犯罪者の行動や心理を分析して、犯人像を予測する方法のこと
簡単な説明
「FBIのプロファイリングってね、ざっくり言うと“犯人のクセを見抜いて、顔も知らんのに性格とか職業まで当てに行く技”なんだよ!ミステリー好きならワクワクするやつ!」
由来
FBIのプロファイリングは、1970年代後半にFBI行動科学ユニット(Behavioral Science Unit)で始まりました。特に、FBI捜査官のジョン・ダグラス(John E. Douglas)やロバート・レズラー(Robert Ressler)が中心となり、連続殺人犯などの凶悪犯罪者にインタビューを重ね、その行動パターンや心理的特性をデータベース化しました。
この分析により、未解決の事件において犯人の特徴(年齢・性格・職業など)を推定する「犯罪者プロファイリング(Criminal Profiling)」が確立されたのです。
具体的な説明
FBI方式のプロファイリングは、行動証拠から犯人の性格や生活パターンを読み取ろうとする方法です。
捜査官が現場の様子(被害者との関係、殺害方法、遺体の扱いなど)を分析し、次のような情報を導き出します:
- 犯人は組織的か非組織的か
- 若いか年配か
- 初犯か再犯か
- 精神的に安定しているかどうか
FBI方式の6ステップ(代表的モデル)は以下の通りです。
犯罪現場の評価(Profiling Inputs)
現場の写真、報告書、遺体の状態などすべての情報を収集
現場の分類(Decision Process Models)
犯罪のタイプ、計画性の有無、リスクレベルを分類
犯人の行動パターンの再構築(Crime Assessment)
犯人がどのように犯行に至ったかを仮説的に再現
プロフィール作成(Criminal Profile)
年齢、性別、職業、性格、生活習慣などを推定
捜査支援(Investigation)
プロファイルを元に容疑者リストを絞る
逮捕後の評価(Apprehension)
プロファイルが実際の犯人像と合っていたかを検証し、今後の改善に活用
プロファイリングは、犯罪心理学(Forensic Psychology)と臨床心理学の知見を応用しています。行動証拠に基づいた演繹的(deductive)または帰納的(inductive)な分析が行われ、特に「行動的証拠分析(Behavioral Evidence Analysis)」が重要視されます。
また、プロファイリングには次の2つの大きなアプローチがあります:
- 犯罪者志向プロファイリング(Criminal Typologies):過去の犯罪者パターンとの類似性を基に分析
- 犯罪現場主導プロファイリング(Crime Scene Analysis):特定の事件ごとの現場特徴に注目
FBIはこの手法を用いて、テッド・バンディ、BTK殺人犯(デニス・レイダー)などの連続殺人犯のプロファイルを構築し、実際の逮捕につなげた事例があります。
FBI方式のプロファイリングでは、犯人の行動パターンに基づいて「秩序犯罪(organized crime)」と「無秩序犯罪(disorganized crime)」に分類するという考え方があります。
これはプロファイリングの核(コア)とも言える概念ですので、しっかり理解しておきましょう。
秩序犯罪:計画的で冷静、証拠を残さないように行動する犯人の犯罪
無秩序犯罪:衝動的で混乱、現場に証拠を多く残す犯人の犯罪
この分類は、犯行現場の様子から犯人の性格や心理状態を推定するために使われます。
| 種類 | 特徴 | 犯人の傾向 |
|---|---|---|
| 秩序犯罪 | 計画的、証拠を隠す、道具を持参 | 知的レベルが高く、社会的適応が可能 |
| 無秩序犯罪 | 衝動的、証拠を多く残す、現場が混乱している | 精神的混乱、社会的孤立が多い |
この分類は**行動的証拠分析(Behavioral Evidence Analysis)**の一環で、初期のFBIプロファイラーであるダグラスとレズラーによって提案されました。
このモデルでは、現場の整理具合・遺体の扱い・証拠の有無などから、犯人が理性的か、感情的かを読み解くことができます。
ただし、現実の犯罪では「完全に秩序」または「完全に無秩序」ということは少なく、両方の特徴を持つ“混合型(mixed offender)”も存在するため、注意が必要です。
具体的な特徴の比較
| 分類 | 具体的特徴 |
|---|---|
| 秩序型 | ・被害者と接触する前に計画あり ・現場を掃除する ・死体の処理や隠蔽がある ・証拠を持ち帰る ・被害者に対してコントロールを取る |
| 無秩序型 | ・突然の犯行 ・凶器が現場の物 ・現場に指紋や体液を残す ・被害者への執着が強く遺体の損壊が多い ・行動が一貫せず予測不能 |
例文
「現場の状況から、犯人は落ち着いて行動していたとわかる。つまり、精神的に安定していて、計画的に犯行に及んだ可能性が高い。このタイプの犯人は、家族や仕事を持つ“普通の生活者”の可能性がある。」
疑問
Q: FBIのプロファイリングは日本の警察でも使われているのですか?
A: 一部の事件では参考にされていますが、日本ではプロファイリング専門部署が限られており、FBIのような体系的な運用はまだ発展途中です。
Q: 組織的な犯人と非組織的な犯人の違いは何ですか?
A: 組織的犯人は計画性があり、現場をきれいにして去ることが多いのに対し、非組織的犯人は衝動的で、現場に証拠を多く残す傾向があります。
Q: プロファイリングは科学的なのですか?
A: 一部には経験や直感に基づく部分もあり、完全な科学とは言えませんが、統計データや心理理論を活用しており、科学的手法として発展しつつあります。
Q: プロファイリングの職業はどんな人がなるのですか?
