行為障害(Conduct Disorder)」は、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断マニュアル)やICD-11(WHOの国際疾病分類)に記載されている子どもや青年期にみられる行動面の障害です。
- ICD-11では「Disruptive Behavior and Dissocial Disorders」の一部
- 日本では発達障害や非行などと誤解されやすいが、臨床的な治療対象の精神障害です
具体的な説明
たとえば、誰かの物を壊したり、動物をいじめたり、学校のルールをわざと無視したりする行動が、くり返し長く続く状態のことです。
一時的な“イタズラ”や“反抗”とはちがって、「やってはいけないこと」がわかっていても止められないことが多いです。
診断基準(DSM-5より一部抜粋)
過去12ヶ月間に、以下のカテゴリから3つ以上の症状があり、過去6ヶ月間に1つ以上が存在する:
- 他者への攻撃性(暴力、いじめ、武器の使用など)
- 財産の破壊(放火、故意に壊すなど)
- 詐欺・窃盗(うそをついて騙す、万引きなど)
- 重大な規則違反(夜間外出、無断欠席、家出など)
行動は年齢に不適切で、反復的かつ持続的であり、社会的・学業的・職業的な機能に影響を与える。
発症率と傾向
- 一般の児童・思春期における有病率:約 2~10%
- 男児に多く(3~4倍)、反社会的行動に発展するリスクが高い
- 反抗挑戦性障害(ODD)→行為障害→反社会性パーソナリティ障害へと進行することもある
例文
「行為障害のあるAくんは、物を壊したり暴力をふるったりする行動が止められず、学校でも居場所をなくしつつある。」
疑問
Q: 行為障害と一時的な反抗期はどう違うの?
A: 反抗期は一過性で家庭内に限ることが多いですが、行為障害は持続的かつ他者への攻撃性を含む点で異なります。
Q: 行為障害は「親のしつけのせい」ですか?
A: 必ずしもそうではありません。遺伝要因、脳機能、環境ストレスなどさまざまな要因が複雑に関係しています。
Q: 薬で治りますか?
A: 単独の薬物療法は効果が薄く、認知行動療法(CBT)や家族療法、学校・地域の支援が中心になります。
Q: 女の子にも起こりますか?
A: はい。ただし、男児よりも感情的な対人トラブル(陰湿ないじめなど)で現れやすい傾向があります。
Q: 大人になれば自然に治りますか?
A: 放置すると反社会性パーソナリティ障害に進行するリスクが高く、早期支援が重要です。
Q: 行為障害の子どもは、すべて悪意をもって行動しているのですか?
A: 必ずしもそうではありません。多くの子どもは自分の感情や衝動をコントロールする力が弱いために、反射的に問題行動をとってしまうことがあります。本人も「やりたくてやってるわけじゃない」と感じている場合が多いです。
Q: CDのある子どもに叱責や罰は有効ですか?
A: 厳しい叱責や体罰は逆効果です。怒りや反発を助長し、問題行動を悪化させる可能性があります。一貫したルールと、適切なフィードバック(良い行動への強化)が大切です。
Q: 行為障害は発達障害(例:ADHD、自閉スペクトラム症)と関係がありますか?
A: はい。ADHDの子どもの中にCDを併発するケースがあり、衝動性や注意欠陥が行動問題に影響することがあります。ASD(自閉スペクトラム症)と併存することもあります。
Q: 保護者はどう関わればいいのでしょうか?
A: 批判よりも「安心して失敗できる関係づくり」が大切です。ポジティブな関わり方(例:できたことを認める、タイミングよく褒める)を継続することが信頼の土台になります。
Q: CDの予後はどうなりますか?
A: 早期に適切な支援があれば、問題行動が軽減し、社会適応が可能になるケースも多いです。一方で、未介入・放置された場合は、非行、学校離脱、犯罪行為に進行するリスクが高くなります。
Q: 親は、子どもの反抗期と行為障害(CD)をどうやって見分ければよいのですか?
A: 反抗期もCDも「親や大人に反抗する行動」があるため、見た目は似ていることがあります。
ですが、以下の点で大きく異なります:
| 比較項目 | 反抗期 | 行為障害(CD) |
|---|---|---|
| 続く期間 | 数ヶ月〜1年ほど | 少なくとも6ヶ月以上 |
| 行動の範囲 | 主に家庭内での反抗 | 家庭外(学校・地域)でも継続的に問題行動あり |
| 暴力・破壊行為 | 基本的にはない | 他人や物に対して攻撃的・破壊的な行動あり |
| 自分を責めること | 「本当は悪いことしたかも」と思いやすい | 罪悪感が薄く、他責的・反省が乏しいことが多い |
| 人間関係の維持 | 家族や友人との関係は保たれている | 周囲とのトラブルが多く、孤立しがち |
理解度を確認する問題
行為障害にみられる特徴として最も適切なものはどれか。
A. 短期的な気分の浮き沈みが中心である
B. 反復的で意図的な反社会的行動が持続する
C. 過去の記憶を忘れることが中心症状である
D. 社会的交流が増えて過活動になることが多い
正解:B
関連キーワード
Research Review: The importance of callous-unemotional traits for developmental models of aggressive and antisocial behavior
CDにおけるCU特性(共感性の欠如)が、重度な攻撃性と将来の犯罪リスクの強力な予測因子であることを検証
結果:CU特性を持つ子どもは、介入の効果が出にくいが、適切な支援によって改善の可能性あり
解釈:「同じCDでも支援の“質”と“早さ”が運命を分ける」ことを示した重要な研究
関連論文
- 反抗挑戦性障害(ODD)
- 反社会性パーソナリティ障害(ASPD)
- 認知行動療法(CBT)
- 共感性の欠如(CU traits)
- 児童精神医学
- 家庭・学校環境のストレス
- 逸脱行動(delinquency)
覚え方
“常識のルール”を破り続ける行動の連続


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