A: 心理学・犯罪学・法学の知識を持ち、警察やFBIでの訓練を受けた専門家です。臨床心理士や法医学者も関わることがあります。
Q: どんな犯罪にプロファイリングは使われやすいのですか?
A: 特に連続殺人、誘拐、性犯罪、放火など、異常性やパターンのある犯罪で使われやすいです。
Q: 犯罪者プロファイリングの主な目的は何ですか?
A: 犯人の性格、行動傾向、生活状況などを推測し、捜査の効率化を図ることです。
Q: FBI方式のプロファイリングはどのようなタイプの犯罪に適していますか?
A: パターン性があり、犯人の心理や行動が現場に反映されやすい連続殺人や性犯罪などに適しています。
Q: 組織的犯人(Organized Offender)はどのような行動を取る傾向がありますか?
A: 計画的で冷静、証拠を隠す、被害者をコントロールする、犯行後に現場を整理する傾向があります。
Q: 無秩序犯人(Disorganized Offender)の典型的な心理状態はどのようなものですか?
A: 衝動的、精神的混乱、不安定、ストレスや怒りに駆られて突発的に犯行を行うことが多いです。
Q: 犯罪プロファイリングで用いられる「犯罪者類型(Criminal Typology)」とは何ですか?
A: 犯罪者を行動パターンや心理傾向によって分類し、同じタイプの過去の事例と比較して分析する手法です。
Q: プロファイリングにおいて「犯行の進行段階(modus operandi)」とは何を指しますか?
A: 犯人が犯行を成功させるために取る一連の行動のパターンを意味し、時間とともに進化することがあります。
Q: プロファイリングは捜査のどの段階で活用されますか?
A: 主に捜査中の容疑者絞り込みや潜在的犯人像の作成時に活用されますが、事件解決後の分析にも使われます。
Q: FBIのプロファイリングと比較して、イギリス式プロファイリング(Investigative Psychology)の違いは?
A: FBI方式は経験的・直感的手法に基づくのに対し、イギリス方式は統計学とデータ分析を重視しています。
Q: 混合型(Mixed Offender)とはどのような犯人ですか?
A: 組織的な行動と無秩序的な行動の両方を見せる犯人で、状況や感情の変化によって行動がブレるのが特徴です。
Q: プロファイリングの限界点にはどんなものがありますか?
A: 犯人の個人差や文化的背景によって行動が異なることがあり、誤った推測や偏見につながる危険性もあります。
理解度を確認する問題
次のうち、FBI方式のプロファイリングに含まれないステップはどれか?
A. 犯行現場の分析
B. 犯人の生活歴の分析
C. 犯人の職業を直接尋ねる
D. プロファイルと逮捕後の照合
正解:C. 犯人の職業を直接尋ねる
関連キーワード
- 行動科学(Behavioral Science)
- 犯罪心理学(Forensic Psychology)
- プロファイリング(Criminal Profiling)
- 組織的犯人/非組織的犯人
- 犯罪類型(Criminal Typology)
- FBI行動分析ユニット(Behavioral Analysis Unit)
関連論文
Criminal Profiling: Developing an Effective Science and Practice
概要:プロファイリングの有効性と限界を科学的に検証し、より信頼性の高い方法への発展を提言。
結果:経験に依存する従来の方法にはバイアスの危険があり、心理学的評価・統計手法の導入が不可欠であると結論。
The Effectiveness of Criminal Profiling
この研究は、プロファイリングが実際に捜査や逮捕に貢献しているかを評価するために、複数の過去のプロファイル事例を分析したメタレビューです。
解釈:
研究者たちは、プロファイリングの効果に対して懐疑的であり、「プロファイルが実際に犯人特定に役立ったケースは限定的である」と結論付けています。特に、経験に依存するFBI方式は直感的バイアスの影響を受けやすいと指摘されました。
結果:
- プロファイリングが犯人逮捕に直接貢献した割合は少数派(2.7〜17%程度)
- その多くは既存の捜査技術や証拠に依存していた
- 被害者像や犯人の動機に関する記述は抽象的で曖昧な場合が多かった
An Empirical Test of the FBI’s Crime Classification Model
この論文は、FBIの「秩序犯/無秩序犯」分類が科学的に妥当であるかを、実際の殺人事件100件以上のデータから統計的に検証した研究です。
解釈:
結果は非常に興味深く、FBI方式の「2分類モデル」には一貫性がなく、現実の犯行には明確な線引きができないことが判明しました。多くの犯人が両方の特徴を持つ「混合型」だったのです。
結果:
- 約66%の事件が秩序/無秩序の両方の特徴を持っていた
- 明確な2分類ではなく、連続体的に特徴が現れる傾向がある
- よって、単純な二元分類では現実の事件を十分に説明できない
The Accuracy, Confidence, and Bias of Criminal Profilers
この研究は、プロファイラー、心理学者、警察官、学生などの異なる職業グループがどれほど正確に犯罪者プロフィールを推定できるかを比較した実験的研究です。
解釈:
プロファイラーは他のグループに比べて多少は精度が高いものの、自信過剰や推論バイアスがしばしば見られ、専門家であっても過信は危険であるという警告がなされています。
結果:
- プロファイラーの推定正解率は約48〜50%
- 一般人の正解率との差はわずか5〜10%程度
- 自信の高さ=正確さではないということが明らかに
覚え方
「プロの6段階分析、犯人の顔が見える!」
→ FBI方式は6ステップで犯人像を導くので、「6(プロ)ステップで顔が見える」と語呂で覚えると印象に残りやすいです。


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